Miles to go のマイルズ様から
Lovesickness *無自覚ナツルー
お友達のMiles to goのマイルズ様に「看病話を~!!」とリクして書いて頂いました!!
にゃ~ん(´艸`*)素敵です♡moもルーちゃんに看病してもらいたい!!!!甘々に、、、ナツとルーちゃんのトロケぐあいとか、2人の思考が被るとことか、
キュンキュンしっぱなしでした(*´ω`*)♡ありがとうございます!!(≧▽≦)カンシャ!moの下手なイラストから、こんな素敵なお話を頂きました(´艸`*)♡
何でも描いてみるもんだし、言ってみるもんですな♪( *´艸`)シアワセ♡
ある日ルーシィがギルドで本を読んでいると、ナツが重い足取りで近付いてきた。
「ルーシィ…」
ナツが顔を赤くし、熱い瞳で自分を見つめている――何か変だ、いつもの彼らしくない。
「どしたの?」
「ルーシィ…オレ…」
そう低く呟くや、ナツはボスッとルーシィに覆いかぶさるようにして抱きついた。
「え、ちょっとナツ!?」
「――わ、ナツがルーシィを抱きしめた!」
「こんな朝っぱらから告白か!?」
ワイワイと盛り上がる周囲に反して、ルーシィ本人は拍子抜けするほどに「ん?」と冷静だった。ナツの体温が、異常に高い。脈もドクドクと異様な速さでドラムを打っている。
「何か熱いわよ、あんた熱あるんじゃない?」
彼女は自分にもたれかかったナツと、おでこをコツンと合わせた。至近距離で彼女を目にして、ナツの心拍数が急激に上がる。元々パーソナルスペースの狭い自分だが、こんな近さは初めてだ。――しかも、ルーシィと。
(ち、近……)
「あ、やっぱりいつもより熱い」
「うぁ…」
その近さがまるでキスでもするかのようで――ルーシィの長い睫毛が、大きな瞳が数センチの近さで自分を、自分だけを見つめている。彼女のツヤツヤとした形の良い唇が、視線の先で動く。自分とルーシィが、キス?そこまで考えて、ナツは意識を失った。
「あ、ナツ? ちょっと、大丈夫!?」
遠くでルーシィの声がする。彼は頭から湯気まで出し、きゅう、と目を回して気を失ったのだった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「う…」
ナツはふと目を覚ました。見覚えのある天井だ。頭に冷たいものが乗っている。そういえば、起きた時から熱っぽくて身体がダルかったけど、家で寝ているのも暇だしルーシィをからかって遊ぼうと、ハッピーに止められるのも聞かずフラフラしながらギルドまで行ったんだった。
(ルーシィ…)
近くに彼女の匂いを感じて、ぼんやりとルーシィの姿を探す。と、視界の端から彼女がひょっこり顔を出した。
「あ、起きた? ナツ」
「んあ…ここ……?」
「医務室よ。あんた熱あって倒れたのよ、気分どう?」
「んん、さっきよりはマシだ」
「そ。良かった」
そう言ってルーシィは、ふ、と表情を和らげた。いつも笑う時は大口を開けて大笑いするくせに、聖母のように優しい微笑みをたたえた彼女の姿に、ナツは背中がむず痒くなるのを感じた。それが何とも気持ち悪くて、背中を掻こうと身を起こした彼を、ルーシィは片手で押しとどめた。
「あ、ダメよ寝てなくちゃ」
「せ、背中が痒くて」「痒いの? 掻いてあげようか?」
そう言って彼女は、起きかけたナツに抱きつくような姿勢で手を伸ばした。
顔が、近い。たわわな胸が、色付いた唇が、目の前に差し出されている。自分の背を服の上から掻きながら「この辺?」と微笑む彼女に、ナツは再び顔の熱がジワジワと上がっていくのを感じた。
(な、何でだ? 余計にむず痒くなっちまった)
「もっ、もういい」
「そお? また何かして欲しいことあったら言ってね」
「お、おう。サンキュ」
「あ、そうだ。目も覚めたことだしお薬飲まなきゃ。起きれる?」
「ああ」
