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2014年09月29日

運命の人

ルーちゃんは、カナに宣言されます。今日運命の人にプロポーズされると・・・・・・。

 

 

「おめでとう。ルーシィ!!」 

「……へっ」 

 

 ギルドの酒場のテーブル席で、酒樽を抱える女が1枚のカードを手に、自分の目の前に座っている金髪の少女にむかって、満面の笑みを向けている。ルーシィと言われた金髪の少女は、キョトンとした表情で声を掛けてきた酒樽を抱えるカナに視線を向けた。

 酒場の中心では、ドカバタと乱闘が盛り上がりを見せている。そんな中、ルーシィの大きな瞳に自分が正面から映ると、カナはにっこりとほほ笑んだ。 

 

「今日あんた、人生初の彼氏ができるかもねっ」 

「えっ//////」 

「今日、意中の相手からプロポーズされるって、私のカードが言ってんだ」 

 

 ルーシィは一気に染め上がった真っ赤な顔を両手で覆いながら、チラッとギルドの中心で暴れる桜色を盗み見た。丁度そのあたりから煙が上がったところだ。魔法が使われ始めてしまえば、そろそろ乱闘は諌められるだろう。 

 ……ルーシィは、苦笑いを浮かべていた。そのルーシィの様子にカナは、またもにやりと口角を上げる。 

 

「そっそんなの事……あるわけないっ」 

「まぁ、期待しときなって。今日告白してきた奴が、ルーシィの運命の人だってカードが言ってんだ。頑張れよっ」 

 

 ……そっそれって、意中の相手が運命の人ってこと!? 

 ……まっまさかねぇ……。 

 

「ってそんなこと言って、期待させても、カナの占いって、どこかずれてたりするじゃないっ」 

「そりゃぁ。占いした時はそうなるってでてても、それを聞いて予測されてた行動とは、違う行動をする奴がいると、そういう事もあるんだよっ」 

 

 カナの言わんとしている事はなんとなくわかる。例えば今あたしが、今日は素敵な出会いが在ると言われ、そんなの困る! って引きこもってしまったら、駅で出会うかもしれない人物には出会えないという事なのだろう。予知ではない。あくまでもカナのそれは、占いなのだ。 

 

 占いと言えど……本当のところ、カナの占いは信じている。時期がずれることはあるにしても、思い返してみれば当たっていることが多い。だとしても、今回に関しては……。ルーシィは、しょぼんと眉を下げた。 

 

 ……でももしかしたら、カナの言う通りに……こっ告白とか!! しかも、意中の人!? 

 ……そっそれって……/// 

 

 確かにアイツとは一緒に行動するだけあって、意外と頼りになるなとか、なんだかんだやさしいんだとか、寝顔が可愛いとか、実は寂しがり屋だったりとか……惹かれちゃってる部分もあるけど……。

 なにせあいつは、お子ちゃまなのよっ! こんなかわいい子が近くにいて、からかう事しかしないんだから!

 ……そっそりゃぁ、他の子より一緒に行動するなとか、あたしを優先してくれるなとか、からかってる振りしてあたしと一緒にいたいだけなんじゃとか、あたしにだけ見せる優しい笑顔が……とか、思う時もあるのよっ。 

 

 ……でもでも、あたしの意中の相手って……そんなこと気にする奴じゃないもの。また適当に持ち上げられて、落とされるのが関の山の様な気もする。 

 

 真っ赤に顔を染めたかと思えば、また眉を下げ小さく息を吐き出すルーシィ。その様子を、カナは酒の肴に目を細めて眺めている。 

 

 ……でもでも、カナがわざわざこう言うって事は……何かしら進展が……/// ああぁ! でもっ……そっそうよ。やっぱり期待しちゃダメ!! カナにからかわれているって可能性もあるんだし……でも……もしかして……もしそうなら、どうしよう!! キャ――/// 想像しただけで恥ずかしいじゃないっ。どうしよう。期待しちゃダメなのに……。 

 

 だが、一度期待に胸を膨らませてしまったルーシィは、普通どおりにしようとしても、どこかニヤついてしまっている。何とも微妙な表情だ。 

 

 ふと視線を感じて顔を持ち上げると、カナがニヤニヤした顔でルーシィの顔を覗き込んでいた。完全に乙女モード中だったルーシィは、一気に現実に引き戻され、ニヤニヤと弛んでいた頬を両手で隠し、慌てて立ち上がった。 

 

