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moのお誕生日に、翡翠ちゃんに『ハッピーが出てくるほのぼのお話』とリクさせていただいて、書いてもらっちゃいました!!

 

見えないイタズラ

 

「やっほー、ルーシィ」
「・・・」

ぼんやりとする視界に映るのは、青い何か。
耳がある。尻尾がある。声が、聞こえる。
ルーシィはごしごしと両目をこすり、瞬きをする。クリアになった視界には、桜髪の少年の相棒である、青い猫が映った。

「ハッピー・・・?」
「あい」

ちらりと窓辺を見れば、カーテンが風に揺れている。またこんなところから侵入して・・・。
しかし寝起きだからか、怒る気にならない。いや、もうこいつらの呆れた不法侵入の手口に慣れてしまったせいだろうか。
何やら突然お腹に重いものが乗ってきて、ルーシィは苦痛に顔を歪めて眠りから覚めた。犯人はハッピーだった。
ルーシィはふわあ、と一度欠伸をして、ベッドから起き上がる。

「もお、あたしまだ眠いのにぃ・・・」

むすっと顔を顰めてハッピーを睨んだ時に、気がついた。あれ、あれ?
きょろきょろと室内を見回すも、それらしい人物がいない。

「ハッピー、今日はナツと一緒じゃないの?」

いつもはあの桜髪の少年と一緒に、自分の部屋にやってくるのに。ハッピーだけなんて珍しい。そう思っていると、ハッピーはスッと白い壁を指差した。

「ナツなら、ここにいるよ」
「・・・え?」

ぱちぱち、と瞬きをする。指が差されているほうを見るが、そこはただの壁で。

「えーと・・・ハッピー、ナツ、どこ?」
「だから、そこにいるんだって。あ、今ルーシィの髪いじってる」

そう言われて、ルーシィはもう一度指を差された壁を見た。が、やはり彼の姿はない。
髪をいじってると言われても、誰かに触られている感じがしない。

「ハッピー、あたしのことからかってるの?」
「違うよ。ルーシィには見えてないだけ」

・・・一体どういうことだろう。ハッピーの言っている意味がよく理解できず、首を傾げる。

「あのさ、昨日商店街でイタズラグッズをもらったんだ」
「あんたたち、ほんっとなんでももらってくるわね・・・」

またそっち関連か、とルーシィは呆れ半分にため息をついた。

「透明人間になれるドリンクってやつ。ナツが面白そうって言って、朝飲んだんだ」
「透明人間、ねぇ・・・」

そういえば以前、自分も透明人間になったことがある。別に好きでなったわけじゃなく、事故というか・・・まさか自分が透明人間になるなんて思わなかった。もう二度とあんなのごめんだわ。

「ん?でもあんたさっき、”ナツならここにいる”って・・・」
「いるよ。ちゃんとそこに。なんでか分かんないけど、オイラにはナツが見えるんだ。まだそのドリンク、まだ試作段階みたいなこと言ってたから、そのせいなのかな」
「よく怪しがることもなく飲めるわね」

ふと、隣の壁から視線を感じた。おそらくナツだ。見えないけど、そこにいるのは間違いないらしい。

「ルーシィをびっくりさせようと思って来たんだよ」
「はいはい、びっくりしたわよ。で、いつになったらナツは戻るの?」
「んー。確か1時間・・・だったような」

忘れちゃった、とハッピーは可愛らしく笑う。すると、ナツがいるという白い壁に向かってハッピーが「え、何?」と呟いた。

「うん、うん・・・あ、そうだね!」
「・・・どうかしたの?」

ハッピーが、自分には見えないナツと会話をしている。はたから見ればハッピーは壁と話をしているから、とても変な光景なんだけど。

「”腹減ったからルーシィにメシ作ってもらおうぜ”って言ってる」
「・・・あ、そう」

彼らはどうやら朝食がまだだったようだ。ハッピーがぎゅるる、とお腹から音を鳴らしている。
肝心のナツは見えないけど、きっと同じくお腹を鳴らしていることだろう。ルーシィは何も見えない白い壁に向かって、眉を下げて小さく微笑んだ。

「仕方ないわね、何か作ってあげるわ」
「やったー!あ、ナツも喜んでるよ!」

見えない、けど。笑っている気がした。
ルーシィはベッドから下りて、顔を洗ったり着替えたりと、まず身支度を始めた。遠くからハッピーの「まだー?」という声が聞こえてくる。おそらくナツも同じことを言っているに違いない。
支度を終えてキッチンへ移動し、昨日から作ろうと思っていたパンケーキの材料を取り出した。念のため、と思って三人分買っておいてよかった。トコトコ、とハッピーが足元にやってくる。

