2015年03月03日
あいつに好きな子?・2
以前Twitterで呟いたネタの清書版かな?
「もうあんたのせいで、約束遅れちゃうじゃないっ」
「……」
「……いい加減離してよっ。バカナツ」
ナツの腕に閉じ込められたはずのルーシィは、グレイとの待ち合わせの場所へと急いでいた。ナツの腕の中からは逃れたが、その白く細い手は、まだナツと繋がっている。どうしても、手だけは放してくれなかったのだ。
あの後、「バカなこと言ってるんじゃないわよ」とルーシィが怒鳴ると、ナツは何も言わなかった。――言えなかったのだ。ルーシィの拒絶とも取れる言葉に、返す言葉がなかったのかもしれない。
ナツが黙ってしまったその少しの間に、ルーシィは大きく息を吐き出した。
――まただ……
――また、期待させて……一気に叩き落とすんだ
ルーシィの目には、涙が浮かんできていた。また簡単に期待してしまった自分に対して、そして自分を簡単に期待させて裏切るナツに対して、ルーシィは怒っていた。怒りに任せルーシィは涙を湛えた目で、ナツを睨み付けた。そして、そのあたたかいはずの、嬉しいはずの腕の拘束を、解き約束の場所へと急いだのだ。
――自分から、好きな奴が出来たって言ってきて……
――なんであたしに、簡単に触れるの?
――あたしが女じゃないとでも?
――協力しろって……そんなの分んないっ
――ナツが何考えてるのか……わかんないよ
――もうあたしの気持ちも……わかんない
ルーシィは、走った。きれいにセットした髪を振り乱して。商店街の時計を見れば、既に約束の時間を過ぎている。グレイはどうしただろうか――。その後ろを、ルーシィの手を掴んだままナツが付いていく。どうにも離すことが出来なかったのだ。ここで離してしまっては、いけない気がしたのだ。
「あぁ……。約束したのに……もう、最悪っ!!」
「……」
ナツは、だんまりだ。ただ眉間にしわを寄せ、しっかりとルーシィの手首を掴んでいる。はた目にはただ、手を繋いで走っているように見えるのだろうが――。
――誤解じゃねぇからいいって……
――どういう意味なのよ……
待ち合わせの広場が見えてきたところで、ルーシィは走る足を緩めていた。このままナツを連れて行っても、グレイと喧嘩になるのは目に見えているからだ。
「手…痛いんだけど」
「……」
「はぁ……何とか言いなさいよ」
ナツの手を振り払おうと、握られている細い腕を振り回すルーシィ。不意にその表情がゆがんだ。
「痛っ」
「っ……」
「ねぇナツ。何が気に入らないのかわからないけど、あたしはグレイと約束しているのっ。なんだかわからないことで、約束を破りたくないの」
離された手首を擦りながら、ルーシィは黙ったままのナツの顔を覗き込んだ。ナツは眉間にしわを寄せているが、なんだか頼りない顔をしている。
「言いたいことがあるなら、はっきりいなさいっ!!」
「っ!! 好きだっ!!」
「……え? ……あぁ。告白の練習に、付き合ってほしかったのね……」
ルーシィは引きつる顔を必死に立て直しながら、自分を射抜くように見つめてくるナツの目線から視線を外した。
――はぁ……あたし、バカみたいだな
――誤解じゃねぇって……もう告白するから…ってことか…
1度外した視線を戻すと、そこには今日1番の不機嫌顔のナツがいた。
「ふざけんなっ。オレ……好きだって言ったんだぞっ!!」
「きっ聞こえたわよっ。いいんじゃない? そうやって告白でも何でもしてくればいいじゃない! 一々あたしのとこに来ないでよっ」
「ちがっ」
ルーシィはナツを睨み付けた。その涙を滲ませた視線に、ナツはたじろいでしまった。
「じゃぁ……もう仕事行くから」
「いあっ……だから聞けって!! オレは……ルーシィが好きだ!!」
――//////
――ナッナッナツが……
――あぁ、期待しちゃだめよ
――ルーシィ!! しっかりしてっ!!
