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2016.09.~

ぐるぐるぐるぐるまわる世界

 

ぐるんぐにゃん……ぐるんぐるん……ふわふわ~って体が浮かんでるみたいっ

 

フワフワとした不思議な感覚が体を、全身を包んでいる。なんだか、嬉しくってくすぐったい感覚に、瞼を持ち上げた。

 

あたしの視界の中で、ふにゃりと歪んで天井がゆらゆら揺れて回っている。

そこに鮮やかな桜色。

 

「……ナツゥ?」

 

声を掛ければ、桜頭から猫みたいな大きなつり目が覗き込んできた。クシャりと嬉しそうに目を細めて、ナツは――

 

「ふぇっ!!? ひっひきゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

目の前ってくるドアップのナツの顔を、ルーシィは力の入らない両手で押し返した。

 

「……あ?」

 

両手で触れた顔が動きを止めて、僅かに眉がたが動いたような気がするが、視点がさだまらない。

 

頬に触れた白い手に一回り大きな熱い手が触れ、ナツが身を引いた。

 

ちょっと困惑したナツの顔が、ルーシィの目前から離れて行く。

 

「んだぁ? 急に照れちまったか? ……ってまだ早ぇかっ」

 

明らかに照れて頬を指でかき、ナツはルーシィにやさしい笑顔をむけた。ルーシィは、そんなナツをボヤけてゆっくりくるくるまわる視界の真ん中に置いた。

ナツを中心に、部屋がぐるぐる回っている。

 

――……んん?

 

「っ……んなに見んなよっ」

 

ジーっと見つめてくるルーシィの視線に、頬を染め、優しい笑みを伏せて隠すと、ナツはルーシィの隣に背を向けて寝転んだ。

ナツの体重に受けて、ベッドのスプリングがギシリと音をたて揺れる。

真横に寝転がってきたナツに、顔だけ向けてルーシィはキョトンとした表情を浮かべている。ナツが寝転ぶ側があたたかい。

 

――ふふふっ

――ナツの体温って……心地いいなっ

 

ナツの視界のまん中で、ルーシィはフニャリと微笑んだ。幸せそうな笑顔。

その表情に、毒気を抜かれたようにナツは肺から一気に空気を吐き出した。

 

「……はぁ」

 

ナツのため息に、ルーシィは定まらない視界のピントを合わせていくが、まだ定まりきらない。クルクルとゆっくり回る視界の中、頭の中だけが段々と鮮明になってきた。

 

――おっきなため息……

――でも…ナツ……優しい顔してる…

――何で……ずっとこっち見てるんだろ……?

 

優しい顔をしていると思ったナツは、よく見るとパクハクと口が動かしていた。

 

「へ? え? なっなあに?」

「……いいから早く服着ろよっ」

「ん……っ!! ひゃぁぁぁぁ///// なっなんでっ!?」

 

自分に視線を向けてみて、ぐるぐる回っていた視界がだんだん定まってくる。

捲し上げられた衣服。あらわになっている下着姿の自分に、ルーシィは慌てた。

 

ナツがそんな事を言うという事は――、

 

ガバっと体を起こしたが、その勢いでまた世界がぐるぐると回り出し、ルーシィはナツに背を向けるようにベッドに身体を倒した。

 

「……どっどういう事っ?」

「…はあ?」

 

自分で自分の肩を抱き顔を真っ赤にしてルーシィは、くるりと顔だけをナツに向け涙に滲んだ眼を見せる。

 

「さっサイテー!! ナツがそんな奴だったなんてっ」

 

にあった枕を両手でつかみルーシィは、隣に寝転んでいるナツを何度も叩いた。顔だけこちらを向けたナツは、慌てて体を起こすと枕を振り回すルーシィの腕を掴んだ。

Anchor 2

ナツの猫の様なつり目が、信じられないとでもいうように揺らめいた。

 

「なんっ ルーシィがっ………おまっ…覚えてねえのか……?」

「はぁ? なっ何の事よっ」

「………どこまでっ、どこまで覚えてるんだよっ おい…ルーシィ…」

「どこまでって……? んんー? そう言えば、いつ帰って……あれ? あたしギルドにいたなずじゃ……?」

 

頭に大量の?を浮かべたルーシィは静かに体を起こすときょとんとした顔で、口を半分開けたまま斜め上の天井を見つめた。その天井は、まだ少し揺れて見えている。そして思い出したように、ナツに振り返った。

 

「……あれ? ナツがいる…フフフッ、ナツだぁ~」

 

