2014年10月06日
可愛い訪問者①
ナツとルーシィとハッピーでの依頼先……
それぞれが、目的を抱えている中お邪魔虫的な訪問者が空から現れる……。
「あ~っ。ルーシィだ―――!!」
「ナツくん!! ハッピーくん!!」
聞き覚えのあるかわいらしい声が頭上から降ってきた。
*
*
*
依頼で訪れていたとある街。数日かかる予定の仕事だが、早々に今日の分の依頼(と言っても、打ち合わせ)を終え、今はその街から少し離れた高台へと続く道を、桜頭と金髪と青猫がわいわい話しに花を咲かせながら歩いていた。今日は、その高台にあるロッジに泊る予定だ。
丁度今は観光シーズンで、街の宿屋はどこも満室だ。その為依頼主が自分の別宅を宿泊所にと用意していてくれたのだ。まあ、別宅といっても別荘という訳ではないらしい。依頼人の遠方の親類が毎年季節になるとそこで過ごすのだという。今は違う街に移っているため依頼人が管理しているという事らしい。なので、生活用品は一通りそろっており、食事はご自由にとロッジの冷蔵庫に食材も詰めてくれてあると言うのだ。
それはルーシィ達にとっても願ったり叶ったりの事だった。なにせ、この観光シーズンはどこの店も稼ぎ時だと、何でも高い値段を押し付けてくるのだから。節約したい諸事情のあるルーシィは、依頼人には見えない様にニヤリと口角を上げていた。もちろん同行者にはバレバレであるのだが・・・・・・。
自分達の名が上空から発せられたと思ったら、足元に何とも不恰好な影がかかった。桜頭の少年ナツは、鼻をスンとならしながら眉間に皺をよせた。
「ナツさ~ん! ナツさ~ん!」
「……妖精の尻尾か?」
先程の知った声とは違い、少し高い――子供の声もする。それも2人分。金髪の少女ルーシィが、空を見上げた。そこには、小さい身体に白い羽を生やした猫2匹が、自分より少し大きな包みをぶら下げて宙に浮かんでいた。その猫2匹は、知っている顔だ。
「フロッシュと、レクターじゃないっ」
「……他にも、いるみたいだぞ」
ルーシィが空に浮かぶエクシードに笑顔で声をかけると、ナツがため息交じりにそうもらした。ナツの言葉に、ルーシィとその腕の中に収まっていた青猫のハッピーは、視線を合わせ、声をそろえて驚いた声をあげる。
「「ええ?」」
「ナツさんっ!!」
「……」
ルーシィとハッピーが驚きの声を上げたところ、フロッシュとレクターがぶら下げていた布の中から、ヒョコリと金髪が顔を覗かせ笑顔でぶんぶんと手を振り始めた。その脇から黒髪も顔を覗かせている。
「……え?」
「なんかさっ……小っさいよね。ルーシィ」
「……そうよね…ハッピー。なんか小さいのが居るわっ」
4つの丸い目が見開かれて空を見上げ凝視した後、揃って4つの目は桜頭を見た。ルーシィとハッピーに揃って振り返られたナツは、鼻をひくつかせ――はぁと、小さく息をはき出した。
「……本人たちだな。どうしたって匂いがスティングとローグだ」
それまで、宙に浮いていた猫たちが、ナツとルーシィの足元にぶら下げていたものを置き、地面に足を付けた。風呂敷包みの様なものに包み込まれていたスティングとローグは、その布をよけながらピョンとその場に立ち上がった。
「ねっ。どうしたの? 依頼か何か? 可愛いっ」
「小さくならなきゃできない依頼なの~?」
ルーシィはその場に膝をつき、ハッピーはルーシィの腕の中から抜け自分の足で地面に立ち、2匹と2人に視線を合わせた。ナツは立ったまま、黙って成り行きを見つめている。
