momomosumomomomomonouchi

2014.12.19　10000hit記念　マイルズ様よりリク『お酒のお話』

 

しどろもどろ

マイルズ様リクありがとうございます。Twitterで盛り上がったはずのお酒のお話

……なんか、姐ﾔﾝが思っているのとは、大分違うのになっちゃったかも(*ﾉωﾉ)ｺﾞﾒ~ﾝ

 

　

 

「ルーシィ！！　こっちこっちっ！！  こっちおいでっ」

 

　おかえりよりも何よりも、真っ先にルーシィにかけられた女性の声。それを発したのは、正面のテーブル席に陣取って酒樽を抱え込むカナだ。声を掛けられた少女は、自分のチームメイトと共に泊りがけの依頼から帰って着たところだった。その腕には、幸せでも運んできてくれそうな青猫が眠っている。ルーシィは、自分を呼ぶカナにキョトンとした顔を向けた。

 

「どしたの？　カナ」

 

　１週間ぶりの我が家、妖精の尻尾。ルーシィは、チームメイトと共に無事依頼を完遂させ、たった今マグノリアの地に戻ってきたところだ。疲れた体を引きずり、仕事の報告の為　酒場に顔を出したのだ。酒場に入ると、そこにひろがる光景は――まぁいつもの通りの、カオスだ。

 

　ルーシィが酒場を見渡すと、すぐに珍しいモノが目に入った。カナの父にして、妖精の尻尾最強の男と呼び声高い男が、今そこにいるのだ。

 

　ルーシィと共に依頼に出かけていた妖精の尻尾、最強チームのメンバ―達の顔にも笑顔が咲く。ナツにいたっては、扉を開けた瞬間ギルダーツの元へと素早く地面を蹴っていた。

 

　「勝負しやがれ～！！　ギルダーツ！！」という声と共に、拳に炎を纏いギルダーツを囲む輪に突っ込んで行ってしまった。きっと彼は匂いで、ギルダーツの所在をすでに知っていたのだろう。

 

　その行動に、やれやれとチームメイトは苦笑いを浮かべ、ゆっくりと酒場の中心に足を向けようとしていた。その時、ルーシィはカナに呼ばれたのだ。

　

　移動中、疲れて眠ってしまっていたハッピーが、ルーシィの腕の中で「うるさいよぅ」と目をこすっている。チームメイトのエルザとグレイが、「報告はいいぞ」「呼んでんだから、行ってやれよ」と、ルーシィの背を押した。それに「ありがと」と礼を返し、ル―シィは自分の名を呼び、ギルダーツの脇でテーブルに腰をかけたまま酒樽を抱え込むカナの元へ、ハッピーを抱えたまま歩み寄って行った。

 

「カ～ナっ！　またそんなとこに座っちゃってぇ」

「おおっ。ルーシィ！！」

 

　抱え込んでいた酒樽から腕を離し、カナは両手をひろげてルーシィを歓迎している。仕方ないわねぇと笑みを讃えたルーシィは、既にカナとの呑み比べで潰されたであろう屍達を、飛び越えて近づいていく。

 

「もう。どれだけ飲んだのよ～。ってひとまず椅子にちゃんと座てっ。ほらっ」

「はいはい。ルーシィは良い子ちゃんだからね～」

 

　既に足にきているのかもしれない。カナは、ふらりと身を起こした。ふらつくカナに、ルーシィは慌てて手を貸すと、近くの椅子に座らせてやった。その時落下したハッピーが「ふぎゃん」と声を上げた。

 

「わわっ。ごめん。ごめん。ハッピー」

「おおっ。ルーシィちゃんの言うことなら、カナちゃん素直に聞くんだね～。すごいね～。よしっ！！　じゃぁ、ルーシィちゃんは～オレの嫁にしよう！？　ガッハハハハ」

「コラッ！！　クッソおやじ、ルーシィに手ぇ出したらただじゃおかないよっ」

 

