2015年08月02日~
かんちがい
朝起きたら・・・・・・
サンサンと降り注ぐ夏の太陽の光。窓から滑り込んでくるその光に、まぶしさと暑苦しさを感じて、ルーシィは眠たい頭を揺り起こした。
「ふぅぅ…んんんっ」
ベッドの上でそのまま上体だけ起こして座ると、ググッと両手を伸ばして、寝固まっていた体を解していく。
――今日ってなんか予定あったっけ?
――えっと……昨日は…
その時、ベッドの軋みに合わせるように暖かい何かが触れた。
――え?
ルーシィの視界に映ったのは、肌色と――桜色。
「……ナツ…///」
「zzzzzz」
――そうだっ
――昨日、酒場に通ってくれてる常連さんカップルのプロポーズが成功して…
――宴だぁ!!って、はっちゃけちゃったのよね……?
――そう言えば、楽しすぎてお腹一杯飲んだ様な?
――ナツも、なんだか上機嫌でお酒煽っちゃってて……
――お互い酔っぱらって、一緒に帰ってきちゃったんだ…うちに…
ルーシィの身じろぐ気配を感じるのか、背を向けていたナツがゆっくりと寝返りをうった。それに合わせて腹にかかっていたタオルが体の下敷きになった。
「…ひゃあっ///」
とりあえずルーシィから見える範囲、ナツは布を身に纏っていないのだ。ルーシィは合わってて、視線をそらすと自分がかけて寝たいたのであろうタオルケットをナツの肌色そっと乗せた。そして、あらわになった自分の肌色を目に止め、身体を己の手で弄った。
――うん
――ちゃんと着替えて寝たのね……あたしってば…
――まぁ…昨日の服、ピチピチで苦しかったしね…
――あれ?
――これ……うちに置いてあるナツのシャツよね……?
「…えっとぉ……?」
ルーシィは、たまたま部屋に置いてあったナツの替えのシャツを身に纏っている。以前 勝手にお風呂に入られた時に着ていたものを洗濯させられ、また次の時の着換えだと置いていかれてたのだ。
――んん? ナツお風呂入ろうとしてたのかしら?
――そういえば、昨日全身暑くて蕩けそうで、
――そこにあったからこれ着ちゃったのかなぁ……
――あっ! だからナツ、何も着てないの?
どうやらルーシィはシャワーも浴びないで、眠りについてしまっていたようだ。ブラはしていないし、Tシャツ以外は下着のパンツしかはいていない。
――あたしってば、なんて格好で寝てるのかしら……
――これじゃぁ、女の子扱いもされないわね……はぁ…
――うぅ~ん…
――なんか記憶がはっきりしないや…
なんだか、晴れない思考を目覚めさせようと、させようとルーシィは起き上がった。それに伴ってまくれ上がるタオルケット。ナツの腹筋がちらりと見える。
――あっ……あそこにあるの……
――ナツのよね……
――あっあたしは……見てないわよっ///
ふと目を向けたところに、ナツのボクサーパンツが転がっている事に気が付くと、ルーシィは己の部屋を見渡した。見渡せば、脱ぎ散らかされた昨日身に纏っていた洋服たち。どうやら自分とナツは、相当酔っていたようだった
ルーシィはそのままシャワーを浴びようと立ち上がった。
その時、下腹部に違和感をおぼえた――。
「……あっ」
*
*
シャーシャーっと、水の流れる心地いい音が響いてきた。
まどろむ思考が、だんだん浮上してくる。
――いい匂いだな……相変わらず……
優しい匂いが包み込むこの部屋は、いとしい少女の部屋であろう事は、目を瞑ったままでも容易に認識できた。腹にかけられていたタオルケットを滑らせ目をこすりながら、ナツは静かに体をおこした。ギシリとスプリングを軋ませ、ベッドの端にドスンと座りなおした。その時、体にかけられていたタオルケットがベッドの下に落ちた。
