20150510 Twitterタグ企画『#フォロワーサンの絵から小説を書かせていただく 』で、
構っていただいている星桜ちゃんからいただいたイラストを元に作文しましたぁ~!!
もう一つの世界のアイツとアイツ
↓星桜ちゃんから、強奪させていただきました!!↓
あの日あの時、僕らの世界から魔法が消えた。
あれからぼくたち妖精の尻尾は、先頭に立って皆を導いてくれる王子を影で助けながら、国を守っている。
――はぁ…
――まだルーシィさんいないんだ…
荷運びと、建物の修繕の依頼から帰ってきて、ナツはギルドの門を潜った。ギルドに顔を出すが、あの綺麗な金髪を見つけることができなかった。彼女は何かというと、妖精の尻尾の代表として王宮に呼び出され、しぶしぶと言った様子ではあるが――芯に何かともる様な眼差しで城に向かっていた。ジェラール王子の元に――。
先日、街の修繕を手伝いながらナツは偶然見かけていた。大声を出して笑うルーシィと、仲良さげに微笑むジェラール王子。――2人は美男美女で、はたから見れば似合いの2人だった。男勝りなルーシィの手綱をジェラール王子はうまくにぎっている。頼りになって、優しくて――イケメンな王子様だ。
――ぼくが……敵うところなんか何にもないんだ――
「お~すっ。帰ったぞ~!! お~ナツも、帰ってきてたんだなっ!!」
カウンターに座って遅い夕飯を食べていたナツの隣に、背負っていた大荷物をどさりと床に置くとルーシィが座った。短くカットされてしまったきれいな金髪は、もう肩についてはねるくらいには伸びてきていた。
――きれいだなぁ……
――早く、ルーシィさんが安心して髪を伸ばせる世界を作らなきゃな…
「ルーシィさんっ! おかえりなさいっ。遅くまでお疲れ様っ」
「おうっ! ナツもこの時間に飯食ってんじゃ、頑張ってきたんだろっ。おつかれっ!」
ルーシィはナツの桜髪をクシャリと撫でると、持ち帰った荷物から瓶を二つ取り出した。その内の1つを「ほらよっ」とナツに手渡した。
「……?」
「……内緒だぞっ」
口の前で人差し指を立ててみせると、声を潜めてルーシィはにやりと笑った。きっと城でもらってきたのだろう。それは今は貴重な、発砲するお酒。
「他の奴に見つかる前に……一気に飲んじまおうっ」
2人で仲良く栓を開けると、ルーシィはナツの持つ瓶にコツリと自分の持つ瓶をあてた。
*
「おいナツ……」
「……あい」
「…お前…そんなに酒、弱かったけか?」
「……女の子が、そんな言葉使っちゃだめだよ。ルーシィさん」
「っ!! …うっうるせぇな……この荒んだ世の中じゃ…男の女もねぇだろっ…」
「荒れた世界を正すんでしょう? 僕らでっ!!」
「ぅっ……そっそうかも知れないけどな……そんな急に、アースランドのルーシィみたいには…いかねぇよ……」
尻すぼまりに小さくなる、ルーシィの声。
ナツはあの日、アースランドのあたし達と会ってから、言葉使いとか服装とか――うるさい事言うんだよな――。
――ルーシィさんは……長い髪とか、スカートが似合うんだよっ!
