momomosumomomomomonouchi

Twitterでもpixivでもお世話になってる翡翠ちゃんより

改めて！お誕生日おめでとです(*´ω｀*)
moさんにとって良い一年になりますよーに('▽')！
リクで「ナツルーハピでお料理」とのことだったので、それなりに作ってみましたが・・・どうだろ。
三人でお料理・・・のはずが、途中で気付きました。ハッピーお料理に参加してない！！
すみません。リクしてくれたのに。
そんな小説ですが、思ったより長くなってしまいました。無駄に(´・ω・`)
なので頑張って読んでください・・・！！笑
※題名は別に笑いをとろうとしてるわけじゃないですよ～('◇')笑

【ごはんですよ】

日が落ちて暗くなったマグノリア。ルーシィは大きく肩を落としながら、ふらふらとした足取りで帰路についていた。

「はぁ・・・疲れた」

今日は仕事にも行かず、一日中ギルドで過ごしていた。ならばとくに疲れるようなこともないだろう、と誰もが思うだろうが・・・。

この日は朝から帰るつい先ほどまで、ずっと訳の分からない喧嘩をしている“二人組”の対応に追われていた。
ルーシィが朝ギルドに着くと酒場は騒がしく、すでに喧嘩は始まっていて。最初はとくに気にすることもなく、どうせ少ししたら勝手に終わるだろう、と思っていたのだが・・・お昼を過ぎても一向に二人の喧嘩は終わらなかった。しかも次第に激しさを増していき、ギルドの看板娘も「困ったわね」と眉を下げてため息をついていた。読書をしていたルーシィも、あまりの騒がしさにページをめくる手が止まり、口を出さずにいられなくなった。しかしルーシィが何度仲裁をしても効果は無く、治まったかと思いきや顔を合わせればまた喧嘩は始まって。
エルザやマスターが不在なのをいいことに、盛大に魔法を使って暴れてしまうし。

「ほんっと子供なんだから・・・ナツもグレイも」

帰り際にようやく喧嘩が終わったが、ギルドの中はひどい有様だ。ミラジェーンはいつものように美しい笑みを浮かべていたが、内心はとんでもなくお怒りだ。喧嘩でボロボロの状態になった二人を床に正座させ、笑顔のまま優しい口調で叱っていたが・・・。

彼女の目が笑っていないことに、みんな気付いていた。

二人に呆れ果てたルーシィは何も言わず、一人そのままギルドから出てきたのだ。

「あの二人、きっとまだミラさんからお説教くらってるわよね」

エルザとマスターが帰ってきたら、ミラさんよりすごいお説教とお仕置きが待ってるんじゃないかな。あいつら、それ分かって喧嘩してんのかしら。

とりあえず、今日はあの二人のおかげで心身ともにクタクタだ。もうあんな喧嘩はやめてほしい。仕事以上に疲れるし、ヘタをしたら巻き込まれてしまう。

早く疲れた身体をお風呂で癒したくて、ようやく見えてきた家に向かい、少し駆け足になる。


「・・・あれ？」


その時、ふと自分の部屋の明かりがついていることに気が付いた。

おかしいな、今朝は明かりなんてつけてないし・・・って。

「もしかして、また？」

なんとなくその原因が分かった。きっと、いつも人の部屋に勝手に侵入するあの二人・・・ナツとハッピーだろう。
・・・だけど、それならば妙に早いな。

ルーシィはミラジェーンに絞られているナツとグレイ、その光景を見てからギルドを後にした。
ナツに越された覚えはない。ギルドからはいつも自分が歩いているこの道以外、家に戻れる道は他にないはずだ。・・・だとしたら、ハッピーがナツを部屋まで運んだのか。

階段を上り自分の部屋の前まで来て、ドアノブに手をかけ恐る恐る開けると、


「もうナツ、そうじゃないってばー。だから、こうして、こうやってー」
「こうか？おわっ、やりすぎちまった」
「あああっ、ナツこっちもこっちも！」
「ちょっと待てって・・・うおお！？」


騒がしい物音と二人の声が、室内に響き渡っていた。
あいつらは人の部屋で一体何をやっているのか。ルーシィは少し驚かしてやろうかと思い、静かにドアを閉めて室内に入る。

