2014年1月26日
それは、確かな信頼
ナツ→←ルーシィ両片思いのナツルーです。ある日、ナツがルーシィの目の前で消えてしまいます。
アイツが。。。
ナツがアタシの前からいなくなって、、、、もう1週間だ。
あの日、いつもの様に一緒にギルドを出て、討伐の依頼に向かうはずだった。
駅に向かう途中、地面から浮き出てきた魔法陣に囲まれ、、、、意識を失った。
気が付くと、自宅のベットの上だった。
傍らには、ハッピーだけ。。。。
急いでハッピーを起こしてギルドに向かった。
きっとそこにナツがまっていると思って。。。。。
・・・・・・でも、あたし達を待っていたのは、マスターだった。
ギルドに到着すると、ミラさんに奥の部屋へと通された。
マスターの口から聞けたことは、
『ナツはしばらく戻らない。』
たったそれだけだった。
マスターの、質問してくれるなという顔を見て、何の言葉も出なかった。
その日は、ギュッとハッピーと胸に抱え、帰路に着いた。
ナツと請けていた依頼は、次の日ハッピーと二人で遂行した。
一度請けた依頼だ。それに背を向けることは妖精の尻尾の名折れだ!
着いてきてくれるという仲間を振り切り、ハッピーと2人でむかった。
だって、あたし達で受けた仕事なんだから。
無事依頼をこなし ギルドに戻ったあたし達は、体中すり傷だらけだった。けど、大きな怪我もなく みんなを驚かせた。
討伐は何とか大成功だった。
ナツがいないので、破壊などの物的被害が出ず 報酬を減らされることもなかったので財布の中は暖かい。
そして今日も、ハッピーと大きな肉と魚を買って帰路に着く。
部屋の扉の前に立つと、むこう側にナツがいる気がして、、、少し緊張して扉を開ける。
が、暖かい色を失った空気が流れて来るだけだった。
毎日、ナツの好きなメニューを用意してハッピーと一緒に家で待っている。
戻ってきたら、ナツは一番にうちに来てくれると勝手に確信している。
ハッピーも、ずっとあたしと一緒にいる。
ナツが、探す手間をはぶく為に。
と言っているが、この小さくも強く優しいハッピーの心使いなのだろう。
ナツのいなくなった穴に、暖かさを忘れさせないでくれる。
あ~ぁ。
何してるんだろ?ナツ。
、、、、会いたいよ。
変なことになって無きゃいいけど。。。。
・・・・ケガしてないと良いな。。。
心の中で思っただけなのに、ハッピーが心配した顔ですり寄ってくる。
抱き上げ、ギュッと抱きしめる。
何でもないはずなのに、何かの拍子に出た涙が止まらなくなる。
そんな時は、ハッピーと一緒に眠る。
朝起きたら、傍らにナツが居るんだと、期待して瞼を閉じる。
カーテンを閉めていない窓から朝の光を浴びて瞼を持ち上げる。
嫌でも期待してしまう。
そこに、ナツがいない。
たった数日が、こんなに長いなんて、知らなかった。
胸が苦しくなって、1人の人に焦がれるなんて、知らなかった。
ナツがいないだけで、世界から色が消えてしまったみたいだ。
それでも、毎日ギルドに顔を出している。
皆、心配でないわけがない。
いっこうに、ナツからの、いや ナツに関する報告はない。
あたしや、ハッピーの落ち込み様に、マスターに対して声をあげる者もいたが、その重たい口が動くことはなかった。
・・・・ナツ。
今日もハッピーと二人で帰路に着く。
見上げた先に、満点の星空。
こんな日は、ナツとハッピーと森の中の湖のほとりで 寝っころがりながら、星を見て 沢山話をするんだ。
いつもなら、飛び上がって喜んだだろう。
急いでお弁当を詰め込んで、ナツがシートと毛布を抱えて、互いに空を負けないくらいの、満面の笑顔だったはずだ。
でも、そこに光る星達さえ 今は眩しいだけ。
ナツは帰ってくる。
どんなことがあっても、帰ってきてくれる。
揺るぎなく、信じることはできる。
妖精の尻尾は彼の家なのだから。
・・・・信じてる。
信じてるけど、会いたいよナツ。
会えなくなってみると、ナツの事ばかり考えてしまう。
目を瞑ると 瞼の裏にナツの笑顔が浮かんでくる。はっきりと。
きっと、すぐ帰ってくる。
ひょっこり、何でもない顔で。
そして、またいつもの日々が始まるんだ。
ナツが帰ってきたら、止まってしまった時間が、、、きっと動き出す。
ねぇ。ナツ。
何やってるんだかわかんないけど、、、応援してる。信じてる。
・・・・・だから、笑顔で帰ってきてね。
待ってるから。
*
ナツside
気が付くと、どこかに寝かされていた。
???