「ルーシィ、どこ行くんだい?」 

「へっ。えっと……かっ買い物。買い物行こうと思ってたのよっ」 

「へぇ~そういえばそんなこと言ってたねぇ。ルーシィ、いつも通りだよっ。まぁ、今日はモテモテな運がばっちりだから、可愛いプロポーズくらいはされるだろうよっ」 

 

 少々挙動不審なルーシィに、カナが耳打ちした。フラフラと1人ギルドを後にするルーシィ。さんざんカナにからかわれ、すっかりおもちゃにされてしまった。まったくあれではどこまでが、本気なのか定かではない。 

 

 

「もう。カナったら……結局のところ、モテモテ運があるって事なのねっ」 

 

 

 ルーシィの後ろ姿を見送り、カナはちらっと乱闘の真ん中を覗き見ると、案の定桜頭の少年が、ルーシィの背中を追う様に視線を向けていた。 

 

 

 

 

 赤い頬をさすりながら、ルーシィは街に繰り出した。そういえば、気になっている本が今日発売されることを思い出し、本屋に足を向けることにした。

 

 いつも通りでいいんだ。

 占いに振り回されては元も子もないんだから。

 モテモテ運って言ったて、きっとナンパか何かだろうし……はぁ。

それに、ルーシィにとっては、あの桜頭でなければ意味はないのだ。

 

 新刊売り場を見て、ついでに文庫も見て行こうと振り返ると、そこに沢山の本を抱えヨタヨタと歩く老婆が目に入った。その抱えている本の量は、ルーシィから見ても酷く重そうだ。

 

「……手伝いますよっ」

 

 ルーシィは、駆け寄って行って老婆の持っている本に手を伸ばした。老婆の手に1冊だけ本を残し、老婆の向かう先へ運んでやった。ズシリと腰にくる重さだ。……よく老婆が持てていたものだ。レジまで一緒に行くと、そこに預けてあったキャスターの付いた買い物かごに、買った本を入れてあげた。ルーシィの手伝いに、老婆はとても喜んでくれた。ルーシィの手を握り、にっこりと花が咲いたように笑う老婆に、ルーシィの心にも小さな花が咲いた。

 

 結局本屋では目欲しいものが見つからず、ルーシィは何も買わずに店を後にした。すると、店の外で先程の老婆が、ルーシィに声をかけてきた。また会いましたねっという老婆は、ルーシィと別れた後店の前のベンチで日光浴がてら休憩していたそうだ。おいでおいでと、手招きされルーシィは老婆の隣に腰を下ろした。

 

「お嬢さん……決まった人はいるのかい? もしよければ、うちの孫と……」

 

 っ!?

 当たった。

 ……ほんとに求婚されちゃった。相手はおばあちゃんだけどっ!!

 クスクス……やっぱりこんなもんよねっ!!

 ……でもなんか安心したなっ。変なナンパじゃなくってよかったかも!!

 

 ルーシィは、丁重にその申し出をお断りして老婆と別れた。老婆を家まで送ろうかと声を掛けたのだが、迎えが来るのよと返された。にこにこと感じよく微笑む老婆は、残念だわと言ってはいたが、優しく微笑んで「きっとあなたの想いは届くわよ」と耳打ちしてくれた。どうやら、ルーシィの想い人がいるという事は、バレバレのようだ。

頬を染めたルーシィが、老婆に別れを告げると、老婆はルーシィの背が見えなくなるまで手を振ってくれた。

 

 そして、そんなルーシィの様子を少し離れたところから見守る影があるが、まだルーシィは気が付かない。

 

 

 

しばらく、他の店などを見て回ったが、特別目新しいものも見つからず、少し休もうかとルーシィは公園に出た。

するとルーシィの座るベンチの前で、5~6歳くらいの男の子が……転んだ。痛々しく擦りむいた膝からは、タラっと血が流れている。だが、その男の子は、歯を食いしばり涙を見せずに自分で立ち上がった。そんな少年の様子に、思わずルーシィは声を掛けた。

 

「偉いじゃないっ。ぼく」

「……うん。僕お兄ちゃんだからっ」

「そっかぁ、お兄ちゃんは強いのね!!」

 

ルーシィが微笑みかけると、男の子は涙をのみ込んで、ニィっと笑って見せた。そんなかわいらしくも ちゃんとお兄ちゃんな男の子に、ルーシィは微笑んだまま濡らしたハンカチで、擦り剥いた膝を押さえてやった。

そして血が止まるまで、そのままハンカチをグルッと膝に巻いてやり、一緒にベンチに座っておしゃべりを楽しんだ。

 

そうこうしている内に、公園の入り口から男の子は名を呼ばれた様で、そこに立ち上がった。ベンチの上に立ち、公園の入り口にいる母親らしいお腹の大きな女性に『は~い』と手を振ると、改まってルーシィに振り向いた。ベンチから降り、ルーシィと目線を合わせて、ルーシィの手を取った。