・・・ん？

すん、と鼻を鳴らすと、なんだか嫌な匂いがしていることに気付いた。

え、ちょっと待って？この匂い・・・。

もう一度鼻を鳴らして匂いを嗅いでから、ルーシィは確信する。

なんか・・・焦げ臭い！？

そう思ったら先ほどまでの驚かそうという気はどこかへ飛んでいき、ルーシィは慌てて二人のいるであろうキッチンへ足を運ぶと、そこには今朝と全く違う光景が広がっていた。
床に散乱している汚れたお鍋やフライパン。あろうことかお気に入りのお皿も何枚か割れて落ちている。
焦げ臭い匂いが立ち込めて、もくもくと黒い煙まで上がってる。冷蔵庫から取り出したのか、野菜や果物がいろんなところに転がっていて・・・。


「なっ、何よこれぇ！？」


あまりに酷すぎる状態のキッチンに、声をあげずにはいられなかった。するとルーシィの声を聞いたナツとハッピーがくるり、と後ろを振り返る。

「あ、ルーシィ」
「よお。おかえり」
「ただいま・・・って！！あんたたち、一体何してるのよ！？」

けろっとした様子でルーシィを見るナツの両手には、切れ味が良いと勧められて購入した、ナイフが握られていて。

「ちょっ、え！？や、さ、刺さないで！！」
「は？別に刺したりしねえよ」
「わわわっ！あ、危ないからそれ持って近付いてこないでよ！！」

歩み寄ろうとしていたナツはルーシィに全力で拒否されて、むぅ、と顔を膨らませる。

「あ、あんたたち、一体ここで何をやっているのかしら？」

こんな酷い有り様を見せられて、落ち着いていられるほど冷静ではないがとりあえず彼らの言い分を聞こうと思い、ルーシィは引きつりながらも笑顔を作った。

「ルーシィ、見て分からないの？」
「メシ作ってる以外に何があんだよ」
「ご飯作ってるの、へぇー・・・でもご飯作るだけなのに、どうしてこんなにキッチンがめちゃくちゃになるのかしら」

自分たちのご飯を作るなら人の部屋のキッチンなんて使わずに、とっとと帰って自分家のキッチン使いなさいよね！？

ただでさえ疲れているのに二人の相手もして、その上汚れたキッチンまで掃除しなきゃならないなんて。
いらない仕事を増やしてくれた二人に、ルーシィの顔から徐々に笑顔が消えていく。
そんな彼女の様子を知らないハッピーが、エーラで空中に浮いたまま告げた。

「あのね、今日はルーシィに迷惑かけたから、そのお詫びのつもりでご飯作ろうって」
「おう」
「え、あたしに・・・？」

きょとんとするルーシィに、二人は顔を見合わせて笑う。
あたしのために、作ってくれてるの？こんなにキッチンめちゃくちゃにしてまで？

「・・・ていうか、あんたたち何を作ってたの？」
「えーっと・・・なんだっけ？」
「途中から分かんなくなったから、とりあえずできたらいいやで作ってたからね。ルーシィならなんでも食べれるし」
「あたしのこと何だと思ってんのよ！？」

チラッとフライパンの中を覗き込むと、真っ黒に焦げたお肉が入っている。焦げ臭い原因はこれだったのか。
まな板の上にはいろんな形で切られている野菜や果物があって、いくつか床にもそれがこぼれていた。

うーん、さすがに黒焦げなお肉は食べられないわ・・・。

冷蔵庫を開けてみると、昨日買い物したはずなのに食材がほとんど入っていなかった。まあなんとなく予想はしていた。どうせ二人が全部使ったのだろう。

「はぁ・・・いいわ、あたしここ片付けてなんか適当にご飯作るから、あんたたちはあっちに行ってて」
「嫌だ。オレたちまだ作ってる途中なんだぞ」
「んなこと言ったって、こんな汚い状態でご飯なんて作れないでしょ？」
「作る！作れる！お前があっち行ってろよ！」
「きゃっ！？だ、だからこっちにナイフ向けないでってば！」

