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2014年6月2日~

                ルーシィの日記念 『贈り物』

想いは通わせ合っているけど、いまいち進展していないナツルーです。
 では、いつもの様に、誤字脱字には気を付けてお進みくださいm(__)m


 

一昨日から、ナツとハッピーがいない。

どこかに消えたとかではなくって、ナツに指名で入った依頼に出かけているのだ。

 

フィオーレ王国マグノリアの早朝、金髪の少女が1人運河沿いの石造りの街道を歩いている。

 

毎日の様に家に押しかけてくる桜頭と青猫が出かけている今、少女は暇を持て余していた。

何時もだったら、邪魔者の居ぬうちにやりたいことが沢山浮かぶのだが、、、、、何故か何もやる気が起きず、書きかけの小説も煮詰まり昨晩は早々に諦めて床に着いたので、早く目が覚めてしまったのだ。

 

昼間は汗ばむような陽気にもなってきたが、まだ早朝は肌寒い。金髪の少女ルーシィは羽織っていたガーディガンの上から自分の肩を擦った。

少女は肌寒さを振り払うように、小走りで自分の所属する魔導士ギルドを目指す。

 

キラリと少女の右腰で星霊の鍵が太陽の光を反射して光る。待ち行く人たちは、その光景に目を細めた。

ギルドの扉を少女がくぐると、まだ人も疎らなギルドの酒場。

そのカウンターの奥に見知った銀髪が揺れた。

 

「ミラさ~ん。おはようございま~す!!」

「あらっ。おはようルーシィ。今日は早いのね?」

 

金髪の少女こと星霊魔導士のルーシィは、銀髪を揺らしながら微笑むこの酒場の看板娘ミラジェーンの元へ駆け寄った。

 

ここは、魔導士が集まり仕事を受け、その成果により報酬を受けとることのできる魔導士ギルドだ。

王国の至るところに魔導士ギルドは存在するが、王国内一二を争う賑やかさを誇るのが、この『妖精の尻尾』だ。

そして、ルーシィはこのギルドの最強チームに属している。言わずと知れた人気者だ。

 

 

「ミラさん!今日中に帰ってこれる仕事ありません??」

「あらっ。今ルーシィに今日の予定聞こうと思っていたところだったのよ。」

 

丁度良かったわ!と笑ってミラジェーンが、ルーシィに1枚の依頼書を手渡した。

 

依頼書

  魔導書の整理の手伝いを頼む。

 

  4~5時間で済む仕事です。

 予定の時間に会わすことも可能です。

  

  報酬は、出来高により変わりますが、

 作業が終わった時点で、

        1万Jお支払いします。

 

  本に詳しい方、本が好きな方、よろしくお願いします。

 

 

マグノリア歴史図書館 館長

ルーシィにはもってこいの仕事だ。

 

「わっ!!ありがとうございます!!なんか妙に暇しちゃって気分転換したかったんです!!」

 

ルーシィは、ミラジェーンに依頼の受注をすますと、足軽に図書館へと向かった。 ルーシィの背を優しい笑顔で見送るミラジェーンの目がキランと光っている事には、当然気が付かない。

 

そうだ!!

ルーシィは気分転換をして、自分を落ち着かせたかったのだ。

 

先日、いつものトラブルメーカーのナツが依頼に出かける前、真剣な顔でルーシィに耳打ちしたのだ。

 

『6月4日に戻る。戻ったら、、、話があるんだ。聞いてくれるか?』

 

眉毛をつり上げ、鼻の下に力を入れて口元をへの字に引き締めているナツの表情が、ルーシィの胸を高鳴らせた。

冷めているような表情だが、それはナツの照れ隠しだと最近気が付いているから。

 

話の内容も、想像つかないこともない。

ルーシィは、2月程前ナツにプロポーズしてしまったのだから。

その時ナツは「少し時間をくれって。」

しかもら、「ちゃんと自分から言いたいから」と返してくれたんだ。それだけで、きっと欲しい言葉をくれるんだって、そう信じられる。

 

そして運命の6月4日は、、、今日。

・・・ナツは、今日あたしに何を伝えてくれるのだろう??