ルーシィとハッピーの興奮した様子に、スティングは顔を歪めながら、照れた様に頬をポリポリと掻き、ポソポソと喋りだした。
「……えっと、……ちょっとドジっちゃってっ」
「え?」
「罠にかかってしまったんですよっ」
「……スティングがな!」
「うっ。あっあれは、ローグのせいだろっ!!」
「馬鹿を言うな。オレは、フロッシュを守ったまでだ。」
「……そうですねぇ。あれはスティング君が勝手に転んだだけかと……」
「どっちの味方だ!? レクター!!」
「事実だろう……こっちは巻き込まれただけだ。」
「フローもそーもー!!」
「ローグ君もフロッシュも、スティングくんは、ワザとじゃないんですからっ、責めないであげてくださいよぉ」
「……ワザとでなくとも、救いようのない阿呆だがな」
ローグとレクター、そしてフロッシュにまで、なじられたスティングは、がっくりと肩を落としながら、ぽそぽそとその時の状況を説明した。
説明した内容を簡潔にいうと、冬の間に仕掛けていた魔物の撃退用トラップの解除依頼を請けたこのスティングとローグは、解除しなくてはいけないそのトラップに、まんまと嵌ってしまったらしい。
フロッシュが転びそうになったのをローグが素早くかがんで助けてやり、その場に立たせた後、立ち上がろうとしたところ、かがんでいたローグに躓いたスティングがよろめき体勢を立て直そうとして、立ち上がったばかりのローグを掴んだままその場を転げ落ち、堕ちた先にあったトラップが発動したのだという。
もちろん依頼は中断している。
「なんかその人を巻き込む具合が、まるで……誰かさんみたいね?」
ルーシィが額に汗を垂らしながら、ナツを見た。視線を向けられたナツは、素知らぬ顔である。ハッピーは、説明そっちのけで、話に飽きてきてその場をフラフラと歩き出したフロッシュを追いかけている。
「とりあえず、今日はどうにもならないんで、街に戻るところなんです」
「今日の処は宿をとって、依頼も中途半端ではまずいからな、依頼を遂行できる魔導士に来てもらおうと思っている」
と、レクターとローグが続けて補足した。その後ろで、フロッシュとハッピーの追いかけっこが始まり、フロッシュとハッピーの順番に足を踏まれたスティングが「いてぇだろ~」と2匹を追いかけはじめた。その走りはポテポテと体を左右に振り、如何にも走るのを覚えたばかりの子供――いや、まるで赤ちゃんのようだ。
しゃがんだままのルーシィは、その光景に目を細めながら素朴な疑問を投げた。
「予約してあるの? 宿。……この時期この時間じゃ、もう街の宿屋はいっぱいよ?」
「そうか……日帰りの予定だったからな……野宿か……」
「まあ、どうにかなりますよ! 野宿くらい……」
そう言うローグとレクターに対して、追いかけっこに夢中になっていた1人と1匹から「なんだ野宿かよ~」「フローお風呂おはいりたい――」とそれぞれから、声が上がった。
それを耳にし、ルーシィは微笑みながら「じゃぁ」と口を開いた。
ナツは嫌な予感しかしない。ルーシィのその先の言葉を遮ろうと口を開いたが間に合わなかった。
「私たちと一緒に、泊る?」
……はぁ。
頭の上から声を掛けられた時から、嫌な予感はしていた。――ナツはルーシィの背後で、大きく肺に溜めていた空気を吐き出した。ハッピーはそれを目に、なんだか可笑しそうに笑っている。
ナツ達の依頼は――この季節に咲く花摘みの仕事。
毎年アルザックとビスカが受けていたのだが、今回は一緒に行きたいと駄々をこねるアスカを置いての泊りがけはできないからと、いう理由をつけてナツに譲ってくれたのだ。そう。譲ってくれたのだ!!