ん?どうやら自分の家のようだ。。。でもなんか変だな・・・??
空気の流れが違う感じがするが、近くにハッピーの気配を感じて安心した。
「んあっ??」
目を開くと、そのハッピーが顔を覗きこんでいた。
「ナツ。気が付いた??」
クリクリとした大きな目が目の前で揺れている。
「うぉっ!?ちけぇよ!!」
ハッピーをどかして、体を起こす。
ソファに横になっていたらしい。
???
こんなソファあったっけ??
ルーシィの家のソファによく似ているが、それよりちょっと古い??もっと薄い色をしている。
.....まだ、うまく頭が回らない。。。。
どっから貰ってきたのか???
いつ???
ん??
ぼやける記憶を辿った。
「あっ!!!おいハッピー!!ルーシィは??」
今まで、ナツを見てニコニコしていたハッピーの表情が一気に曇った。
ハッピーのその表情に、ギクリと背中に冷たいものが走る。
「ハッピー??」
翼をしまってハッピーがナツと向かい合う様に座った。
「ナツ。落ち着いて聞いてほしいんだ。」
ハッピーの神妙な表情に緊張が走る。
「約束してほしい。取り乱したて、暴れたり叫んだりしないで欲しいんだ!!!」
段々血の気の退いていく頭で首を縦に振ると、隣の部屋に続くであろう扉の前にハッピーが立った。
あれ???
そんなところに扉なんてあったか??
「まず、見てみて。」
ハッピーが扉を押し開けると、大好きな甘い匂いが流れてくる。
ルーシィ!!
開かれた扉の向こうはまっきらだった。
目を凝らすと、ベットに横たえられた人物。
鼓動が早くなる。
ナツの視界が、綺麗な金髪を捉えた。
その人物は、眠っているのか?ピクリとも動かない。まるで、人形の様だ。
「ルーシィ!!!」
思わず駆け寄ろうとするナツを、ハッピーがマフラーを掴んで阻む。
「放せハッピー!!」
ハッピーの制止から逃れようと マフラー外そうと掴むが、それよりも先にハッピーが力任せにナツを後ろに投げ飛ばした。
「ナツ!!約束したでしょ!!!」
そう叫んだハッピーの目には、見る見るうちに涙が溜まり、ポロポロと流れ出す。
「今フリードの術式で守られているんだ!!手を出したら駄目なんだ!!!」
呆気にとらわれていたナツが、しばらくしてソファに座り直し、それをみて、ナツの前にハッピーが降り立った。
「・・・・いい?ナツ?」
「ああ。」
ようやく落ち着いたナツにハッピーが、口を開き始めた。
「ルーシィは今、眠り姫の魔法に犯されているんだ。」
「眠り姫??」
「あい。名前の由来は童話の眠り姫から来ているんだけど、実際の魔法は、童話の中みたいに王子様のキスで目覚めるわけじゃないんだ。」
悲しそうにハッピーの耳がタレている。
「なんで。。。」
「ルーシィは、闇ギルドの壊滅の依頼の時、正面から突っ込むみんなとは別行動で、人質にされている一般の人
を助けに向かったんだ。
もちろん無事救出。そして救出した人達と森の中を避難している時、その中の1人がトラップにかかってしまって、それを庇ったんだ。」
「・・・・・。」
ナツは、黙ってハッピーの話を聞いている。
「それが 約1ヶ月前。。。」
「!?!?」
ナツの目が見開いた。
驚いているようだった。
それも当然だ。
先程まで、ルーシィと一緒にいたのだから。
1か月前にそんな依頼に行った覚えもなければ、ルーシィと別行動した覚えもない。
自分の記憶と話がかみ合わない。
目の前にいる猫は、、、確かにハッピーだ。
・・・・が、なにか違和感を感じている。。。。
ナツの眉間にしわが入り、難しい顔をしている事にハッピーが気付いた。