「……あたっあたしの名前入れないでよっ///…かっ勘違いしちゃうでしょ……」
ルーシィは赤くなった頬を、冷えた手で隠して目を泳がせた。その手をナツが勢いよく掴んで、強引に自分と目線を合わさせた。
「かっ勘違いでも何でもいいから……少しはオレを男としてみろよっ!!」
「……はぁ?」
「だからっ、オレはぁ……」
ため息交じりにナツは、空いている手で大きく頭を掻いた。伝えたいことがちっとも伝わらないのだ。イライラが募っている。だが、ルーシィだって真剣だ。またのせられてしまって、再び叩き落された時もう立ち上がれそうにない――。
「っ!! もうやめてよっ!! いつもいつも思わせぶりな態度ばっかり。ドキドキさせるだけさせて、あたしのこと振り回して、何が楽しいのよっ!! あんたに振り回されるのは、もうたくさんなのっ」
――ばかばかっ
――もう隠しきれないよ……
「……なんだよそれっ!! 俺じゃなきゃいいのかよっ!!」
ルーシィ目からは、湧き水のように涙が湧き出ては流れ落ちていく。
「はぁ? 振り回さないでって言ってるのよっ」
「おれは……ルーシィになら振り回されてもいいぞ」
「んなっ……に言って……」
「だからっ」
「っ!! うるさいっ!! もうあたしをからかわないでよ……触らないでっ」
ルーシィの手を掴んだナツの腕は振り払われた。ルーシィの頬を伝い落ちる、透明な雫。溢れる涙をそのままに、ルーシィはナツを睨み付けた。涙を湛えた大きな目でまっすぐ見つめられ、ナツは動きも思考も奪われてしまう。
「えっ…いあっ……あとっ……うぁっ」
「なんなのよっ! あんたはいつもっ……もうっ意味わかんない!!」
涙を流したルーシィそれを手で拭い、広場の中へ進み始めた。ナツは慌ててルーシィを追った。
――くそっ
「追いかけてこないでよっ! あんた、好きな子がいるんでしょ」
「クソッ……話終わってねぇぞ!! いいから聞けって」
「聞きたくないわよ……それともなに? あたしはナツにとって女じゃないから、告白の練習台して、反応見て、からかって……キズつく心配は無いとでも!?」
「そんな事言ってねぇ!!」
ルーシィは歩みを止めることなく、ズンズンと進んでいく。通りかかった顔見知りからは、ひやかしの声が飛んでくるが、そんなものは既にお構いなしだ。ルーシィの動きを止めようとナツが手を伸ばすものの、その手をルーシィはうまくかわして進んでいく。
「ルーシィ!!」
「大きな声で人の名前、呼ばないでよっ」
「だって、ルーシィが足止めてくんねぇからっ」
「だからあたしは、グレイと待ち合わせが……」
そして、やっと待ち合わせの場所に到着したが――やはり、そこに見慣れた男の姿はない。広場の時計を見上げるルーシィは、大きくため息をついた。既に随分、約束の時間を過ぎてしまっている。
「氷野郎はいねぇじゃねぇか。 いい加減ちゃんと話聞けよ! ルーシィ」
「……やだっ」
「いいから聞けっ!!」
「イヤァ!!」
逃がさない様にとルーシィの肩を強くつかむナツ。思いがけない力で肩を掴まれ、ルーシィは眉間にしわを寄せ、何とかその拘束から逃れようと体を揺らし、叫ぶ声は既に悲鳴のようだった。
――もうやだ……なんであたしナツに、協力するとか言っちゃたんだろ……
――こんな思いがしたかった訳じゃないのに……
ルーシィは、泣き叫びそうになっていた。もうどうしたらいいのか判らなかったのだ。ルーシィの肩を掴み、ナツは苦しそうに眉間にしわを寄せていた。
――くそっ!!
――なんでこうなった?
――どこで間違えた?
――んな、涙にぬれた顔が見たいんじゃねぇんだ!!
ナツは意図せずに、ルーシィの肩を掴む手に力を入れてしまっていた。
「痛ぅ」
「あっ…」
「おいっ!!」
ナツの腕を、一回り大きな手が掴んだ。そしてそのまま、その手をひねりあげた。
「何やったんだお前はっ……はぁ」
「「!!」」
「……大丈夫か? ルーシィ」
「え……うん」
ルーシィは庇われた肩を擦った。視線はラクサスに向けたまま。視線を向けられたラクサスは、捻りあげた腕を離し、呆れた目をナツに向けている。
「……ナツ。加減しやがれっ…ケガさせる気かっ……馬鹿が…」
「ぐっ…」
「……はぁ。ギルドの看板しょって、表で恥さらしてんじゃねえ」
ルーシィはハッとして、辺りを見渡した。たくさんの人達。中には顔見知りだっている。周りが見えなくなっていたルーシィの頭は、一気に覚め、恥ずかしさに全身を一気に染め上げた。
「……くっ」「ひぃやぁぁぁ///」
「はぁ……痴話喧嘩は、帰ってやりやがれ」
「ちっ痴話喧嘩じゃ……」
「だってルーシィが、話し聞いてくんねぇんだ……」
目を真っ赤に腫らし、今度は羞恥に涙を浮かべるルーシィと、唇を突き出してご機嫌斜めの様子のナツ、大きな2つの目と、2つのつり目に見つめられ、ラクサスは頭を抱えた。
――オレは子守しに来たんじゃねぇぞ……
とりあえず集まってしまった視線達を、何でもねえからあっち行ってくれと散らし、ナツとルーシィを広場のベンチに座らせた。
――だってじゃねぇだろうが……ガキかお前は……