高鳴る鼓動にのせて、足早に図書館へと向かった。

 

***

 

夕方。 図書館での依頼は、思ったよりも早く終わった。

だが、午前中の内に仕事を終え、ひとまずギルドに報告に戻ろうとすると、館長さんに呼び止められてしまったのだ。

 

ルーシィは普段からこの図書館をよく利用していたため、元々この人のよさそうな穏やかに笑う女性の館長さんとは、歳の離れた友人の様に仲良くしていた。

 

「ルーシィちゃん!今日はありがとうねっ。」

「いえ!!あたしも、珍しい本とか触らせてもらえて、感激しちゃいました!!」

「フフフッ。ルーシィちゃんならそう言ってくれるって思ってたわ。そうそう、これ。」

 

館長が1冊の本をルーシィの目の前に差し出した。

それは、ルーシィのさがしていた古い冒険記の内の1冊。

その古い冒険記は、シリーズ自体数の少ない貴重なもので、 この図書館にはそのシリーズが揃っていた筈だったのだが、その1冊だけ紛失していてなかったのだ。

依頼の先々で、古書店や図書館を覗いてもまわっても、いまだ見かけることがなかった代物だ。

 

ルーシィは驚きを表情にのせる様に目を見開き館長を見る。

 

「館長さん!!これ!!!」

「フフフッ。やっと見つけたのよ。今朝届いて、一番にルーシィちゃんに知らせたかったのよ。」

 

ルーシィは熱心にそれに読みふけっていた。

気付けば外はすっかりオレンジ色だ。とりあえず、持ち出し不可の貴重な本は本棚に戻し、また後日読ませてもらうことにした。

 

予定よりずいぶん遅くなってしまった。ナツ達が戻ってきているかもしれない。

行き違いにならないように、一先ず家に帰ろう。まだナツが来ていなかったら、借りた本を置いてからギルドに報告がてらむかおうと、ルーシィは真っ直ぐ家に向かって歩みを進めていた。

 

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Anchor 14

 

その日は特別な日だった。

ルーシィの誕生。

その日ミラの仕切りで、サプライズパーティをギルドですることになったんだ。

準備万端!!オレは足取りも軽やかに、ルーシィを迎えにいくことになっていた。

他の事を頼まれていたハッピーをギルドに残し、珍しく一人で運河沿いのアパートに向かったんだ。

 

いつもの侵入経路。

ハッピーがいなくたって、粘着質の炎を使えば2階まで簡単に登れるし、閉まりの悪い窓の鍵はいつだって俺達のために開いてくれる。

迎え入れてくれている気さえするんだ。

 

窓枠に足をかけて視界に入ってきたのは、金髪の少女がベッドに腰を掛けている後ろ姿。

こちらに気付いていないようなので、脅かしてやろうかと身を乗り出したんだ。

 

瞬間、湿った匂いに動けなくなった。

小刻みに肩をゆらし、誰もいないのに声を押し殺す姿を オレはよく知っている。

その顔を見なくても解ってしまう。ルーシィの湿った匂いに心臓が握られた様に痛んだ。

 

『どうした?』

『ん~ん』

 

一瞬ビクンと肩を揺らし目線を合わせないまま、何でもないのと頭を横に振った。

何でもないわけがない。ルーシィの頬には、透明な滴が流れ落ちている。

 

『ん~ん。じゃぁねぇだろ?じゃっなんで泣いてんだよ。』

 

もう一度、小さめの音量で声をかけるとルーシィの手の中でカサカサと紙の擦れる音がしてくる。ルーシィの正面に回り込むと、白い腕が伸びてきてギュッと服の裾を握ってきた。

 

『・・・ナツ!・・・ナ・・・ツ・・・・』

 

ルーシィの手の内にあった紙が、ひらりと舞ってその場に落ちた。

視界に入ったその紙の書き出しは、、、

 

『親愛なる娘へ 誕生日おめでとう!』

 

小さく震える華奢な肩を包み込む様に、床に膝をついて正面から抱き寄せた。

 

『   親愛なる娘へ 誕生日おめでとう!

