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2014年08月20日

“さあ。冒険の続きだ!!

未来ルーシィの続き。またもやmoのねつ造です。

 

「さあ冒険の続きだ!!」

 

 眩しい笑顔で、戻ってきてくれたさくら色のギルドマークの上を暖かい手が包み込み、やさしく引いてくれた。

もう2度と触れることはないと、触れてくることはないんだと……一度はあきらめてしまったその暖かい手。

 

 過去の仲間たちが……ナツが約束を守ってくれた!! 街を城を破壊した竜たちが、消えていく光景が頭に映し出された。新たに自分の中に形成されていく過去。過去の自分と、記憶がまじりあっていく。

 

 

 あれを経験したのは、あたし?

 未来のあたし?

 それとも……過去のあたし?

 ……あたしは……過去の? ……未来の?

 

 

 暖かい手の先で、きょとんとした大好きな奴の顔。その手を握り返してルーシィは、笑顔を顔を覗き込んできたナツに向けた。その顔には「どうした?」と書いてあるようだ。いつだってわかりやすい。

 

 

 そういえば、数日だけど過去に行ってあたし解っちゃったんだ。過去の笑ってるナツの視線の先には、笑ってるあたしが……いたんだ/// ナツを失って、絶望が襲ってきた。ママやパパを失った時とは種類が違う。ぽっかりと大きな穴が開いたような感覚。ナツが! ナツだったら、ナツならどうする? それしか考えられなくなって、扉を潜ったんだ。……もう一度、ナツの笑顔がみたくって。

 

 

 ずっとずっとナツの笑顔には、心を躍らせられてきた。それが、どこからくる感情かなんてわかりきっていたけどまだ気づかないふりをしていた。……これからだって、あたしがナツを笑わせてあげる。

 

 

 あたしは、あたし。

 過去が変わっても、未来でも過去でもないんだ。

 今のあたしは、ここにいるルーシィなんだ。

 

 

 ルーシィはうれしくてたまらないと耀くような笑顔で「また会えたのが……うれしくって!!」と、ナツに笑顔を返した。一瞬目をに開いたナツは何でもないように、でも視線はそらさずにあたしを見て口を結んだ。ほのかに耳が赤いのは気のせいだろうか。

 

 グイグイと手を引かれる先には……会いたかった皆がいる! みんなが、妖精の尻尾の家族たちがそこにいる! ハッピーがかけられる声に応え、嬉しそうに金色が反射している空を旋回してた。

 

 

「みんなっ! こんなところにいたのねっ!!」

 

  

 皆の顔をよく見たいのに、視界が歪んでよく見えないよ。ぼやけた視界に緋色の影が映った。

 

 

「ああ。お帰りルーシィ。」

 

 

 長く伸びた緋色の髪をなびかせながら、鎧姿の少女が微笑み、ルーシィの肩に優しく手を置いた。

その後ろから、青い影が揺れる。

 

 

「よく頑張ったなっ! さすがうちらの姫さんだ!!」

 

 

 そういって上半身に何も羽織っていない半裸の男が、ルーシィの頭をクシャリとなでた。表情はぼやけた視界で認識できないが、、、見なくってもわかる。仲間の笑顔。

 

 

「エルザ! グレイ!」

 

 

 もう溢れてくる涙を止めることができない。ルーシィはあふれてくる涙をぬぐう事もせず、そこにいる大好きな家族に頬を濡らしたままで満天の笑顔で抱き着いた。

 

 

「あ~! 恋敵~!!」

 

 

 という声が懐かしく感じる。だが、そこに親友の姿はない。自分と共に、生き残ってしまった。自分にいちるの望みをかけ、過去へと送り出してくれた親友。

 ……そうだ。彼女は今も待っている。

 

 

「行こう。レビィちゃんが待ってる!」

 

 ルーシィが親友の名を口にした時、エルザの後ろから大きな黒い影が現れた。長い鋼のような髪を揺らして、ガジルがそこに立った。労う様にルーシィの頭にコツンと拳をあてると先に進んで行ってしまう。彼が一番に走り出したい理由なんて知っている。