　ぶつけたお尻を擦りながらまだまどろんでいるハッピーを、抱えなおしたルーシィはその頭を撫でた。デロ―ンと、体をあずける様に肩を抱いてきた父親の顔を、ムギュ――っと、押し返しながらカナが睨みをきかせると、同時にギルダーツの尻の下から煙が上がった。

 

「うぉっアッチ！！　尻を燃やすんじゃねぇよ」

「ふがっ！！　んががっ！！　んごかごごががっ！！！！」

 

　頭を地面から持ち上げられないほど、地面にめり込んだままのナツの上にギルダーツは座っていたのだ。下敷きになっているナツは、何やらフガフガともがいている。

 

「ナツ……あんた……何やってるのよ…」

「ハハハッ。ナツぅ～いいざまだなぁ」

 

　にやりと笑ったカナは、ナツに見えるようにルーシィの腰に手をまわしその体を引き寄せた。ルーシィの腕の中で、ハッピーの「きゅぷぷっ」という声が上がる。

 

“ムギュ”

「きゃっ」

「んん～！！」

 

　見事にルーシィの胸に顔を埋めると、カナは勝ち誇ったようにその胸に、スリスリと顔を擦り付けた。いくら同性と言へど集まる周りからの視線もあり、ルーシィは固まったまま全身を真っ赤に染め上げた。それよりも何よりも、間に挟まれたハッピーは抜け出すことも、暴れることも、声を上げる事も出来ないようだ。

 

「おぉ～。い～なぁ～。カナちゃ～ん。おと～さんもま～ぜ～て～」

 

　やらしい笑みを浮かべたギルダーツの大きな手が、いやらしくモミモミと動いている。ルーシィが引きつった笑みを返す中、ギルダーツが腰を軽く持ち上げたすきに、ナツは勢いよく立ち上がった。カナに抱き着かれたまま真っ赤に固まっているルーシィを目に止め、額に青筋を浮かべた。そして、ニヤニヤとしながらルーシィの胸を覗きこむギルダーツの顔に、炎を吹きかけた。

 

「うおぉぉ。……なんだぁ？　ナツ。この乳は俺のもんだとでも言いたいのかぁ～？」

「なっ///」「ぬっ///」

 

　揃って頬を染めるナツとルーシィ。カナとギルダーツは顔を見合わせた。目の前にいい酒の肴がいるのだから。しかも２人も。

　ナツとルーシィは、――初心だ。こういった話は、そろって慌ててくれるので、からかいがいがあるのだ。カナはナツを煽る様に、ルーシィの豊満なふくらみに指をたて、プニプニと弾力を楽しんでいる。

 

「おうおう。揃って、可愛い反応してくれちゃっても、こ～んないい乳もってんだ。やるこたぁやってんだろ～？」

「いあ//////」「ふぇぇ//////」

 

「こ～んなに小さかったのになぁ～。ナツ。男になっちまったかぁ～！！！ぎゃっははっは」

「ちっちがっ///」「ばっ///」

 

ギルダーツは、親指と人さし指で小さく長さを測るように指を動かすと、カナが「それ、どこの大きさだよっ！！」と、ぎゃははと親子で笑い出した。

 

「へっ変なこと、ルーシィに言うんじゃねぇ！！」

「もっもうカナ！！　いい加減に、離してよ。く・る・し・い」

 

　頭から湯気でも出しそうなナツに、胸ぐらを掴まれたギルダーツは余裕の笑みを返すと、思い立ったようにニヤリといやらしい笑みを浮かべた。

 

「おいナツ……ちょっとこっちこいっ」

 

　ギルダーツはナツの襟首を掴むと、少し離れたテーブルへナツを連れて行ってしまった。こちらへは背を向けて座っている。そこでナツの肩を抱き、何やら内緒話でもするようだ――。

 