  

 ルーシィ。

 君が友達と姿を消してから、もうどれくらいたっただろうか?

 心配が尽きないのは、私が君の父親だという証だね。

 気が付くと君の事ばかり考えているよ。

 

 君はいつこの手紙を読んでくれるだろうか。

 

 いつか、君は元気に帰ってくるだろう。

 レイラによく似て、たくさんの運を味方に付けている子だ。

 

 だから、ずっと待っていればいいと思っていたのだが、私はもう永くないようだ。

 君に24歳のバースデイプレゼントを贈った後、私の体は病に飲み込まれてしまった。

 まったく私らしいというか、なんでも夢中になり過ぎてしまうというのも考え物だね。

 

 君を待っていられない事は、とても悔しいよ。

 パパは先に、ママの処に行くよ。君は、ゆっくりおいで。

 

 レイラは迎えに来てくれるだろうか?

 娘を追い詰めて家出をさせてしまったパパを、ママは怒ってくれるだろうか?

 

 最後にこれだけは君に渡しておきたかったので、この手紙を知り合いに預けることにした。

 何歳のキミの手に渡るのだろうか?

 

 今度君が訪ねてくれたら、直接渡そうと思っていたモノだ。

 私が居なくなって、どこかなくなってしまうのも忍びなくてね。

 君が帰ってきたら、その次の誕生日に贈ってもらうことにしたよ。

 この際君の手に渡るなら、どんなことでも万々歳だ。

 

 君はいくつになっただろうか?

 好きな人は・・・恋人はいるのかい?

 君はどんな人を選ぶのだろうね?

 

 君はママと一緒で押しに弱いから、変な男に引っかからないか、父親としては心配でもある。

 君が連れて来た男をキチンと見定めたかったが、君の選んだ人なら大丈夫だと信じることにする。

 君の綺麗な心は、いい人と巡り合えると信じられるからね。

 

 間違っても、私みたいに仕事しかできない男に引っかからないようにな!! 

 

 

 そうだな。一度屋敷に迎えに来た黒髪の青年はどうだろう?

 君をわざわざ迎えに来てくれるのだから、きっと面倒見が良くてやさしい青年だろう。

 ああでも、フェミニストそうだったし、他の女の子が寄ってきそうだ。

 顔が良すぎるのも考え物かもしれんな。

 

 では、あの桜頭のやかましい少年はどうかな?

 ファンタジアの時は、全身包帯巻で何があったのかと心配もしたが、その状態でも瞳の輝きを絶やさない子だったね。

 イヤ。もう子ではないか。彼も青年になっているのかな?

 そうしたら落ち着きも出てきて、丁度いいかもしれないな。

 何よりも、君を笑顔にしてくれるのは、その彼だろう?? 

 

 そう言えばアカリファにも君を迎えに来てくれたね。

 「ルーシィィィ!!!」と君の名を、大声で叫んでいたのをよく覚えているよ。

 桜色の彼は、君の事が大好きなのだと私にもわかったよ。

 

 君も嬉しそうに笑っていた。

 パパはね。その笑顔を見て安心した。

 君が笑っていられる場所を見つけたのだって。

 

 もっともっと、君といろいろな話がしたかった。

 こんなどうしようもない父親だが、きっと君は涙を流してくれるんだろう。

 君をこのまま置いて逝くのはしのびない。・・・・でも君には、仲間がいる。

 きっと仲間が支えてくれるだろう。

 君を笑顔にしてくれる。最強の仲間たちが。 

 