 

「のろまなバニーも揃ったんだ!さあ行くぞ!!」

  

アイツが待ってる!! そう言ったガジルの横顔が、意外とカッコいいかもと、レビィちゃんの為だもんね! と、ルーシィは胸の中でクスリと笑った。ガジルの声にジェットとドロイもうなずき、そのまま3人は先陣をきって黄金色の草原を走りだした。

 

 そして、仲間の塊から「やれやれせっかちな奴じゃわい」と小さな老人が出てきた。

 

「よく頑張ったのぉ。ルーシィ。」

 

 小さい老人がニィっと笑うと、その手がにゅっと伸び、ルーシィの尻をぽんと軽くたたいた。その様子に老人の隣に構えていた銀髪の女性が、「ダメですよっ! マスター」と頬を膨らませる。マスターとミラのやり取りに、ギルドの酒場での日常が思い出される。ルーシィが嬉しそうに目を細め傍らにいるナツに視線を移すと、その顔にも笑顔があふれていた。

「しゃ~ね~なっ。じっちゃんはっ」と嬉しそうに、耳打ちしてきた。

 

 そして、小さい体のマスターが皆に振り返りニィっと笑いかけ、大きく息を吸い込んだ。

 

「よぉし! ここに来たものは全員そろったな。 野郎ども! うちに帰るぞぉぉぉぉ!!」

 

「「「「「「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」

 

 妖精の尻尾6代目? マスター・マカロフの声が金色の世界に響く。その掛け声につられ、先に走り出しているガジルたちに続けと、皆が走り出した。ナツがルーシィの頬をつたい落ちていた雫をあいている手で拭ってやった。そして繋いだままの手を引いた。

 

「オレ達も行こうぜ!!」

「うんっ!!」

 

 ルーシィのまぶしい笑顔が、ナツの大きなつり目に映りこむ。その端に、すでに走ることを諦めて歩き出している酒飲み達とロメオに追いついた。歩いてはいるがちゃんと先に見える光に向かっている。

 

「親父……心配ってかなぁ?」

「あぁ~。ずっとお前を探してるだろうよ。父親だからな。ただ……どこにいるんだかなぁ~?」

「そうだよなっ! ギルダーツはこっちに来てねぇもんな」

「あ~そうだろーな。あんなんでも一応旧マスターだしな。……ちゃんとギルド守ってんのかねぇ?」

「ああ。事態を聞きつけたら飛んで帰ってきて、カナを探してんだろうよ。父親ってのはそういうもんだ。あいつはずっと、……探してるだろうよ。」

「……ふん。……あ~ぁ。たらふく酒がのみたいねぇ――。」

 

 カナの声にマカオやロメオ、ワカバが応えていた。その会話を耳に、ルーシィはクスリと笑い、ナツは冷めた視線を送っていた。ワイワイガヤガヤと、楽しそうに話す彼らは、ギルドの酒場での光景のようだ。その脇を通り過ぎながらナツとルーシィも笑いあった。

 

 ナツの中でも、新しい記憶が脳裏に映し出されていく。

 未来から来たルーシィのこと。……それはここにいるルーシィという事になる。

自分で自分の未来を守り、未来を託してくれたルーシィ。失ってしまったと感じた。思っていた。でも……失ってはいなかった。ルーシィ達と掴み取った未来。ルーシィが託してくれた未来。花なく散ったルーシィは、ここにオレのところに帰ってきたんだ。苦々しい思いも残るが、今ここに間違いなくルーシィはいる。

 

 もう。……ぜってぇ…………だ! この先、どんなことがあっても。

ナツはつないだ手をぎゅっと握りしめた。そこに白い羽をたたみながら相棒の青猫が舞い降りてくる。その表情は、未来のルーシィを失った時のように歪んで見えた。だが、目の前にいるルーシィの胸に落ち着いて、いつもの表情を取り戻した。……前を向いたまま、ナツがルーシィに優しい声をおとす。

 