「・・・そうだね。まずそこから説明した方がいいね!!」
ナツの考えていることを見透かしたように、ハッピーが説明を始める。
「ここは、791年じゃない。もっと先の未来なんだよ。」
「・・・・・・・。」
「ビックリした??」
わずかに笑顔を見せるハッピー。
「さっきルーシィが眠り姫の魔法にかかってしまったって言ったでしょ?それは、徐々に人を眠りの世界に閉じ込める魔法なんだ。
初めの内は、寝坊をしたかな?程度から始まって段々睡眠時間が長くなる。つまり、起きている時間が短くなるんだ。
睡眠時間がMAXになると、つまり起きている時間が0になると、もう解除するのは難しいんだ。というか解除できた例がないんだ。
ルーシィの場合は、1日30分起きている時間が短くなってる。
でも 幸いなことに、魔法省に保管されている資料で解除のための魔法薬の製法が解ったんだ。。。けど。。材料が足りないんだ。
解除薬に必要な薬草は、ナツ達のいる、791年にはマグノリアから少し離れた山奥で採れたんだけど、今はめっきり手に入らないんだ。
でも、それがないとルーシィは助からない。もう、ルーシィに残されている時間は少ない。
それで、、、、791年のナツとここのナツが入れ替わって探しに行ったんだ。」
ハッピーの話を聞いて、考え込む様に黙って聞いていたナツ。
「・・・・・腹減ったな。ハッピー!!」
ナツの頓珍漢な発言に、ハッピーがずっこける。
「ナツ!?話解ったの??猫よりしょぼい頭だから理解できなかった??そっか、昔のナツだから、今のナツよりもっとしょぼいんだった。」
「ひでぇなっハッピー。ちゃんと聞いてたぞ!!未来だから、部屋の数が変わってって、置いてあるもんなんかも違うんだろ?
さっきのルーシィも、なんか髪長かったみてぇだし。・・・つーかよう?何でうちでルーシィ寝てんだ??」
ナツの素朴な疑問に、ハッピーは言葉を詰まらせた。
(そうか!!このナツはまだルーシィと付き合ってもいないんだった!!どっどうしたらいいんだろう??本当のこと言っていいのかな~。。。。)
「なぁハッピー。このソファもルーシィのだろ??貰ったのか?」
(っ!?おいら、上手く話せる自信ないよ~!!ってか、一緒に住むようになったいきさつとか知らないし。。。。)
「なぁ。ハッピー??どおしたんだ??」
「・・・・・もう少ししたら、ルーシィが起きるから、そしたら教えてもらいなよ!!」
額から汗を流すハッピー。
途端ナツの顔から笑みが消え、真剣なまなざしをハッピーに向ける。
「・・・ルーシィに会っていいのか??」
「うん。起きている時ならいいんだ。そのかわり眠る時は、術式の中に戻るから!!」
「ん????あぁ。。。」
ルーシィのかかっている眠り姫の魔法は、眠っている時間が、起きておる時間を越えると 眠っている時に感染するようになる。
しかも限定の相手だけに。
物語では、運命の人のキスで目覚めるが、この魔法はそんなことをしたら運命の人も一緒に魔法にかかってしまうのだ。
そう。好きあっている人にだけ、いや物語に沿っていえば運命の人だけと言ったほうがいいか、、、所作一番大切な人にだけ感染するのだ。
だから、ハッピーが近づいても平気だが、このナツは微妙だ。
こっちの時代のナツとルーシィは、結婚の約束をして一緒に暮らしている恋人同士なのだから、当然近づく事は出来ない。
たまたま、ルーシィ自身がこの魔法のことを知っていて、ナツに魔法がうつる前に回避できた。
万一、納得いかないとナツが 寝ているルーシィに近づかない様に、フリードに頼んで術式を書いてもらったのだが。。。
時代が違えば平気なのかな?