 だから、安心してパパはママの処にいけるんだ。

 

 ルーシィ。

 これは私がレイラに贈った最初の指輪だ。婚約指輪だ。

 その頃はまだお金が無くってね。大した代物じゃない。

 だけど、いくら他の指輪をプレゼントしても、結局ママはこの指輪をしてくれていたのだ。 

 だが、レイラに先に逝かれてしまって、また私の元に帰ってきてしまった。

 

 私から君への最後のプレゼントだよ。ルーシィ。

 

 ずっとママと過ごしてきた指輪だ。

 きっと君を守ってくれる。

 

 君も大好きな人と、どうか幸せに。

 

 君は幸せを掴みとれる人間だと信じているよ。

 

 信じる道を真っ直ぐ進みなさい。

 

 愛している。

 

 ルーシィ。

 

 私は君をずっと愛している。

 

 ママと一緒に、ずっと見守っているよ。

                 J・H     』

リボンも何もかかっていないリングが、封筒からポロリ出てきた。

それを、そっと拾い上げルーシィは声を殺してナツの胸を涙で濡らした。

 

そして、指輪を握りしめたままルーシィはナツの服をギュッと握りしめた。

 

『ナツ。。。』

『ん?』

『・・・ナツがいいの。』

 

ナツには何のことかわからないだろう。でもどうしても今、口に出して伝えたかった。

精一杯の想いを舌にのせた。説明する余裕なんてないんだ。

ナツの背に腕を廻して力を込める。

 

『ん?なにがだ?』

『・・・ナツがいいの!!』

 

ナツは一瞬思案するように上をむいたが、すぐに笑顔になってルーシィを抱きしめ返した。

 

『おう!!ルーシィなら、何でもいいぞ!!任せろ!』

 

ナツなら、そういって受け入れてくれるんじゃないかって、なんとなく思ってた。

ナツの言葉を受けて、ルーシィはくクスクスと嬉しそうにやさしく笑いだした。

心の中が軽くなって、スキップして勝手に走り出しそうだ!

そして笑いながら、抱きついていた体を離した。

 

そうして少しの空間を開けて、正面からナツを見つめる。

ナツはその視線を受け、ルーシィの言葉を待つようにその場に腰を下ろした。

そして、ナツの正面に真っ直ぐとルーシィの腕が伸びてきた。

 

何かを渡したいようだ。

ナツは頭に?マークを出して首を傾げたが、掌を上にルーシィの前に差し出した。

 

『ん。』

『あっあたしねっ。お嫁さんになるなら、ナツのお嫁さんがいい///』

 

唖然とするナツの掌に、ルーシィの手からコロンと小さな指輪が置かれた。

ナツはビックリしたまま、そのルーシィの指の動きに目を奪われていた。

 

束の間。

 

『っ///』

 

ナツの反応が無いことに、ルーシィの膨れ上がっていたテンションが落ち着きを取り戻していく。

現実に戻ってきたルーシィは、恥ずかしさに慌てはじめた。

 

『あっ///やだっ!!!ナツ。。。ごめんね?あたしったらパパからの手紙読んで、1人で盛り上がっちゃっていたみたい///』

 

(あたしってば//あたしってば///何やっちゃってんのぉ!?!?バカバカ///

 1人で。。。。。///バカみたいじゃない///どうっどうどどどうしよぅ///)

 

自分の行動に、半ばパニックになりながら、ルーシィはチラッとナツの顔を覗きみた。

ナツは、真っ直ぐとルーシィを見つめていた。

ただ、そのまま動けないだけなのかもしれない。カチンと固まって、表情はいつも通りだが、耳が真赤に染まって見える。

 

ナツのその様子を見て、ルーシィは少し冷静になってきた。

言ってしまったものは、もう取り消せない。

ナツにしたってこのタイミングで、急にそんなこと言われれば、パニックになっているだろう。それもそうだ。ナツはパパの手紙なんて読んでいないし、この指輪はパパがママにプロポーズの時に贈ったものなんて知らないのに!!