「ルーシィが、話聞かねえのが悪ぃんだっ!!」
「……ナツが、悪いんだもん」
「ルーシィが、鈍感なのが悪ぃ!!」
「んなっ!!」
「……はぁ……順番に話せ……」
*
*
*
「……はぁ」
ラクサスは頭を抱えた。そして、キョトンとした顔のルーシィと不貞腐れ唇を突き出しているナツ。
――んなもん、勝手にやっててくれ……
――何をどう間違えれば……
「なっ!! ラクサスオレ悪くねぇだろっ!!」
「何言ってるのよっ!! 行動全部がふざけてるじゃないっ!!」
「……はぁ……」
「ため息ばっかついてっと、禿げんぞラクサス」
「ちょっバカ! そっそんなことないわよっラクサス!!」
「…はぁ……誰のせいで溜息ついてっと思ってんだバカヤロウ…」
「ぬぉ……ほらルーシィさっさと謝っとけよ」
「はぁ!? あたしぃ!? あんたでしょうがっ!! 人のせいにすんなっ」
「……どっちのせいでもいいだろっ。どっちも一緒じゃねぇか!!」
ラクサスは頭を掻き、力の抜けた目をナツに向けた。
「…なぁ、ナツ……1つルーシィに、約束してやれっ」
「あ?」
「え?」
「からかいや、嘘はこの後一切なしだ」
「そんなん……オレは、はじめっから……」
「……だからそれが、信用できねえってのは、日頃のテメエの行動のせいだろうが……」
「むっ……」
ラクサスにじっと見つめられ、ナツはグッと息をのんだ。そして真摯な目を向ける。
「ここで、約束しろっ」
「おう。これからいう事は、全部本当だ。嘘もいたずらもねえ。だから聞けよルーシィ」
ナツの真摯な目が、ラクサスからルーシィに移った。ルーシィは、息をのみ視線を泳がせた。
「……だとよ。ルーシィ。……ちゃんと話、聞いてやってくれっ」
「……へっ/// ……うっうん」
やっとルーシィの素直な視線が、ナツを正面からとらえた。ラクサスは騒ぐなよと言い残し、後ろ手に手を上げて去って行ってしまった。――その背は、ずいぶん疲れが見えていたそうな。
*
*
その場に残された2人。
ルーシィのまっすぐな視線が、ナツの目を射抜くようにとらえている。
そこにごまかしも、からかいも許されない。
――くそぉ
――滅茶苦茶緊張してきた……
ナツは握りしめた拳が、己の汗で湿っていくのを感じていた。何とか緊張を逃そうとするも――
――そうか
――ここで、笑わすようなこと言ったらダメなんだよな……
ナツを見つめるルーシィの手は震えていた。いくら相手があのナツと言っても、何を言われるのだろう――。
――もう、からかいも、練習もなしなんだよね……
――あたしが逃げたから、ナツ言いたいことも言えなかったんだ……
――もしかしたらっ
――あたしから……離れて行っちゃうの?
ナツの緊張からくるの間が、ルーシィの中の不安を煽ってしまう。いやな方には考えたくはないが、どうしても頭の中に、先日のナツの声がこだまする。
『好きな奴が出来た。協力してくれっ』
ルーシィは頭を振った。確かにあの時のナツも、真剣だった。嘘もごまかしも見えなかった。
この間のナツも、目の前のナツも、――真剣なんだ。
――しっかりしてルーシィ!!
――あなたは強い子よっ
――ナツが何を言ったって……平気じゃない
――だって……仲間が幸せになろうとしているんだもんね……
ルーシィの視界の中で、ナツが大きく深呼吸した。まるでエルザに間違いを指摘するとでもいうように、緊張しているように見える。緊張のため握られているナツの拳から、汗がしたたり落ち地面に水玉を描いた。
「あのなっ!!」
「……うん」
「オレの好きな奴ってなっ!!」
「……っ」
ルーシィの視界は自然とぼやけていた。目の前にいるはずのナツが、歪んで見えている。でも聞かねばならない。
こんな時だが自覚してしまったナツへの想いが、胸を締め付けてくる。
――ちゃんと聞かなきゃ……
――自分の気持ちから……逃げないために…
「ルーシィだ!!」
「……へっ?」
「オレ、ルーシィが好きだぞっ」
「……」
「うっ嘘じゃねぇぞっ!! 悪戯じゃねぇかんなっ!!」
「……嘘だよ……」
「っだから「そんな都合のいい話……」
あふれだした涙で前が見えなくなってしまう。ルーシィは涙をぬぐい、ナツの次の言葉を見つめた。
「オレは、ルーシィが好きだぞっ……だからっオレをちゃんと男として見ろよっ!!」
ニィっといつものように笑って見せるナツ。ふと視線を落とすとナツの手は、拳に握られかすかに震えて見えた。
――何か腑に落ちないこともあるけど……
――もう、何でもいいや
――あたしが、ナツを好きで、
――ナツの好きな人が、あたしだって
――それだけは、真実なら…
「バカねっ……とっくに大好きよっ!!」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ありがとうございました!!
何か書いてるうちに……こんなんなってしまいました(*ノωノ)
意味わかんない勘違いと、御気の毒なラク兄w
続きを~と言っていただいたモノの、ご期待に沿えていなかったら……(-人-)ごめんよおぉ