　その光景に少々あっけに囚われていたルーシィは、カナに隣に座る様に促されると、そこで酸欠でフラフラしているハッピーを膝に寝かせ、ヨシヨシとお腹を撫でてやっている。

 

　ギルダーツは、何やらナツに耳打ちしながら、近くに置いてあったジョッキに手伸ばし酒を注ぐと、ナツの口に流し込んでいく。

 

　――ナツの耳、赤くなっている

　――あ～あ。きっと、からかわれてるんだ……

　――あんまりからかわれると……

　――後で一緒にいる空気が、なんかむず痒くなるのよね

 

　きっとひどく、からかわれているのだろう。ギルダーツから手渡されたジョッキを手にとり、ナツはそれを次々と飲み干している。そしてまた、酒がジョッキに注がれていくのだ。

 

　――あれじゃ、酔っぱらっちゃうんじゃないの？

　――あっでも、ナツがベロンベロンになるとこなんて……見たことないかもっ

 

　ナツを抱え込んだギルダーツは、心底楽しそうに酒を飲み交わしている。

　やはり、幼い頃から知っているナツと酒を酌み交わすのは、嬉しいものなのかもしれない。特にギルダーツは、突っかかって来るナツを可愛がっていたようだし。同じように幼い頃から知っているカナが、自分と血の繋がった娘だと知った時も、涙を流して大喜するほど、娘という存在が嬉しいと思える人なのだから。

 

　ボンヤリとナツの様子を眺めていたルーシィ隣で、カナが大きく息を吐き出した。

 

「ったくぅ。しょうがないわ。あのエロおやじっ」

「カナちゅわ～ん！！ つれないこといっても、パパはカナちゅわんが大好きだよ～！！」

 

　ギルダーツは、空かさずカナの元へ、熱烈ラブコールを送る。そして、さあ胸に飛び込んで来いと、大きく両腕をひろげたギルダーツを、小さな溜息だけ落してカナは無視すると、にやりと笑ってルーシィを見た。

 

「で？　あんた達本当のとこ、どこまでいってんだよ？」

「なっ///　どっどこまでもいってないわよっ。ナツとは、そんなんじゃないもん」

「あい。実にじれったいんだよねっ」

 

　酸素が頭の隅々までいきわたったのか、復活したハッピーはテーブルにのって魚を頭から頬張っている。少しうつむいてしまったルーシィの様子に、カナの目の奥が光った――かもしれない。

 

「へぇ。その割には、いつだって一緒にいるじゃん。あんた達」

「…そんなの……あたしが知りたいわよ」

「ナツは、独占欲が強いからねっ。ルーシィがイヤがっても、ベッタリ何処でも　くっ付いていたいんだよ。だって一人だと、ルーシィってなんか危なっかしくて、 心配なんだよね！！」

「えぇ？　ってか猫に心配されるほど、ボーっとしてないわよっ！　それに、ただの仲間に……そんな独占欲出されても……」

 

　ポツリと、もれたルーシィの呟きを聞き、カナはニヤリと口角を持ち上げた。酒の肴自ら、面白い話を聞かせてくれているのだから。

 

「ほらっ、まぁ、ルーシィのみなっ！！」

 

　隣にいたカナから、グラスが渡された。受け取るとそのグラスにピンク色の発砲するドリンクが注ぎ込まれた。何をのまされるのだろうと、おびえた表情を覗かせるとカナがニィっと笑った。

 

「アハハっ。そんな警戒しなくても大丈夫だよ！　ちゃんとした普通の酒だから！ ギルダーツが土産で持って帰ってきてくれたんだっ。それにちょっと、珍しいモノなんだよ」

「……へぇ」

 

　カナの声に、ナツと話し込んでいるギルダーツが、顔をもち上げた。

 

「ルーシィちゃんには、大分世話になったってカナちゃんに聞いてね。これはルーシィちゃんにお土産だよ～」

「……どうも」

 