「ありがとなっ! ルーシィ。」

「へ? あたし??」

「ああ。ルーシィが来て、あの日運命が変わったんだ!!」

「あい! 新しい記憶が頭の中に流れたんだ。ルーシィが7月7日に行ってきたからでしょ? ルーシィは……こっここに帰ってきてたんだね!!」

 

 ハッピーは目を細めて、ルーシィの頬にすり寄った。彼女の存在を確かめるように。ぽろぽろと涙を流しながら笑うハッピーの頭を撫でなが、ルーシィがクスクスと笑い出した。

 

「ふふふっ。じゃあ、ナツもハッピーもありがとう!!」

「オレ等もか?」「オイラ達?」

「そうよ! 未来を。今のあたし達を、守ってくれたじゃないっ!!」

 

 そういって幸せそうに微笑むルーシィの姿を、ナツは目に焼き付けた。考えてみればここにいるルーシィも、経験してしまっているんだ。……目の前で命が奪われるということを。黄金色の芝生を踏みしめながら、手を離すことなく並んで歩くナツとルーシィ。

 

 少し恥ずかしいけど、何よりも暖かい。そして安心する。そんな存在。ルーシィはつながれた手を見つめ、嬉しそうにまたほほ笑んだ。その様子をルーシィの腕の中からハッピーが見上げ、ハッピーもまた嬉しそうにほほ笑んだ。

 

 自分の時間に舞い戻ってきたルーシィの脳裏に、新しい記憶がまた重ねられた。7月7日の記憶が、2ついや、その日に戻ったルーシィにだけ3つ分の7月7日が存在していた。日食の歪みによって、記憶が残されている。その記憶は個人差があるだろうが、だんだん薄れていくものなのだろう。だが、直接扉を通ったルーシィの記憶は消えそうにない。怖い記憶も、つらい記憶も。失ったと思った……大事な人に再び出会えた感動も。

 

「なぁルー。ィ」「ねぇナツ」

 

 お互いを呼び合い、きょとんとした目を合わせ、ナツとルーシィはクスリと笑った。

視線を合わせてまた、声が重なる。

 

「「ずっと一緒にいような(ね)!!」」

「ああ。もう……この手は離さねえよ。何があっても。」

 

 ナツの頭の中で重ねられた記憶。未来から来たルーシィの死。頭の中で改めてその時を経験した。……してしまった。……心臓が握りつぶされたみたいだった。うまく息がすえなかった。噴き出してくる憎悪を止められないかと思った。今も……胸が締め付けられる。抗えない悲しみが、苦しみが押し寄せてきた。

 

 本来であれば、自分が彼女を置いていってしまっていたのに。一緒に存在する記憶がある。ルーシィを残してこの世界にきてしまった悔しい記憶。あの扉に直接触れたナツにも、記憶は鮮明に残るだろう。

 

 ここに! 隣に!! ルーシィがいるのに。心が痛みを訴えてくる。……心が震えている。

 

 未来のルーシィを想った。彼女はこの逃れられない悲しみや口惜しさ怒り、……喪失感をもって過去にやってきてたんだ!! いや未来ルーシィはオレだけじゃねぇ。……沢山の仲間の死を見て過去に戻ってきていたんだ。彼女の笑いきれていなかった笑顔が、瞼の裏に焼き付いている。ナツは強く決心していた。

 

 もう。……未来永劫そんな笑い方はさせねぇ!!

ずーっと一緒に生きていく!! 俺たちは笑い合って、共に前に進んでいく!!!!

 

「うん。離さないでね! ってかあたしが離さないわよ!! もう置いていかせたりしない。あんな思いは……誰にもさせない」

  

 あたしもあんたを置いてはいかないからっ! そう言ってくれたルーシィはやさしく笑った。互いの事はある程度言わなくてもわかってしまう。握った手に、互いの力が入る。

 

 

「ナツー!! ルーシィィィ!! 先が見えるよ~!!」

  

 翼を出して前の様子を見に行っていたハッピーが空中で手を振っている。そこに視線を向けると視界の先の方に、何か気になる行動をしている奴が。。。目を凝らすと、長い黒髪の男が道端に現れたガラス?窓のような変なモノの中に吸い込まれていくのが、ナツにだけ見えていた。