さっきいきなり来たばかりで、状況が呑み込めるはずがない。ナツだし。。。

 

部屋に来たらルーシィが泣いていて、慰めてやったら、いきなり「お嫁さんにして?」と言って指輪を渡されたのだ。。。固まるのも無理はない。。。

 

『ナッナツ?・・・・急にごめんね///』

 

そっとナツの掌に置いた指輪を回収しようと手を伸ばした。

すると固まって動かなくなっていたナツの手がぴくんと動いて指輪を握りしめてしまった。

 

『・・・ナツ?』

 

ナツの行動にルーシィが首を傾げると、ナツが大きく深呼吸するのが見えた。

 

『ルーシィ!!手!!!』

『え?』

 

ルーシィが手を差し出す前にナツがルーシィの左手を掴んだ。

ナツは自分の手の中にある指輪を掴んでいる。

 

『ナツッ///』

 

瞬く間にルーシィの左手の薬指に、指輪がはめられた。。。

 

『ルーシィ!!』

『んっふへぇ??』

 

ニッと、いつもの様にナツが笑った。

 

『オレもルーシィがいい///』

『っ///うん!!』

 

再びルーシィは、ナツの腕の中に収まった。

 

『・・・なぁ、それちょっとデカくねぇか?』

『え?・・・少しねっ。ちゃんと直せば大丈夫よ!』

 

ニッコリと笑ったルーシィが、顔を洗いに洗面所に向かうと身支度を整え、ギルドに向かった。ギルドに向かう道すがら、ナツが真剣な表情を見せた。

街灯に照らされて、桜色の髪が淡く見える。

 

『なぁ。やっぱ少し時間くれ!!』

『・・・え?』

『オレ。。。自分から言いてぇ////』

 

そういうと、下唇を突き出して視線を空に投げたナツ。

がっかりしたような、期待に胸躍らすような感覚が、一気に押し寄せ、、、、、ギルドに到着した。

その日の『妖精の尻尾』な貸し切り状態で、妖精の尻尾の家族たちが盛大にルーシィの誕生日を祝った。

 

 

 

 

それから約2ヶ月。

あの時、ルーシィが顔を洗いに洗面所に行っている時に覗き見てしまったんだ。

パパからの手紙。

ルーシィがどう感じて、オレに指輪を渡したのかは、、、、よくわかんなかったけど、、、

引っかかるものがあった。

 

ルーシィにバレないように、ギルドの皆に協力してもらって、資金を貯めていた。

ハッピーと2人で依頼に行くという事は、大魔闘演武以来個人指名の依頼も入ってくるからそんなに難しい事じゃなかった。

 

ルーシィをビックリさせるために!!

自分で決めたことだが、ルーシィを置いて依頼に向かうのは結構しんどい。

直ぐに、彼女の声が聞きたくなって、その匂いが恋しくって、姿が見たくって、なんともしんどくなってしまうんだ。

それに、ルーシィがさみしい思いをしていないかも気がかりだった。

それまで、ずっと一緒にいたのに、オレがこれだけ寂しいんだから、、、ルーシィだって。。。

 

・・・・まさか、嫌われてないよな?

お嫁さんにしてってことは、、、ルーシィだって俺の事好きってことだよな。。。

離れていると、不意に不安が押し寄せてくる。

不安を打ち消すように頭を振った。

 

もうすぐ久し振りにルーシィに会える。

やっと、、、やっとここまで来たんだ!!協力してくれたみんなに感謝しねぇとな。

ルーシィ、喜んでくれっかな。。。

これやったらルーシィは、どんな反応をする?・・・落ち着かねぇ///

 

だが、どうしたって彼女の反応は、自分の想像の斜め上をいくんだ。

楽しみでない訳が、ないのだ。

 