 

「ねぇ、おねぇちゃん。……大きくなったら、僕と結婚してくれない?」

 

純粋な瞳がルーシィを見上げてくる。何とも衝撃的な、本日2度目のプロポーズだ。

一瞬思考が止まってしまったルーシィの視界に、眉毛を下げた男の子が笑いかけている。

ルーシィはにっこりと笑って、自分の手を掴むその小さな手にもう片方の手を添えて、そのままそっと握り込んだ。

 

「……僕が大きくなった時、僕がまだお姉ちゃんのことが好きで、お姉ちゃんがまだ一人だったら考えてあげてもいいよ?」

 

そう言うと、「わかった~!!」と少年は大きく手を振って帰っていった。

 

……ははっ…今日は…なんて日なのだろう……

 

笑顔で少年を見送り さてとそろそろ家に帰るかと、ベンチから腰を持ち上げるとルーシィの頭に影がかかった。

 

 

「……ここでなにしてんだよ?」

 

 丁度日が沈みかけていて、ルーシィの位置からは逆光でその表情は見えないが、ナツだ。声色だけでも、機嫌がよくないことが感じられる。もしかしてと思っていたわずかな期待も、その不機嫌な様子に、やっぱりそれはないんだなとルーシィは悟った。

 

  ……カナは、意中の人がって言ってたけど……

  ……結局は、話を盛られてからかわれただけなのかな。

  はぁ……いくらはっぱを掛けられても、やっぱりそれだけは無さそうだよ。

  ナツは……あたしの好きな人は、恋愛になんか興味ないんだから。

 

「……はぁ。なに? ナツ」

 

ルーシィが大きくため息をつくと、ブスッとした声が返ってくる。

 

「……んだよ? オレが来ちゃいけないのかよ」

「……そんなこと言ってないでしょ。……ただ、どうしたのかなって」

「ルーシィが……かっ買い物するって……」

「ああっ……ナツには珍しく、荷物持ちにでも来てくれたの?」

「……珍しいってなんだよっ」

「ん? ん~ん。さては、何か食べたいものがあるとか!?」

「あ? ん~……肉!!」

「……ホントあんたはそればっかりねっ」

 

いつの間にか、いつもの会話に戻っている。

 

  ナツって不思議だな。

 

どんなに怒っていたって、こっちが普通にしていれば、いつの間にか元に戻っているんだから。

 

 ……多分あたしもそうなのかな。

いくら頭にきていたって、ナツといると、いつの間にかそんなのどうでもよくなって……今ナツといることに楽しくなっているんだ。

 

 互いが互いを特別に思っているようだと、自分の思考にルーシィは頬を染めた。

 なんだか恥ずかしい。

 結局のところ、ナツが隣にいてくれると、しっくりくるのだ。

 

 何だかんだ言い合いをしながら、ナツとルーシィは並んで、公園を出た。それまでいつものように、ガハハと笑っていたナツ、先に歩き出したルーシィの背中に声と掛けた。その声にルーシィは、微笑みながらふり向いた。

 

「なぁルーシィ」

「ん?」

「あっあのさっ///」

 

「ルーシィさん!!!!」

 

 そこに、聞きなれない男の声がかかった。突如名を呼ばれたルーシィがそちらを向くと、そこには同世代とみられる青年の姿がある。その青年は体を硬直させ、緊張に汗を流している。背に何かを隠している。ルーシィの位置からは見えないだろうが、ナツの位置からはその影が見えた。……リボンのかかった花束の影。

 ルーシィが、「なんでしょうか?」と返事をしようとしたとき、強引につかまれた腕が引っ張られた。

 

「ちょっ!! ナツ~!?」

 

 ナツはルーシィの腕を掴んで、走り出した。ルーシィに声を掛けてきた男はポカンとした表情で、2人の背を見送ることとなっている。

 

 街道を抜けた。

 

 走っている間、何度もナツに抗議の声を上げたが、ナツは前を向き、無言のままだ。ルーシィがナツの走りについていけなくなってくると、彼女を肩に担ぎあげた。

 

 湖が見えてくる。

 

 それでもナツの走る勢いは、おさまらなかった。

 

「ナツ――!! なんなのよっ! お~ろ~し~て~!!」

「うしっ!!」

 

 “ばっちゃ――ん!!”

