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2015年01月19日

シンデレラナツ

童話シンデレラのパロディです。シンデレラはナツ。掃除がルーシィ。それだけ決めて書きはじめましたw

 

 昔々、あるところに――

 

 シンデレラナツという、元気な少年が住んでいました。母親は物心ついたころからおらず、父と2人仲良く暮らしていました。そんなある日、父イグニールが失踪――。

残されたシンデレラナツは、御屋敷に1人寂しく暮らすことになりました。

 

 と思ったら、父イグニールは失踪前にシンデレラナツが1人さみしくない様に義理の兄弟を迎えていました。

 

 ――それから数年――

 

 シンデレラナツは、義兄妹たちと共に何とか家を守って暮らしています。シンデレラナツが、モップをもって床掃除をしていた時です。

 

「おいっ…火竜まだここが汚れてんだろっ。もっと腰いれた磨けってんだ!!」

「けっ……テメエでやりやがれってんだっ!!」

「なっ!? ふっざけんじゃねぇ! 今日の掃除当番はオメェえだろうがっ」

 

 ガジルお義兄さんが、シンデレラナツの胸ぐらを捻り上げました。其処へ、ツインテールにした青い髪を揺らし、義妹のウエンディが駆けよってきます。

 

「あわわわわっ!! お2人とも喧嘩していると、雷が落ちてしまいますよ~~!!」

 

 “ドッカーン!!”

 

「きゃっ」

 

 義妹で末っ子ウエンディが、2人のけんかを止めようとしたものの、それは一足遅く、一番上のラクサスお義兄さんが、2人に雷を落としました。そして、慌てていたため何もないところで躓いてしまったウエンディを、ラクサスお義兄さん離れた様に見事キャッチします。

 

「ナーツ! ガジル! 家中で喧嘩すんじゃねぇって何度も言ってんだろうがっ」

 

 喚く2人を一掃したところで、ラクサスお兄さんが、末っ子ウエンディに話しかけます。

 

「ウエンディ、王子の花嫁探しパーティーの招待状が来ているんだが……」

「えぇっ!! 私ですか……」

 

 ラクサス義兄さんに差し出された招待状を見つめて、末っ子ウエンディは顔を青くして固まってしまいました。ここは王政の王国、その城下町。お城からの招待を、断るわけにはいきません。でも、ここのところお城で開催されているパーティーは、王子の花嫁探しのパーティーなのです。王子は変わり者と言われていて、常に引きこもっていてその姿を世間にさらしてはいません。ウエンディはそんな正体の見えない王子を、気味悪く怖いと思っていました。

 その末っ子ウエンディの様子を見て、シンデレラナツが声を荒げます。

 

「ウエンディ、嫌がってんじゃねぇか!!」

「そうはいっても、王国からの招待状だ。招待状がきた者は全員出席しなきゃなんねぇだろっ」

「…そうだな。形だけでも参加しとかねぇと……兵士がココに押しかけてくるかもな……ギヒッ」

「……そっそうですよね……」

 

 どうしたものかと、困惑してしまう末っ子ウエンディ。

 

 ――わっわたし……

 ――そんな大勢の人が集まるところに……ひとりで行けるのでしょうか?

 ――うううううっ。

 ――こっこわい…

 

 ショボンと、してしまった末っ子ウエンディの脇で、ガジル兄さんがシンデレラナツを小突きます。

 

「っ!? いってぇな!!」

「フンッ」

 

 ガジル義兄さんはズボンのほこりを払って、立ち上がりました。

シンデレラナツは、ラクサス義兄さんを睨みつけながら、ガジル義兄さんに小突かれたところを摩ります。ラクサス義兄さんは、そんなシンデレラナツとガジル義兄さんを放置したまま、末っ子ウエンディの元へ行き、優しく頭を撫でます。

 

「行くだけ行って、目立たないようにして置くんだ……どうせ今回も、パーティーだけで終わりだ…」

「……はっは…い…」

 

 城で開かれる王子の花嫁探しのパーティーは――もう数回行われている。どうにも、王子が気に入る花嫁が見つからないらしい――。

 末っ子ウエンディが俯いてしまうと、シンデレラナツがラクサス義兄さんに喰って掛かります。

 

「ウエンディ! 気乗りしねぇのに行くこたぁねぇぞ!!」

「でっでも!!」

「テメェは相変わらず考え知らずだな!! うちだけ行かねぇ訳いくか!! ……それとも……お前が行くか?」

「……はぁ?」

「そうだな。ウエンディの為に、お前が行って来い! 間違っても結婚相手には選ばれないだろう。火竜なら」

「はぁ!?!?」

 

 ラクサス義兄さんが、思いもよらない発言をした。それにのっかって、ガジル義兄さんまで背中を押してくる。ラクサス義兄さんは、「くっくっくっ……逆にお前が惚れんなよっ」と小さく呟いた。

 

 しかし、少年でシルエットが細いとはいえシンデレラナツは男の子である。肩幅や骨格が邪魔をして似合うドレスがない。……義兄妹たちは、大きなため息とともに頭をかかえた。

 

 ――そこに丁度よく魔法使いの青猫が通りかかった――

 

「オイラ、ハッピーだよ!! お魚くれたら、何でもお願い叶えてあげるよ~!!」

 

 魔法使いハッピーは、シンデレラナツが女の子に見えるように魔法をかけてくれました。

 

「お魚3匹分だから、日付がかわる頃には変身解けちゃうからね~!! もぐもぐ」

 

 魔法使いハッピーは、お魚を頬張りながら闇にまぎれて見えなくなっていった。

 

 

 

 パーティー会場には、綺麗に着飾った年頃の女性たちが溢れています。シンデレラナツは、会場内をキョロキョロと見回しました。会場の隅には、豪勢な食事が並べられています。毎回こんな贅沢なパーティーを開催する王子を見つけたら、ぶん殴って ――いや、ひとこと文句を言ってやりたいとナツは握った拳から力を抜きました。

 

 ――やっべぇ

 ――暴れんなってラクサスに言われてたんだった……

 ――深呼吸でもしとくか……

 

 しかし、女たちの多さに比例するように、むせかえるような化粧の匂いと香水の匂い。鼻のいいシンデレラナツにとってそこは、地獄のよう場所でした。

もう限界だとナツは、鼻を押さえテラスまで避難することにしました。

 

 ――そこに、むせかえるような香水とは違い、花のような甘い自然な香りが漂ってきます。

 

 シンデレラナツが避難してきたテラスよりも奥の方からしてくるその香りにつられ、シンデレラナツは身を乗り出してその匂いの元を覗き込みました。

 

 ――そこには、着飾った金髪の人物が――

 

 シンデレラナツが、ジーっとその様子を見つめていると、引力に引かれる様にその金髪が振り返ります。

 

 ――夜風に攫われた金髪の隙間から、美しい顔が――

 

 バッチリと視線が絡み、シンデレラナツの心臓が早鐘を打ち鳴らしました。そこへ――、

 

「ルーシィ……王子。ここにいたんだね……気乗りはしないだろうけど、皆さん待っているよ」

 

 城の兵士らしき男の声はずいぶんと親しそうに、その金髪の人物に呼びかけている。何とそのいい香りを漂わせた金髪の人物こそこの城の――王子『ルーシィ』だったのだ。

 

 ――あいつが……

 ――王子なのか……?