「!?」
確かに、寝る時は服を着ない事もある。それでも下は穿いている。全部脱いだら、どっかの変態と一緒だからその辺は、きちんとしているつもりだった。それに、ルーシィの家で寝る時は彼女が怒るのでTシャツも必ず着させられるのだが――。
ナツは自分の下半身を黙って見て、焦っていた。
――履いていないのだ。
――何も。
まだ働いていないであろう頭を、大きく横に振り熱い手でガシガシと桜色の髪を掻いていると、浴室のドアがカタンと音を立てた。
ナツはゆっくりと視線を上げて、バスタオル1枚で出てきたルーシィを視界に止めた。ナツの視界の中でルーシィの顔が、一瞬にして真っ赤に染まると、静かにベッドに座るナツにタオルを投げつけてきた。
「すッ素っ裸で///なにやって……あっ///あんたもシャワー浴びればっ///」
――なっなんで裸で座ってるのよっ///
「……おう」
ルーシィが投げつけてきたタオルを腰に巻いて立ち上がるとナツは、浴室へ向かった。脱衣所にある洗濯カゴに、昨夜まで自分が身に纏っていた服や下着までもが入ってるのを視界に入れ、ナツはシャワーを頭から浴びた。まだボーっとしたまま、シャワーの熱を、熱く沸騰させた。
ナツは、昨夜の事をぼんやりと思い出していた。すると、だんだんと顔に熱が集まってくる。
――昨日は何かの祝いで……宴があって
――しこたま飲んで、珍しくルーシィの酔っぱらってて……
――自然と自分に甘えてくる姿が可愛くって、オレもつられてしこたま飲んで……
――ご機嫌のままルーシィの家に帰ってきたんだ…よな?
――ハッピーは……置いて来ちまったしな…
――んで?
――…あん?
――っとぉ……部屋に到着して…
――でもまだ、ルーシィが甘えてきて…暑いとかもがいて……
――そうだっ……うまく脱げないから服脱がしてくれって…///
頭を洗っていた腕が動きを止める。俯きながら、自分の体が熱く赤くなっていくのを覚えながらナツは、シャワーを全開にした。
――んで、ナツも暑苦しいでしょ~? って満面の笑みで…///
――オレの服脱がしてきて……
――おれ…ぶちって、なんか頭の中で切れて…………覚えてねぇぞ!?
沸騰したシャワーの水が、浴室の空気を重たく白くしていく。
――でも…オレ…裸で寝てたよな…
――え?
――……まさかっ///
混乱したまま、腰にタオルを巻いて浴室を出ていくと、洗濯機がまわっていた。脇にルーシィが置いておいてくれたであろう、シャツとパンツがある。それを身に纏ってナツは、ドカドカと部屋に戻った。
キッチンで料理するルーシィの後ろから「服ありがとなっ」と声を掛けると、振り返った顔が真っ赤に染まっていた。
スンと、鼻をならせば――かすかに血の匂い――
――そういや、初めてだと血が出るって……
――やっぱりっ!?
じわじわと顔に熱が集まってくるナツは、キッチンにいる後ろ姿をボー然と眺めていた。
ルーシィに急かされて作ってくれた朝食を食卓に運ぶと、ルーシィは氷の入ったグラスと紅茶のポットをもって来てくれた。
向かい合って食卓に着いて、フォークを手に取った。
食事中も、いつもと変わらない態度のルーシィ。そのルーシィの態度の合わせて、ナツも変わらず いつも通りに接していた。
そして、しばらくすると窓からハッピーが入ってきた。ハッピーを笑顔で迎え入れ、オイラにもお魚ちょうだいと強請ってくるハッピーに、ルーシィは笑顔でしょうがないわねと、冷蔵庫から出してきた魚を渡していた。
何とも――何ともいつも通りの光景だった。まったくもっていつもどおり。
――ルーシィのヤツ……何考えてやがるんだ?
