top of page

2015年07月 ~

何でだよ…

突然おギルド解散から、一年後。再びナツとルーシィ、仲間たちはマグノリアの地にたった。

晴れて、思いを通わせた二人のお話です。

 

 突然の妖精の尻尾解散から――1年後――

 

散り散りになっていたギルドのメンバーたちは、ルーシィの呼びかけに応えマグノリアに、帰ってきていた。

 

 そして、ルーシィはナツと再会してしばらく――

 

 

 ――互いの想いを通わせていた。

 

 

 会えない時間は、互いに互いが必要であると、代わりはいない唯一の存在であると認識するには十分だった。相手を焦がれる思いは高まり、募ってしまった感情が、マグノリアの地に再び揃って足をつけ――向かいあった。

 

 好きと告げたのは、ルーシィから。

オレもと破顔したナツは、ルーシィを抱きすくめた。 そしてその日の内に、彼らは身も心も結ばれた。

 

 

 

これまでに、嬉しいことも、哀しいこともあった。

 全ての事がこの幸せに結びついているんじゃないかと思えるほど、幸せな瞬間だった。

 

 

 

 だが仲間たちは、まだそれを知らない。皆がギルド再建の為に汗水流し忙しく働いていた為、伝えるタイミングを二人は掴めなくなっていたのだ。

 

 

 

 

「な~んだ。ルーシィ、ニヤニヤしてっ」

「ほ~んと。ルーちゃんここ2・3日、頬緩みっぱなしじゃない?」

「そうね。これは、妖精の尻尾復活!! ってだけじゃ、なさそうね?」

「ルーシィさん、何かいいことあったんですか?」

 

 ここは、マグノリアに最近できたCafeのテラスにある白い大きなパラソルの付いたテーブル席。大きなパラソルの下、木製の白いテーブルを囲んで少女たちは、話しに花を咲かせていた。ルーシィは自分に向けられた好奇の視線に、一気に顔を赤らめたしまった。

 

 だが――まだばれてはまずい。

 

いよいよ今日、この後出かける最強チームでの仕事でナツと2人揃って、まずはチームメイトに報告しようという事になっていたのだ。

 

「……何だその真っ赤な顔……ルーシィ、男でもできたか?」

「っ///」

「えっ? ルーちゃんマジ!?」

「えっと/// ……その///」

 

ルーシィは頬を染め、その頬を手で覆って恥ずかしそうに体を揺らした。

 

 ――言っちゃいけないわけじゃないんだけど……

 ――でも///

 ――ナツと一緒の時に言おうって……///

 

だが、ルーシィの心中をよそにテーブルでは、ルーシィに恋人ができた事は決定事項となってしまっている。

 

「おぉっ!! その初心な反応! かっわいいなぁ~彼氏は、たまんねぇだろうな…で? ヤッたのか?」

「あわわわっ///」

「こ~ら。カナ。下品な事言わないのっ!」

 

 カナの下世話な言い方に、慌てるウエンディ。その小さな肩にレビィは手を置き、言葉をはさんだ。女性陣に囲まれ、ルーシィは頬を染めたままだ。でも、どこか嬉しそうに幸せそうに微笑んでいる。

 

 チラリと辺りを見渡すが、人はまばらで見知った顔は見受けられない。コホンと改まって、顔を寄せ合い今度はレビィが口火をきった。

 

「……で? どうなのルーちゃん。……シちゃったの?」

「あわわわわぁ……シちゃったんですかぁ///!? ルーシィさん!!」

「ほらっルーシィ!! 白状しろっ」

「どうなのよっ。ルーシィ!!」

 

好奇心の目に囲まれ、ルーシィはたまらず ポツリと洩らしてしまった。

 

「好きだって言ったら、オレもだって抱きすくめられて///」

「えっ!? その日に!? その場で!?」

「ん。オレも好きだって、言ってくれて///」

 

 ルーシィは頭から湯気でも出そうな程、真っ赤に全身を染め上げている。ルーシィを囲む女たちの視線の一部は、好奇心と共に少し厳しいものに変わっているが、それには気が付いていない。

 

「まじかっ!? そいつ、……ちょっと、手ぇ早えな」

「……でも、それってさぁ」

「え……?」

 

不安気な声が上がるが、その声をカナが遮った。にこりと笑顔を作って、話しを先にすすめる。

 

「で? どうだったよ、ルーシィ。女になった感想は?」

 