ナツはルーシィの手を借りてベッドの上に起き上がると、彼女から薬とコップを受け取った。「うぇ」と言いながら苦さに鼻を押さえて薬を飲み込むと、灼けるような身体に水がひんやりと染み込んでいく。頭が冴えると、自分の異常は熱のせいだけではないという気がしてきた。
(何かさっきから、ルーシィのせいで心臓がうるせえ。…まさかこいつ、病原菌とかじゃねえよな)
失礼なことを思われているとも知らないルーシィは、もう一度横になったナツの額に手を当て、「ん、少し下がってきたみたいね」と笑った。その手が冷たくて心地よくて――離れて欲しくなくて、ナツはドキドキが止まらなかった。
(ルーシィの奴、何診てんだ。見当違いもいいとこだろ。うあ…オレ、また熱上がったんじゃねえか)
「それにしても火の魔導士でも熱なんて出すのね。ハッピーなんか涙目でオロオロしてたわよ。うつるといけないし、酒場に置いてきたけど。酒場って言えばあたしも、さっきはあんまり熱くてビックリしちゃった」
「悪ぃ…」
「別にどってことないわよ。破壊癖とか不法侵入とか、いつもの多大な迷惑に比べれば」
「失礼な奴だな」
「だから早く良くなりなさいよ。…あんたが元気ないと、張り合いないじゃない」
「おぅ……」
ルーシィが、優しい。いや、彼女は元々優しいが――。
いつもと違って慈愛に満ちた彼女にどう接していいか分からず、照れくさくなってナツは頭から布団をかぶった。
(ちくしょう、熱のせいかルーシィを見ると心臓がドキドキしやがる……)
でも、寝てしまったら彼女がいなくなってしまうかもしれない。不安に駆られ、ナツはパッと布団を跳ね上げた。「ん?」とルーシィが見返す。
「いあ…オレが眠ったら、おまえ帰っちまうかと思って」
「何言ってんの、病人を放って帰ったりしないわよ。あたし本でも読んでるから、もう一眠りしなさい」
「本当に帰んねえな?」
「ここにいるってば」
その言葉に安心し、ナツはルーシィの香りを感じながら目を閉じた。彼女の匂いに包まれると、夢の中でルーシィが笑ってくれたような気がした。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
(子どもみたい……可愛いんだから)
すっかり母性本能を刺激されたルーシィは、微笑みながらナツの寝顔を眺めていた。桜色のツンツン髪を指に絡めて遊んでいると、パタンと医務室のドアが開く。ミラジェーンだ。慌てて何事もなかったかのように本へと目を戻す。
「ルーシィ、ナツの具合はどう?」
「え、ええ。さっき起きたけど、熱も下がって朝よりはだいぶマシみたいです」
「あら、眠ってるのね。一応ご飯持ってきたんだけど」
コトン、とミラジェーンがお粥とすりおろしリンゴをテーブルに置いた。
「ルーシィもずっと看病してて疲れたでしょ。私、少し代わるから休んでらっしゃい」
「いえ、大丈夫です。ミラさんこそ、酒場の方あるでしょ。ナツはあたしが見てますから、気にせず戻って下さい」
「ふふ。相変わらず仲がいいのね」
「チ、チームメイトだし!」
赤くなって答える彼女に、ミラジェーンは微笑ましい目を向けた。どうやら自分がいてはお邪魔のようだ。
「じゃあ、お願いね。ナツが起きたらこれ食べさせてあげてね」
「はい」
パタン、とドアが閉じる。ルーシィは再びナツと二人になって、何だかドキドキしてきた。
(も、もうミラさんたら、また変なこと言って……)
別にあたし達、そんなんじゃないのに。そう思ってふと考えた。――そんなんって何?
(ち、違う! だって仲間が弱ってたら、普通助けるでしょ!?)
自分がナツに向ける想いは、決して“そんなん”じゃないのだ――朝だって、抱きつかれて一瞬ドキッとしたけど、彼はただ熱が出ていただけで“そんなん”ではなかった。
(な、何かあたし、期待してるみたいじゃない…!)