!?ダメダメ!!もしかかってしまったら、大惨事だ。。。
それでなくても、解除薬がないのにうっかりうつってしまったら、、、、はぁ。
説明はルーシィに任せた方がいいだろう。
ナツは昔から、ルーシィのいう事なら素直に聞くのだから。
もうすぐ、ルーシィが起きる。
今ルーシィの覚醒時間は、3時間と少しだ。
1日30分くらいのペースで覚醒時間が減り、睡眠時間が増えている。
このままでいくと、あと1週間もすればルーシィは。。。。
「ナツゥ。。。」
自分が呼ばれたのだと思ってナツが振り返ると、ハッピーが歯を食いしばり ポロポロと涙を流している。
(・・・・なんか事情があるんだな。。。今はこのハッピーの言う通り、未来のルーシィが起きるのを待とう。)
ハッピーが出してくれた菓子を貪り お茶を飲んでいると、ガタンとドアが開いた。
腰までながく伸びた綺麗な金髪を携え、目鼻立ちのしっかりした、綺麗な女性がそこにいた。
ナツをみて、一瞬目を見開いたが 悟ったようににっこり笑った。
自分の知っているルーシィとは違い大人びた印象を受ける。
「いらっしゃい。ナツ。」
「ルーシィ!!」
ハッピーが労わるようにルーシィの手を引きソファに座らせた。
声も、匂いも変わらないのに、、、、やはり自分の知っているルーシィではないのだと思った。
何しろ、、、何だか愁いを帯びていてそれが、逆に色香を出すのだろうか。。。。
色気があるのだ。ルーシィに!!
「・・・いらっしゃいでもねぇだろう。」
ナツがそう言うと、フフッとルーシィが笑った。
まるで花が咲いたように、やさしい空気が漂ってくる。
「そうね!ここ、もともとナツの家だしね!!じゃぁ・・・お邪魔してます?」
小首をかしげる仕草は、いつものルーシィと一緒だ。
「・・・・いぁ。。。」
ルーシィの表情に、ナツはなんて返していいか解らない。
「ナツ~!聞いてみれば??」
ルーシィの分のお茶を持ってきたハッピーが、おもしろそうに言った。
「えっ?なに?なに??」
ルーシィが、ナツとハッピーの顔を交互に見ている。
「あっあぁ。・・・・えっとぉ、、、そうだな。。。・・・なんでここにルーシィの部屋があるんだ?」
「あぁ!!そっか、まだナツと一緒に暮らしていないのね!!」
ルーシィはポンと胸の前で掌を合わせて、困ったようにでもどこか面白そうに笑った。
「・・・・まだ??」
「あはっ・・・・・まいっかぁ!あのねっナツ。いろいろ質問はあるだろうけど、、、う~ん。。。未来に起こる事を知りたい??」
ちょっと困った顔をしたルーシィが、まぁいっか!!といった表情に変わってナツを見つめる。
笑顔なのに、その眼はどこか真剣だ。
気になるものは気になる。
でも、、、、目の前のルーシィの表情を見ていればわかる。
嫌でも、確信してしまう。楽しいことが待っている!!
「いんや!!その時になればわかる事だろ?先に知ってたら面白くねぇ!!!」
「ふふっそうよね!じゃぁ、当たり障りのないとこだけ。ここにあたしの部屋があるのは、アタシもここに住んでいるからよ!!いっしょに住んでいるの!!」
ナツの発言に、満足そうに にっこりとルーシィが笑った。
「・・・一緒に住んでる。。。。??」
「うん、いつどうしてかは 言わない方がいいよね? でもまぁ、家賃がいらないからって、、、それにひかれちゃったのよね。」
まだうまく情報を処理しきれていなそうなナツを見つめて、ペロっと舌を出して笑うルーシィ。
何か違うと思ったら、笑い方が少し違うんだ。
こっちのルーシィは、落ち着いているというか、大人びているというか、、、自信に満ちている?
完全に手玉に取られている気分だ。
楽しいルーシィとの時間は、瞬く間に過ぎていった。
あっという間に、ルーシィが微睡み始める時間になってしまった。
「んんぅ。。。部屋。戻るね?」
フラッと、よろけながらルーシィが元いた部屋に戻っていった。
手を貸そうとしたが、ハッピーに制止された。
ルーシィの説明によると、ルーシィの眠り姫の病はオレにうつる可能性があるらしい。
一番身近な人物にだけうつるものらしいのだ。
説明している時、どこか距離を感じる言い方だったが、少し照れくさそうにそう言っていたルーシィは、綺麗に笑っていた。
あと、1週間なんだ。。。。。
なんであんなに、落ち着いてられるんだ??