 

 王子と言われた金髪の人物は、一瞬シンデレラナツへ視線を向けると、軽く会釈をして先程の声に従うようにし室内へと姿を消してしまいました。その姿を無言のまま見送り、シンデレラナツは唇をにゅっと突き出し、そのまま首をかしげました。何かが、シンデレラナツの心を鷲掴みにしています。そして、――湧き上がる違和感を感じでいました。

 

 暫くして渋々といった様子で、パーティー会場にルーシィ王子が登場しました。先ほど風に揺れていたきれいな金糸は、項で一つに縛られ白いリボンがかけられています。レースやリボンを身に着けていても何ら違和感のない、きっとイケメンと称される線の細い印象を受けるルーシィ王子様。

 ルーシィ王子の登場に、パーティー会場は騒めき立ちます。きれいな格好をし先程まで、談笑していた者や、退屈そうにしていた女達が、目の色を替えて変わるがわるルーシィ王子に話しかけています。

 

 シンデレラナツの鼻を、先ほどのやさしく甘い匂いが霞めます。その匂いを追えば、つまらなそうに席に座るルーシィ王子の姿が目につきます。そしてその後ろから、ピンク色の髪のメイドが何やら耳打ちしています。そして、何度目になるかわからない――溜息です。

 

 それでもパーティーは進み、つまらなそうにしていたルーシィ王子が中座すると、シンデレラナツはいてもたっても居られず、その後を追いかけました。そして追いついたかを思うと、うんざりした様に、つまらなそうにしていたルーシィ王子の手を引きました。突然の事に目を見開いたルーシィ王子が、シンデレラナツに振り返りました。

 

「なっ何を!!」

「お前、さっきからずっとつまらなそうにしてっから!!」

「……はぁ?」

「つーか、お前ホントに王子かぁ?」

「!?!!?!?!?」

 

ルーシィ王子の様子なんて構うものかと、シンデレラナツはつないだ手を引いて走り出します。驚く兵士や使用人たちを振り切りシンデレラナツは、城の外にルーシィ王子を連れ出してしまいました。

 

「くそっ……走りづれぇ」

 

 シンデレラナツは、履いていたガラスのヒールを階段の途中で脱ぎ捨てました。そして、足をもつれさせるルーシィ王子に肩を貸します。何が何だか、わからないままルーシィ王子はポケットに忍ばせた星霊の鍵を握りしめたいました。

 

 ――落ち着いてルーシィ

 ――動揺して、弱みを見せちゃだめっ

 ――この人……悪い人に感じられないし

 ――きっと大丈夫……

 

 ――――だって、鍵の先でみんなが平気だって言ってる

 

 王子ルーシィはシンデレラナツに引っ張られ、城の敷地内の広い庭に出ました。きれいにめかしこんだ、桜髪の少女が靴を脱ぎ捨て全力で走り、草原に無造作に寝転んで息を整えています。その様子に、ルーシィ王子はクスリと笑みを漏らしました。

 

「ハハハッ。あなたって変な人だね!!」

 

 そしてルーシィ王子も、何か吹っ切れたようにシンデレラナツの隣に寝転がしました。ルーシィの笑顔に、シンデレラナツの顔にも笑顔が咲きます。

 

「ナツ。オレ、ナツってんだ!!」

「オッオレ!?」

「んぁ? ああ。今はドレス着てっけど、俺は男だぞ。今日は、義妹の代わりに来たんだ。……ルーシィも、そんなん着てるけど、本当は女だろ?」

 

 シンデレラナツの発言に、ルーシィ王子は言葉を失い、目を見開いたまま固まってしまいました。確かにルーシィは、王子ではありません。この王国の王子は、数年前に失踪したルーシィの兄で、ルーシィはその代わりを務めているだけの――本来は、お姫様なのです。

 

「なっなっなっなんで!?」

「あぁ。おれ……鼻いいから、お前から女の匂いするし///」

「……へぇ。なんかすごいっ!!」

 

 ルーシィが王子ではないという事は、決してばれてはいけないことなのですが、なぜかシンデレラナツがこの事実を言い当てたことが、ルーシィには嬉しくてたまりません。それに、シンデレラナツは、このことを言い触らしたりしないという確信がありました。

 

 ナツの説明に、本心から感心したように頷くと、ルーシィ王子はにっこりと笑いました。その笑顔はナツの心を掴みます。先ほどの作り笑顔とは違い、何とも魅力のある女の子らしい笑みです。

 

 2人は、束の間――日々の面白かった事や、楽しかったことを話して心を通わせます。あっという間に時間は過ぎていきます。そろそろ、パーティーの終わる時間です。

 

 

 

『ルーシィ王子~!!』

『ルーーーシィ王子~!!!!』

 

 数人の声がします。どうやら城の兵士が、ルーシィ王子を探しているようです。そろそろ、花嫁探しのパーティがお開きになる時刻なのでしょう。

 

“ゴーン ゴーン ゴーン ……”

 

 兵士たちの声に混じって、日付の変わる鐘の音が鳴り響いてきました。

その鐘の音がなり終わると、シンデレラナツに掛かっていた魔法が解けてしまいます。

 

“ボフンッ”

 

 ナツの身体から、白い煙がはじけました。

 

「のわっ!!」

「きゃっ!!」

 

 煙が退いたそこには、可愛いドレスに似合わない肩幅と筋肉。ツンツンの桜頭にぶら下がる髪飾りが風に揺れる姿。

 

「ぷふっ…ははっ……あっはははははははははっ」

 

 ルーシィ王子が、大口を開け笑い声をあげました。その様子に、シンデレラナツの顔もほころびます。

 

 ――笑ってる顔は――

 

『ルーシィ王子―――――!!!』

『るーーーーーしーーーーぃーーーー王子――――!!』

 

 段々と兵士たちの声が、近づいてきます。

 

「えっとナツ? ……その姿じゃ、捕まっちゃうわ! はやく行って!!」

 

 慌てたルーシィ王子が、シンデレラナツの背中を押しました。背を押されながらナツは首だけでルーシィに振り向きました。

 

