2016年02月06日
眠れない夜~グレジュビ~
突然の妖精の尻尾の解散。マグノリアを離れ、自分の目指すものの為突き進むグレイと、グレイを追いかけるジュビアのはず……
こんな夜もあったらいいなぁ~的なお話です。アニメ派の方はネタバレ注意ですっ!!
「は・な・れ・ろ!!」
「イヤですっ」
「普段と状況違うのわかれよっ!! んなくっ付いてくんじゃねぇっ」
「イヤですぅ!」
「……オレだって、男だぞ」
「もちろんです! 知っていますよ?」
「…はぁ……ぜってぇ解ってねぇ」
背中から巻き付いてくるジュビアの腕を、振り払いグレイはベッドから降りた。そして、振り向きもせず寝室から出て行ってしまった。
――はぁ
――また失敗してしまいました
――グレイさま……どうしたら…
マグノリアを離れ、修行出来る場所を探しながら旅をし、行き着いた此処に居をかまえて、早数日。自分の事は自分でやると言うグレイを説き伏せ、共同生活、1人分も2人分も同じだと食べるものに関してはジュビアが主導権を奪っていた。
夜の食事の後先、今日は疲れたからと寝支度を早々のに済ませ奥の部屋に入ってしまったグレイを追って、ジュビアはベッドへと忍び込んだ。ただ、触れていたい。すでに眠っているだろうグレイの背に顔をつけ、背中から白い手を回した――までは、よかったのだが、
――ううぅ……
――今日も、失敗してしまいました…
身を縮めてグレイの布団に身体を包んだジュビアは、ベッドの上で大きなため息をついた。
グレイは居間のソファに身を沈め、部屋の天井を見上げていた。
マグノリアを出て、ジュビアは当たり前のようについてきた。仕方ねぇなぁと言いながら、ジュビアと旅をして、一緒に暮らし始めて、何をやるにも一緒で、――嫌なわけではない。
嫌であれば一緒に暮らしてはいないし、もっと邪険に扱う事も出来る。
それに、――もっと簡単だ。
何やら自分にくっ付いてくる可愛い少女に、魅入られているのは――どちらなのか。
その大きな胸を押し付けられれば――
――クッソ
――適当に遊んでいい相手じゃねえんだぞっ
――オレは男だってのっ……
――はぁ……ダメだ…
――我慢しろっ……オレッ!!!!
夜な夜な自分のベッドにもぐりこんでくる少女に、少し前であればこちらが喰われるんじゃないかと恐怖もしたのだ。だが、最近ではジュビアの振る舞いの無垢な部分がどうにも眩しく感じられる。そしてそれを――汚したくなる衝動にかられる。
我慢の限界が近づいている。
彼女は自分を好きだというが、それは敬愛に近いのではないか? その不安が、グレイの踏み出そうとする1歩を、踏みとどまらせていた。
それから、2~3日リビングのソファで夜を明かすと、そこにジュビアが座り込んでいた。
「……どうした?」
「ジュビア……グレイ様の体温を感じて、眠りたいだけなんです」
「ぐっ……///」
「ジュビアはっ…グレイ様に相手にされて無くても…ただくっ付いていられれば」
ジュビアの頬が涙にぬれた。
――くそぉ……
――結局、泣かしちまったか……
ソファで横になっていた体を起こしグレイは、苛立ちに頭を乱暴に掻く。
――くっそぉ
床にペタンと座っているジュビアの身体を起こさせると、自分と入れ替えにソファに座らせた。
「ジュビアは、オレが好きだって言うが…」
「はいっ!」
「それは、憧れだろ? オレは好きな奴とは、対等でいてぇんだ……」
ジュビアと入れ替わって、グレイはジュビアの座っていた場所に尻をつけて座った。
「……グレイ様?」
「お前は、オレが神か何かと勘違いしてねぇか?」
「え? グッグレイ様は、神様だったんですか!?」
寝起きの頭を叩き起こしながら、グレイは頭の中を整理しながら話し始めていた。
「ちげぇし!! ……オレだって生身の男だ。ジュビアに……女に言い寄られて嫌な気はしねぇ」
「そっそれはっ/// グレイ様もジュビアを!?」
ジュビアのわかりやすい反応に、グレイはふっとやさしく笑った。
「……でな、正直に言うと……お前は女として見ても魅力的だと思う…」
「じゅびっ///」