未来の俺は何やってんだ??
早く帰ってこいよ!!
見えない自分に対して、嫌な焦りを感じる。
もしかしたら、このままルーシィが目覚めなくなってしまうのかもしれないなんて!!
でも、こっちのルーシィも、ハッピーも オレを信じて待っている様だった。
特にルーシィは、力強い目で、不安がるハッピーを何度も元気づけていた。
1番不安なのはルーシィのはずなのに。
何もできないまま日にちだけが過ぎていった。
1日ずつ話す時間が少なくなっていくルーシィは、相変わらず笑っている。
ここの俺は、どうやら少しは背が伸びたようで、ルーシィがヒールを履いても頭一個分は高いと言っていた。
一緒に歩くとね!首が痛くなっちゃうから 大変!!と楽しそうに笑う。
歩幅が違うから、追いつくの大変なのよね~と嬉しそうに笑う。
未来の俺の事なのに、ルーシィのその笑顔が、どこかくすぐったい。
こんな依頼にいったね!とか、俺でも知っている 昔の話しをずっとしていた。
クルクル変わる表情と仕草、ルーシィの常套句「しょうがないわね。」は健在で、いつまでもこうやって笑っていて欲しい。
オレ達は、限られた時間を逃さないように、寝ている時も 近づくことは出来ないが ルーシィから離れられなかった。
1日の大半を寝ているお蔭で、栄養や運動の足りていないルーシィは、いつも俺の近くにいるルーシィよりも少し痩せて見える。
叩けば弾くツッコミは健在だが、声に力がない。
とうとう、起きているのにベットから起き上がれなくなった。
オレがここにきて、、、、6日目の事だ。
ルーシィの起きている時間はもう、、、1時間を切っている。。。
!!!何やってんだよ!!!オレ!!!!
ここのオレが帰ってきたらすぐ薬の調合ができる様にと、ポーシェリカのばっちゃんやレビィやウエンディ、ミラ達がうちに来ていた。
エルザやグレイ他のメンツは、ギリギリまで その薬草を探しに出ているらしい。
みんなどこか大人びているような気もするが、、、さして興味もない。
ウエンディが、スラ~っと背が高くなっているのには驚いたが。。。
あと、、、ばっちゃんは、何も変わらないが。。。
静かに眠るルーシィは、綺麗だった。
元々、寝相の良いルーシィだから 人形の様に動かなくてもさして驚かない。
普段、きったない酒場ではしゃいで、喚いて、大声で笑っている時も、他の誰より目をひくが、
こうして、じっくりルーシィの寝顔を見る事なんてなかったからか、なんだか目が離せない。
透ける様な白い肌。
柔らかそうなフォルム。
絹糸のような金糸。
長い睫、
形のいい輪郭。
ぷっくりと柔らかそうな唇。
スースーと呼吸のたびに上下する胸。
やっぱり、ルーシィっていいつくりしてんだよな。。。
でも足りない。。。何かが足りない。。。
・・・・・そうだ。
ルーシィは、笑っているんだ。いつも。
この物足りなさは、、、ルーシィの笑顔が足りなかったのだ。
カチカチと秒針が時を刻む。。。時間だけが流れていく。。。
苛立つ俺に、起きてきたルーシィが 変わらない笑顔をくれる。
「まったくもぉ!!自分を信じなさいよ!ねっ?」
その場の空気がすっかり和む笑顔だ。
ここにきても、ルーシィの信じる強さには 敵わない気がする。。頭が上がらない。
「そろそろ時間だね。」
ハッピーが、傍らに降りてくる。
「おう。」
こっちの俺が帰ってくる時間だ。
元より今日戻ってくることは決まっていたらしい。
オレも、自分の時代に戻れる。
大好きな、オレのルーシィのいる時代へ。
帰ったら、一緒に暮らせるように作戦をねらねくちゃな!!
