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2014年10月27日~11月06日

可愛い訪問者②

ナツとルーシィとハッピーでの依頼先……

それぞれが、目的を抱えている中お邪魔虫的な訪問者が空から現れる……。

 

 

翌朝 

 

 まだ日も登らぬ早朝。もそもそと動く金髪。目的地は、桜頭の男が眠るベッド。出来うる限りの気配を消し去り、まだ起きてはいないだろう憧れの男を、脅かすべく豪快にそのかけ布団をめくった。 

 

 だが、ーーそこには、丸められた布団と枕――もぬけの殻だ。 

 

「え? ……ナツさん?」 

 

 静まり返った部屋で、掛布団を抱えた金髪の幼児は、もぬけの殻と化したそのベッドによじ登った。確かにナツの匂いが残っている。だがその寝床には、ぬくもりは残ってはいない。昨夜、同じ部屋で眠りについたはずなのに。 

 

 金髪の少年は、かすかに残る桜頭の匂いを追う。と、案の定というかーー例の少女の部屋の前へやってきてしまった。今はまだ、陽も上がらぬ早朝だ。男と女が一つの部屋で――。 

 

 ――まさか――昨日はああ言ってたけど――やっぱりそういう仲なんじゃ――。

 

 見かけは幼児でも、所作中身はただの男である。スタイル抜群のかわいい金髪の少女の――あられもない姿が頭をよぎる。扉の向こうに待ち受けているかもしれない光景が、頭を霞める。スティングは意を決してそのドアノブを掴みゆっくりと回した。桜頭の男のベッドに忍びよった時よりも、慎重に気配を消して――。 

 

 見事侵入を果たし、ベッドの上こんもりと膨らむ掛布団。スティングは、口内に溜まった唾を静かに呑み込み、布団の端をめくってを覗き込もうとした時、その布団がもぞもぞと動き、その中から聞きなれた声がする。 

 

「ルーシィ―? ローグゥーどーこー??」

 

 ――布団の中から、ピンク色のカエルが現れた。 

 

「ふっフロッシュ……」 

 

 そういえば、このロッジは寝室が2つしかなかったため、男共と、ルーシィ+猫たちで部屋を分かれたのだ。ローグがフロッシュと違う部屋は心配だと聞かなかったが、その姿で何言ってるのよ?と一掃され、当のフロッシュはにこにことルーシィの腕に抱かれていたことを思い出した。「フロッシュ……反抗期なのか? ……俺が、ウザいのか!?」そう片翼が言っていたのには、呆れて体から力が抜けてしまった覚えがある。普段はしっかりしているくせに、フロッシュの事となると――。 

 

 ――それにしても? 

 

「スティングー。おはよー。ローグは~?」 

 

 目をこすりながら、少々カエルの頭の位置がずれてしまっているフロッシュがスティングの顔を覗き込んだ。開け放たれたドア、この部屋の中に他の者の気配は感じられない――あれ? 

 

「フロッシュ……ナツさんとルーシィさんは?」 

「んー」 

 

「どっかいったのか?」 

「んー」 

 

「いつからいないんだ?」 

「んー」 

 

「おいフロッシュ!!」 

「んー。スティングー。おはよー」 

 

「……」 

 

 これは、このカエルの相棒で、双竜の片翼にどうしたものかと相談した方がいいのか。――この場合、しっかり教育してやれと諭す方がいいのかもしれないな。 スティングの脳裏に、ことフロッシュの事に関しては超が付くほど過保護で、落ち着きをなくす片翼が浮かぶ――さらに何か言えば、慌ててフロッシュを背に庇い、罵倒してくる姿すら浮かんだ――。

 

「フロー。お腹すいたー」 

「はぁ……ナツさん」 

 

 話がかみ合わないまま、スティングとフロッシュはポテポテと歩き、先ほどどは違うドアを開ける。そのまま、視界に入ったリビングのソファに身を沈めた。

 

 

 

 

 部屋に暖かい空気が充満し始めると、なんだか食欲をくすぐる良い匂いがしてくる。パンの漕げる香ばしい匂いと、ジュージューっと何かを焼く音が、耳に心地いい。スティングはゆっくりと、その瞼を持ち上げた。

 

「あっ起きたね。スティング」

「スティング……なぜここで寝ているんだ? しかもフロッシュと!!」

 

俺とは寝てくれなかったのに!! と悔しがる片翼。顔を覗き込んでいるのは、青い猫とピンクのカエル。

 

「……へ?」

「仲良く歩いてきちゃったんでしょ? 夢遊病なんだね! スティングって」

「フローもそーもー」

 

 目の前の青猫が、からかう様に目を歪めたが、スティングは寝ぼけた思考で、面食らっている。と、そこに明るい声が降ってくる。

 

「ほらほらっ。起きたなら顔洗って来たら? 朝食もうできるわよ~」

 