　少し離れた席から、ギルダーツがジョッキを持ち上げて見せた。それに合わせてルーシィもグラスを持ち上げた。ギルダーツの隣でナツは机に突っ伏している。頭から湯気を上げて――。ナツから視線を戻すと、ナツをその場に残し、ギルダーツがカナの隣に戻ってきていた。カナとギルダーツの4つの目に顔を覗き込まれ、ルーシィは恐る恐るグラスに口をつけた。

 

「！！　おいしいっ」

 

　ルーシィは、目を見開いてカナとギルダーツを順に見た。2人は満足そうに笑みを浮かべている。その笑みに本当に、他意はないように見えるが――2人の後ろに見える木箱に入った同じ酒の瓶の数に、どこが珍しいのだろうと、ルーシィは額からタラリと汗を流した。

 

「で？　ルーシィはナツにオレのもんだぁ～ってされるのやなの？」

「そういう訳じゃ……てか、あたしのモノじゃないし」

「おやおや、ルーシィさん。ナツがルーシィのモノだって言いたいのか？」

「ちがっ！ もう！！　だからっ、ナツなんて……ただのチームメイトでしょっ」

 

　ルーシィの頬がプクッとふくれ、大きな目は少し潤んでいる。

　――見るからに、本心ではない。

 

　――だって、ナツってば何も言ってくれないんだもん

　――いつだって、あたしの隣にいるくせに

　――肝心なことは……何一つ言ってくれないんだ

 

　眉間にしわを寄せ、ほっぺたは膨れたまま思考にふけっていると、ルーシィの肩にがっしりと太い腕が廻された。

 

「じゃぁ、オレとどこまでもいってみるか～！！　ルーシィちゃんのオッパイなら大歓げ……」

 

　腕を回してきたギルダーツの頭に突然の炎があがる。鳥の巣のようにチリチリに焦がされたが、ギルダーツはその事に臆することも無く、ルーシィとカナに顔を近づけている。その行為に、ギルダーツに掴みかかろうとしたナツ。そのナツに向かって、ギルダーツは頭を押し返そうと手を前に出した――。

 

「ぬわっ！！」

「きゃっ」

「あっちゃぁ……」

 

『『『おい！！　ギルダーツ！！　何しやがる！！！！』』』

 

＊

 

　反響する普段よりも高いナツの――ナツ達の声。わらわらと、ルーシィの足元に人形サイズのナツ達がいる――。ギルダーツが引きつった顔を見せる中、ルーシィは目をぱちくりと瞬かせた。カナに至っては、すぐに小さいナツを１人摘まみ上げ、いじくりまわしながら酒樽を傾けている。

 

「おーおー。可愛くなっちまったね～」

「……うわぁぁぁ！！　ナツがいっぱいだぁ」

 

　ルーシィの腕の中で一部始終を見ていたハッピーは、ルーシィの足元にいるナツ達を目に歓声を上げた。

 

「オイラ、このナツと遊んでみたかったんだ！！　ナツー、どっちが高くまでつめるか、ペンタワーしようよ！！」

『『『おう！！！』』』

　

　小さく沢山のナツたちの半分は、ギルダーツに勝負を挑んでいる。ハッピーはルーシィの腕の中から降りると、地面にしゃがみ込みナツたちの一部と遊び始めてしまった。ルーシィはそっと、足元から見上げてくるナツを1匹つまみ上げた。

 

　――やだぁ、かわいいっ

 

「……ふふっ…ちっちゃいけど、ほんとにナツね」

 

『『オレもナツだ！！』』

『『オレだってナツだぞ！！』』

『『遊ぼうぜルーシィ！！』』

 

　ルーシィの足を、ナツたちがわらわらと登ってくる。途中道を誤って、ルーシィのスカートに頭を突っ込んだナツは、空かさずルーシィの手によって払われた――。近くにいたナツ達は、ルーシィが座ったテーブルの上に集合した。それぞれが、物珍しそうに、ルーシィを下から見上げている。