いつもなら食べる専門で、作るとか面倒くさそうなのに。なんでこんな意地になるのよ。
ルーシィの言葉に一向に引く様子を見せないナツに、小さく息を吐く。
このままでは埒があかないと思い、ルーシィは床にしゃがみ込んで落ちている食器やフライパンを拾いだした。

「とりあえず、先にみんなでここ片付けよ。ご飯の話はそれから」
「あい」
「・・・おう」

ルーシィに合わせて、ナツとハッピーも黙々と片付け始める。めちゃくちゃになっていたキッチンを少し時間がかかったが元通り綺麗にし、ルーシィは無事な食材を手に取るとうん、と頷いた。


「オムライスなら作れそうね」
「オムライス！？」


その言葉にナツは目をキラキラと輝かせ、ルーシィの顔を覗き込む。

「う、うん・・・二人とも、オムライス嫌いじゃなかったわよね？」
「あい！大好きだよ！」
「オレも！」

さっきまでの暗かった表情と打って変わって子供のように喜ぶ二人に、ふふ、と笑みをこぼした。

「じゃあ、オムライスに決定ね」
「おう！・・・って、ルーシィが作っちゃダメなんだっつの！！」

まるで自分に言い聞かせるようにナツが叫んだ。まだそんなこと言ってる・・・。

「もう、そんなにこだわんなくたって・・・」
「今日はオレらが作るって決めたんだ！だからルーシィのオムライスは、が、が、我慢、するっ」
「えー、オイラルーシィのオムライス食べたい」
「裏切んのかハッピー！？」

つい数秒前までナツの隣にいたハッピーがルーシィの味方にでもなったように、こちらへ飛んできた。
これで二対一。有利になったかと言えば、そういうわけでもない。だってナツはたとえ味方がいなくなったって、一人でどうにでもしてしまうのだから。
強情なナツを説得させるのは難しい。ルーシィはしょうがない、と一言呟いてナツの隣に立った。

「・・・じゃあ、一緒に作ろ？」
「へ？」
「ナツ一人にやらせたら、またキッチン汚しそうだし」
「うっ」
「それにいつまでたってもご飯できあがらなそうだし」
「ううっ」
「あたしも一緒に作る。ハッピーもオムライス食べたいって言ってるし・・・ね？」

最初からこれを提案すればよかっただろうか。ナツはぐぬぬ、と一人何かと葛藤し、しばらくすると少し唇を尖らせて「・・・分かった」と呟いた。

「けどさ、三人でここに立つの狭くない？」
「立つって・・・あんた飛んでんじゃない」

ビシッと空中にふよふよ浮いているハッピーに指を差して指摘する。

「立つのも飛ぶのも変わんないよ。オイラ、あっちでご飯できるの待ってていい？」
「まあ、いいわ。できたら呼んであげる」
「あいっ」

ルーシィの言葉に敬礼して、ハッピーはキッチンから離れた。

さて、と・・・。

まさか、ナツと二人でキッチンに立つ日が来るなんて。なんか緊張するなぁ。
妙にそわそわしてナツのほうを振り向くと、ルーシィの視線に気付いたナツがこちらを向いて目が合った。

「え、えーっと・・・玉ねぎと人参はナツたちが先にみじん切りしてくれてたからこのまま使えるとして、鶏肉は・・・」
「これか？」
「そんな真っ黒焦げなお肉、使うわけにいかないでしょ！」

人差し指と親指で黒焦げのお肉つまんで持ち上げるナツの頭をぺしっと叩くと、彼の頬が大きく膨らんだ。

「んだよ、せっかく焼いたのに」

つまんでいるお肉をぶらぶらと揺らしながら、ナツがボソッと呟く。

あ、そっか・・・あたしのご飯作るために、焼いてくれたのよね。

「・・・他に鶏肉無いから、そのお肉使おっか」
「え？」
「黒焦げだけど、小さくカットして・・・さ。捨てるのもったいないし」

せっかく焼いてくれたんだもんね。

そう言うとナツは嬉しそうに笑って、「じゃあオムライス作んぞ！」と一人気合を入れながら左の袖を捲った。

「ルーシィ、オレ何すりゃいんだ？」
「んー・・・それじゃあ、ナツにはご飯とケチャップ混ぜてもらおうかな」
「そんだけか？」
「とりあえずね。ちゃんと味見してよ？」
「おう」