「えっ/// そっそんなのよくわかんなっ///」

「はぁ? そんな無理してねぇよな? 初めてだったんだし」

「まぁ…普通は、気使ってくれるよね~」

 

 カナとレビィの視線が、ルーシィの反応を見つめている。

 

「っ/// ふえぇ/// その…あたし……途中で気……失っちゃったみたいで///」

 

よくわかんないよ…///と、言いよどむと ルーシィは俯いてしまった。ルーシィを囲んでいたカナとレビィ、ウエンディ、シャルルの目が丸く点になった。一同唖然としたまま、ウエンディとレビィは頬を真っ赤に染めた。ウエンディに至っては、目に涙を浮かべ照れながらも驚いている。

 

「あわわわあわ…」

「っ!! すげぇな彼氏!!」

「ええっ!! でも、ルーちゃんはじめてだったんだよっ!! ちょっと、たまったもんじゃないんじゃない?」

「まぁ、そうだな~。初めての女相手には、たしかに容赦無ぇなっ」

「//////」

 

 目線をテーブルに向けたままルーシィは言葉を失って、全身を真っ赤に茹で上げている。聞きだされるままに、恥ずかしいことを口にしてしまったのではないだろうか?  いずれ相手が誰だか、バレてしまうのに――

 

 ――こんな話しちゃったら、ナツだって言いだしずらいじゃないっ///

 ――どっ……どうしよう///

 

「…つーかルーシィ。そいつ、信用できる奴なんだろうな?」

「へ?」

 

 ――そりゃぁ……ナツだし

 

「そうだよ。ルーちゃん!! 幸せオーラだして惚けてるけど、特別男の人と一緒にいるところなんか見かけてないし…」

 

 ――えっとぉ……一緒にいない方が珍しいんだけど……/// 

 

「カナさん? レビィさん?」

「……そうね。ワタシも心配になってきたわ。ルーシィ」

 

 ――心配って……

 ――ってか、どっどうしよう

 ――どんどん話が……

 

 おろおろとするウエンディをよそに、皆 目が真剣になっている。ルーシィも動揺してしまっていたが、もうダメだ! 説明しようと口を開けた時――。

 

 

 

「ルーシィィィィィ!」

「ルーシィ!!」

 

 今にも幸せを運んできてくれそうな青い空飛ぶ猫と、その相棒のナツが手を振りながら走って向ってきている。ナツの手には依頼書らしき1枚の紙。ナツ達の後ろからは、最強チームのメンバーも歩いてきている。これから依頼に出かけるため、チームメイトのルーシィを迎えに来てくれたのだろう。

 

「っ///」

「お~!! ナツ、エルザ!! いいとこに来たっ」

 

 ――えっ!? えっ!?

 ――何言うつもりなの? カナ!!

 

「そ―。そ―。ちょうどよかったみんなっ! チームのみんなは、知ってるの?」

「あ…ん?」

 

「ルーシィさんの彼氏さんです…」

「あんたら会ったことあるのか?」

 

 さっき無理に聞き出したんだけどなっと、説明するカナの話を聞きながらハッピーと、エルザ、そしてグレイは目を見合わせた。

 

ナツとルーシィが想いを通わせたのは、ほんの数日前だ。まだ、ナツは相棒のハッピーにさえ、伝えていないのだ。ひとえに驚かしたい一心だったのだが――。

 

「えっ!? ルーシィ彼氏できたの? ……プフフ~ダメだよ。ルーシィ! 妄想を口に出したら変人になっちゃうよ~」

 

ハッピーがからかう様に目を歪ませたが、その目に映ったのは全身を真っ赤に染めるルーシィの姿だった。エルザとグレイは目を見合わせている。

 

ハッピーは一気に不安になった。大好きなルーシィを、知らないうちに、知らない男に、盗られてしまったのかと――。

 

「……うそでしょ? ルーシィ…」

 

 ――うそだぁ……

 ――じゃぁ、じゃぁ……ナツはどうなるのさっ

 

今回の依頼は、ナツから誘われたものだった。言っときたいことがあるのだと――。その内容になんとなく合点の言ったエルザとグレイは、眉を下げて小さく息を吐き出した。

 

「いや。ルーシィに…彼氏ができたのも、初耳だなっグレイ」

「あっあぁ…で? そっその彼氏がどうしたんだよっ」

「いやぁぁぁぁ!!!! じっ自分で言うからっ…キャーー!!」

 