 

「あっ!! ガジルの奴が、近道しやがった」

「ええっ!?」

 

 事も無げにそう言ったナツの横顔は、なんだか嬉しそうに笑っている。つり目が弧を描き、口角が持ち上がった口元にはとがった犬歯を覗かせている。つられるように笑顔を見せるルーシィ。

 

「なんで笑ってるのよ。大丈夫なの? ガジルは」

「大丈夫だろっガジルだぞ!? それに……消える前『レビィ』って言ってたかんなっ」

 

 ……そう言うことか。なぜかすんなり納得できた。ガジルは……一人残されているレビィちゃんを迎えに行ったのだろう。ガジルがレビィちゃんを間違えるとは思えないし。何より彼女も連れて帰らねば、ならないのだから。

 ガジルが迎えにいけば、彼女は涙を流して喜ぶはずだ。

 

 

 

 

「……レビィ?」

  

 金色の世界の先に見える光へと向かう途中で、なんとなく視線を向けた先に宙に浮く小窓が現れた。黄金の草原に、ただの窓があるのだ。ガジルは訝しげにそこを覗くとその先に、大事な奴の背中が見えた。机に向かい、必死に何かを綴っている。

 

「レビィ!!」

 

 ガジルの声に、青髪の少女が振り返った。振り返ったもののキョロキョロと視線を泳がせている。その目にガジルの姿は映っていないようだ。それでも何かを感じるのだろう。レビィは小刻みに体を震わせ、その目には涙を浮かべている。

 向こうからこちらにはこちらは見えない。だが、……確実に…声…いや思いは……届いているようだった。

 

「ガジル!! ガジルでしょ!? どこなのっ!」

 

 レビィは手探りで前へ進み、ぶち当たった見えない壁を必死に叩いた。

 

「……っ!! ここだっ!! レビィ」

 

 ガジルもその窓に駆け寄り、レビィの小さな手を包み込むように不思議な窓のガラスに手を重ねた。すると、熱が伝わったのかレビィが反応を返すように顔を持ち上げた。

 

「ガ……ガジル……ガジル!! そこにいるんだよねっ」

 

 透明な雫が、レビィの頬を伝い落ちる。ポロポロ。ポロポロと、湧いては流れ落ちていく。

 

「……ガジルのばぁか」

「……わりぃな」

 

「無事に会おうって約束……破って、……酷すぎだよっ」

「なっ! ……しょうが…いや。悪かった。」

 

 文句を口にしながらもガラスの先で小刻みに震えて涙を流す少女にそれ以外の言葉を、ガジルはかけられなかった。そっと熱を移すように、ガラスに触れる手に力を入れた。

 

「……もう。わたし一人じゃ、寂しいよっ。みんなに会いたいよっ! ガジルに会いたいよぉ!!」

「…………今行く」

 

「迎えに来たんだ。」そう言うと、ガジルはその身を影に変え窓の隙間を滑りぬけた。その途端、視界が急に開けた。徐々に悲惨な記憶に霞がかかっていく。そして新たに経験していないはずの記憶が生まれていく。新しい記憶に塗り替えられていくのかもしれない。

 

「っ! ガジル!!」

 

 ガジルの胸にレビィが飛び込んできた。目の前で、レビィの顔についてしまっていた深い傷跡が、薄くなり……消えていった。

ガジルは力強く、でもやさしくそのか細い少女を抱きしめ返した。レビィもガジルの背に腕をまわし必死にしがみついている。……ようやく会えたのだ。塗り替わっていく記憶の中、それでもここに、今触れているのは会いたくて仕方のなかった、たった一人の人なんだ。

 

「……行くぞ。」

「うんっ!」

 

 どれくらい抱き合っていたかは、定かではないがガジルとレビィの目前に光が現れた。ここを抜ければ、きっと。。。

 

 

 

 

 ガジルが窓の向こうに消えた後、そう言えばとナツは頭をひねった。

 