 声のする方に振り向くと、にっこりとほほ笑む金髪の若い娘――あっ!! ルーシィさん!! スティングは慌てて、体をおこし桜頭を探すため、部屋の中を見渡した。すると自分のすぐ後ろに異様な気配を感じる。

 

「ぎゃ……おはようございます!! ナツさんっ。あのっ」

「……あ?」

「きっ聞きたいことが……」

 

 ナツのその声色は、――すこぶる機嫌が悪いようだ。漂う空気も、メラメラと燃えるように熱い。何故だかわからないまま、その威圧にタラリと汗をかきスティングは、笑みを凍らせた。

 

「スティング……顔洗ってやんよ」

 

ナツはスティングの首根っこを摘み上げ部屋をでた。スティングは、動けないまま顔色だけ蒼く変え大人しくぶら下げられている。

 

「おいっスティング!! なんでてめえの匂いが、ルーシィの部屋の前までつながってんだ!? ああ??」

 

 洗面所に連れていかれて、そのドアが閉まるやいなや壁とナツさんに挟まれてしまった。――女子なら喜ぶところなのだろうか――なぜここで、ナツさんに壁ドン――。

 

 

 ここでお世話になって――分かった事が2つある。

 

 一つ目。ルーシィ・ハートフィリアという人物は、よく笑い、よく喋り、ぶりっ子でも何でもなく素直に可愛い人だという事。そして――とんでもなく、鈍感な人間だという事。

 

 もう一つは、ナツさん。ナツ・ドラグニルという人物の、矢印は完全にルーシィさんへと向いていて、他者に付け入るスキを与えていない。が、ルーシィさんには、うまく伝わってない――ナツさんの好意からの言動を偶然や、仲間だからだと、自分を好きなわけがないと思い込んでいるようで、その好意に気づくこともないのだ――。

 

「えっと、でもっ あのっ」

「ああ?」

「オレ……ナツさんを探してて……臭いを追ったら…」

「ほぉ…お前は、俺の臭いがするからって、女の部屋に忍び込むのか……」

 

 ナツの肩が、ゆらゆらと炎に変わっていく――洗面所の温度が、数度上がったようだ。

 

「ナナナツさんっ ナツさんが居るって、思ってっ……出来心…でっ…ごめんなさい!!!」

「……ほおおぉ。出来心で、…ルーシィの寝床を覗いたのか」

 

 ナツの吐き出す息が、近くにいるスティングの髪の先をチリリと、焦がした。

 

「あつっ ナツさ~ん!!」

「……体戻った時の……覚悟…出来てんだろうなっ!!」

 

 スティングの額からは、べっとりとした汗が止めどなく流れ落ちていく――。

 

 

 暫くして再びリビングの扉が乱暴に開いた。ドアが開いた先から、やかましい声が部屋に響く。

 

「あのなぁ……俺たちも仕事で来てんだっ。ちゃちゃ入れてくるんじゃねぇ!!」

「そんなぁ言ってよっ。ナツさん。オレ等も手伝いますって!!」

「ああ? ……誰もそんなこと頼んでねぇ!!」

 

 ナツは、スティングの首根っこをつまみ、近くのソファにポスッとほおり投げた。これ以上邪魔されてはたまらない。ルーシィとハッピーとの楽しい時間を邪魔されただけではなく――今回の計画だけは――。

 

「こ~らナツ! スティング君今は、ちっちゃいんだから加減してよねっ」

「わ~ってるってのっ」

 

 ルーシィの声につられるように、ナツはキッチンにズカズカと入って行ってしまった。まったくもって、ルーシィにベッタリなのである。もっと仲良くなる、せっかくのチャンスだというのにそれこそ――付け入るスキがないのだ。

 

 恨めしそうな眼差しでナツの背を見つめる片翼に、ローグは大きくため息をついた。なんというか、それ以上彼―ナツ・ドラグニル―の行動の邪魔をしない方が、身のためだと何故こいつは解らないんだろう――邪魔したら、仲良くなるどころか――殺されるぞ――。

 

「スティング。俺たちは世話になっているんだ。彼らの邪魔だけはするなよ」

「フローもそーおもー」

「……でも、ナツさんと同じ屋根の下なんて!! こんなチャンスめったにないぜっ」

「……まるで……」

「あ?」

「いや……いい」

「フローもそーおもー!! ローグ~。お腹すいたねー」

「ん? ああそうだなフロッシュ」

 

 ローグは一抹の不安を抱いたが、目の前の愛らしい娘のような存在の相棒の楽しそうな姿に、その不安には気付かなかったように蓋をし、ルーシィを手伝うために、キッチンに消えていくフロッシュの背中に笑顔を向けた。

 

 

 

「ナツさ~ん。俺も手伝います~!!」

 

 フロッシュに続いてやかましい奴がキッチンに入っていこうとすると、丁度ナツが両手に皿を持って現れた。その後ろから、お盆にティーセットを載せた少女の姿。笑いあいながら作業する姿は、既に相思相愛であろうと簡単に推測されるのだが――昨日の風呂場でのことを思い出すと、男女とは難しいものだと、ローグはまた息を吐いた。