「……なぁ、ルーシィの部屋ってどこだ?」

「ん? ……右の棟だよ……ほらっ、あの水色のカーテンの……」

「ふ~ん。じゃぁ、俺んちも見えるところだなっ。ほらあの泉の先の」

「!? あの赤い?」

「そうそう。それそれ!!」

 

 指さす方に顔を近づけると、すぐそばにシンデレラナツの顔も近づいてきます。今までにない、顔の距離に戸惑いながらもルーシィ王子は、シンデレラナツの背を押す力が緩みます。互いに無意識の中、離れがたいのかもしれません。

 

『ルーーーーシーーーーィーーーさーーーまーーー!!!!』

 

「ほらっ、捕まっちゃうっ!! 速くっ」

「……ちぇっ…とりあえず帰るわ。……はぁ…12時過ぎちまったからラクサスに怒られっかな……」

「……へ?」

「12時までには帰れって言われてたんだっ……じゃ~なっ」

 

 

 ルーシィ王子に背中を押され、桜頭は走り出しました。すぐに闇に紛れてその背中は見えなくなります。ルーシィ王子はそれに合わせて、兵士たちの元へ歩き出しました。

 

 

 その後、兵士たちを宥め、国の重鎮たちのお説教を聞いてルーシィ王子が自室に戻ってきたのは、日が昇り始めた頃だった。パーティーの衣装を脱ぎ捨てルーシィ王子はベットに身を預けました。

 

 すると、その華奢な体が暖かいものに包み込まれます。

 

「ひぃやわわわっ!!」

「よっ!!」

 

 そこには、笑顔で片手を上げるシンデレラナツがいます。昨晩のドレス姿ではなく、白い鱗のようなマフラーを巻いて男の姿のナツです。――そして頭には大きなたんこぶが出来ています。

 

 それから、シンデレラナツの不法侵入は毎日のように続きました。その度に城の外の話を、面白おかしくしてくれます。そして、2人の密会の日々が続くように思われました――が、ある日、シンデレラナツは、城に忍び込むとき騎士の一人に見つかってしまったのです。いつもであれば、逃げ出せばナツの走りについてこれるものはいないのですが、その赤い髪の騎士は、ものすごい形相でナツを追い詰め、あっさりと捕まえてしまいました。

 

「おい。……お前は、ドラゴン一家のシンデレラナツではないか!!」

「げっ。エルザじゃねえか……」

「お前はこんなところで何をしているんだ?」

「オレは、ルーシィに会いに……」

 

 シンデレラナツは、騎士エルザに説明しました。毎日ルーシィ王子の部屋に訪れ、そこで城の外の話を聞かせてやっているのだと。ルーシィ王子は、目を輝かせて聞いてくれると訴えました。

 

 ――きっとあいつ、寂しいんだ。

 ――俺が行かなきゃ、ホントの……。

 

 兵士エルザは困ってしまった。

 ルーシィ王子は、この国の宝です。数年前に王様に感動されてしまった兄王子はたくましくあったが、ルーシィ王子はか細く繊細だったため、大事に大事に城の中で育てられ、王子の近くに寄れるものは、城の中でも限られていました。以前は部屋のテラスで1人、ルーシィ王子は寂しそうに遠くの空を見つめておられたのでした。

 

 ここのところ、部屋に閉じこもりがちだと噂は流れてきていましたが、公務の際のルーシィ王子の表情は明るく毎日が充実しているようにも、騎士エルザの目には映っていました。

 

「……ナツ。私は見なかった。私は……ここにいなかった。」

「あ?」

「……ルーシィ王子の為だ。悪さはするなよ……わかったなっ」

「っ!! サンキュッ!! エルザ!!」

 

 シンデレラナツは、城の影に入り込み、素早く走り去って行きました。少しでも早く、ルーシィの元へと――。

 

「……私は」

 

 騎士エルザは、一人考えていました。本当に良かったのかと――。その後ろから、仲間の騎士が声を掛けます。

 

「エルザ。……いいのか?」

「ああ。少しくらい……いいだろ? もうすぐルーシィ王子も妃を娶って、王となられるのだ」

「……そうなりゃ、自由な時間も無くなる……かっ」

「ああ。それに、シンデレラナツは……私達の昔馴染みだ。悪い奴ではない」

「……まぁ、オレとはそりは会わねぇが……ルーシィ王子の気を紛らわせてくれんなら、しょうがねぇな」

「……それよりグレイ」

「あん?」

「鎧はどうした? 裸になるなと、何度も言っているだろう!!」

「うおっ!! いつの間に!!」

 

 

 

 

***

 

 

 兵士のエルザとグレイを味方につけたことにより、シンデレラナツは、1つの提案をしました。

 

「ルーシィ。外行こうぜ」

「へ?」

「街、行ってみたいって言ってたろ?」

「そりゃあ…」

 

 しょぼんと、ルーシィ王子は床に視線を落としてしまいました。ギュっと服の裾を握っています。この部屋に通うようになってずいぶん経ちますが、シンデレラナツは、ルーシィ王子が城外に出たところを見たことがありませんでした。ルーシィ王子は、何かと城外で起きた事に興味津々で、話を聞いてくるのに――自らは足を運ぼうとはしないのです。

 

 そして、シンデレラナツはルーシィ王子の癖をひとつ覚えていました。服の裾をぎゅっと握りしめるのです。――辛い時、何かを諦めようとしている時の彼女の癖なのです。

 

「いいじゃねぇかっ。見つかんねぇように出て、見つかんねぇように帰ってくれば、大丈夫だってっ」

「ううっ……でもぉ…」

 

そこへ、ピンク色の髪のルーシィ付きのメイドが、紅茶をもってやってきました。

 

「ルーシィ様。……いっそ姫になられたら…いかがでしょうか?」

 

 普段からにこりともしないこのメイドは、シンデレラナツがルーシィ王子の部屋に忍び込んだ初日からの付き合あいである。無表情であるが、何かとルーシィやナツに協力的なのです。

 

 普通にナツをルーシィ王子の友人として扱い、紅茶やお茶菓子まで用意してくれるのでした。部屋付という事もあって、ルーシィが本当は王子ではなく姫であることも承知しています。

 

「バルゴ!? なにをいうのっ」

「姫になられれば、ばれることもないかと思います。……何かいけませんでしたか?」

「おおっ!! それいいなっ。ルーシィのその格好、変だしなっ! それに、女装見てみてぇ」

「えっえっえっ。ってか、女装って……」

 

   変じゃないもん……と、ほほを膨らますルーシィ王子の前に、湯気のたつティーカップが置かれました。

 

「では、街の娘が着るようなお洋服を、仕入れておきましょう」

「うっしっ。じゃぁ、オレはエルザに協力してくれるよう頼んでみるかなっ」

「……ホントに?」

「ああ。……んだよ? やのか??」

「やじゃない!! 行きたい!!」

 