「これ、どこに出んだろうな?」

「えぇ? そりゃ……倒れた場所じゃ??」

「でもよう。結局竜は消えてんだぞ。みんなその場に立ってたろ?」

「……そういえば」

 

 首をかしげるルーシィとナツの脇を、グレイとジュビアが通りかかった。

 

「でも変な感じだよなぁ。同じ日の記憶が2つも存在するなんてなっ」

「ええ。でも、この黄金の草原を抜けたらここの記憶は忘れてしまうのかもしれませんよ?」

「ま。帰れればそれでいいけどなっ」

「はい!!!!」

 

 笑いあう2人の姿に、ポカポカと暖かい気持ちがあふれてくる。

そうか……時間は今、修正されいるんだ。

 

 きっと、この記憶を持っていけるは……未来の人であるあたしと会って、会話をしたメンバーだけかもしれない。あるいは、あの巨大な扉の魔力を直接浴びたものだけ。

 

 儚く消えた未来の自分は、……あたしになる。混在する記憶に苦しむかもしれない。でも、確かに未来をつかみ取ったんだ。あたし達は。それだけは揺るぎない……事実なんだからっ!!

 

 

 そして、光の先に一歩踏み込んだ。

 

 

 

 

  

 まばゆい光に包まれ閉じた瞼を持ち上げると、ガジルの目前には崩れた建物の瓦礫の山。……今確かに、そこに竜がいたはずだった。

 

 「……消えやがった。」

 

 ……歯が立たなかった……気に入らねぇ!! ガジルは竜が消えた場所を睨み付け拳を握りしめた。傍らに、ボロボロな姿の少女がいて、ハハハッと笑いかけてくる。

 

 「ガジル――!! 無事だったね!」

 「ああ。何とか生き残ったなっ。……気に入らねぇがな。」

 

 レビィがガジルの背に手を寄せると……2人の記憶が混濁し始めた。未来が……フラッシュバックする。

 

  -金色の世界。

 

  -黄金色の草原。

 

  -そこに、力尽きた仲間が、妖精の尻尾の家族たちがいた。

 

  -そこで大切な女を探して……走り回った。

 

  -俺はあいつを……たった一人であっちに残してきてしまったのか?

 

  -アイツは、一人あの世界に?

 

  -背筋に冷たいものが走った。冷たいいやな汗が額をつたい落ちてくる。

 

  -全身の毛穴が開き、総毛立った。

 

  -ゾッとした。あいつを……レビィを…………一人にしてしまったのか!?

 

  -目の前が真っ暗になった時、火竜が叫んでいた。相棒と共に、常に一緒にいる少女の名を。

 

  -……そうか…一人では……ないんだな。あいつは親友と……そう思った矢先。

 

  -金色世界にバニーが来てしまった。

 

 

  -……違うな。新しい未来を持って、過去に戻る扉の鍵をもって迎えに来てくれたんだ。

 

 俺たちは……俺は帰りたい場所に戻ることができたんだ。破れた服の背を、小さな手が握りしめた。その手は小刻みに震えている。レビィもまた、未来がフラッシュバックしているのだろう。たった一人、地獄に取り残されてしまった未来が。

 

 

 

 

  -目の前で…ぶっきら棒で、口が悪くて乱暴で……でも誰よりも私に優しかった彼が!

 

  -……絶望。人って簡単に絶望できるんだ……。これが……絶望なんだな。…そう思った。

 

  -次々に倒れる仲間。一緒に育ってきた家族。

 

  -みんな、みんないなくなってしまった。

 

  -ドラゴンは、破壊に飽きて飛びたって行ったってしまった。……残された一人ぼっちの私。

 

  -どうやって歩いたかわからない。助かった人間が集まっていた。そこに……。

 

  -右腕を失った親友が運び込まれていた。そこで、光が差したんだ。

 

  -腕を失ったルーちゃんの瞳も悲しみが染みていた。でも……その瞳は光を失ってはいなかった。

 

  -「レビィちゃん。……あたし。行ってくるねっ!!」

 

  -まだ痛むであろう傷を擦りながら、星霊魔導士であるルーちゃんは残った魔力を使って扉を潜った。

 