 

「わっ! スティング君危ないから座ってて!」

「はぁ……スティング……邪・魔・だ」

「うわぁ……手伝うアピール? スティングって……がめついんだねっ」

「フローもそーおもー」

 

 ルーシィの後ろから、とりわけるための皿を持ったハッピーと、ジャムとバターを両手に持ったフロッシュが出てきた。フロッシュはローグに向かって、ジャムの瓶を振って見せた。

 

「ローグ~のイチゴのジャム~」

「!!フロッシュ!!!」

 

 愛らしいフロッシュが、自分の為に、ジャムを運んでいる!! ローグは視界をにじませ、そこにいるスティングを弾き飛ばし、フロッシュの元へと駆け寄ったのであった――。

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

洗面所にて

「てめえ、見かけが子供だからって、ルーシィに甘えてんじゃなえぞ」

「えっ…そやな……つもりじゃ」

「じゃあ、なんだってんだ」

「ナツさん……ヤキモチ?」

「ぐっ」

「じゃあナツさんも、小さくなってみる?」

「はぁ!? フッふざけんじゃねえ」何て会話があったとかなかったとか

 

 

 

 

 朝食時に分かった事は、ナツさん達は、花の採取依頼に来ているという事。その花は早朝に咲くため、朝方は出掛けていたのだというのだ。そんなもの!! 是非手伝わせてもらいたかったのに!! スティングは、下唇を噛み、拳を握りしめた。

 

 だが今日、その花はまだ咲いていなかったらしい。花は蕾のままだそうだ。まだ、機会はあるのだ。スティングは、思い切って手伝わせてよっと、声を上げたのだが、心底ウザそうな表情のナツに、ちっこい身体で邪魔だからと一掃されてしまった。――そういえば、いつ体は元に戻るのだろう――。

 

 昼すぎになると、なんだかローグとフロッシュのやり取りがやたら目につく。庭に出ているナツさんとルーシィさんとハッピーもしかりだ。スティングは、窓の外を静かに眺めていた。

 楽しそうにじゃれ合い、ハッピーを肩に乗せるナツさん。そこから羽を出し、ルーシィさんの胸に飛び込んで、ナツさんに悪戯っぽい笑顔を向けるハッピー。ハッピーの頭をヨシヨシと優しい顔で撫でているルーシィさん。そんなルーシィさんを見守る様に優しい笑顔を浮かべるナツさん。

 

 ――仲良すぎっすよっ

 

「スティング君っ」

 

 窓辺の床にペタンと尻をつけて座っているスティングに、頭の上から影がかかった。その声は窓の外からかけられていたようだ。スティングはそちらに顔を向けるが、その人物は逆光でどんな表情か判別できない。眩しそうに目を細めたスティングに、1人分だった人の影が2人分に増え、目の前に青い猫が立った。

 

「おいっ スティング。 ボーっとしてんなよっ、じっちゃんみたいだぞっ」

「ルーシィさん、ナツさん」

「スティングぅー。……なんか寂しそうだね」

「……レクターは、まだかしらね?」

 

 ルーシィが、スティングの前に身を屈めた。

 

「ああ? スティングお前、 相棒いなくて寂しいんかっ」

「もうナツ! そんな言い方しないのっ」

 

 スティングの顔を覗き込むためルーシィの隣にしゃがみこんだナツは、パシッと軽く頭をたたかれる。その二人の間でプフフッと笑わらう青い猫。――正にその通りなのだ。スティングは、はああああと大きく息を吐いた。

 

「レクター……」

 

 スティングの見た目の幼さにプラスして、その寂しそうな表情にルーシィの胸は締め付けられた。下を向くその頭を撫でようと手を伸ばしたところで、スティングがナツに視線を投げた。

 

「はぁぁ……いったいいつ戻るんすかね」

 

 スティングの大きなため息に、青猫はスティングの隣に腰をおろした。それに続き、ナツがハッピーの反対側に体を移した。ルーシィは、そんな男どもの様子に笑みを残し、キッチンへ向かうことにした。

 

「ルーシィー。何してるー?」

「フロッシュ。クッキー焼こうと思ってね」

「クッキー!!」

「フロッシュ! そんなの嬉しいのか! よかったなっ」

 

 トタトタと駆け寄ってくるフロッシュと、フロッシュの後を追ってくるローグ。そのやりとりにルーシィは、また微笑んだ。そのやさしい笑顔に、フロッシュは両手を上げて抱き着いた。

 

「ルーシィ~」

「はいはい。フロッシュも作ってみたいとか?」

 

 ルーシィの胸に収まったフロッシュが、ローグに振り返る。大きな目に青棒の姿を映し、その目を揺らした。

 

「ローグ~。クッキースキ~?」

 

 ログは目を見開き、その目に涙をためて、歓喜の表情で口を大きくひらいた。

 