己の思考にぐああ、となる。自分はただ、病人を助けてあげたかっただけ。自分に出来ることなら何でもしてあげたかっただけ。そこに決して他意はない。
そう言い聞かせて、ルーシィはもう一度本に目を落とした。何度読んでも、文字の意味は頭に入って来なかった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「ん、もう夕方か」
差し込んでくる夕日で目を覚ましたナツは、起き上がって辺りを見渡した。ベッドに身を伏せるように、ルーシィが自分の枕元で眠っている。
「おまえが寝てどうすんだよ」
半目でツッコみながらナツは、ルーシィがちゃんと約束を守ってくれたことに温かい気持ちになった。彼女の頬を撫でながら、ありがとな、と呟く。ふと、ルーシィが目を覚ました。
「ん…あ、あたし寝てた!? あれ、ナツ、起きて大丈夫なの」
「おう、もう大丈夫だ。頭もスッキリしてる」
「ホント?」
言いながら彼女は、また額をコツンと合わせてきた。途端にナツの心臓が跳ね上がる。至近距離で目を閉じて「んー」と言っている彼女を、そのまま引き寄せてしまいたかった。
「そうね、まだ少し熱いけど、あんた元々体温高いしね。じゃあ、ご飯食べられる?」
「あんのか?」
「うん、さっきミラさんが作ってきてくれたの。あっためてくるね」
「――行くな」
思わず、ぎゅ、とルーシィの手首を掴む。彼女を自分の傍に、置いておきたかった。「え…?」と頬を染めていく彼女を目にして、ナツはハッと我に返った。何やってんだ、オレ。
「い、いあ、ほら、病み上がりだし、ひっ一人じゃ心細くてよ」
「た…ただそこのキッチンで温め直すだけよ。どこにも行かないって」
そう言いながらルーシィは、パッと備え付けの簡易キッチンに消えていった。
何もかもクリアに分かった気がした。ルーシィがいるとドキドキして、熱くなって、彼女に触れたくなって――。
(オレ、もしかして……)
(あたし、もしかして……)
ルーシィはご飯を温め直しながら、ドキドキする胸を落ち着かせていた。掴まれた手首が、熱い。放っとけなくて、一人にしておけなかった。ずっとナツの傍にいたかった。もし彼がチームメイトでなくたって、きっと、自分は。
深呼吸をして、簡易キッチンからナツのベッドの方へ踵を返す。
「お、お待たせ。ほら、出来たわよ」
「おう、あんがとな」
お皿を渡そうとした手が、受け取ろうと伸ばされた手に、触れる。
「……っ!」
まるでそこが心臓にでもなったかのようにドキドキして、ルーシィは赤くなってパッと手を離した。思わず抱き込んだ手はまだ熱く脈打っている。ナツは緊張しつつも平静を装い、お皿を持ち直した。これくらいで動揺していると思われたらカッコ悪い。
「あ…悪い、スプーン取ってもらえるか?」
「ス、スプーン? あ、ごめん」
はい、と渡そうとして、どういうわけだか「自分で食べられる?」と訊いてしまった。まさに食べようとしていたところだ、食べられるに決まっているのに。
ナツは目を瞬かせて、スプーンを受け取ろうとしていた手を下ろした。
「――じゃあルーシィが、食わせてくれよ」
「え……」
「自分で食えねえことねえけど、オレはまだ、病人だからな」
「なっ、何甘えてんのよ…」
「ルーシィ」
「……っ」
ナツの目は光が宿ったように鋭い。ルーシィは戸惑いつつ、その眼光に逆らえず無意識に身体を動かして、ナツにお粥を一杯掬ってやった。いわゆる、“アーン”という奴だ。
(あたし、何してんの? いくらミラさんに『食べさせてあげて』って言われたからって、何かこれじゃ、恋人同士みたいじゃない……)
頭では色んなことを考えるものの、脳が痺れてしまって身体の制御がきかない。そもそも自分は嫌がってなどいるのだろうか。彼女は魔法にかかったように、お皿が空になるまでナツの口にスプーンを運び続けた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
「ごっそさん。寝るわ」
さっきまでの可愛らしい態度はどこへやら、急にいつもの不遜モードに戻ったナツは、ふてぶてしくも食べ終わるや再びベッドに寝転がった。先ほどまでの行為の恥ずかしさに、ルーシィは顔を赤く染めて立ち上がりかけた。
「げ、元気になったんだったら、もうあたし帰るからね」
「あ? どこにも行かないって言ったじゃねえか。病み上がりの人間放っとく気か? 残忍な奴だな」
「あ、あんたねえ…」
元気になった途端、ワガママ放題で呆れてしまう。でも決して嫌じゃない自分がいることに、彼女はもう気付いていた。だって、あたしは――。
「も、もお、仕方ないわね。甘えんぼの子どもみたいなんだから」
「うっせ。弱ってんだから多めに見ろよ」
「弱ってる割にはずいぶん上からの頼み方ね……」
呆れていると、目覚めるまで離さないとでも言わんばかりにきゅっと手を握られた。途端にルーシィの心臓が暴れ出す。
「ここにいろよな」
更に上がった体温と鳴り止まない胸の鼓動に気付かれないように、ナツは強気な態度を崩さなかった。この手は、自分のものだ。