 ルーシィ王子は、喜びのあまりシンデレラナツの首に飛びつきました。いくら男装をしていても、線の細く、柔らかい女性らしいスタイルがナツの腕にすっぽりと、おさまってしまいます。

 

「おっ」

「ありがとうナツ!! ありがとうバルゴ!!」

「おまっ……そんなん、無事抜け出してからだろっ」

 

 ルーシィ王子は目に涙を浮かべて喜んでいます。憧れの城の外です。本当は、ずっと訪れてみたかったのです。何度も何度も、城下町を歩く自分を想像していましたし、頭の中でいろんな妄想もしました。

 

 でも、ルーシィ王子には、許されないことでした。ましてや今は、ルーシィの父でこの王国の王は、世界中を飛び回る忙しい人で、滅多に城に帰ってきません。この城にいる王族は、ルーシィ王子の他は、既に引退した先代の王が城の奥で隠居生活を送っているだけなのです。そう。ルーシィ王子は、この王国の象徴のようなもので、その身に何かあってはならないのです。休みの日ですら――自由はないのです。

 

 ましてや、ルーシィ王子には人には言えない秘密があります。もし予想もしないことがおこり、人目に触れ、自分が本当は男ではない――この国に王子がいないという事が、バレてしまったらと思うと――。

 

 それだけは避けねばならないと、きつく父王に言いつけられていました。そう抑圧されて育ったルーシィ王子は、外交の際ですらその足を震わせることもしばしばで、姿を変えられる友人に頼んだりすることもありました。ただ、影武者にしろ――女であることがばれたら大惨事なのです。その内、代理を頼む事も無くなり、ルーシィ王子は引きこもりの王子としても有名になっていったのでした。

 

 ですが、今回はそれがかえって都合がよさそうです。ルーシィ王子としての姿は、近年では花嫁探しのパーティ会場での暗がりでしか、知るものが居ないのですから――。その上、男ではなく女性の格好であれば、女であることがばれるとか、ばれないとかではないのです。

ルーシィ王子の胸は、期待に膨らみました。

 

 

*

 当日。

 

 ルーシィ王子は、影武者を頼むため、古い友人を呼び出しました。メイドのバルゴとも顔馴染みです。

 

 その双子の小さな友達は、2人で力を合わすことでその姿や思考をコピーできるのです。彼らはすぐに、王子姿のルーシィをコピーしてくれました。今日の仕事のことや、振舞いの確認をしながら――さぁ、ルーシィ王子の変身が始まります。

 

 バルゴの用意してくれた洋服の中から、好みの服を自分に合わせながら姿見に頭から足の先まで映しました。代わる代わる服を組み合わせて、少し悩んだ後、ルーシィは気に入った服を身に着けてみました。それから、化粧台の前に座ると一つに後ろに縛っていた、金糸をほどき櫛を入れました。

 

「姫……せっかくですから、キャンサーを呼びましょうか?」

「ん~ん。……自分で、やってみたいんだっ」

 

 鏡の中の自分の後ろに映り込んできたバルゴに笑みを返すと、ルーシィは器用に金髪をハーフアップにしサイドで可愛らしく束ねました。すると、後ろからバルゴがそこにリボンを巻いてくれました。ルーシィは嬉しそうに、はにかみます。

仕上げは、昔 母がのこしてくれたネックレスと、先日ナツがくれたハートのピアスを耳に――。

 

「ねっ。バルゴっ! ジェミニっ!! ……どっ、とうかな?」

 

 嬉しそうに頬を染めルーシィは、その場でくるりと回って見せました。短いスカートがピラリと揺れます。

 

「よくお似合いですよ……姫」

「さっすが、あたしねっ」

「ちょっ!! ジェミニあたしじゃダメよ……もっと男っぽく……ねぇ、本当に大丈夫なの?」

 

 ルーシィの顔に影が差しました。やはり、こんなことはいけないのだと思っているのかもしれません。ギュっと服の裾を、握りしめようとした時です。

 

「大丈夫だよ。ルーシィ。今日の公務は、僕が補佐につくからねっ」

 

 隣の部屋に待たしていた青い色つきの眼鏡をかけたスーツの男が、いつの間にかそこにいて爽やかに微笑んでいます。

 

「ロキ……いつから、そこに? ……最低ねっ」

「やぁ。ルーシィ! そのミニスカートは、ルーシィのために作られたかのようだねっ。ルーシィの綺麗な足に……よく似合うよっ」

「…ロキお兄ちゃん…ごまかしてもダメです……覗きは、犯罪でね」

 

 ルーシィと、バルゴから冷ややかな視線をむけられ、ロキは、タラリと嫌な汗を流しました。その様子に、ルーシィの口からクスリと小さな笑いが洩れます。

 

「……ロキ。……今日は、ありがとねっ!! 」

「まだ始まってもいないよ。ルーシィ、楽しんでおいでっ」

「うんっ」

 

 自分のわがままの為に、集まって協力してくれる家族の様な仲間が、ルーシィの心を優しくしてくれます。彼等は皆――母からの贈り物です。ルーシィの母レイラは、王様の2番目のお妃様でした。前のお妃様は難産の末亡くなり、その後釜として王宮に迎えられたのです。この王国の貴族だったレイラは、屋敷に沢山の魔導士を雇っていました。が、自分の他に兄弟のいないレイラは、自分が嫁入りした後彼らを託す当てがありませんでした。

 

 レイラは、彼らの身をあんじ嫁入りを渋りました。この王国はまだましな方ですが、世界の魔導士たちは圧倒的に数が少なく、気味悪がられ迫害を受けていたからです。幼い子などは、さらわれ見世物として売られてしまう事もあったのです。それでも嫁入りを迫る王様に、レイラは嫁入りの条件としてその魔導士たちを従者として、城に連れていくことを承諾させたのでした。

 

 年月が経ち、その魔導士たちは城で役割を与えられ、ルーシィの成長を見守ってくれています。――その従者たちが、バルゴやロキ、ジェミニたちなのです。

 

 可愛らしい町娘に姿を変えたルーシィは、迎えに来てくれた騎士エルザとグレイと共に、城から抜け出します。門番の兵士は、普段着姿のルーシィを目に止めるものの、自分の守るべき王子様とはちっとも気が尽きません。ましてや、騎士のエルザ等と共に居るため、勝手に騎士見習いか何かと、勘違いしてくれました。

 

 初めの計画では、シンデレラナツの侵入経路からの脱出はどうかと考えたのですが、その侵入経路は、ルーシィにはとてもじゃないけれど、真似できるものではありませんでした。まさか、調理場や暖炉の排気をまとめた煙突から入り、配管を抜けてきてるとは――。熱に強いと言っても、調理場付近などは特に――普通の人間では通ってはこれない事でしょう。