「ああ! 好きだ!! フロッシュが作るなら何でも好きだ!!」

「フローも~」

「ふふふっ。もうかわいいわねっ! あんた達も」

 

 ルーシィが、優しく愛おしそうにフロッシュの頭を撫でている。嬉しそうにフロッシュは目を細めた。ルーシィは、そのやさしい表情のままローグに微笑みかけた。

 

「じやぁ、ローグくんも一緒につくる?」

 

と、手を差しのべたときだ。

 

 ルーシィの目の前でローグの体から、ボフンと煙が出てきてその小さい体を包み込んだ。

 

 あっけにとらわれルーシィの腕の中からフロッシュが、うれしそうに声をあげた。

 

 先日星霊が用意してくれた洋服は、飛び散った。――ズボンに関しては、スキニーのようにぴったりと足に張り付いてはいるが、生地が伸びているので苦しくはなさそうだ。だが、この見事に破けた、上半身を隠していた布の切れ端達――明らかに故意だろう。大きくなった時――破けて、どうするのよ!!

 

 ルーシィの脳裏に「お仕置きですねっ」と、どこか期待した眼差しで、ピョンと飛び跳ねるバルゴの姿が掠んだ。

 

「いつものローグ!!」

 

 フロッシュのうれしそうな声が響く。ついで、窓際からも声後上がった。

 

「おわっ!!」

「ふぎゃっぁ、!!」

 

 煙が引くと、そこには剣咬の虎の双竜がいる。

 

 ルーシィは、目の前にいるローグによかったわねと、微笑みかけようと顔を持ち上げた。が――視界が捉えたのは――ほっそりとしているが、鍛えられた胸板。慌てて顔を持ち上げると――ゴスッと見事に、ルーシィの頭がローグの顎にあたった。

 

「ぐはっ」

「キャー/// ローグ君ごめん//」

「ルーシィ~つよ~い。ローグ~大丈夫~?」

 

 声のする方に振り返ったナツの視界に、顔を真っ赤に染めフロッシュを抱えたまま、ローグの足元にしゃがみ込むルーシィの姿。

 

「いや。大丈夫だ」

 

 ローグは、ほんのり赤くなった顎を片手で摩り、もう片方の手をしゃがみ込んでいるルーシィに差し出した。

 

「こちらこそ、すまない」

「フフフッ。その手の出し方、ローグ君って童話の中の王子様みたいねっ」

 

 ほんのり頬を染めたルーシィが、ローグの手を取ると窓辺の温度がぐっと上がった気がする。ローグと同じで半裸のスティングは、目に涙をため片翼の心配をしつつもチラリと隣に立つ男に顔を向けた。

 

「ナナナナツさん。あああつっ……暖かいっす……」

 

 スティングの足元で、ナツの熱から避難しているハッピーは、その可愛らしい手を口元に宛て、プフフフと楽しそうに顔を歪めた。

 

 

“ピンポーン”

 

 

 玄関の呼び鈴が鳴っている。ルーシィは、ぶつけた頭を擦りながらそこへ急いだ。

 

「はいは~い。どちら様~?」

「ルーシィさんですかっ。レクターです!!」

「……ユキノです。ルーシィ様、ご無沙汰しております」

「ユキノ!!」

 

 

 

 レクターが応援に呼んできたのは、星霊魔導士のユキノだった。同じ星霊魔導士で、ユキノとも知り合いのルーシィは笑顔で迎え入れた。

 

「ユキノ~ 聞いた? ごめんねぇ!! ロキが迷惑かけちゃったみたいで……」

「ルーシィ様が、誤ることでは……」

「でもぉ……」

「ルーシィ様。そんなに、気に病まないでください」

 

 突然始まったルーシィの謝罪に、隣にいたハッピーはキョトンとした表情を向けている。

 

「……どうしたのさ? ルーシィ」

「ハッピー……あのね……」

 

 ルーシィとユキノ、そしてエクシード達はダイニングテーブルを囲み、紅茶を口に運びながらスティングとローグの支度待ちをしていた。彼ら双竜は、体が元に戻ったという事で、自ら仕事に戻ることにしたのだ。せっかく来たので、ユキノもそれに同行するらしい。今は双竜のお着替え……支度まちだ。レクターはユキノの隣の椅子に座り、会話を見守りながら紅茶をすすっている。 

 

 実は先程洗濯した彼らの服が、まだ乾いていなかったのだ。2人が仕事に向かうというのでルーシィは慌てて、外に干されていた双竜達の服を掴んだのだが――やはり、まだ湿っていた。これでは着替えられないだろうとルーシィの命で、ナツが火を出しその服を乾かしてやっているのだ。仕事着なので丈夫に出来てはいるが、火竜の炎には焼かれてしまう可能性が高い。直火にならない様、火加減を調節して、作業をしているのでなかなか乾かないでいたのだ。

 

 実際のところ、ルーシィの命に唇を尖らせたナツが、仕方なしに作業しているので、時間がかかっているのだが――。

 