――……って言ったてな…
――そんなにあっちのあたしが、可愛かったかよ…
――どうせ、こっちのあたしはこんな性格だ……今更どうにもなんねぇのに
「そういう事を言ってるんじゃないです!! ルーシィさん」
「そう言うナツだってなぁっ! 運転席に座らなくても、ちったぁ男らしくしやがれってんだ!!」
「うぐっ……痛いところを…」
「……大体、なんで今更そんなこと言うんだよ? あたしがあたしらしくってな何がいけねんだよ……」
唇を付きだし、完全にいじけた様子のルーシィは、カウンターテーブルに肘をついた。その横顔をナツは恨めしそうに眺めている。
「……やっぱりルーシィさんも、男らしい人の方がいいですよね……」
「…………はぁ?」
「ぼく……アースランドのぼくさんは、かっこよくて男らしい人だったのにぼくは……」
「何言ってんだよっ。あっちのナツはあっちのナツで、こっちのナツとは別人だろ? 気にするこたぁねえだろっ」
ルーシィはナツの小さくなっている肩に片腕をまわし、空いている方の手で桜頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。そしてナツに気付かれないように、小さく息を吐きたした。
「ナツは、ナツだろっ」
「……でもさっ」
「でもなんだよ……」
既にそこには、眉間にしわを寄せた不機嫌なルーシィがいる。ナツは眉間に寄せて、哀しそうに瞳を揺らした。
「だって……ルーシィさんだって……男らしい男の方がいいんだよね……」
「…………えっとぉ/// それってさっあたしが好きって事か?」
たった1本の酒でも、久しぶりのアルコールにもともと酒に弱い2人の目は、すっかり座っている。
「そっそうだよ……こんなぼくでも……ルーシィさんがっ/// 好きなんだ……だからっ」
「男らしくなりたいって? う~ん。……別にそのままでいいけど? あたしは」
「……そうだよね……え?……ぇぇえええ!!?!?」
真っ赤に全身を染めるナツと、ほんのり頬を染めるルーシィ。頬を染めながらニィっと笑ったルーシィに、弾かれる様にナツが椅子を倒しながら立ち上がった。
「だってぼくはっ…ルーシィさんみたいに綺麗な人には、王子様みたいな人がお似合いなんだって……思っていて……」
ギルドに残っていた数人がナツとルーシィに注目している。そして近くにいたナツの親友が慌ててやってきた。その後ろでは、テーブルに寄りかかったままのジュビアがナツとルーシィの方を見つめている。
「ナッナツ!! ルーシィ!! みんなに見られてるよ~」
「まったく、こんなギルドの真ん中で、告白大会? ……フンッ。暑っ苦しいわっ」
カツカツとヒールを鳴らしジュビアがやってくると、ルーシィと鋭い視線を合わせた。
ジュビアの暑っ苦しいという発言に、グレイは慌てて着こんでいた洋服を脱ぎだした。しかしその体はすぐに寒さに震えてしまう。
「……で? ルーシィはへなちょこナツが好きなの? それとも王子様?……クスリッ」
「はっはぁ!? ジェラールは関係ねぇだろうがっ! あんなクッソ真面目な奴こっちから願い下げだよっ」
「じゃぁ……そこで涙目で見つめてくるへなちょこくん?」
「っ!!おいっ!! うちのナツの事を、テメェがへなちょこ呼ばわりすんじゃねぇっ」
ジュビアの乱入により置いてきぼりを食らったナツは、グレイと共にその成り行きを呆然と見つめている。すると、ぐるんとルーシィが金糸をなびかせ振り返った。
「ナツっ!!」
「はっはいっ!!」
「ここであたしに……チューしてみろっ」
「へっ/// ちゅっちゅぅ!?」
「……できたら、あたしの気持ちも教えてやるよっ」
ハラハラと服を着込むグレイと、胸の前で腕を組み大股開きで立つジュビアの前で、ルーシィはナツに向かってたち、静かに目を瞑った。
*
*
*
――ふぇっ///
――ルッルーシィさん大胆すぎだよ~///
*
*
――あっ……まつ毛長いなぁ
――やっぱりかわいいなぁ///
*
*
どれくらい経っただろうか? ルーシィの閉じている瞼が、ピクリと震えた。
「……まだかよっ」
「うっ////// いっ今から、いっいきますよ~///」
*
*
瞼の先でナツの体温が右往左往している――。
ルーシィが辛抱ならず薄目を開くと、真っ赤な顔で全身を緊張に震わせ――じりじりと頭を傾かせながら体を震わせるナツの姿が見えた。
「……ったく///」
ルーシィは、目を開くと目の前のライダースーツの襟元を掴み、グイッと自分に引き寄せた。
“チュッ”
唖然と目を見開くナツの耳元に「好きかどうかは、お預けだなっ」とルーシィが囁くと、真っ赤に固まったナツをグレイに向かって突き飛ばし、足早に去って行ってしまった。
目をぐるぐると廻して、脱力するナツはその凛々しい背を見送った。
「……ルーシィのヤツ」
「え? なになにジュビアちゃん」
「ちょっ! 暑っ苦しいわよっ」
「……あっごっごめん……グスッ」
「……照れてたわよっ」
「え?」
「ルーシィのヤツ……顔真っ赤に染めて、照れてたのよっ……可愛いとこあるじゃないっ」