 

 ――だからいつも灰被りだったのかと、ルーシィはクスリと笑いました。とまぁ――そんな人間離れした経路をルーシィ王子が通れるはずもなく、騎士のエルザを頼ることにしたのです。

 

 城門にたどり着くまでに、エルザは いろいろな話をしてくれました。街の様子や、幼い頃のナツの話です。どうやらエルザやグレイは、ナツの幼馴染のようです。そして、グレイがどんどん薄着になっていくことに、首を傾げながらルーシィは、エルザの先導に楽しそうについていきました。門番に見咎められなかったため、すこし安心したようです。

 

 

 

城門を過ぎると、商店街の入り口のアーチに寄りかかる桜色がふわりと揺れて見えてきました。それを目にたルーシィ王子――もとい、町娘のルーシィは片手を上げながら、駆け寄っていきました。

 

「ルー……ルイージ!!」

「なっ!! ルイージって何ぃ!? 今日は、シンデレラ(灰被り)じゃないのねっ」

「おうっ。まんま呼んでいいのか迷ってよ……それに、何処かに刺客が潜んでっかもしんねえしな」

「はぁっ?」

 

駆け寄ってきたルーシィに片手をあげたナツは、ワザとらしくキョロキョロと辺りを見渡しました。そこに凛々しい声と、あきれた声が降ってきます。

 

「馬鹿者っ!! 私がいて、刺客……だとぉぉぉぉぉぉぉ!! どこだっ!! 生かしておくものかっ!!」

 

エルザの目の奥が、ギラリと光りました。

 

「こえーよ。エルザっ! つーか、いねーし!! 姫さんが怯えちまうだろうがっ……それでなくてもこの馬鹿が、姫さんに悪影響だってのに……ふぅ」

「おいっ…何冷静に突っ込んでんだよ。変態パンツ。……変態の方が、ルーシィに悪影響だろっ」

「……うおっ」

 

道中、だんだんと薄着になっていくなと思ってはいましたが、――上半身裸になり、ズボンを脱ぎ捨て、最後の1枚に手をかけたところで、ナツがルーシィを背に庇ったのでした。そしてグレイは、変態と言われ、ハタと自分の姿を確認し、慌てて脱ぎ散らかした服を広い集めます。その様子に、呆れるナツと、目の奥を光らせるエルザを見て、ルーシィがケタケタと笑いだしました。

 

「アハハハハッ……どこでも裸になる方って……グレイの事なのねっ!! フフフッ。今は、あたしの事、ルーシィって呼んで?」

「うっ……すまん」

「……おう…いや…ルーシィのところまで、噂が流れているのですか?」

「うーん……噂って言うか、ロキがね……色々教えてくれるのっ」

 

その話が面白くって! と、語るルーシィは、年頃の娘らしく明るい笑顔を浮かべました。

 

「くっ……ロキのやろう……」

「ロキとは……あの?」

「うん……母様が、残してくれた……あたしの…ただのルーシィの家族よ…」

 

ルーシィの母レイラは、ルーシィが小さい頃に他界しています。レイラは、生まれつき体が強くはなく――ルーシィを産んだ後、病に臥せってしまってしまいました。――この城に暮らす王族の女性は、偶然にも短命のものが多いのです。それは血ではなく、王族に嫁入りしたものも――すべてなのです。王さまの1番目の妃も、若いうちになくなっています。――これまでに産まれた姫たちも、皆短命でした。

 

 その為、ルーシィは王子として育てられ、父王はこの城に何かの呪いがかかっているのではないのかと、ルーシィには内緒で世界中を飛び回り、その原因を探しているのです。それを知らないルーシィは、自分に関心のない忙しい父王様よりも、ルーシィにとっては家族のような存在なのです。

 

「ロキ達がいなかったら……」

 

ルーシィの呟きが、ナツの耳に届きました。ルーシィの部屋に訪れる度に、ロキや、バルゴの話をルーシィの口から聞かされていました。彼らがルーシィにとって大事な存在なのだと、ナツは充分に理解していました。きっと、ルーシィがこんなにも真っ直ぐに素直に育つことが出来たのは彼らのお陰なのでしょう。――が、なんだか面白くありません。

 

「ルーシィ早くいこうぜっ」

「あっうん」

 

 見せたい悪戯グッツが出たんだっ!と言いながら、ナツはルーシィの1歩前を歩きはじめます。その背中を、ルーシィは慌てて追いかけます。

 

「ナツ!! くれぐれも……頼んだぞ!!」

「わーってるっての」

 

「おい単細胞バカっ!」

「……あっ?」

「……姫さんを、頼むぞ」

「……まかせとけってっ」

 

騎士のエルザとグレイは、目立ちすぎるので一緒には行けません。ルーシィと二人きり――ナツはご機嫌に町並みを、進んでいきました。

 

改めて見ると、町娘姿のルーシィは――なんだかむず痒く感じます。それにどうにも、視線を集めてしまうようです。特に男性の目は、歩く度に揺れる2つの膨らみや、下着が見えそうな短さのミニスカート、ニーハイのからの絶対領域の白い太腿に集まっています。

 

――こんなに乳揺らして、重くねえのか?

――あんま飛び跳ねっと、パンツ見えちまうんじゃねぇのか?

――んあ? ルーシィっておとこもの穿いてんのか?

――それとも……女もんのパンツ穿いてんのか?

 

ナツも例外ではなく、意味は違えど2つの膨らみに目を奪われ、微妙な妄想をしているとと――、

 

「わぁぁぁぁっ 人が沢山!! お店もいっぱいだわぁ」

 

ルーシィが、キラキラと目を輝かせ満面の笑みで振り返りました。サイドのハーフアップに結い上げられたきれいな金糸が、陽の光を反射して揺れ、その間から真っ赤なハートのピアスがチラリと見えます。

 

町に繰り出すことを決めてから、ルーシィはバルゴが用意してくれた雑誌を、何度も何度も眺めては、あれが可愛いだ、これを着てみたいだと目を輝かせていました。ある日、ナツが何気なく街をぶらついていた時、ルーシィが雑誌を開きながら可愛い可愛いと騒いでいたそれが売っていたのです。「数量限定だから、アタシが行く頃にはもうないわよね……」そう俯いたルーシィの顔が浮かび、これを手にした時どんな顔を見せてくれるのかと、ついつい買っていたのでした。

 

 何でもないことのはずが、なぜか店員が勝手に包んでリボンまでしたくれたそれを、渡すのが気恥ずかしく、柄にもなく緊張したのをナツは思い出します。そして、今みたいに目の前でルーシィは弾けるような笑顔を見せたくれたのです。