 

次の瞬間ルーシィは、湖に投げ入れられた。

 

「ぷはぁっ!! ……へ?」

 

 “ばちゃ~ん”

 

 続いてナツも湖に飛び込んだ。

キョトンとして小さく口を開けたままのルーシィ。その顔に影が差す。不意打にもほどがある。

 

「俺で我慢しとけっ!!」

「……え?」

 

 唇を掠めた暖かく柔らかい感触。そっと自分の唇を指でなぞった。

 

「だ~か~ら~!! 俺で、がまんしろって言ってんだ!!」

「……な…に……を?」

 

 ルーシィはナツの腕の中にいる。少し痛いくらい、ぎゅっと抱きしめられている。既にその顔は真っ赤に茹で上がって、パンク寸前の心臓をどうにか落ち着かせよう深呼吸を繰り返していた。

 

「んあ? そりゃぁ……バカ騒ぎすんのも、喧嘩すんのも、仲直りすんのも……あと手料理とか、風呂とか、そっ添い寝とか……楽しいことも、おもしれえことも、そうじゃないことも、ルーシィは全部オレと一緒だろ!!」

「……お風呂は一緒じゃないわよっ///」

「……むっ。……俺で我慢しとけよ。うっう運命のなんとかってやつだ!!」

 

 ルーシィの目の前にナツの真っ赤に染まった耳が見える。

 

  っていうか……キス、されたのよね?

  ……からかって、る?

  ……いたずらじゃ、ない?

  ねぇ……信じていいんだよね?

 

ナツの腕の中で、クスリとルーシィが優しく笑った。

 

「も~、しょうがないなぁ。ナツで……我慢してあげようかなっ///」

 

 ナツの腕の中から、両手を抜きマフラーの上からその首に抱き着いた。そして、ナツの行動に応えるように甲を描いたルーシィの唇がナツの頬に触れる。

 

「……で? なんで湖に落とす必要があるのかしらぁ!?」

「あ? ……プロポーズされるとか言われて、ルーシィが一日中浮かれた顔してっから、……冷やしてやろうと思ってだな」

「!? まさかずっとぉ!? 馬鹿!! ば~か!!! ナツのばか~!!!!」

 

 何よ何よ!!

 ギルドでは、何でもない顔して置いて、聞こえていないふりしていたって言うの!?

 一日中、あたしの後を……尾行していたの!?

 

 もう!! もう!! もう!!!

 

 マフラーの上からナツの首に回していた腕を、今度はその頬に触れさせた。にっこりとほほ笑みを作ると、目の前のナツはほんのり頬を染めた。頬に添えられたルーシィの白い手がその頬を撫でたかと思うと、両耳を思いっきり引っ張った。

 

「いってぇぇぇぇぇ!!!!」

「人を尾行していた罰!!」

 

 んべぇっと、ルーシィが可愛い舌を見せた。そして、悪戯っぽく笑う。

その表情は今までに見たことないくらい、綺麗で可愛かった。

 

Fin

 

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おまけ 

 

 

 

 ルーシィがギルドを後にした後、不貞腐れたような表情を浮かべていたナツは、カナに食って掛かっていた。 

 

「……なんだよっ。ルーシィにプロポーズって……」 

「ん? 言葉のまんまだよ。……あんた、プロポーズの意味わかるのかい?」 

 

 思った通り自分に食って掛かってきたナツに、内心ほくそ笑みながらカナは何食わぬ顔で、カウンターに酒の追加を頼んだ。 

 

「んなの知ってんぞ! 男がしゃがんで……え~っと……女の手の甲にチューするんだろっ」 

「うう~惜しいねっ」 

「フフフフッ。ナツ、プロポーズっていうのはね?」 

 

 カナに酒を届けに、カウンターからミラジェーンがやってきた。なんだか楽しそうに笑みを浮かべながら、ナツの目をじっと見つめる。 

 

「求婚するって事よ。結婚しましょうって申し込むことをプロポーズっていうのよ。フフフッ」 

「……結婚?」 

「そうよ」 

「ルーシィが?」 

「そうね。ルーシィがうんって言えば、そうなるわね」 

 

 ナツの目が点になってしまった。どうやら、結婚の意味位は解っているようだ。「結婚かぁ~女の子の夢よねぇ」とミラが言うと、「まあ、人にもよるけどねっ」とカナが応えている。その会話を、右から左へと聞き流しているようにナツは動きを止めてしまった。 

 

 結婚と言ってナツが思い浮かべたのは、いつも仲睦まじいアルザックとビスカの夫妻だ。 

 

「あらぁ……ナツ大丈夫?」 

「まぁ……そういう事だよ。ルーシィは今日、プロポーズされんのさっ。しかもそれは、運命の相手かもしれないって話だね」 

「なんでそんなの分るんだよっ。……運命ってなんだよ」 

 