怒ったと思えば、もうその事も忘れているようで、ルーシィはナツに向かってにっこりと微笑んだ。「ナァツ~」と猫なで声で甘えてくるルーシィに背を向け、先程奪い取った枕を抱え込んでナツは、大きなため息を吐き出しその枕に顔を埋めてしまった。

 

そのいつもよりちょっと小さく見える筋肉質な肩に触れるとルーシィは、とろんと溶けた目でナツの視界に入り込んだ。

 

「……おかえりっ ナツ」

「くそ……っ!!」

 

蕩ける様にほほ笑んだルーシィは、一瞬にして体が反転しナツの腕の中に抱きしめられてしまった。その暖かさに、心地よさに、夢見ごこちでルーシィはうっとりとした表情を浮かべている。

 

「おまえっふざけんなよっ」

「んー?」

「ルーシィ、オレに好きだって言ったじゃねかっ!! 忘れちまったのかよっ」

「!? ……へっ!? え? あたし……ひゃぁぁぁ 言っちゃった……の…?」

 

元々酒で顔が赤らんでいたルーシィだが、ここで一気に真っ赤に染まった。ワタワタとナツの腕の中で慌てている。

 

その反応に気をよくしたナツは、ルーシィの肩を抱き寄せ腕に閉じ込めたままその耳に普段はあまり聞かせない落ち着いた声で囁きかける。

 

「オレも好きだって言ったし……さっきチューもしたんだぞ」 

「えぇっ」

「無理やりじゃねぇそっ……ルーシィがしてくれって…っ」

「……ナツ…が…あたしのこと、好き……?」

 

腕の中を覗き込めば、ルーシィは大きな目に涙を浮かべて嬉しそうに恥ずかしそうにナツを見つめている。

 

「んぐっ……ルーシィ……」

「……ん?」

 

「……もう一回……っ」 

 

とろけた真っ赤な顔を持ち上げたルーシィ。目前にははにかんだように笑うナツのドアップ。その顔が傾けば、ルーシィは自然と目を閉じていた。

 

 

 

「……おい…」

「……」

「……ルーシィっ!!」

「……」

「……くそぉっ!!」

 

 

 

*

 

 

ちょっとした依頼でギルドを開けてから数時間。たった数時間だ。

珍しく減額なく仕事を終わらせたナツは、急いでギルドに戻ってきた。

 

この日は、朝から愛しい少女に会っていなかった。

先日の依頼で、ついつい暴れすぎて報酬より損害がでかくなってしまった。その前は80%の減額。その前はたしか、半分は報酬が貰えた。つまり、ルーシィを怒らせたのだ。

『あんたが、報酬減らさなくなるまでチームは解散よっ!』とりつくしまもなかった。

だが、昨日の今日で報酬満額。これで文句はないだろう。

 

口ではぶつぶつと文句をいいながら、でも満面の笑みで喜んでくれるだろう。ルーシィが笑顔を向けてくれる――はずだった

 

『あっナツだぁ~』

 

開口一番に甘ったるい声。

ふにゃりとわらう目は、はたしてしっかりと自分を映しているのだろうか――

 

ご機嫌のルーシィを部屋に連れて帰って、ベッドに寝かしたんだ。寒かったのか、ルーシィが離れないでよと甘えてきた。

酔っぱらってる時のルーシィは、なんだか扱いづらい。他の目がある処なら我慢出来ても、ここでは理性が続きそうになかった。

いい加減にしろと無理やり引きはがして――ルーシィが潤んだ目を向けてきたんだ――

こっちは泣かせたかと思って、焦ってたってのに――

 

「……急に、好きだって言ってきたのはルーシィじゃねぇかっ」

 

目の前の愛しい少女は、スースーと寝息を立てている。

 

「酔ってから、ダメだっつってもチューしてきたのもルーシィだろ……」

 

ナツは起こさない様にルーシィの脇に寝転がると、そっとルーシィを抱きしめた。

腕の中で幸せそうに眠る愛しい少女に、盛大なため息を落としナツは瞼をギュっと閉じた。

 

「くそっ……おぼえてなくても……何回でも言わしてやるかんなっ!」

 

何時もよりも強めにルーシィの身体を抱きしめると、腕の中でルーシィが身じろいだ。

 

「……んっ……ナ…ツ…だい…好き…よ……」

 

可愛らしい唇が、プルリと揺れる。むにゃむにゃと、幸せそうにルーシィが微笑んだ。

 

 

「……起きても、覚えてろよっ」

 

 

 

Fin

さてさて、朝にはどうなったのかしらねっw

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