 

それは――今のルーシィにとてもよく似合っています。バルゴが用意した服装は、だいぶ露出が高く派手で、人目を引くものですが、ルーシィにとてもよく似合っています。そして、その可愛らしい少女は目を輝かせ、ナツの隣で飛び跳ねて無邪気に、喜んでいます。

 

「ったく、少し落ち着けよ……迷子になっちまうぞ~」

「あっ……うん。ごめんね楽しくって…」

「……ったく、しゃーねーなっ」

 

ナツの言葉を受けて、一瞬表情を曇らせたルーシィの前に、ナツの手を差し出しました。それにルーシィはにっこりとほほ笑むとその手に、そっと自分の手を添えました。

 

「へへっ。ロキが言ってた通りねっ! これではぐれないですむんでしょっ?」

「ぬぐぅ///」

 

ルーシィのまぶしい笑顔に、ナツの胸がたかなります。そこへ大通りに並んでいる露店の店主が声を開けてきました。

 

「ようナツっ!! ダレだそのかわい子ちゃんは!?」

「あ? ルーシィだぞ」

 

なんの躊躇いもなくナツは、ルーシィの名を告げました。自分でルーシィと呼んでと言ったものの、ルーシィの表情がこわばります。

 

「へぇ…お城の王子さまと一緒かっ。縁起がいいねぇ~」

「おういいだろっ」

「あっありがとうございます」

 

「ナツのツレにしちゃぁ、礼儀正しいんだな? どこの子なんだ?」

「あ~? どこでもいいだろっ。別に」

「あっえっと……」

 

そこに、店の奥から1人の少年が荷物を持って出てきました。

 

「あっ。エルザ姉とお城から出てきたお姉さんじゃんっ。ナツ兄の彼女だったんだっ」

「へっ?」

「……おうっ」

「かっ///」

「なんだお城勤めなのか~、じゃぁこの辺で見ないはずだな。しっかし可愛いな~」

 

ルーシィに見惚れる店主・マカオと、その息子のロメオは、父子2人で店を切り盛りしていて、ナツの説明によると顔なじみでらしい。

 

――って、彼女って///

 

「へぇぇ、本当にナツ兄の彼女なんだ……」

「ふえっ///」

「あん?俺の彼女じゃ、なんか変か?」

「そんなことないけど……ナツ兄に彼女って……しかも美人……びっくりした」

「まぁ、そういうこった。んじゃなっ」

 

 ただただ、真っ赤になってその場を耐えていたルーシィは、もう限界だと繋がれたままのナツの手をギュっと握りしめました。その場を後にし、ナツに連れられ歩くルーシィ。「……彼女って///」

と頬を染めるルーシィに、ナツは「その方が都合いいじゃねぇかっ!」と言って笑い、「なんだかむず痒いわねっ///」とルーシィも微笑み返しました。そして、面白そうな露店があれば覗いて歩き、いい臭いが漂ってくれぱ、ナツの腹の虫が鳴り、2人の間には 笑顔が溢れていました。

 

そして――あっという間に、時間は過ぎていきます。

 

商店街を一周して街の公園に出ると、目の前に大きな『BOOK』という看板が見えました。どうやら、“Book Cafe”という店で、図書館が付いた喫茶店のようです。ルーシィが「行ってみたいっ」と強請って、その図書館の様なカフェで少しの間 過ごすことにしました。

 

図書を見て回り、目ぼしい本をもってくるとルーシィ達は、ひとまず席に着きました。ルーシィは、一心不乱にザーっと持ってきた本をめくります。何冊か気に入った本をメモして、ナツに振り返りました。座ってからほんの10分くらい経った頃です――あっという間に 注文した軽食を平らげたナツは、既に暇を持て余しうずうずと体を揺らしています。その様子にクスリと笑みを洩らしたルーシィは、そっとナツに囁きました。

 

「ナツは、本 嫌いなの? 飽きちゃった?」

「あ? 嫌いつーか、興味がねえ。 ただ座ってんのも、暇だしなっ」

「ふふふ。でも付き合ってくれるのよね」

「っ……まぁなっ……ルーシィ、好きだもんなっ本」

 

椅子をキイキイと鳴らしながら、ナツも音量を押さえてルーシィの耳元でささやきます。喫茶店なのですが、皆 本を読んでいる為シーンと静まり返っているので、ルーシィとナツの声が静かに響きます。

 

「……ありがと……じゃあ、次行こっか!」

「おうっ!!」

 

ナツとルーシィは、勢いよく立ち上がりました。せっかくの外出です。それに……今は、ナツが一緒なのです。勿体ありません。すると、あまりの勢いに本に目を落としていた近くの人たちから注目を浴びてしまいました。中には眉間に眉を寄せている人もいます。慌てて「すみませんでしたっ」と頭を下げ、ルーシィは持ってきていた本を返しに行きました。持ちきれない本は、ナツが運んでくれます。

 

喫茶店を逃げるように出てきて、ルーシィは笑いが込み上げてきました。何をやっても、楽しくて仕方ありません。そのまま公園の中を散策しようかと、1歩足を出したときです。――話し声が耳に入ってきました。

 

『そういや~よ、城の王子さんの事聞いたか?』

『あぁ。だって大ニュースだろ? すっごい勢いで話が広がってるよなっ』

 

 何やら真剣な様子で、2人組の男が話しながら歩いてきます。――城の王子――という単語に。ビクリと肩を振らしルーシィは、ナツの腕にしがみつきました。ナツはちょうど前からくる男たちに声を掛けました。

 

「何の話だ?」

「おぉナツっ……誰だそのかわい子ちゃんっ!!」

「ナツが女連れだとぉ……」

 

 ナツの腕に巻き付いた少女を目に、2人の男はがっくりと肩を落としました。そして、大きなため息をついています。――どうやら、またも知り合いのようです。男の2人連れは、その場で崩れ落ち、拳で地面を叩き、涙まで流しています。

 

「おいっ。ウォーレン!! マックス!! 教えろよっ!!」

「はぁぁぁ。お嬢さん、騒がしいだけのナツの……何がいいんですか?」

「可愛いお嬢さん。ナツよりも……」

「……お嬢さんって……顔を上げてください。あたし、ルーシィです。……城で、何かあったんですか?」

 

Anchor 2

 

 ルーシィの言葉に、顔を上げ立ち上がった2人が説明してくれました。

 

「聞いて驚くなよ、ナツっ」

「なんと……お城の王子さんが、倒れて面会謝絶らしいんだっ」

「……へっ??」

「んな訳っ……」

 

おもわず声を荒げてしまったナツを制して、ルーシィは険しい表情で話をしてくれているマックスとウォーレンをまっすぐと見つめます。

 

「お願いします。詳しく、聞かせていただけませんか?」

 