ジュビアを諭す筈が、思いがけず出てきてしまった言葉に、言ったグレイも言われたジュビアも互いに頬を染めた。ジュビアの揺れる瞳に、頬を掻くグレイが映っている。
「……お前は、目の前のオレを見てるか? ジュビアの頭の中だけにいる妄想のオレを見てんじゃねぇか? 理想を押し付けられても……それはオレじゃねぇ……」
「ジュビアはそんな事!!」
「……いつまでたっても『様』つけて呼んで、無茶言ってもいいつけまもって……」
「それはっ、好きだからっ/// ジュビアはグレイ様が好きだからっ、グレイ様の望まれることは、何でも叶えたいと思うんじゃないですかっ!! グレイさまだからですよっ」
ジュビアがおもわずくって掛かると、それまでやさしく諭すように話していたグレイの瞳が揺れた。次第に、声が大きくなっていく。
「それじゃぁ、オレがココで裸になれっ!! んで、そのまま外歩いて来いって言ったら、お前はやるのか!?」
「……言いません」
即答だった。
ジュビアはまっすぐとグレイを見つめた。その疑いのない眼差しにグレイの心臓が締め付けられる。
「…は?」
「グレイ様は、そんな馬鹿な事は命令されません」
「わかんねえだろっ」
「!! グレイ様こそ、ジュビアの事をなめています!! ジュビアの好きはその程度ではありません……それに…もしグレイ様が無理なことを命令されても……ジュビアはそれを叶いなえようと、もちろん努力します。グレイ様が……ジュビアの為にならないことを望む訳がないんですからっ」
「なっ」
「……グレイ様は、きちんと周りが見えている方です……そしてお優しいんです」
「……そうか」
「はいっ」
どんなに話しても平行線。もう流されてしまってもいいのではないかと思えてきてしまう。
「……じゃぁよ、そんなにオレを理解しているジュビアは……なんでまだオレを様付で呼ぶんだ?」
グレイは目の前の細い肩を引き寄せた。きれいな水色の髪の間から白い項が見え隠れしている。
「そっ尊敬しているからです。尊敬というのは大事なんですよっグレイ様!! 仲のいいご夫婦に仲良しの秘訣をうかがったんですっ。そのおばあさまは、互いを尊敬できねば関係は続かないとおっしゃっていましたし…」
「…し?」
*
キョトンとした表情のジュビアが見上げてくると、その肩に腕をまわしグレイはあやしく微笑んだ。
『まぁ……そこもかわいいんだけどなっ///』
一気にジュビアの顔が真っ赤に染まった。そして見開いた目に、ニヤリと微笑むグレイが映る。グレイはごく自然に、ジュビアの細い肩を抱きしめていた。クルントウェーブする水色から、優しい香りが漂ってくる。そこに、もたれかかる様にグレイは顔を寄せていた。
『……はっはずかしい///』
『まぁ、恥ずかしいのは……最初だけだ…』
床に座り込んでいたジュビアの膝の後ろに腕を通すと、グレイは簡単にその体を抱き上げ、寝室のドアを開けた。
*
「グレイ様ってば、大胆っ!!!!」
「………はぁ?」
急に両手を拝む様に胸の前で合わせ、目をハートに変えたジュビア。
その様子に、グレイは苦笑をもらした。
――危なかった…
――寝起きは、やべぇな…要らねぇことまで口にでちまう…
正面のソファで、ジュビアがくねくねと体を揺らしている。しばらくこっちの世界に帰って来そうにない。
――もうちょっと、寝れそうだな…
そっと立ち上がるとグレイは、静かに奥の部屋に入って行ってしまった。
その事に気が付いたジュビアがグレイの後を追ってベッドに忍び込むのは、また少し後の話だ。
* * *
ジュビアがキッチンで朝食の準備をしてくれている。
真剣な顔で泡だて器を握るジュビアの横顔が、何とも可愛らしい。
――嬉しそうにしやがって……
――ったく…オレの気も知らねぇで……
――まぁ……こんな日も……悪くねぇな
Fin
あああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
何か書いてるうちに、書きたいこととだいぶ変わってしまったけど…ジュビアが妄想にぶっ飛んでいくさまが好きだからしょうがない……←
たまには気が緩んで、ついつい手を出しちゃってもいいと思うんだよ~グレイ様~www
お目汚し失礼しました~!!