きっと、ハッピーも協力してくれる。
ルーシィと暮す毎日は、楽しくてしょうがないはずだ。
ハッピーと相談して、家の改装しなきゃな。
ルーシィの部屋を作ってやんなきゃな。
大きめの本棚も作りつけちまえばいいんだ。
きっと、ルーシィは目を輝かせるはずだ。
ポーーっと地面が光出す。
時間だ。
「ナツ!!大丈夫だよ!!またね!!」
ハッピーが手を振っている。
「ナツ!!そっちのあたしによろしく~!!」
ルーシィがベットの上で笑っている。
こっちの自分に会えないのは、なんだかちょっとだけ残念だが、仕方ない。
オレの時代では、未来のオレはじっちゃんにだけ事情を話して 他の皆からは姿を隠しているはずだって言ってたな。
ってことは、オレは、しばらく消えていたことになるんだろうか?
いや。じっちゃんがうまく言っといてくれてんのか?
・・・まぁ。そんなのどうでもいい。
ルーシィは。。。心配してなきゃいいな。
・・・・・泣いてないだろうな。
でもきっとルーシィなら、分かってくれる。
なぜか、確信している。
ちゃんと、頑張ってきたでしょうね?って笑ってくれる気がする。
・・・・・今、帰るから。
*
いつナツが帰ってきてもいい様に、開け放っていたいつもの窓に 桜色が揺れた。
ガタンという音で、ハッピーと一緒にそちらを向くと、我が物顔でベットに座る桜頭の少年??
「ナツ!!!」
思わず大きな声を出して、あたしは そちらに駆け寄った。
ハッピーも、あたしに倣うように駆け寄る。。。が、その足が止まった。
「・・・・え?」「ナツ。成長期??」
目を見開いて、きっと おかしな顔をしているであろう あたしと、素っとん狂な事を言うハッピーに、その人はやさしく笑いかけてくる。
「心配かけたな!!もう帰ってくるから。」
そう言って、ニッと笑うその人は、ナツだ。
ナツだ。ナツだ。ナツだ。・・・ナツじゃない??
いや、目の前にいるその人は、多分ナツだ。でも不自然な違和感がある。
「え?・・・ナツ。。。何か変な薬でも飲んじゃったの?」
ハッピーがそんな事を言うが、そんな事ではなさそうだ。
だって、目の前のこの人は、ナツであるのに知らない人みたいだ。
落ち着いていて、余裕さえ感じられる。
言葉がのどに詰まって出てこない。
「・・・ナツよね?」
やっと出てきた言葉がこれだ。
「んん~?ま~なっ!!」
ナツらしい青年は、ニッと笑ったままだ。
「ナツだよ~?!ルーシィ。」
「そうかもしれないけど。。。なんでぇ??」
目下混乱中だ。
目を白黒させ狼狽えるルーシィを、愛おしそうに青年ナツが見つめている。
「訳は、知らなくてもいいと思うぞ!!その内自分で体験すんだから!!」
「えっ!?ってことは、未来のナツ??」
「えぇぇ!?!?!?」
「おう。しっかしハッピーは変わんねぇけど、この時代のルーシィは、可愛いなぁ~!!この部屋も懐かしい!!!」
ルーシィを隣に座らせ、頭をなでなでする青年ナツ。
「懐かしいって、ナツの所では、ルーシィもうここには住んでないの??」
早くも、未来の存在になれたハッピーが質問する。
「んあ?おぉ。オレ達は一緒に暮らしてんだ!!ってこれ言ってもいいのか??言っちまったけど。。。。。。まぁいっか!!」
「うそっ!!!!」
真っ赤になるルーシィに、
「一緒に住むことになった時、家賃払わなくなったら、その分本が好きなだけ買えるわ~って喜んでたぞ!!」
「ねぇ、それって、ナツとルーシィは・「おっ!!時間だ!!」」
ハッピーの言葉の途中で、ナツが立ち上がった。
青年ナツは、テーブルい1枚のメモを置くと、何やら大事そうに袋を握りしめた。
「オレに渡しといてくれ!!じゃぁな!!」
そして、魔法陣が浮かびでてきて、青年ナツがその中に消えた。
突然の未来のナツの登場に、混乱したままで そのうえ爆弾発言を貰い、ルーシィは言葉も出ない。
*
気が付くと、自宅の床に転がっていた。