ルーシィはフライパンにみじん切りされた野菜と自分で小さく切った黒焦げのお肉を入れて一緒に炒めながら、卵をとかしていた。
隣ではナツが、「うりゃっ」と言いながらご飯とケチャップを一生懸命混ぜている。
そんな姿が本当に子供と変わらないくらい無邪気で、思わず笑みがこぼれる。

・・・可愛いな。


「・・・え？」


ふと我に返り、自分が彼に対して思った言葉が頭の中にぽんっと浮かんだ。

かああっと一気に熱くなる顔を冷ますように空いている手でぱたぱたと風を仰いでいると、肩をちょんちょんとつつかれた。

「なに、んぅっ・・・！」

振り向いた途端、ナツの手がルーシィの口に思い切り当たり、その瞬間口内に何かが入ってきた。

「どーだ？」

首を傾げるナツに、ルーシィはモグモグと口を動かせる。どうやら混ぜ合わせたケチャップライスを味見させているようだ。

「・・・うん、い、いいと思う」
「おっしゃ！」

ルーシィからOKサインをもらったナツは笑顔になり、ルーシィの口に押し当てた自分の指を見るとケチャップがついていることに気付いてぺろっと一舐めする。

「なっ・・・！」
「んぁ？んだよ？」
「・・・な、なんでも、ない」

頬を赤らめるルーシィを疑問に思ったのか、ナツはかくん、と首を傾げた。

どうしよう・・・妙にドキドキして、落ち着かない。ルーシィはナツがご飯にケチャップを程よく混ぜたその上に炒めた具材を入れて、再び混ぜた。そのあと熱されたフライパンに卵を敷いて、適量にチキンライスを乗せる。

「ん・・・っしょ」

久しぶりだから、あまり自信は無かったが。ルーシィは手首をうまく使ってフライパンを動かした。
すると見事ひっくり返すことに成功し、安心してほっと胸を撫で下ろす。
焦げ目の無い綺麗なオムライスが完成して、用意されていたお皿に滑らせる。

「ハッピー、オムライスできたわよ」
「やったー！」

ハッピーは嬉しそうに笑顔で飛んでくるなり、できたてのオムライスが乗ったお皿と傍に置かれていたケチャップを持ってテーブルに向かった。

「じゃあ、次はナツの分ね」

そう言って再び卵を敷いてチキンライスを乗せ、くるりと慣れた手つきでひっくり返す。だんだん感覚を思い出してきた。

うん、完璧な仕上がり。

「はい、あんたのもできた。最後はあたしのね」

卵もチキンライスも、あとちょうど一人分だ。ルーシィは最後だからと気を抜いて失敗しないようにとフライパンの柄を握る手に力がこもる。そろそろいいだろう、と思いひっくり返そうとした時、隣から「なあなあ」と声をかけられる。

「オレ、返したい」
「え？」
「オレが、ひっくり返したい」
「・・・あんた、できるの？」
「分かんねえ！けどきっとできる！」
「どっからそんな自信・・・まあいいわ」

ただ見ているだけは嫌だったのか。それともオムライスをひっくり返すのをやってみたいという好奇心か。やる気満々なナツを断ることができず、ルーシィは仕方なく場所を変わった。
ナツは両手でぎゅっとフライパンの柄の部分を握りしめる。

「・・・ちょっと、失敗しないでよ？もう卵もご飯も残ってないんだから」
「わーってるって！」

明らかに力が入っているようだが・・・本当に大丈夫だろうか。


「いっくぞー！！」


そう言うなり何故か腰を落とすと、ナツが勢いよく腕を振った。どうやら彼はルーシィが思っていた以上に力んでいたらしい。
フライパンから離れたオムライスは、勢いよく、空中へ上がり、上がり、上がり・・・。