困ったように赤い顔で眉を下げていたルーシィが、もお、と溜め息を吐いた。彼女のこれは、容認の合図。
「あたしはどこにも行かないよ、ここにいる」
椅子に座り直してポンポンとあやすように布団を叩いてやると、安心したようにナツが笑った。母性本能をくすぐられたルーシィは、そっと彼の手を握り返す。ナツは満足げに口角を上げたまま目を閉じた。
「んじゃ、おやすみ」
「おやすみ、ナツ」
もお、ホントに甘えんぼなんだから。……可愛いな。すぐにあどけない顔で眠りについたナツを見ていると、急に彼に触れてみたい衝動に駆られた。手だけじゃなくて、もっと。
ルーシィはそっと背筋を伸ばし、彼のおでこに唇で触れた。
「いい夢、見られますように」
あたしが出てくるといいな、夢でもナツに会いたい。しかし冷静になると自分の大胆さが照れくさくて、恥ずかしくて。ルーシィは全身火を噴いたような感覚だった。
(なっ何してんのあたし、寝込みなんか襲っちゃって。しかも身体から火だなんて、ナツじゃあるまいし。いあ、握った手からナツの炎が燃えうつってきたのかも)
そこまで考えて己の発想に赤面する。こんな浮かれたこと考えるなんて、自分もナツの風邪をもらったのかもしれない。いや、この病は、きっと。
「~~~~っ…」
一つの結論に達するとどうにも居たたまれなくなって、ルーシィも座ったままヤケクソでナツの胸に顔を埋め、目を閉じた。
*
「あやー」
「まぁまぁ」
外から医務室を覗いたミラジェーンとハッピーは、折り重なるように眠っている二人の姿を見てニッコリと笑った。
「本当に仲良しね」
「あい!」
「でもナツの熱が引いて良かったわ、こじらせたら大変だもの。何とかは風邪引かないっていうのに、今は夏でもないのに変ねえ」
「ミラ、さらっと笑顔でヒドイこと言うね……まあナツの場合、ルーシィバカですから。今日もオイラ止めたのに、ルーシィと遊ぶってギルドに来たんだよ」
「ふふ。――このまま、そっとしておいてあげましょうか」
「そだねー。オイラ今日はミラんち泊まってもいい?」
「いいわよ。お夕飯は何がいい?」
「お魚ー!」
ルーシィはナツの匂いに包まれて、幸せそうに眠っていた。
その日見た夢には、笑顔のナツが出てきた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
その翌日。
「ケホッ」
「ルーシィ大丈夫?」
「だいじょうぶじゃない…」
「オイラ絶対こうなる予感してたんだ。お約束って奴なんだ」
「何だ、看病してて風邪うつるとか弱っちいな」
「だ、誰のせいだと、ゴホ、思ってんのよ…!」
ルーシィはまんまとナツの熱をうつされ、自宅のベッドに臥せっていた。
「ナツのせいで風邪うつるって、やらしい響きだね。昨日の夜、二人で何してたのさ」
「な、何もしてな、ゲホゴホッ、ク、クソ猫!」
「おまえ顔真っ赤だぞ」
「うっさい! かっ、風邪だからよ…!」
ケホケホと咳き込みながらルーシィは、赤くなる顔を誤魔化そうと必死だった。
真っ赤に火照った顔、潤んだ瞳、相変わらずツヤツヤと血色のいい唇。ナツは喉がゴクリとなったのを自覚した。
「おまえさ、やっぱ病原菌だろ」
「は!?」
「ルーシィ、ウイルス持ってるの!? 怖いよ!」
「近寄るとうつるぞ。ハッピー、逃げろ!」
「ひゃー、ルーシィ菌がマグノリア中に拡散しちゃううう。お大事にーっ」
「あ、あんたらねぇ…」
ハッピーは本当に飛び去ってしまった。あまりの悪ノリに、ルーシィは口を尖らせて涙目でナツを睨む。その拗ねた表情が甘えているようで可愛くて、ナツはクッと笑って何も考えずに口を開いた。
「おまえ、やっぱウイルス持ってるよな」
「ま、まだ言うの!? …コホ、あたし、何かしたかしら!?」
「だって、元気になっても、おまえ見てると心臓がドキドキして熱が出てくんだ。何か、無性におまえに触りたいし。これっておまえのウイルスのせいだろ」
「――え?」
「なあ、これ何の病気だ?」
ルーシィは頭が真っ白になった。その病気なら、自分にも全く同じ自覚症状がある。まさか、ナツも?
「知ってるか、ルーシィ」
言いながら、ナツがベッドに身を乗り出して頬に触れてくる。もう彼に熱はないはずなのに、その手はいつもより熱くてドクドクと脈打っていた。
――自分と、同じように。
ジワジワと全身赤く染まっていきながら、ルーシィは彼の手を掴まえて、回らない頭で答えた。
「き、奇遇ね。――あたしも、ナツのウイルスにかかってる」
その答えを手に入れて満足したナツは、熱が一層上がった彼女の額に。「昨日の仕返し」と言って優しく口付けた。
その病名は、一生治ることのない、恋の病。
~You got me high, you got me low, you make me go out of control~
おまえのせいでオレは舞い上がったり落とされたり、制御不能になっちまう
~You got me lovesick~
あたしはあんたに恋の病にかけられたのよ
〔Fin.〕
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー2014.2.8.