お目当てのモノを手にして、いつもの侵入経路から部屋に入った。

そこには今まさに出かけようとしているルーシィの姿があった。

窓から入ってきたナツを瞳に映し、ルーシィが一瞬ひるんだ。

感情が昂ぶって、目に涙が滲んでくる。

 

「ただいま。」

 

ニッと笑って、ナツが窓際に降り立った。

 

「遅いよナツ。。。お帰り///」

 

頬を朱色に染め、嬉しそうにルーシィが笑うと、ナツはポリポリと頬を搔きながら1歩づつルーシィに近づいていく。

 

「ルーシィ!!」

「ん?」

 

ルーシィの目の前までやってくると、ナツはルーシィを抱きしめた。

ふんわり優しくって甘い匂いが鼻をかすめてくる。

腕の中に愛しい存在を強く認識すると、ナツに緊張が走った。

先に宣言していたんだ!!今日話があるって!!

一旦拘束を解いて、ルーシィの顔を覗きこんだ。

 

「ルーシィ!!手!!」

「へ?」

 

強引にルーシィの手をとり、その掌に小さな箱を置いた。

ピンクのリボンのかかった箱とナツをルーシィが交互に見た。

「えっえっ」と言っているルーシィの掌の上で、ナツはその箱を開けた。

ルーシィの目に箱の中身が映った。

 

「指輪?・・・なんで?」

「あれは、パパとママの指輪だろ??パパはお守りだって書いてあったじゃねえか!!」

「・・・ナツ!!」

 

ナツはルーシィの掌から指輪を奪うと、その箱をテーブルに置いた。

ルーシィを見つめたまま、その両手を掴んだ。

 

「好きだ!!結婚すんならルーシィがいい!!」

「うん!!あたしも///大好き///」

 

ルーシィの頬はいつの間にか涙に濡れている。

「んっ!」っとルーシィがナツの目の前に左手を突き出すと、その薬指に指輪が収まった。

 

「・・・綺麗ね///」

「ん//////まぁなっ。」

「ミラさん?リサーナ?レビィちゃん?」

「・・・エルザ。エルザが依頼先でこれルーシィが欲しそうにしてたって///」

「フフフッ///ありがとっ。ナツ!!」

 

左手の薬指に収まった指輪を見つめていたルーシィが視線を持ち上げると、すぐそこにこちらを見つめる真剣なまなざしがあった。

互いの視線が絡むと、どちらからともなく瞼に瞳が隠れた。

 

 

「さっ!急ぐぞ!!」

「ふえ??」

 

ルーシィは抱き上げられていた。

ナツはルーシィを抱えたまま、石畳の道を息も切らさずに走り抜ける。

 

「なっなにぃぃ??」

「パーティー!!」

「へぇ。。。何の??誰か誕生日だっけ??」

 

肩の上でルーシィが首を傾げる。

 

「・・・オレ達の婚約パーティーだとよっ。」

「ふぇ?///なんで///」

「・・・だって、それがオレ達だろ?妖精の尻尾はみんな家族だからな!!」

 

家族の婚約を祝うのは当たり前だと言いたいのだろうか。。。

このタイミングでという事は。

み~んなが今日ナツがプロポーズすることを知っていたって事なのだ。

そう思うと、顔から火が出てきそうだ。

でも、確かに、そうなんだ。

こんなお祝い事、妖精の尻尾のみんなが見逃すわけがないのだから!!

・・・でも悪ふざけとかで、、、いきなりみんなの前でチューしろとか、、、そんなことないわよね。。。。

嬉しくってくすぐったさを感じながらも、一抹の不安が拭えない。

ルーシィは、笑いながら額に汗を滲ませた。

 

そして、ルーシィを抱えたまま、ナツがギルドの扉を押し開ける。

 

 

 

 

 

『ルーシィ。ステキな人と幸せに。。。』

 

 

 

Fin

 

 

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