――ベチャッ


・・・そんな音が、上から聞こえた。

「・・・ナツ」
「・・・は、はは」

物凄いスピードで空中へ上がり、そのまま天井にくっついてしまったオムライス。二人が茫然としてその無残な姿となったオムライスを見つめていると、それが次第に天井から剥がれてきて・・・そのままフライパンの中に落ちてきた。

「お、おし！できたぞ、ルーシィ！」
「ふざけんな！！」

ルーシィは綺麗な桜色に素早く右手を振り下ろした。





「あれ？ルーシィの分のオムライスは？」


数分後、妙に気まずい空気の中で三人はテーブルを囲む。ナツとハッピーの前にはホカホカのオムライスがあるが、ルーシィの前には何も置かれていない。

「いいの、あたしは食べなくても。あんたたち、冷める前に早く食べて」
「あい。じゃあオイラ、名前書くー！」

ハッピーはケチャップを持つと、すぐさまオムライスに「HAPPY」と自分の名前を書いた。

「いっただっきまーす！」
「召し上がれ」

オムライスをおいしそうに頬張るハッピーの横で、ナツはチラチラと何度もルーシィを見てくる。彼女は彼からのその視線に気付いていないわけじゃなかった。

「ほら、ナツも早く食べなさいよ」
「いあ、だって・・・」
「あたし、別に怒ってないから。一食ぐらい抜いたって平気だし」

安心させるべく笑顔を向けると、ナツは不満そうに小さく呟いた。

「・・・今日はルーシィにメシ作ってやるために来たのに」
「また今度作ってくれたらいいわよ」

その言葉を聞いたナツは隣に置かれていたケチャップを手に取ると、豪快に卵の上に文字を書き始めた。

N、A、T・・・あ、もしかして、ナツも自分の名前？

そんな予想していると、ナツはそのあと続けて「S」と「U」を書いた。やっぱり。予想的中だ。
しかし端っこギリギリから書いたせいか、ナツの名前の後ろが半分ほど空いてしまっていた。どう見てもアンバランスだ。
そう思っていると、ナツはまた何か書き始める。
ルーシィは首を傾げて書かれていく文字を目で追っていく。最初に、小さく「・」と書くと次に「L」、「U」、「C」、「Y」と順番に。


「・・・え？」


ナツが書き上げたオムライスの表面を見ると、「NATSU・LUCY」と書かれている。最後まで、隙間なくぴったりと。しかし限界まで細く書いたからなのか、微妙に文字と文字が繋がっている。

「うし、できた！」

ニッと満足そうに笑うナツに、ルーシィは戸惑いの表情を浮かべる。

え、っと・・・？

「ナツ、なんでルーシィの名前も書いてるの？」
「オレとルーシィのオムライスだから」
「どういう意味？」
「ほら、一緒に食おうぜ、ルーシィ」
「・・・は、はいいい！？」

ハッピーからの質問にさらっと答えるナツに、ルーシィの頭には疑問符しか浮かんでこなかった。

い、一緒に食おうぜ！？それって、そのオムライスを、ナツと、い、一緒につっついて食べるって、こと！？そんなの・・・恥ずかしくて無理！！

「い、いいってば！それはあんたのだから！」
「だってオレのせいでお前の分無くなったんだし。だから、な？」
「いや、な？じゃなくて！」

こいつはほんとに・・・気にしないにもほどがあんでしょー！？

真っ赤な顔のまま全力で拒否をしていると、ナツがスプーンをかちゃかちゃと動かして一口分のオムライスをルーシィの口の前まで持っていった。


「ほい」
「へっ！？」


まさかの展開に、ルーシィは身体を硬直させる。
これって、「あーん」しろってこと・・・よね。

「ほら、食えよ」
「あ、あたしいらないってば」
「んなこと言うなよ。もうお前の名前も書いたんだから、このオムライスはオレのもんでもあるけどお前のもんでもあんだぞ」
「勝手にあんたが書いたんでしょ！？てか名前書いたら自分のものって、そんなルールないわよ！！」