「えぇぇぇっ!! ロキってば、人間の女の人だけじゃなく……星霊の…しかも子持ちの熟女にまで……」

「……そうみたいなのぉ……まぁ、返り討ちに合ったみたいなんだけどね」

「うわぁぁ。だからこの間ロキを呼んだら、バルゴが出てきたんだ!!」

「はぁ。……そういう事なの」

「……その後、ロキ様の具合はいかがですか?」

「あぁ。それはどうでもいいのよ。自業自得だし、いいお灸になってよかったわっ」

「フローもそ~おも~」

「フロッシュ。ダメですよっ」

 

 ピンクのカエルちゃんが、いそいそとルーシィの膝によじ登ってきた。

 

「ねールーシィ~」

「ん? なぁに? フロッシュ」

「クッキーはぁ~?」

 

 くりくりとした純粋な目が、ルーシィを見上げてくる。

 

「……あっそういえば、作るとこだったのよね……」

 

 ルーシィは、クッキーの材料が出たままのキッチンに視線を投げた。先に生地だけでも作ってあれば、直ぐに焼いてあげられるのだが……。少し困ったようなルーシィの様子に、レクターは、なるべくやさしくフロッシュに声を掛けた。

 

「フロッシュ。タイミングが合いませんでしたね。諦めましょう」

「う~ん。じゃぁ、帰りにまた寄ってもっていけば~?」

「そうねっ。たくさん焼いておくわよっ。ね? ハッピー」

「うえぇぇ、オイラもぉ~」

「頼りにしてるよっ。ハッピー」

「……あいさ―っ」

 

 ルーシィの声に、ピンと耳を張った青猫が楽しそうに目を細くした。「ルーシィ様が大好きなんですね。ハッピー様は」と、ユキノがクスクスと笑っている。

 

「ルーシィ様は、お料理が上手なのですね」

「ルーシィさんのクッキーですかっ。いやはやクエストの後の、楽しみが出来ましたねっ……フロッシュ?」

 

「……ルーシィ~と、クッキー……」

 

 他の者のやり取りを聞きながら、ピンク色のカエルはルーシィの服の端をぎゅっと握った。着ぐるみの中でも、丸い耳が垂れているのが容易にわかるその様子に、先程まで張り切っていたハッピーの耳まで、しょぼんと垂れてしまった。

 

「ルーシィ~」

「……フロッシュ。ルーシィと一緒に作りたかったの?」

 

 ハッピーの言葉にうるんだ眼を持ち上げて、コクコクと首を縦に振るフロッシュ。ルーシィとハッピーは、目を合わせてにっこりと微笑んだ。以前フロッシュと共にカップケーキを作ったのが思い出される。

 

「ローグに~あげるの~よろこぶよ~」

「そうね。きっと嬉しすぎて……泣いちゃうんじゃない?」

「アハハっ。またフロッシュ抱えてくるくる回っちゃうよ」

 

 服の端を握ったままのフロッシュの頭を、ルーシィが優しくなでると「一緒に作る?」とハッピーがフロッシュの顔を覗き込んだ。その様子にレクターとユキノは、顔を見合わせた。

 

「ルーシィ様、ご迷惑では?」

「そんなこと、ないわよっ。フロッシュおてつだい上手だもんねっ」

「フロー。じょーずー!!」

 

 ルーシィの膝の上で、バンザーイと両手を上げるフロッシュの様子に、ユキノとレクターも仕方ないなと、眉を下げた。そこにユキノの背後から声がかかる。

 

「じゃぁ、ユキノもルーシィさんとクッキー作ってまってるか?」

「スティング様!」

 

 ユキノの肩に、スティングは手を置き「フロッシュの面倒見てやってよっ」と、ユキノに耳打ちした。スティングの言葉に、ユキノはルーシィ達を伺う様に視線を投げた。

 

「私まで……ご迷惑では?」

「そんなことないわよっ。なんか楽しそうじゃない」

「そーだよ。いいよね? ナツ」

 

 スティングの後ろから来たナツが、手を頭の裏に置き……スティングからユキノに、ユキノからルーシィにそして、ルーシィの膝に鎮座するフロッシュに視線を流した。

 

「……好きにしろよっ」

「!? じゃぁさっ、ナツさんっ……ナツさんはオレ等と、一緒に行こうよっ」

「……はぁ?」

「そろそろ、ひと暴れしたいでしょ?」

 

 スティングにナツが絡まれてる横でローグはフロッシュと視線を会わせるため、ルーシィの前に膝をついた。フロッシュがローグに手を伸ばすと、その体をローグが抱え上げた。頬をすり合わせ、涙をとばしている。

 

「フロッシュ~!! 自分で考えて行動するなんて!! なんてエライんだ!! 成長したなぁ!!」

「フローもそーおもー!!」

「あはははっ、ローグ君って超過保護ねっ」

「大丈夫だよローグ。フロッシュ頑張り屋さんだし、オイラちゃんとフロッシュの面倒見てあげるよ」

「……ルーシィさん。ハッピー」

 