*
はっきりとした関係の変化もなく、日常がすぎていく。
――まぁ、ルーシィ照れ屋だかんなっ
――今更焦ってもしゃあねぇしなっ…
ハッキリせずモヤモヤしたままだが、数日・数週間が経ち、ルーシィが何も言ってこないので、やっぱり何もなかったのかと思いはじめた時、そのルーシィが体調を崩した。
気持ち悪そうに口元を押さえ、トイレに駆け込んでいく後ろ姿。
――あん?
決定的な言葉は、ないまま。体調を崩したルーシィは、最近になってフルーツや甘酸っぱいもの、サッパリしたものばかりを好んで食べるようになっていた――。
――これって……?
――前に……依頼で…
ますますモヤモヤした思考の中、耳に響いてきたギルドでの誰かの声。
「…ちゃん、妊娠したみてぇだな…」
耳のいいはずのナツだが、ガヤガヤと他の奴等の声が重なってよく聞き取れなかったが――。その言葉を聞いて、ナツの頭の中で点と点が線で繋がってしまった。以前依頼で出会った若い夫婦の嫁の方は妊婦だった。妙に酸っぱいモノや、サッパリしたものばかり食べていて――突然くる吐き気で、よくトイレに駆け込んでいた。
――まさかっ
ちょうどその時、ギルドの入り口からルーシィの笑い声が聞こえてきた。今日は女子会だからと言っていて、エルザやレビィたちとケーキを食いに行くと聞いていた。
ナツはドタドタとルーシィへと近づくと、ひょいっとその体を肩に担ぎあげた。そして外へと駆け出していく。突然の事に慌てふためくルーシィだったが、周りを囲むメンバーはルーシィを抱えたのがナツだったので別段慌てる事もなく、2人を見送ってしまった。
「ちょっちょぉっとぉ~!! 何なのよナツぅ!?」
「うるせぇ行くぞっ!!」
「え? え? なに? 依頼??」
「ちげぇっ……今一番いかなきゃいけないところだっ」
ナツの肩の上で揺られながらルーシィは、結構なスピードで過ぎていくマグノリアの街の風景を眺めていた。こうなったナツには、ここで何を言っても取り合ってくれないのだ。それは今まで身をもって体験してきたことだ。
「……はぁ」
――今度は何だろうなぁ?
――ハッピーが、自分より大きな魚釣ったとか?
――珍しい実がなってたとか?
――それとも、珍しい花……あっでもこんな暑いと花も咲かないとか言ってたわね…
――また何かあたしのモノ壊したとか……でも、うちと方向違うわね…
――えっまさか……っ
――エルザのケーキ……いや。今日は外にケーキ食べに行ったし……
「着いたぞっ」
ルーシィが物思いにふけっている内に、ナツは目的の場所にたどり着いていた。ナツの肩の上で、体をひねって見上げると綺麗なステンドガラスが、陽の光を受けてまるでガラス自体が光っているように輝いて見える。
――ここはカルディア大聖堂だ。
言葉をはさむ間もなくルーシィはナツの肩に担がれたまま、教会の中へと連れていかれてしまった。今日はただの何でもない日だが、教会の中には参拝するものや観光で訪れた者などが、ちらほら見受けられる。
ナツはルーシィを協会の真ん中で、肩からおろした。そして彼女の正面に立ち、目の前の華奢な肩に熱い手を置いて真剣な目を向けた。その滅多に見せないナツの真剣な表情にルーシィは、息をのんだ。そしてゆっくりとナツの口が動く。
「なんで、言わねぇんだよっ」
「なっなに!?」
「何じゃねぇ!! 結婚すんぞっ」
「はぁ? 誰と誰が?」
「オレとルーシィだろっ」
ナツの声が、大聖堂の中で響いた。ルーシィは一気に顔を真っ赤に染め、慌てて肩に置かれたナツの手を握り返した。
「っ/// 突然何言っちゃってるのぉ!?」
「ちゃんと結婚してた方がいいだろうがっ!!」
「はぁ? え? え? まって、あたし達付き合ってもいないわよねっ」
「関係ぇねえ!!」