一向にスプーンを引かないナツに対し、ルーシィは必死に抵抗を続ける。二人のやり取りが面白いのか、ハッピーは食べるのをやめてじーっと二人の様子を観察していた。

食べる？食べない？ど、どっちかっていったらそりゃ、実際お腹も空いてるし食べたいけど。でも恥ずかしくて「あーん」なんて・・・。

ん、とナツから差し出されるスプーンがルーシィの口の前で止まったままで、これではいつまでたっても終わらないと悟ったルーシィは、仕方なく折れることにした。


「・・・じゃあ、ひ、一口だけ、ね」


一口。たった一口だ。それならば恥ずかしさも我慢できる。

諦めて差し出されたスプーンを咥えようとすると、ルーシィが小さくだが口を開けたのを見計らって、すかさずナツはスプーンをルーシィの口の中に押し込んだ。

「んぐっ！？」

勢いが強くてガチ、とスプーンが歯に当たる。しかしナツはそんなこと気にしていない風な顔つきで、ルーシィを見つめていた。

「うめぇだろ？」

自分はまだ一口も食べていないくせに、まるで分かっているかのように聞いてくる。
・・・なんで「おいしい」が前提なのだろう。

ルーシィはナツの言葉に何も返さず、しばらく黙ったまま口の中に入っているオムライスを味わって、ごくんと飲み込んだ。

「・・・しょっぱい」
「へ？」
「あんた、卵にケチャップつけすぎよ」
「し、仕方ねえだろ。二人分の名前書いたんだから」
「あとやっぱり、お肉苦いわ」
「それ入れるって言ったのお前だかんな！オレのせいじゃねえ！」
「先に焼いて焦がしたのはあんたらでしょ。まったく・・・」

おいしい、と言われなかったことが不満なのか、ナツは唇を尖らせて「ちぇ」と呟く。そしてスプーンに大きく乗せたオムライスをぱくっと頬張った。

「んー・・・オレは別に大丈夫だけど」
「あんた、味覚特殊なんじゃない？」

ていうか・・・間接キスとか気にしないのかしら。まあ、相手はナツだしね。

なんだか自分だけが意識して慌てていたのが悔しくて、ナツが持っていたスプーンを前から奪った。
そんなルーシィの行動にナツはきょとんとする。ルーシィは一口分のオムライスをスプーンに乗せて、スッと前に差し出した。


「はい」
「・・・へ」


先ほどのナツと同じことを、ルーシィもやってみせた。

「ほら、食べなさいよ」
「・・・え」
「腕、疲れるんだから。早く」

突然のことに、ナツはびっくりしてルーシィとスプーンに乗ったオムライスを交互に見る。なかなか開いてくれない彼の唇にスプーンを更に近付けて、ルーシィは口を開けるように促す。

「・・・じゃ、じゃあ」

戸惑っているがナツは恐る恐る口を開けていき、ルーシィはナツの口の中にオムライスが乗ったスプーンを・・・。


「――んっ」
「・・・え？」


「あーん」する、と見せかけて、ルーシィはくるりとスプーンの先を自分のほうに向けると、そのまままっすぐに大きく開かれた自分の口の中に入れた。茫然としたナツが、もぐもぐと口を動かすルーシィをただ黙って見つめている。
そんな彼ににやりとし、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「ふふ、騙されたわね」
「お、お前なぁ・・・！」

「あーん」してくれると思っていたナツは、恥ずかしさからか顔を真っ赤にしてルーシィを睨む。
そんな顔で睨まれても全然怖くないことを、彼は分かっているのだろうか。

・・・楽しいな。たまにはこんなご飯もいいかもしれない。


「ほら、今度はちゃんとあげるから口開けて？」
「ぐっ・・・も、もう騙されねえかんな」
「あ、じゃあいらないの？あたし全部食べちゃうわよ」
「はっ！？そ、そのオムライス、オレの名前も入ってんだぞ！？お前だけのじゃねえかんな！」
「だから、そんなルール勝手に作らないでよ」


もう一度、今度はちゃんと「あーん」してあげようかと思い、ルーシィが一口分のオムライスを乗せたスプーンをナツの口元まで運んだ時。


「・・・ねえ二人とも。オイラがいること、忘れてないよね？」


突然横から聞こえてきた青い猫の声にルーシィは我に返ると、大きく開いているナツの口の中に勢いよくスプーンを押し込んだ。