 ナツは心なしか頬を膨らませて、パラソルの下にいる女たちを見つめていた。ルーシィは必死になって、カナの口を塞ごうと身を乗り出して叫んでいる。そのルーシィの必死な様子に、カナは小さく息を吐いて椅子に深く座りなおした

 

「…ったく……、ルーシィ。その酷い彼氏、今度連れてきなよっ」

「……うっ/// ……えっと……あのっ…」

 

 カナの呟きに、ようやくルーシィはキャーキャーと叫んで、カナの言葉を遮るのをやめた。ほっとしたのも束の間。カナの発言にエルザとグレイ、そしてナツの顔色が変わった。一身に視線を集めてしまったルーシィは、茹蛸のように全身を真っ赤に染め上げている。

 

「……酷いのかぁ!?」

「んだぁ? ひどい事されたのかっ!!」

「えっ…いやっ…そんな事は…」

 

 エルザとグレイの怒気をはらんだ様子に、ルーシィは焦って顔の前で両手を横に小刻みに振って、額からべたつく汗をたらした。

そのルーシィの様子に、カナが再び口をはさんだ。

 

「あぁ。さっき聞いた話じゃ、女の敵だね」

「そうそう。酷い事されてるよねっ」

「「……ほぉ…」」

 

真っ赤になってしまっている顔を隠した自身の手の隙間から、チラリとのぞき見た最強チームの面々の表情は、複雑な顔だった。ただ、ナツの横顔だけは、苦しそうに歪んで見えた。

 

 

「……ルーシィ。仕事行くぞっ…」

「……ナツ。大丈夫?」

 

 相棒の青猫がその顔を覗き込むが、ナツ行くぞと声を掛けた後歩き出してしまった。慌ててその後ろをハッピーが追う。

 

 ――くそっ

 ――なんだよ酷い奴って……

 ――オレ……何かしちまったのか?

 ――だったら、直接オレに言えばいいじゃねぇかっ!!

 

ズンズンと、ナツの足は地面を踏みしめて進んでいく。

ナツの背中を見つめ、エルザとグレイは大きく息を吐き出した。そしてグレイがルーシィに手を差し出した。

 

「ほれ姫さん。ボーっとしてないで、行くぞっ」

「…今回はなっ、新しくオープンするパン屋さんからの依頼なんだっ」

「……うん。ありがとグレイ。エルザっ」

 

グレイから伸ばされた手に、ルーシィが手を重ねると、グイッとその華奢な体が浮いた。

 

 ――はぁぁぁ///

 ――ナツ怒ってるみたいっ!!

 ――どうしようっ

 ――エッチしたこと言っちゃったて…///

 ――ナツに言えないよっ///

 

 

 

 

 

 

 

 

 依頼は、無事終了した。

話しがあると最強チームを集めたもののナツは、すでに話す気になれないでいた。仕事の間怒りを抑えていたが、うまくルーシィとすら話せないでいたのだ。ルーシィも、どう言い訳していいのかわからないのだ。

 

 その2人の様子に、ハッピーは辛くて仕方なくなっていた。大好きな相棒と、大好きな少女。この2人はいずれ――。最近相棒が己の心に気が付いて、恋い焦がれて――やっと、やっと再会できたのに!! ハッピーの大きな丸い目には影が差したままだった。

 

 

 

 帰り道。

 

 

 

「ナツさんよぅ…伝えたいことってのは…」

 

グレイが、ナツの背中に声を掛けたが、肩を揺らしただけでナツから返事はない。それを見かねて、エルザが口を静かに開いた。

 

「あぁ……また今度にしようか。ナツ、ルーシィ」

「あ…っ…」

「ん…ワリィ…」

 

ルーシィは言葉が出なかった。あきらかに、カナの一言が尾を引いてしまっている。しょぼんと落ち込むルーシィの脇で、ナツの沈んだ様子に、ハッピーは胸が締め付けられていた。

 

 ――ナツはルーシィの事…

 ――なんでルーシィは…

 ――だって、ルーシィだって…

 

「ナツ、……ルーシィ。オイラ、ルーシィは…ルーシィは…」

「……ハッピー?」

 

ハッピーの顔を心配そうにルーシィが覗き込んだ。目に涙を浮かべハッピーは、ルーシィを視界に映す。その後ろに立つナツも含めて。

 

「わ~ん。ルーシィに彼氏なんて、あんまりだよ~!! ナツがかわいそうだ~!!」

 

 

 そう叫ぶと、ハッピーは翼を広げて飛び立ってしまった。ハッピーの声はマグノリアの空にこだました。

 