 大口を開けて、唾を飛ばしながらナツが不貞腐れた様に向こうのテーブルにいるアルザックとビスカ、その娘のアスカを視界に入れた。アルザックとビスカは時折視線を絡め、幸せそうに愛娘が遊ぶ姿を見つめている。 

 

「運命って言うのは、人の意思を超えての巡り会わせだよ。ルーシィがその人と一緒になるって決まってるって事さっ」 

「はぁ? そんなの人に決められるもんじゃないだろっ!!」 

「……カードが言ってるのさっ。今日起こる事は、ルーシィの人生にとって一生のモノになるってなっ」 

「そんなん!! ……なんで、今日のやつがその……ルーシィの運命のなんかになんだよ。そんなんっ! ルーシィには、オレがいんだろっ!!」 

 

 

 漠然と思い描いていた近しい未来。 

 ビスカの隣にアルザックが要る様に、 

 ルーシィの隣には自分が、自分の隣にはルーシィがいると思っていた。 

 それが自然の形だと……。 

 ルーシィとハッピーと3人で、そしたらずっと楽しはずなんだ。 

 

「あらあらっ」 

「おお~言ったねぇ」 

 

 カナと、ミラジェーンは顔を見合わせている。 

 

 いつの間にか、己の中に存在する感情。 

 他の誰にも抱いたことのない感情。 

 幸せそうな笑顔を見たいのも、 

 隣に……一緒にいたいのも、 

 触れたいのも、 

 抱きしめたいのも、 

 全部相手はルーシィしか考えられない。 

 ましてや、ルーシィの隣に……俺じゃないやつが……? 

 

「ただ隣にいるあんたは、ただの仲間だろ?」 

「っ!!」 

「私はね、ルーシィにはたっぷり借りがあるんだ。あの子には幸せになってほしんだよ」 

「おっオレだって!!」 

「あんたは、頭の中までお子ちゃまなのかい?」 

 

 いきり立つナツ。 

 

カナはため息交じりに、ナツを見た。その脇で、ミラジェーンは、にっこりとほほ笑み目を細くしている。 

 

「……今日はやけに素直だな……でも……あんたの都合なんて知らないよ。今日はルーシィにとって、とってもいい日なんだ。今日決断したことは、ルーシィにとって一生物の価値があるんだよ。いい運が一気にルーシィにむいてくるはずだよ」 

「ねえナツ。……ルーシィの隣を誰にも渡したくないんなら、ナツが頑張ってみればいいんじゃない?」 

「……っ!!」 

 

 カナは、目の前に立つナツの鋭い視線に、正面からにやりと笑って返した。ミラが脇から優しい口調をはさむと「そこまで言ってやんなくっていいだろう」とカナが唇を突き出し、「だって可愛いじゃないっ」とミラが微笑みを返す。 

 

 ナツは目を見開き、言葉を失っっていた。やれやれと、カナがニヤつきながら、カードを一枚ひいた。 

 

「……ついでに今日はアンタも、いろいろ行動するのにいい運勢だね。ほらっ……頑張っといでっ!」 

「っ////// うるせぇ!!」 

 

 ナツは、そのままギルドを飛び出していた。カナたちにのせられたのは気に食わないが、それよりも、ルーシィに恋人だか何だかが出来んのは、もっと気に食わなかった。いつだってルーシィの隣にいるのは自分でなければ気持ち悪い。    

 それが、自分のどんな気持ちからくるのか、ナツは測り兼ねていた。 

 

 ……いや本当は解っている。ただ、認めるのが何か、気恥ずかしかったのだ。 

 

 常々一緒に行動することの多いルーシィという少女。 

 

 ふと思った。なぜ一緒に行動するんだろう? 少し考えてみれば理由は簡単だった。 

一緒が楽しくって、まとわりついているのは……自分だった。ルーシィはたまに嫌がったりもするが、基本的には何でも許容してくれる。どんな目にあったって、最後は自分に優しく笑いかけてくれるのだ。その笑顔を……他の者に……他の男には盗られたくはない。 

 

 それはなぜだ? 

 俺はなぜ……ルーシィの笑顔を他のやつに見せたくないんだろう? 

 他のやつと、何か違うんだ? 

 ……そうだ。笑顔を見せたくないだけじゃない。 

 俺が笑顔にしたいんだ。 

 俺が、ルーシィを笑わせたいんだ。 

 幸せそうに笑うルーシィは……最高に可愛いんだ。 

 

 

オレはずっと……ルーシィが好きなんだ。 

 

 

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