  -彼女なら……必ず!! 仲間を救ってくれる!! そう信じて見送ったんだ。

 

  -それから、ルーちゃんに手紙を書き綴った。

 

  -今起こっている事ではない。

 

  -お祭り騒ぎだった大魔闘演舞の事を。

 

  -ルーちゃんが見ることのできなかった最終日の事を。

 

  -ただただ、信じて。愛しい人を思って待ち続けてい……た…んだ。

  

 頬をつたい落ちるきれいな透明ない雫。

そうだっ! 一人の寂しさに押しつぶされそうになっていた時。ガジルが、「レビィ!!」って名を呼んでくれたんだ。

 

 ルーちゃんは、やっぱり約束を守ってくれた。さすが星霊魔導士!!!

 

 

 

 ……ガジルは迎えに来てくれたんだ。

 

 

 

 「……うん。でも、生きてる。」

 

 「あぁ。」

 

 

 

 ガジルは、華奢な体の小さい少女の腕を引いて、抱き寄せた。優しくその腕の中に閉じ込めるように。

 誰が、見ていたって構わなかった。

 こいつを……一人にはしたくない。

 一人で……泣かせるもんか!!

 縋り付くように、華奢な肩に顔を寄せその耳に直接囁きかけた。

 

 「もう。置いて行ったりしねぇよ。」

 

 ガジルの掠れた声が、直接レビィの耳にささやかれた。優しく慈しむようにその胸に抱かれ、その力強さに心から安心した。突然のガジルの行動に、顔を真っ赤に染めながらレビィはその腕の中でクスリと笑った。

 ……そんなのっ。

 

 「もう/// 置いていかれたりしないよっ! 私が先にいかせたりさせないもん!! どこにだって……追いかけていく」

  

 細い腕が、たくましい背に回された。服が裂けむき出しになっているガジルの胸に頬をこすりつけた。

 

 「どこまでも。だってわたし達は、生きてる! ……だからガジんっ!むぅっ!!」

 

 その小さな唇は、食らいつくように静かに奪われた。……愛しい鉄の竜に。

 

 

 

 

 まばゆい光の先に、見知った背中が見えた。ナツと繋いでいたはずの手が消え、いつの間にか一人になっていたルーシィは、そこに向かって走り出した。その背中の周りには、崩れた扉。

 

 満身創痍ボロボロの姿のナツが見える。

 

 ……知っている!! 金色の世界で得ていた情報が、体験した記憶になり替わった。

 ……今は、あの扉をナツが壊してくれた……。その直後……竜たちが、未来のローグが……目の前で消えた。

 

自分の時間に帰った瞬間だ。

 

 あたしは堪らずその背中を……後ろから抱き締めた。あふれてくる感情を、ぐっと飲み込んで、そのたくましい背から、熱を貰い受けた。……それだけで、荒ぶる感情が落ち着きを取り戻していく。

 

「……どうした? ルーシィ」

 

「ううん…なんとなく………」

 

 ナツは覚えているのだろうか? 

 ……。

 どちらでもいいんだ。きっと覚えていても教えてはくれないだろうから。

 

『大丈夫。未来のあたしも、ここにいるから』

 

 思いを乗せて背から回した腕に力を入れた。ナツの腹に回っていたルーシィの手に暖かい手が重ねられた。

 

『あぁ。俺もいんぞ!!』

 

「……ありがとう」

 

 しばらくそうして、互いの命を確かめ合う様に熱を移しあった。それから、手を取って仲間の元へとナツとルーシィは、歩き出す。

 

 

 

「さぁ。冒険の続きだ!!」

 

「うん!!」

 

 

 

fin

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ふわぁぁぁぁ。書いちゃったぁ。(*ノωノ)。。。

これどうなんだろね??結構いろんな方が書いてるかもですね_(:3」∠)_

moなりな、黄金の世界のお話。

自分の中でなんか形はあるんですが、なかなか文章に起こすのは難しいですね。

まぁ、ただの実力不足なんだけど( ;∀;)伝わるかしら???ムムムッ(*ノωノ)

 

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