 

「フフフッ。ミニチュアね～」

 

　なんだか、急に楽しくなってきてしまった。にこにこと微笑みながらルーシィが、人差し指で1人のナツの頬をつつくと、その隣のナツも頬を突き出したくる。ルーシィは、グラスを傾けながら沢山いるナツのうちの一人を持ち上げた。目線を合わせて、そのナツの顔を覗く。

 

　ルーシィの大きな目に覗き込まれたナツは、なんだかいたたまれなく、バタバタと手足を振って暴れていた。それでもその位置をキープしたままルーシィは、ちっちゃいナツを見つめて、目を細めた。

 

「な～んか、可愛いかもっ」

 

　ぐりぐりっとナツの頭を指で撫でた後、ルーシィはそのナツをテーブルに降ろした。そして、ニッコリと微笑みながら、再びグラスを傾けた。

 

「ん～。美味しっ」

 

　――な～んか、ふわふわしてきたなぁ

　――楽しくなってきたかもっ

 

　大きな目をトロンととろけさせルーシィは、ふにゃりと微笑んでいる。そしてグラスをまた傾けるが、その中身は一向に減らない。――まぁ、減らないというよりも、ルーシィが一口飲むごとに、カナが上から酒が注いでいる為なのだが。

 

　――ルーシィ呑みすぎだろっ

　――でもなんかうまそうだぞっ

　――ルーシィがこんだけ飲むんだから、うめえんじゃねぇか？

　――のんでみるかっ

　――ルーシィの分、のんじまうかっ！

  ――なんつーんだっけ？

  ――俺も歩けば、2つのいしにあたる!だなっ

 

『『『『俺にも飲ませろ！！！！』』』』

 

　木霊するナツ達の声に、カウンターから大量のぐい飲みが用意された。両腕で抱え込む大きさのぐい飲みに、自分同士で酒をつぎ合いナツもまたは、うまいうまいとその酒を喉に流し込んでいった。

 

　その様子に『いいの呑みっぷりだねー』と、喜びながらカナは、ルーシィの空になっているグラスにまたも、酒を注ぐ――。そしてカナは、数人のナツを捕まえるとその顔を覗き込み、ニンマリと笑って見せた。

 

「で？　ナツは、どうなんだい？ 」

『『あん？』』

『『あんだ？』』

『『何がだ？？』』

 

　先程までの話なんか、既に頭になかったであろうナツ達は、ぽかんとした表情でカナを見上げた。その様子に、カナは苦笑をもらしながら話を続ける。

 

「あんた、ずいぶんルーシィに執着しているように、あたしにゃ見えるんだけど」

『『なっ///』』

『『そっそんなことねぇ///』』

『『ルッルーシィが、ついてくんだよッ///』』

 

　弾かれたように、束になっているナツ達の頬が赤くなり、焦った様子を見せてはじめた。その中の数人は、チラリとルーシィを見るが、ルーシィは他のナツをつついて遊んでいて、こちらには、気にもとめていないようだ。

 

　――気づかねえよな

 

　――気付いて欲しいような、欲しくないような――

　――心地よいルーシィとの距離は、一歩踏み出すことを躊躇させる

　――オレはルーシィが好きで、ルーシィもオレが好き

　――そんなのは当たり前の事なんだが――きっとルーシィはまだ自覚してないんだ

　――だから――まだ、動けない

　――自覚してないうちは、あいつ逃げちまいそうなんだよな――

　――ルーシィが、オレを好きだって認めちまえば、話は早えんだけどなぁ

 

 

「はいはい。それは仕事の話だろっ。しっかし、ずいぶんムキになるねぇ」

『『うっ///』』

『『うが―///　うっせぇ///』』

『『変な事聞いてくんなっ///』』

 