 ルーシィは、ユキノに向かってほほ笑みかけた。

 

「ユキノも、いっしょにつくろうよ」

「……そうですね。私もフロッシュ様と一緒に……お世話になります。よろしくお願いいたします」

「わぁ。ユキノ~フロッシュといっしょ~」

 

 フロッシュも嬉しそうにユキノに手を伸ばす。ローグもどこか安心したようで、ユキノにフロッシュを預けた。

 

「ユキノ。すまないが……」

「はい。ローグ様」

 

「じゃあさっ、いっぱい作らなきゃだね~ルーシィ」

「フフフッ。そうねっ。ハッピー」

 

 そこに、気配を消してたたずむ影。

 

「……姫」

 

 ルーシィの背後に、メイド姿の星霊が静かに佇んでいる。

 

「うわぁっ!! バッバルゴ!?」

「姫。クッキーを作る大会を、開催されるとか……」

「……大会ってあんたねぇ」

 

「何もってるのぉ? バルゴォ」

「大会に出場される選手の、ユニフォームです」

 

 フロッシュが空けたルーシィの膝に納まっているハッピーの顔を、バルゴが覗き込む。

 

「……ユニフォーム?」

「はい。お見かけしたところ、ユキノさまは戦闘用のお洋服をお召ですので、必要かと思いまして……」

 

 バルゴが差し出したものは、綺麗に折りたたまれた白い布と薄ピンクの布。それも大小1つずつ。フリルが見える白いそれをユキノの前に、ピンク色のそれをルーシィに渡した。渡された2人はそっとそれを広げる。――2人の少女の目が輝いた。

 

「お揃いで、姫のモノもご用意させていただきました」

「ええ~? オイラのは?」

「もちろんございます」

「フローも―」

「ございますよ。フロッシュ様」

 

 それぞれは、バルゴから渡された布をひろげた。フリルをふんだんに使い乙女心をくすぐる清楚な様子の――エプロンだ。ハッピーだけがタラリと汗を流したが、他の者は嬉しそうに目を輝かせている。

フロッシュにいたっては、既にローグがエプロンを着せてやっている。うれしさに飛び跳ねるフロッシュを目に、ローグは歓喜の表情を浮かべていて、――既に泣きだしそうだ。

 フロッシュとローグが抱擁し、ユキノもここでクッキーづくりをすることが決まっている脇で、ナツとスティングの押し問答は続いていた。

 

「うっせぇな……クッキー食うんだ! ルーシィのクッキーだぞっ」

「え? ナツさんも作るの?」

「はぁ? ルーシィが作るからルーシィのクッキーなんだぞ。自分で作るもんじゃねぇだろっ」

「だ~か~ら~、一緒に暴れようよっ。ナツさん」

「……オッオレは、違う依頼でだな」

 

 スティングは、仕事のついでに山奥でひと暴れしようとナツを誘っていた。正直ナツも暴れたいのだろう。だが、ルーシィをここに連れて来た目的が、足をとどまらせていた。ルーシィ達が、エプロンを合わせたり、バルゴがついでに持ってきてくれたラッピング等をさわり、キャイキャイ騒いでいる中、ナツたちの元に忍び寄る黒い影。

 

「ナツ様」

「バルゴォ!?」「うわぁっ。またでたっ」

「ナツ様のお帰りは、姫がフリフリのエプロンで、お出迎えいたしますよ」

「うぉ? いあ。聞いてたけど……」

 

 バルゴが身を乗り出し、ナツに耳打ちする。その小さな声は、星霊魔導士やエクシードには聞こえない音量だ。

 

「姫のエプロンは、ナツ様の髪の色に合わせてピンク色にさせていただきました」

「……バルゴ…さんだったけ? ……いい仕事すんね。じゃぁ、ナツさん行こうよ」

「い…ぁ…」

「ナツ様。この様子ですとどうせ姫は、ナツ様をかまってはくれないかと思いますが……」

「……はぁ」

 

 ナツは肩を落とし、大きく息を吐き出した。その隣で、スティングはガッツポーズをしている。「なに? ナツ手伝ってくるの?」とルーシィの声にナツは、今度は小さく息を吐き出しゴキッと首を鳴らした。

 

「……ちょっと、暴れてくるだけだっ」

「えぇ? 損害出さないでよ?」

「ぐっ……わかってるってのっ」

「もう。大丈夫なの!? スティング君、ナツよろしくね?」

 

 ルーシィの言葉に、スティングは力いっぱい「はい!!」と返した。

 

「クッキー……チョコのヤツもな」

「フフッ。了解っ」

 

 ルーシィの楽しそうに笑う顔が、ナツの目の前にある。ご機嫌ななめだったナツの心も、その笑顔につられ上向きになっている。ほっこりした気持ちの中ルーシィを映していた視界に、ハッピーが割り込んできた。

 