ナツの大きな声に、周りにいた人たちから視線が集まってくる。ナツの目は真剣だ。だが、何か話が――ナツにしたって、跳びすぎだ。
「結婚してから、父ちゃん母ちゃんにならねぇと、子供が苦労するってきいたぞっ!!」
「……ふへ?」
「だからっ!!」
いよいよ会話の中身が分らなくなり、ルーシィはさっぱりわからないという顔をナツに向けた。キョトンとした顔のルーシィに、鬼気迫ったように焦っていたナツはふぅッと息を吐き出した。そして、冷静さを取り戻していく。
「ルーシィ…妊娠したんじゃ……」
「…………はぁぁぁぁぁあ!? 誰の子妊娠するって言うのよっ!? そんな覚えないわよぉっ!!」
今度はルーシィが大きな声を上げる。あまりの驚きに、集まっている視線をしばし忘れてしまっているようだ。訳が分からないとご立腹のルーシィの様子に、ナツは何と言っていいのか思い悩んだ。
――自分の身体の事だろうがっ……
――ルーシィのヤツ……あっ……ルーシィも覚えてねぇのか!?
「だからあの日!! ……俺たちヤっただろ!?」
――ヤったから、できたんだよな!?
――オレ以外にルーシィが、そんなことする時間も気持ちもねぇだろ……
「っ/// 何言っちゃってるのよっ!!」
「だって俺、裸で寝てたし…」
「あんたが勝手に裸になったんでしょ!?」
「声かけたら、ルーシィ真っ赤になってたし…」
「そんなのっ、酔っぱらって醜態晒しちゃったから、恥ずかしかっただけで……」
「ぬっ……でもルーシィから血の匂いが……初めてだと血が出るんだろっ…」
「はっ///ばっばかっそれは違う血よっ!!」
「……はぁ?」
「ギルドでも、ルーシィ妊娠したんだって噂になってっし」
「ばっ! 違うわよっ。聞き間違えよっ!! 妊娠したって……あたしじゃなくて、常連のキャシーさんっ!! ほらこの間ギルドでプロポーズ成功のお祝いしたじゃないっ!!」
「んあ?」
首を傾げるナツ。
――ナツの言ってるあの日って、キャシーさん達のお祝いの日よね?
「だからっ…あたしは服着て寝てたし、酔っぱらっていろいろナツに迷惑かけちゃったから少し恥ずかしかっただけだし、ちょうど……女の子の日になっちゃって…って///何言わすのよぉぉぉぉ!!!!」
女の子の事情まで、説明してルーシィはハッと我に返った。周りからは生暖かい視線が集まっていて、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
羞恥に目に涙を浮かべたルーシィは、事の元凶をキィっとにらみつけ、振りかぶった。
“パーン”
乾いた音が大聖堂の高い天井まで響いた。叩かれた頬を擦りながら、ナツはジトッとルーシイを見つめた。
「…オレの、勘違い…か…」
「そのようね。大体なんでそんな…///」
「だってよう…酒の入ったルーシィって///…」
「え?」
「なんかいつもよりかわいんだよな…甘えてきて乳とか押し付けてくるし…熱いから服脱がせてっ!とか言ってきて、オレもう我慢の限界だって…………あっ」
ポロリポロリと漏れ出てくるナツの本音に、ルーシィは茹蛸状態だ。真っ赤に染まってしまった顔を隠しながら、ルーシィはナツを睨み付けた。
「////// ナツの……ばかっ」
その頃、ギルドではカルディア大聖堂の中で繰り広げられていたナツとルーシィの話を聞きつけ、これはいよいよかと宴の準備がされていた。
Fin
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あ――!!!めっちゃ意味わかんない文章だなぁ……
日に日にまとめる能力がなくなっていく気がする……_(:3)∠)_
お目どうしありがとうございます!!
おそまつっ!!!!