「なんだい？　好きでもないのに、男が女にくっ付いて歩いてんのかい？」

『『そっそれは』』

『『ルッルーシィは面白いしなっ』』

『『仲間なんだから、大事に決まったんだろっ』』

 

「大事かどうかって、聞いてんじゃないよ。好きかどうかって聞いてんだっ」

『『どわっ///』』

『『好きとか、嫌いとかねぇし/////』』

 

「なんだ？　ナツ、お前……ルーシィの事、好きじゃないのか？」

『『『『そっそういうんじゃ…つか、関係ねぇ！！』』』』

 

　沢山のナツたちの声が重なった。その声に、自分の目の前にいたナツ達をつついて遊んでいたルーシィも顔を持ち上げている。声を発してしまったナツ達は、こちらを見ているルーシィに気が付き、何とも情けない顔をしている。

 

「はっきりしない男だね～」

『『うっ……関係ぇねぇんだよっ』』

 

　カナがつまみ上げたナツとその下にいる数人のナツが、カナに食って掛かっている。その内容が内容だけに、ルーシィも初めから、しっかり聞き耳を立てていたのだが――。

 

　いい加減はっきりしない自分たちの関係に、好きなのは自分だけで、結局は自分の独りよがりなのではないかと――度々不安になっていた。

 

　――ナツに嫌われているとは、思えない。

　――きっと気に入られてはいる、けど……

　――だって、気に入ってなかったら一緒に行動したりしないでしょ？

 

　あたしの事を色気がないだとか、裸なんか見慣れたとか言うけど、いつだってナツの目は泳いでいて、口が変にへの字になっている。――バレバレなのだ。明らかに何かを、誤魔化す顔になっている。何を誤魔化すのかと考えれば、答えは簡単だった。

 

　――きっと格好をつけてるんだと、思うんだけど？

　――うろたえて格好悪いところを、あたしに見せたくないって思ってるんだよね？

　――でも、はっきりしたことは、何もわからないんだ

　――目の前に、隣にナツがいれば、いつだって安心できるんだけど

　――１人になると、全部あたしの勘違いなんじゃないかって――不安になるんだ

 

　ナツはいつも、ルーシィの気持ちをもち上げては――簡単に落下させるのだから。

 

『ルーシィ！これうめぇなっ』『ルーシィ呑みすぎだぞ』

「……んん」

 

『なんだ、眠いのか？』『どうした？　寒いのか？』

「……なつうっさい…」

 

『うっ……お前大きくなっても、残忍な奴だな』『残忍な奴』

「もうっ……ナツが増えるとウザさは倍以上ね……」

 

　一部のナツ達とルーシィの会話に、笑みを浮かべたカナが割り込んできた。

 

「なんだよルーシィ。荒れてるじゃんか」

「そっそんなことないもん」

「ははぁ～ん。ナツが、ルーシィの事、何でもないようなこと言ったから、怒っちまったんだよなっ」

「うっ///　ちっ違うわよっ」

 

　図星をつかれて、ルーシィは一気に顔を赤く染めた。

 

「おぉ～。初心な反応だねぇ。ルーシィちゃんは、初心かっ。可っ愛いなぁ～。カナちゃんの次にィ～」

 

　ニコニコと、中年の親父がルーシィに絡んでいる脇で、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらカナは、たった今飲み干したルーシィのグラスに酒を注いだ。そのグラスを持つと、ルーシィは焦って酒をあおった。

 

　――あたしばっかり、からかわれて焦ってる

　――ナツはいつも素知らぬ顔してるのに

　――もうっ！！　あたしって、ナツのなんなのよっ

 

　既に酒場は、ギルダーツの持ち帰った酒によってひどい有様になっている。ルーシィの心ここに在らずな様子に、酒を注ぎ続けるカナの手を数人のナツが束になって止めた。

 

『おいっ。それ以上のませんじゃねぇよ！！』

『おいルーシィ！！　呑みすぎだぞっ』

『その辺にしとけっ』

『酒でも太るんだぞ』

 