「ルーシィ」
「なあに?」
「今、後ろにナツがいるよ」
「え?」

そう言われて、くるりと振り返る。しかし、そこには誰もいない。

あ、そうだった。あたしにはナツが見えないんだった。

「くふふ、ルーシィに変な顔してるよ」
「あんたねぇ・・・」

見えないけど、なんかバカにされているような気分。全く、ほんと子供みたい。

「ルーシィの髪いじってるよ。あ、今度はぺんぺん頭叩いてる」
「全然そんな感じしないのが不思議だわ」

触れられてる感じが全くしない。だけど・・・近くにいるのは、分かる。分かっているのに、見えないのがなんだか・・・悲しい。

「あー!」
「な、何?」
「今ナツ、ルーシィのお尻触ったー!」
「ええっ!?」

パッと自分のお尻に手を当てる。あたしに見えてないからって・・・い、イタズラするにもほどがあるんじゃないの!?

「何すんのよバカぁ!!」

後ろを振り返り、そこにいるであろうナツを睨む。
すると、足元にいたハッピーが両手を口に当ててにやりとした。

「ルーシィ」
「今度は何よ!?」
「や、見えてないから仕方ないと思うんだけど・・・」

ルーシィは何故かにやにやとしているハッピーに、眉を寄せた。

「ちゅーしたよ」

はっきりと言い切った青猫のその言葉に、きょとんとする。

「・・・へ?」

ちゅう・・・?って、え、誰と誰が?

「ルーシィ、今振り返った時ナツにちゅーしたよ」
「え・・・ええええ!?」

ぼんっと、顔が熱くなる。
ちゅう!?あたしが、ナツに!?
唇に感触がなかったから、自分ではそんなのしたなんて分からない。でもハッピーにはナツの姿がちゃんと見えている、わけで。おそらくちゅーをしたというのは・・・本当。

「でぇきてるぅ」
「で、できてないわよ!だ、だって、あたしナツのこと見えてないし!こんなのキスしたうちに入らないわよ!」
「でも、ナツはちゃんと感覚あるみたいだよ?」
「へっ・・・」

なんてこと。
ハッピーの言葉で、顔に熱が集中する。どうしよう。きっと今、耳まで真っ赤だ。
キスをした、という自分の唇に手を当てる。

あたしからキスされて・・・ナツは、どんな顔をしてるだろう。
怒ってる?それとも、とくに何も気にしてない、かな。

それはそれでちょっと悲しい。そう思っていると、うっすらとナツの姿が見え始めた。
目の前に、ゆっくりと。徐々に彼の姿がはっきり見えるようになってきて。

「な、ナツ・・・」
「え?ナツ、見えるの?」
「う、うん」
「効果が切れたんだね」

なんてタイミング。
切れるなら、もっと前に切れてくれればよかったのに。ちゅーした、なんて言われちゃったら・・・このあとどうナツと接していいか分からない。

目の前にいるナツも、何やら気まずそうに斜め下を向いている。そりゃそうよね、ナツにはキスした感覚あるんだもんね。好きでもない、ただの仲間からキスなんて・・・。

沈黙が流れ、どうしたらいいか分からず戸惑っているルーシィに、ナツは閉じていた口を開いた。

「・・・し、したからな」
「へ?」
「ちゃんと、したんだからな。お前、感覚なくても、オレにはあったんだし」
「え、と・・・?」
「それでもしてねえって言うなら、もっかい、すんぞ」

ほんの少し、頬が赤い。突然ぐいっと顔を近付けてきたナツに驚き、待って、の声が出なくて。
顔を背けることもできずに、まっすぐに見つめてくるナツの視線から逃げるように、ぎゅっと目を閉じた・・・・・・だが。

「空気壊すようで悪いんだけど、なんかフライパンから黒い煙出てるよ、ルーシィ」
「え?きゃあああっ!」

ハッピーの声にハッとし、今にもキスをしてきそうなナツの顔をどうにか押しのけた。
そしてこの日朝食に出されたのは、綺麗に真っ黒な色をした、パンケーキが三つ。

おまけ

「・・・苦ぇ」
「苦いね」
「文句言わないで食べなさい!」
「どうしたらこんな黒焦げなパンケーキ作れるんだ」
「だ、誰のせいだと思ってるの!?」
「ルーシィ」
「違うわよハッピー!ナツでしょ!」
「オレ!?」
「そう!あんたが透明人間なんかにならなかったら・・・きっとおいしいパンケーキが作れてたんだから!」
「火加減を誤ったことと、ナツばっかじーっと見つめてたルーシィが悪いとオイラは思うけど」
「み、見つめてなんかなかったわよ!」
「将来のオレたちのメシが心配だな、ハッピー」
「あい。これっきりにしてほしいよね、ナツ」
「え、しょ、将来って・・・」
「おーっし、早く食ってギルドに行こうぜ!」
「あいさー!」
「ね、ねえ何?将来ってそれ、どういう意味ー!?」

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