 ルーシィの視線に背筋を伸ばしたマックスとウォーレンが、聞いた話なんだがなっと、語ってくれました。

 

「城に納品に行ってきたやつの話しなんだけどな、城の中庭で王子様と太っちょ大臣をみかけたらしくってな、気分の優れなそうな王子様の背中を、その大臣が摩ってやろうとしたようなんだと。そしたら王子様がな、異常なまでにその手を払いのけて、椅子から転がり落ちたらしいんだ。すぐにお付きのメイドと、サポート役の兄ちゃんが王子を抱えて部屋に連れて行ったっきり、部屋から出てこないんだと」

 

「しかもな。お付きの奴らは『何でもない』って言ってるらしいんだがな、王子さんは女の子みたいに線が細いらしいし? あのデブで気色の悪いサワル―大臣が、手籠めにでもしようとしてセクハラしたんじゃねぇかって、それで、王子様はショックで寝込んじまったんじゃねぇかって噂なんだよ」

 

「しっかし許せねぇよなぁ~。大臣の野郎。王子様がひきこもり気味って、あの大臣のせいなんじゃねぇのか?」

 

説明しつつも、2人は大臣の噂話を始めてしまいました。ルーシィは顔を青くしたまま声を絞り出します。

 

「……そう、なんですか…あのっ……お話……ありがとうございます…」

 

か細い声でルーシィは礼をのべると、ナツの腕に巻き付けている手に力を込めなした。その体は小刻みに震えています。

 

 

 太っちょ大臣こと、サワル―大臣は街で噂になっている通り、少々癖のあるいやらしい人物なのです。幼いころから執拗にルーシィ王子の身体と触ろうとしてきたり、いやらしい視線で、まるで透視でもするかのごとく全身を舐めるように見つめてくることもあります。以前じっとりと生ぬるく汗ばんだ手で、突然手を握られた時は気を失ってしまいそうなほどの、めまいと吐き気、そして悪寒が背筋を走ったこともありました。少し思い出すだけで、体が自然と震えてきてしまいます。

 

 ナツはルーシィの震える手を包み込む様に、空いている暖かい手をそこに重ねました。ルーシィの苦しそうな怯えた様子に、マックスとウォーレンも顔を覗き込もうとします。

 

「大丈夫か? ルーシィちゃんだっけ?」

「まぁ……気持ちのいい話じゃねぇもんなぁ」

 

「……サワル―が来るなんて…どうしようジェミニ達がっ「おう。話ありがとなっ……じぁなっ」

 

 ナツはルーシィを遮って、言葉をはさみました。そして顔の色をなくしているルーシィを抱え込む様にして、その場を後にしました。マックスとウォーレンはナツの行動に唖然をした表情を浮かべたまま、二人の後ろ姿を見送りました。

体にうまく力が入らなくなってしまっているルーシィを抱え上げると、ナツは小さな音量で「大丈夫だから」と、何度も声を掛けてやりました。

 

 サワル―とは、ルーシィの部屋で聞いたことがありました。どうやら王子であるルーシィに目をつけているらしく、いやらしい視線を投げてくるのだと、顔を青くしていたのを思い出します。もともと男色家だという噂のあるサワル―大臣は、お妃を決めない、許嫁さえいないルーシィ王子を、自分の仲間だと思ったのかもしれません。ルーシィ王子のお妃決めのパーティ開催も、サワル―大臣の圧力によるものらしいのです。ルーシィ王子が、女性に興味が在るのか否かを見極めるためだったのかもしれません。

 

 突如知らされた王子が倒れたこと、その原因はサワル―大臣にあるという速報は、平和だった城下町に一瞬にして知れ渡ることとなりました。公園に残されたマックスとウォーレンは、ルーシィの呟きと、その様子。――そして、ルーシィという名にひっかかるものを感じましたが、ナツの必死な表情に、聞か無かった事にしようと顔を見合わせました。

 

「まっ……巻き込まれたくねえもんなっ」

「そっそうだな……でも、まさかなぁ……」

 

 

 緊急事態の際は、ナツの家にエルザが迎えに来ることになっています。ナツとルーシィは赤い屋根のシンデレラの家へと急ぎます。その道すがら、街の人が王子様を心配している話し声や、大臣に対して怒りの声が聞こえてきます。

 

 ――みんな……心配してくれてるんだよね

 ――みんなに嘘をついているあたしの為に…怒ってくれてるんだ…

 ――ジェミニ達は……どうなっているのかしら……

 ――あたしの勝手で、大事になっちゃって……みんなごめん!!

 

 

 石造りの屋敷の大きな扉を押し開けると、そこによく通る低い声がナツに向かって投げかけられました。

 

「ナーツ!! テメェどこほっつき歩いてやがった!!今日の買い出し当番は…おめぇだろうがっ… それに、オレは城に用事が……」 

 

 玄関ホールを見下ろせる階段の上で、背の高い体格のいい男が大声をあげました。ピリピリとその体に雷をまっとってその場の空気を揺らしています。――何やら焦っている様子です。

 

「げっ!! ちょっと待て、雷はやめろっ!! ツレがいんだっ」

「……ツレだと?」

「おう。救急隊だ!!……エルザきてるか?」

「緊急事態よっ!!」

「……イヤ。きてねぇが…」

 

 おもわずナツにツッコミを入れてしまいましたが――目の前に初めて会う人物がいます。ナツの家族と思われる人物ですが、何やら気が立っているらしく、ピリピリとした空気に ナツの背に隠れるように身をひそめていたルーシィは、改めて声を張り上げました。

 

「こっこんにちはっ」

 

 ナツの背から、金髪の少女が顔を出しました。その少女は、ナツの一番上の義兄だという大柄の金髪の男に向かって、ぺこりと頭を下げました。

その少女を目に、先ほどまで怒りで雷を纏っていた男は動きを止め、ジーッとその顔を見つめてきます。

 

「……なっ……」

「……え……?」

 

 返答の無いラクサスの姿を視界にとらえると、そこにはまっすぐとルーシィを見つめる姿がありました。瞬きもせず、ただまっすぐとルーシィを見つめています。そして、ルーシィもラクサスをまっすぐと見つめ返していました。ナツは2人の間で視線を行ったり来たりさせていました。

 

「?? ……ルーシィ? どうした?」

 

「……て…る……」

「は?」

「……に…てるの」

 

 ナツの頭にはハテナが沢山浮かんでいます。

 

「あ? 何がだ?」

「……兄様に……」

「んあ? 誰が……って、ラクサスがか?」

「!!! ラクサスって!!」

「……大きく成ったなルーシィ。……レイラさんに、よくにてきたな」

 