「てか、バルゴ……いつからいたの?」

「はい。スティング様とローグ様のお洋服が張り裂けた辺りからでございます」

 

「!?……ずいぶん前ね……まさかっ」

 

「はい。見事な肉体美でした」

 

「……」

「……」

 

「……ルーシィ」

 

「うん……バルゴ? ……ご苦労様。閉門よ」

 

 

 

 

 

「いってらっしゃ~い」

 

 明るい声に見送られ、滅竜魔導士3人とレクターが出かけていった。その背を見送りながら、ルーシィの脳裏に少々の不安がよぎる。罠の仕掛けられた山は多少暴れてもいいらしい――多少で済めばいいのだが。ルーシィは、少々嫌な予感に騒ぎを覚えながらも、頭を振りその思考をよそへと追いやった。そして「はやく~」とエプロンの裾を引っ張るフロッシュとキッチンに戻って行った。

 

 ――ナツってば、チョコのヤツだって。フフフッ

 

 ハッピーは魚の型抜きの、ココナッツの入ったクッキーが好きだ。ハッピーの好きは解りやすく、お魚クッキー―ハッピー命名―を口に運ぶまでにタラリとよだれを垂らす様は、あきれ半分嬉しさ半分なのだ。

 ナツは、――ナツは何でもおいしそうに食べてくれる。だからこそ、好みがわかり辛いのだ。それに、質よりも量なのかなとも思っていた。特別クッキーに好みなんてないと思っていたのだ。だが――チョコのヤツといえば、アレだろう。―ナッツとチョコチップのボックスクッキー― それが、ナツのお気に入りのようだ。今まで、はっきりとそれが好きだと聞いたことはなかったのだが――。

 

 ここにきて、またナツの好きなものが知れて、ルーシィは内心うれしくてたまらなかった。それに、ボックスクッキーなら大量に焼くのにちょうどいいのだ。ハッピーの好きなココナッツを入れた型抜き用の分と、一緒に粉を測り、他の材料と合わせ、生地を練る。出来上がったボックスクッキーの生地を冷蔵庫で寝かしている内に、型抜き用の生地を大理石の作業台の上にのばした。キッチンを漁る事なく、ハッピーが引き出しからクッキーの型を見つけてくれた。惜しくも魚の形のクッキー型はなかったが、星やハート、木や花の型など沢山あり、皆で生地をいろいろな型に抜いていく。

 

「ルーシィ様とナツ様は、いつも仲がよろしいですね」

「ふっへっ///」

「プフフっ。ルーシィ言われちゃったね~」

「フローとローグも~!!」

 

 突然のユキノの一言に、一気に染め上がってしまった真っ赤な顔を、前に出した手で隠しながらワタワタとするルーシィ。その様子を、ジーッと見つめるフロッシュ。ニヤニヤとした目を向けるハッピー。ルーシィは目に涙を滲ませ、ハッピーをキッと睨み返した。

 

「フロー、星のやつがい~!!」

「これねっ はいどうぞっ」

「ルーシィ~ありがと~」

 

 ルーシィは、頬を擦りながら、手に持っていた星の形の型をフロッシュに渡してやった。ひんやりとしていた手が、赤く染まった顔の温度を抑えてくれる。

 

「なっ……仲良く見えるかな? へへ///」

「はい。とっても」

「そっそう///」

 

 ユキノの返答に、へへへと笑みを返しながら、ルーシィは手を進めた。型で抜いた生地を天板に並べ、オーブンに入れた。それを焼いている間に、寝かせておいたボックスクッキーの生地に包丁を入れ、柄になる様に再度並べなおし棒状にまとめ、また冷蔵庫に入れた。他の生地も柄に成る様に組み合わせて寝かせる。この後生地が落ち着いたら、好きな大きさに切って焼けばいいのだ。

 

 オーブンの中の様子を、フロッシュが覗いている。あまり近づき過ぎない様に、ハッピーはその背中をつまんでいた。

 

「ナツ様は、素敵な方ですよね。一生懸命で、あったかくて……仲間思いで……」

「ユッユキノ!?」

「あっそういう意味ではなくってですねっ。ナツ様とルーシィ様は相思相愛だとわかっております。ただ、お二人とも素敵だと思いまして」

「そっ相思っそっそそ相愛いいって///」

「ルーシィ様は、ナツ様のどういうところに惹かれたのですか?」

「なっえっ……あのっ///」

「ふふふっ。ルーシィ様可愛いですねっ」

「//////」

 

“ピピピピッピピピピッ”

 

 タイマーの音がする。最初のクッキーの焼き上がったのだろう。ルーシィは誤魔化すように慌ててそっちに顔を向けた。それをハッピーに取り出すように指示をすると、「あっ! さっきひろってきた胡桃が外に!!//////」とか言って、真っ赤な顔のまま慌てて庭に出ていったしまった。

 

 ユキノとルーシィの会話に聞き耳を立てていたハッピーは、「あいっ」と返事をかえし、笑みを噛み殺しながらも、もう少し聞いてみたかったなぁと、呟いた。

 