「……うっさい。馬鹿ナツ～！！！」

 

　ルーシィは髪を縛っていたリボンを解き、うるさいことを言うナツ達をまとめてリボンで縛り上げた。

 

　――何よ！　 何よ！！

　――ギャーギャーうるさいことは言うくせに、肝心なことは言ってくれないんだから

 

「うるさ～い！！ 　ナツに指図される覚えないも～ん」

 

　――だってあんたは、ただの仲間でしょっ

 

　ルーシィは、ふらりとその場に立ち上がった。ヨタヨタとした足取りで、ナツ達が見守る中、酒場の真ん中を進んでいく。ワカバや、マカオのテーブル席の脇をスルリと抜け、その隣のエルザとグレイのいるテーブル席に向かったようだ。

 

 

 

　そして、煙に包まれナツの体が一つに戻った。

 

 

＊

 

＊

 

 

 

 

「なんだよ。……ルーシィのヤツ」

「……ナ～ツッ。お姉さん良い事聞いたんだけど～一樽奢るかい？　甘い酒に飽きちまったんだよ」

「……はぁ？」

 

カナからの声に、怪訝な顔を見せるナツ。

 

「なんでルーシィが荒れてるのか……知りたくないか？」

「うっ……そっその手には乗らねぇぞ」

「ほほう。じゃぁ……あれはいいんだな」

 

　カナが指差す方に、ナツは顔を向けた。その先には、見たくないものが――

　ナツの表情が見る見る、怒りを纏い始める。

 

「なっ！！」

 

　にやりとカナが笑った。そこは、ルーシィが向ったテーブル席。ルーシィはエルザとグレイを両脇にはべらせ、双方に腕を絡めて座っている。絡めた腕を頼りに、エルザの肩に頭をのっけているようだ。頭はのせてはいないが、反対側の隣のグレイの腕もしっかりと抱え込んでいて、密着しているのが見て取れた。

 

　――チッ嫌そうな顔してねぇじゃねえかっ

 

　ナツはカナに振り返って、そのニヤついた顔を睨み付けた。どこかの神経が1本、きれた様だ。ナツのつり目は、笑っていない。

 

「1樽だったな……」

「あら～。ざ～んねん。たった今、値上がりしちゃったよっ」

「……あんだと？」

「ここのお代、呑み比べと行こうかっ」

 

　ナツの顔をニヤニヤと覗き込んで、テーブルに座ったカナが、空になった酒樽を無造作に投げ捨てた。カナの様子に「カナちゃんカッコいいねぇ～」と、ギルダーツが嬉しそうに笑い、そこに通りかかったレビィは、何があったのかとナツとカナの顔を交互に除いた。。

 

　――なんだよ……あのルーシィは？

　――急に不機嫌になりやがって

　――わざわざ、変態パンツに腕巻き付けやがってっ

　――何が気にくわねぇんだよ。

　――ルーシィも、オレの事……好きだろっ

　――早く気づけよなっ！！

 

　カナとナツが睨みあう近くから、レビィが呆れた声を上げた。

　

「あ～もう。カナっ。悪乗りしないのっ。ナツもカナに付き合ってないで、ルーちゃんとこ行けばいいでしょっ」

「ああ～ん。レビィ。じゃぁ、あんたが勝負するってのかい？」

「うえっ。やだよ～。巻き込まないでっ」

 

　レビィは慌ててその場を離れて行った。その背を見送り、カナがゆっくりとナツを視界の真ん中にとらえる。その様子を頼もしいものでも見るように、ギルダーツは、目を細めにこにこと、酒を食らっている。

 

「やるよなっ？　ナツは、男の子だもんなっ」

 

　ナツはチラリと、ルーシィのいるテーブルを睨み付けた。今は、いつの間にやら呼び出したプルーと、様子を見にいったのであろうハッピーをテーブルの上に並べて、嬉しそうにそこに抱き着いて頬擦りをしている。そして――、高性能なナツの耳がルーシィの声をひろった。