 それまで黙っていたラクサスは、さっと階段を下りてくると、ルーシィの目の前に立ちました。優しい笑みを浮かべています。ラクサスを見上げたルーシィの大きな瞳から涙が流れ落ちました。

 

「本当に、ルーシィなんだな。 あの時は、まだ……」

 

 ルーシィが生まれる前、父王と前の妃の間に生まれた王子がいました。その王子は生まれる時に母を亡くし 乳母に育てられていました。そして数年たった頃、新しい母ができます。それがのちにルーシィの母になるレイラです。

 

 レイラは、自分の子供のようにラクサスを可愛がり、教育してくれました。博学のレイラは、城の中だけでは、学べないことも教えてくれました。レイラのぬくもりは、ラクサスの癒しとなっていきました。そして――ルーシィが産まれます。

 

 もちろんレイラは、ルーシィが生まれてからも ラクサスを可愛がっていましたし、ラクサスもルーシィを可愛がっていました。幼い頃のルーシィもラクサスに、よくなついていました。――が、レイラが亡くなって、しばらくしたある日の事です。

 

 父王と言い争いをしていたラクサスは、そのまま城を飛び出してしまったのです。何があったのかは、ルーシィの耳に入ることはありませんでした。ただ、ある日から慕っていた兄が、部屋を訪れてくれなくなっただけ。そして月日は経っていきました。

 

 それから、ラクサスが城に帰ってくる事はなかったのでした。

 

「なんで? ……なんで、ナツの家に兄様がいるの?」

「……」

「にっ…にっ…に…い……さま……だとぉ?」

 

 ナツの顔が驚きに染まります。

 

「なんで、兄様……どうして、帰ってきてくれないの?」

「……」

「おいっ、何がどうなってやがんだっ!! 説明しやがれ!!」

 

 ルーシィの悲しそうな表情に、ナツはいてもたってもいられずにラクサスの胸ぐらを掴みました。すると、ラクサスはため息交じりに、事のあらましを説明してくれました。

 

 城にかけられたかもしれない、王族の女性のみ短命という呪い。その真相を暴き、本当に呪いであるのならその呪い解くことができないかと――。病にふせりながらもレイラは、自分の娘が辿るかもしれない運命をどうにか切り開こうとしていました。

 

 自分の命も先が短いと悟ったレイラは、独自で調べていたことを書き残していました。短命にならない様にとルーシィを王子として育て、残されたメモを元に父王とラクサスは呪いを解くために、世界中を飛び回っていたのです。父王は外交として。ラクサスは表からでは調べられないことを調べるために姿を隠し、密偵として――。実はナツの父イグニールも王様の密偵なのです。

 

 呪いを解き、レイラの残したルーシィを王子ではなく、姫として過ごせるようにする!! それが、ラクサスの使命でした。そして――ラクサスは何とか呪いの元を見つけていました。

 

 かけられた呪いは術式によるものだと言います。その術式の中で数年過ごすと、女性は衰弱していくというものです。ルーシィは生まれた時より王子として過ごしていたために、術式も男として認識していました。そう。王族に女性が加わるたびに、術式を書き換えていたものがいたのです。

 

 それは数世代前の王様の婚姻に由来していました。この王国の王族は、自由恋愛をゆるされています。昔むかし、数世代前のプレイボーイだったという王様に恋をした魔女がいました。その魔女は、王の妃になった女性を羨み、その妃になり替わるために呪いをかけたのです。その妃は早くに亡くなってしまいます。魔女は王国の中で女ながらにのし上がり、王様の近くまで上り詰め、大臣のポストを得ます。しかし、その魔女が次の妃に選ばれることはありませんでした。

 

 そして魔女はその恨みを、自分の一族に残したのでした。姫が生まれたり、妃が迎えられた時に術式に名が書き足されるという様に――。

 

 ラクサスはふぅッと、大きく息を吐きだし、ルーシィに優しく笑いかけました。

 

「もうすぐ、イグニールが城にかけられた呪の術式を、書き換えられる者を連れてくる。……そうしたら、ちゃんと帰る算段になってたんだ」

「んなっ!」

「そうしたら、もう……」

「そうだ。……男だと偽ることもない」

 

 ルーシィは唖然とした様子で、説明してくれる兄を見つめていました。ナツはその事実よりも、何よりもルーシィに何も知らされていないことに、怒りを示しました。

 

「はぁ? じゃななんで、ルーシィに知らせてやらねえんだよっ!!!」

「……確実じゃねぇことで、期待させたって……ガッカリさせることになるかもしれねぇだろうがっ!!」

 

 城に用事がと言っていたラクサスは、街での噂を聞きつけ、大臣を縛り上げに行こうとしていたようでした。目の前でラクサスとナツの喧嘩が始まりましたが、ルーシィの目にはなんだかそれが楽しそうに映ります。

 

 

「兄様…あたし……待ってますねっ」

 

 

 迎えに来てくれたエルザと共に城に戻ると、ルーシィの部屋でロキとバルゴやジェミニが談笑していました。どうやらこの家族たちは、ルーシィの居ぬ間に、害虫駆除を試みていたのだと言います。ずっと、ルーシィが我慢していたことを、ジェミニがコピーすることにより知ってくれていたのです。見事サワル―は、大臣職を解かれ城の出入りを規制されてしましました。

 

 そして、しばらく――いつも通りの日が流れていきます。

 

 ある日の昼下がり、公務を終えたルーシィ王子は、自室に戻りました。煙突を通って灰を被ったシンデレラナツが、バルゴの淹れてくれた紅茶を飲んで待っています。

 

王子様を脱ぎ捨て談笑していると、父王とイグニールが妖精王国の領地に入ったという知らせが入りました。まもなく、本当の意味で――王子を脱ぎ捨てることが出来るようです。

 

 

シンデレラナツと、ルーシィ王子様は彼女の部屋でその知らせを聞き、目を輝かせました。

 

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そして、ルーちゃんはナツと仲良く暮らしましたとさ。めでたし。めでたし。って!!!!!!!

うわ~!!!!とんでもなくめっちゃめちゃOrz

つじつま合わせもいいとこですね!!!強引すぎなもって生き方に、自分でもどうしようもない。

バルゴ~!!!穴掘ってください~!!!!( ;∀;)

何とか続き……と思って……ホントすみません(;_;)

何でラクサス!?って思ったんだけど……他の金髪って……スティング君www

それ、妖精王国じゃ無くなっちゃうじゃん!!!ってなって……ラクサス王子様www

自分でもうけましたwwwww がらじゃないじゃんっ!!!!

ただ金髪だからってだけの配置です!!

キャラ崩壊どころの話じゃねいや……(/ω\)本当にすみませんでした!!!!

もうだめだよね……O(:3 )~ (‘、3_ヽ)_

皆さん今までありがとう……

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