  ――ルーシィはナツが好き。

  ――ナツはルーシィが好き。

  オイラは――2人とも大好きなんだ。

 

 だから――早くくっ付いてほしいけど、そうしたらちょっぴり寂しいこともあるのかなって不安にもなったんだ。だってさ、オイラは空気の読める猫だから――邪魔にはなりたくないんだ。でも、離れたりはしなくていいって、ナツは言ってくれたんだ。いつも一緒はハッピーも一緒だって。オイラだって、シャルルと――プフフフ。でもしょうがないからオイラ、2人と一緒にいてあげるんだ。だって、ナツはやきもち焼きだし、ルーシィは意地っ張りだし、すぐ喧嘩しちゃうし――何より一緒はうれしいから。

 

 ナツとルーシィはまだ恋人じゃないけど、ギルドの皆はもうそういう目で見守ってるし、早くナツが自覚すればいいのにって思ってるんだ。でも、オイラだけは知ってるんだ。ほんとはナツのひとめぼれで、出会た時からナツはルーシィの事が大好きなんだ。とっくに自覚だってしてるし、多分それなりにアピールしているんだ。ただ、ルーシィが――鈍感なだけで――。

 ナツとルーシィは一緒にいるととっても楽しそうで、幸せいっぱいで、オイラは、大好きな2人の幸せを一番近くで見ていけるんだもん。一緒にいるオイラの特権なんだ。

 

「ユキノ~。ひとめぼれってな~に~?」

「あっフロッシュ様、ダメですよ。ハッピー様の独り言なんですから」

 

  ルーシィが飛び出していったドアを、ぼんやりと眺めながら考え事をしていたつもりが――。

 ハッピーは、驚愕の表情を浮かべ、耳をぴんと立てて固まってしまった。――目だけをユキノとフロッシュに向けた。

 

「…えとっ……あのっ」

 

 にっこりとほほ笑むユキノが、こくんと首を縦に振った。

 

「……ナツ様のひとめぼれ……なんですね」

「うわ~ん!! ユキノー!! 言わないで言わないで!! ナツもうすぐちゃんと告白するんだ!! だからっ」

「フフフッ。判っていますよ。ハッピー様。それよりもまだ、お付き合いされていなかった事のほうが、驚きです」

 

 ユキノの表情からは、からかいや、冷やかしの意思は見えない。ハッピーがほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、そのすぐ隣から、間延びした可愛い声がする。

 

「コクハク~?ナツがコクハク~?」

「「フロッシュ(さま)!!」」

 

 

 その頃、隣の山の一角で火柱とと閃光がぶつかり合っていた。

 

「まだまだぁ!!」

「こっちは お前らのせいで、ストレスたまってんだ!! 火竜の……鉄拳!!」

「うおっ 何言ってるのナツさん! 今は戦闘に集中してよっ……ホワイト・レイ!」

 

 ナツの拳がスティングの頬を掠める。後方に飛び上がったスティングが、目を輝かせ白い閃光を矢のように放った。それをよけ、隣の大きな木を足場に、ナツが空中に飛び上がった。

 

「くっ……大体なぁスティング! 隙あらばルーシィにくっ付きやがってっ」

 

 ナツは空中で大きく息を吸い込んだ。バリバリっと雷がナツの体を走る。

 

「ちょっナッナツさん!?」

 

 スティングは慌てて、体勢を立て直した。

 

「わあぁ!! ホワイトドライブ!!」

「雷炎竜の……咆哮!!」

「ホッ・ホーリーブレス!!!!」

 

 特大の雷を纏ったナツの咆哮と、こちらもまた特大の白竜の咆哮が空中でぶつかり合う。その閃光の間をぬって、炎でブーストしたナツが、スティングに向かって突っ込んできた。一発食らいながらも、身を翻しスティングはナツの2発目をよけた。

 

「ぐわっ ナツさんが、心配する様な事じゃ…ないっす… おっとっ」

「避けんじゃねぇ!! ルーシィの好きなもんとかプレゼントがどうとか聞いてたじゃねぇかっ 火竜の……」

「それ誤解っ 白竜の……」

 

 

 ドカーンドカーンと、そこかしこで閃光と火柱が交差する。森を焼き払うのも、山を消し去るのも――時間の問題のように感じられる暴れっぷりだ。相棒の戦闘に目を輝かせるレクターの頭に声がかかる。

 

「スティング君頑張ってください!!」

「……レクター」

「はい。なんでしょうか。ローグ君」

「……オレは、フロッシュの元へもどりたいんだが……」

「だっだめですよ!! ローグ君がお二人の超協力な魔法を影に取り込んでくれないと、山が無くなってしまいます!!」

「……はぁ。いったいいつまで……」

 

 

 夕方を過ぎ、ロッジの玄関扉が叩かれる。

 

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②終了!!③へ続く――③でefinだな~(*'ω'*)

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