「え? ハッピー!?」

「うおぃ!!」

 

一瞬にして全身を真っ赤に染めたナツと、ポカーンと口を開け ハッピーの飛び立つ後姿を見つめたまま動きを止めたルーシィ。「あー」と小さくぼやきながらガシガシと頭を掻くグレイと、そんなみんなの様子を優しい眼差しで見渡したエルザは、優しく口を開いた。

 

「…ハッピーの事は、ワタシ達に任せておけ。……まったく、我々はいいとして ハッピーにも言ってないのか?」

「だなっ。まずはお前たちが仲直りしてから、仕切り直しか? あんま姫さん困らせんなよっクソ炎っ!!」

 

ニヤリと、エルザとグレイは笑って見せた。その笑顔に、ルーシィは一瞬にして真っ赤に染まった。

 

「しっ……知って///?」

「そりゃまぁ…」

「うすうすは……なっ。だが……ちゃんとした報告を、ワタシは待っているぞ」

 

グレイは笑いながら片方の眉を上げると、手を伸ばしてルーシィの金髪をぐしゃりと撫でた。

 

「ちゃんと言ってやんねぇと、解んねぇ奴だぞ。何があったか知んねぇけど、しっかり説明してやれっ」

「…グレイ」

 

頭に乗っかったひんやりした手に、自分の手を添えるとルーシィは微笑んで礼を述べ、ゆっくりとナツへと振り返る。

 

「…ナツ、家で話そっか…」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

「……オレ、何かしたか?」

「ちがくてっ!!」

「じゃぁっ……なんでっ!!」

 

 ――オレのいないところで…

 ――愚痴ってんだよ……

 

「えっと/// そっそうじゃなくて…」

 

眉をよせたナツの責めるような、苦しそうな視線に、ルーシィの胸は締め付けられた。

 

 ――ナツ……何か、完全に勘違いしてるんじゃ……

 ――ちがうの

 ――そうじゃなくって

 ――どうしよう……カナたちに話しちゃったなんて///

 ――軽蔑されたらどうしよう…

 

互いの不安な思いが、思考を暗い方へと向かわせる。

 

 ――なんでっ

 ――オレに酷え処があんなら…

 ――……直接…言えってんだ

 ――くっそぉ

 

「違うのナツ…」

 

ナツは、ジィーッとルーシィを見つめている。まだ光も灯していないルーシィの部屋。陽が沈みかけ、部屋は既に薄暗くなっている。

潤んだ目で見つめ返してくるルーシィを見つめていたナツは、手を伸ばしその細い腕を引いた。

 

「ナツ…んっ…」

 

熱く柔らかいものがルーシィの唇を塞いだ。華奢な体は、たくましい腕にしっかりと抱きしめられている。

 

「好きだ。……オレばっかりが好き見てぇだ…」

「そんなことないもん。あたしだってっ」

「……でも本心は、言わねんだろっ」

「うっ……ちっ違うんだからねっ。あたしが思ったことじゃないからねっ」

「……?」

 

ナツの大きなつり目が、ルーシィの目を覗き込む。

 

「だっ/// だって/// みんながっ///」

 

ルーシィはナツの服の背を、ギュっと握り込んだ。そして、照れてしまうのを隠す様にその胸に顔を埋めた。

 

「何でか彼ができたて、バレちゃって……聞かれたの。いろいろ……そしたらカナが、付き合ってすぐにって……エッチしたいだけじゃないだろうなって…レビちゃんも、はっ初めてなのに何回もするなんて……酷いって/// あっ遊ばれてるんじゃないだろうなって…」

「……っ……なんで俺だって言わねんだよ…したらっ」

 

ナツはルーシィの肩を掴んで、こちらを向かせた。真っ赤に染まった顔のルーシィは、目に涙を浮かべてナツを見上げる。

 

「だっだって/// 今日ハッピーやエルザたちに、一緒に言うって///」

「そっそりゃ……クッソっ……ん?」

「え?」

 

ナツの顔が、見る見るうちにニヤリと歪んでいく。

 

「……あたしが思ったことじゃ、無んだよな? ルーシィ」

「うっうん」

「って事は、ルーシィは嫌じゃねんだよなっ」

 

あっと思った時には、ルーシィの目は部屋の天井を映していた。そして、ベッドのスプリングは2人分の重さにギシリと音を立てた。

 

 

 

 

 

Fin

 

 

この先は、R指定になりそうなんでしょうりゃ~~~くwww

 

bottom of page