 

『ナツ～？　え～？　ナツなんて知らないも～ん』

『おいおい姫さん、呑みすぎだぜ。その辺にしておけって』

『ん～ん。グレイまで……ナツみたいなこと言うの～？』

『あぁん？　……クソ炎と一緒にすんじゃねぇ。……ほどほどにしておけよっ』

『んふふ～。さ～っすがグレイっ。だ～い好き～』

『ルッルーシイ！　私もルーシィが好きなんだがっ』

『オイラも～』『ププ～ン！！』

『んふふふふ～。あたしも～えるざも、はっぴーも、ぷるーも、だ～い好きぃ～』

 

　ナツは目の前に置かれた酒の入ったジョッキを、一気に飲み干した。

 

　――み～んな大好きで、俺だけキライってか？

　――ふざけんじゃねぇ！！

　――くっそ、胸糞ワリィなっ

 

「カナっ。俺が勝ったら、ルーシィがなんで荒れてんのかと……どうしたら……機嫌戻んのか……教えてもらうからなっ」

「ふっ。いい面構えじゃないかっ。ミラ～酒～！！」

 

＊

 

＊

 

　エルザは、嫌がるハッピーを懐に抱え込んで、何やらひそひそ『ジェラールがなんだ、ハトがなんだ』と話している。そういえば先日のクリスマス、エルザの元に白い伝書鳩が訪れていた――。

 

　もうどうにでもなれと、ルーシィと酒を酌み交わしていたグレイは、げっそりとした顔を覗かせ、天井を仰いでいる。その隣で、グレイの腕に手を絡めたルーシィは、だんだん酔いがさめてきていた。だがなんだかさみしくって、半分寝ているようなグレイに話しかけていた。

 

「ねぇグレイ」

「あ？」

「なんか酔い覚めちゃったんだけど……」

「んあ？　ああ。途中からお前のグラスのは、ノンアルコールだからな～」　　

「ええ～。まだ飲みたかったのにぃ」

 

　プクッと膨らましたルーシィの頬を、グレイが空いている方の手で、ぐにゅっとつまんだ。

 

「もう相当呑んだろ～。女はべろんべろんになるまで呑むもんじゃねぇぞ」

「うぅ～。だってぇ」

「だっても、くそもねぇ。姫さんがひっでえ醜態晒してぇんなら、ほっといてやるけどよ。その醜態、一生オレの記憶に残して、末代まで語ってやるぞ」

 

　頬をつまんだ手で、今度は金髪をぐしゃりと撫でた。そのやさしい眼差しに、すっかりルーシィの棘は抜かれている。このルーシィを妹のようにかわいがるグレイは、ルーシィにとってもよき理解者であり、兄のような存在なのだ。そのやさしさに、まだちょっと甘えていたい気もしてきた。

 

「……ヤダ。ヤダけど、そんなに飲んでないもん。それにな～に？　女の子はお酒呑んじゃいけないって言うの？　グレイはっ」

 

　キィっと、グレイの顔を見上げるルーシィ。グレイは、呆れた表情を浮かべた後、優しく笑った。

 

「そ～じゃねぇけどよ。楽しくねぇ酒は、苦い思いしか残んねぇもんなのっ」

 

　そして、もう一度ぐしゃりとルーシィの金髪を撫でた。

 

「んで？　な～にがあったんだよ。荒ちまって、俺らの姫さんらしくねぇぞっ」

「……」

 

　ルーシィはチラリと、振り返った。その視線の先には、カナと睨み合いながら、交互に酒を飲み続けるナツの姿がある。2人を囲んでいる野次馬のおかげで、さすがのナツも、ここでの会話はひろえはしないだろうと、ルーシィは口を開いた。

 

 

 

「だって……」