「んあ?」
シーンと静まり返った家の中。
少し、締め切っていた嫌な空気の匂いがする。
もしかしたら、ここにはあの日から ハッピーは1度も戻っていないのかもしれない。
コキコキと首を鳴らしながら立ち上がると、机の上にメモを発見した。
ナツが目を向けた位置に扉はない。
見覚えのある、へったくそな字だ。
そのメモを握り潰し、ポケットにしまって運河沿いのあのアパートに向かう。
「ルーシィ!!ハッピー!!」
冬なのに開け放たれたいつもの窓に勢いよく飛び込んだ。
大好きな匂いと、うまそうな匂いがする。
直ぐに青い塊が、顔面に飛び込んできた。
そいつを引っぺがし、頭を撫でてやると、ギルドの報告してくる~っと窓から出て行ってしまった。
キッチンに、おたまを握ったままのルーシィが、こちらを凝視して固まっている。
「ナツ。。。。本物だ!!」
1ッ歩ずつ近づいて行く度に、ルーシィの双眼に雫が溜まっていく。
「おう!!」
また1歩。また1歩。また1歩。
「ばかっ!!」
また1歩。また1歩。また1歩。
「ただいま。ルーシィ!!」
ルーシィの目の前まで来て、ナツがニッと笑った。
関を切った涙が、ルーシィの双眼から流れ落ちる。
「おかえり!ってどこ行ってたのよ!!もう!!遅いのよ!!!」
ポスンとマフラーに顔を埋める様に、ルーシィの頭を引き寄せた。
ナツは、ルーシィの頭に手を置いた。
「ちょっと、未来になっ!!・・・寂しかったのか?」
「なっ!?////そんなことないもん////」
真っ赤な顔で、ナツを睨み付けてくるルーシィ。
「そッそりゃぁ、、何も言わずに居なくなっちゃうんだもん!!心配くらいするわよ!!」
「そっかそっか~。ルーシィはオレがいなくって寂しかったのか~!!寂しかったんだよな!オレがいなくって!!」
ニヤニヤと嬉しそうに笑うナツ。
「!?もー!!!寂しかったわよ!!何だか理由も解らず居なくなられたのよ?寂しかったし不安だったし怖かったわよ!!でも。ナツの事は信用してるもん。何か事情があるんだろうから帰ってくるの待って。。。」
「なんか、、、ルーシィが心配してくれてたのも、寂しいって思ってくれたのも、、、オレ すっげぇ嬉しい!!」
ルーシィをこれでもかって抱きしめたままナツがルーシィを誘う。
「未来でさ。ルーシィ笑ってたんだ!!。。。だから、一緒に暮らそうぜ!ハッピーと3人で。ぜってぇ楽しいから!!」
ルーシィは目を丸くして、ナツの腕の中で体を震わす。
「ルーシィ専用の部屋も作るぞ!!そこにでっかい本棚作ってやる!!なっ??いい考えだろ??」
抱え込んでいた、華奢なルーシィの肩に手を置き、その表情を覗くように顔をかたむける。
「なっ?」
「なっ!じゃないわよ!!」
怒ってるんだか、照れてるんだか、真っ赤なまま困った顔をするルーシィ。
そっそりゃ。
あたしは、ナツ好きだし。
ハッピー可愛いし。
3人で一緒に過ごしていけたら楽しいと思うわよ!?
でもでも、、、何もかも、すっ飛ばし過ぎじゃない!?!?
「もう!!あんたは、言葉が足りないのよ!!!」
それでも、ナツの未来に当たり前の様に自分がいることがうれしい。
言葉とは裏腹に、口角が上がってしまうルーシィ。
「あぁ??」
なんだぁ??ナツが首をかしげると テーブルの上にある1枚のメモが目に入る。
大きく『K』と書いてある。
っ!?そうだな。。。。。。。。。。。作戦『K』
いつになくナツの真剣な目に、ルーシィがしっかり映る。
「なぁルーシィ・・・・・。」
2人の間に、確かな約束が交わされ 1つになる。
ナツのポケットから、1枚のメモが落ちた。
『何も心配ない。ルーシィをあんまり 待たせるなよ!!』
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
お粗末様でした。 ご感想など、お待ちしております。