早朝、朝日を浴びて咲くその花は魔導士が見れば2色に見えるのだという。魔導士以外には、その違いが判らないらしい。ピンク色と黄色の花を、それぞれ色分けして摘み取るのだ。それは微弱ながらも魔力を発している。花達はそれぞれ加工して、香水などの香料になるのだ。黄色の花は金運を、ピンク色の花は恋愛運を高めてくれるという、オプション付きだ。結構有名なモノで、乙女なら誰でも知っている人気で、手に入りがたい魅惑の商品だ。
その上、朝日を浴びる花畑は何とも幻想的なのだ。“女の子に告白するにはお勧めだぞ!”と、アルザックから耳打ちされていた。それを一緒に聞いていたハッピーは、ちゃんとオイラは消えてあげるからねっ! と、ナツにむかってウインクしていたのだ。
そう――ナツは、今回の依頼でルーシィに思いのたけを伝える覚悟でここにいるのだった。
――だが、これでは台無しになりかねない。
――こいつらは、特にスティングは、早朝から泊めてもらったお礼だとでも言ってどこまでも着いてきそうだ。何とかしなくては。ナツはいつも以上に眉を引き上げ、唇を尖らせ思考を巡らせていた。
ナツが一人思考に神経を注いでいる中、話が進んでいた。
「ええっ!! いいんですか? ルーシィさんっ」
「うんっ。1軒やだから外で寝るよりはましでしょ?」
「……すまない」
にこにこと笑顔で、ルーシィの手を取るレクター。小さい身体ながらもその場に立ち、影を見せながら頭を下げるローグ。そのローグの後ろまでやってきたフロッシュが、ルーシィの顔を覗き込んだ。
「ねっフロッシュ!!」
「フローもそーもー!」
ルーシィの笑顔に、フロッシュも笑顔を咲かせてルーシィの元へ駆け寄った。
その後姿を、ローグが何とも言えない表情で見守っている。――さっきまでの影はどこへやらだ。
「やった~!! ナツさんの生態を……」
「スティング君。粗相があってはダメですよっ」
「スティング。お前は黙ってろっ」
「フローもそーもー」
「!! レクターまで……」
「スティング。うるさいぞっ」
「フローもそーもー」
しょぼんと肩を落とす、小さくなったスティングの何とも可愛らしい背中に、ルーシィがそっと手を伸ばすと、ヨシヨシとなでてやった。振り返ったスティングは、「優しいですねっルーシィさんは」と目を潤ませた。
「では、ルーシィさん。ナツくん。 不躾ながらスティングくんとローグ君をお任せしてもよろしでしょうか?」
レクターの丁寧な口調に笑みをもらしながらルーシィは首を傾げた。
「レクターは来ないの?」
「はい。……僕は一度、剣咬の虎まで戻って応援を呼んできます。こんな姿のスティングくんたちを長時間移動させるのは、忍びないので」
「そういう事かっ。優しいのねっレクター。わかったわ。いいわよね? ナツ」
ニッコリ笑いながらルーシィがナツに振り返った。どうせルーシィの事だ。――わかっている。ルーシィが、こんな小さくなっちまった奴らをその辺に放置する事が出来る訳がねえんだ。
ナツは頭の中で、素早く作戦を練った。そして、夜遅くまで騒いで朝方眠っている間に、こいつらを置いて出掛ければいいんだと頭の中で自分を納得させた。
「おうっ」
「プフフフフッ。ナツ!! 大丈夫だよ。オイラが協力してあげるからね!!」
相棒のいやらしさのあるやさしさに、ナツは口元を引きつらせた。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++
プフフフフッ。なかなかナツの思い通りにならないのは何時もの事。
*
「ねぇ。あそこの家じゃない?」
「あぁ。そうだなっ」
「あいっ!!」
ナツはげんなりとした表情で、青猫にぶら下げられた2人に視線を送った。
「ねーナツさん。着いたら一緒に風呂入ろうよ。背中流させてよっ!」
「すまないな。ハッピー」
早々に飛び立ったレクターを見送り、ロッジに向かって一行は歩き出したのだが――何せ縮んでしまったスティングとローグの歩みは遅い。その上、縮んだ体に慣れていないことも重なったのだろう、ポテポテと歩いては転んでばかりだった。その様子を見ていたルーシィが、ナツに向かって振り向くとにっこりとほほ笑んだ。
「ねえナツ?」
ルーシィの笑顔が、眉毛を下げておねだりする様な表情に変わった。その表情を向けられたナツは、仕方ないと小さく息を吐き、スティングとローグを小脇に抱え込んだのだ。がしかし、さすが滅竜魔導士とでもいうのだろう。見る見る内に2人は、顔を青く染めた。――酔ってしまったのだ。
仕方なしに2人を休ませたりしていたら、すっかり辺りは暗くなってしまった。そんな2人をしょうがなくハッピーとフロッシュで運んでやっていたのだが、今は疲れてしまったフロッシュを休ませて、ハッピーがしかたなく2人を運んでやっている。
そんな2人を終始大丈夫?と、甲斐甲斐しく世話をするルーシィに、やっぱりルーシィは良い奴だと嬉しくある半面、それが双竜に向いているのだと思うとナツの胸の内はイライラしてもくるのだ。おかげさまで、ナツの眉間には不覚しわが入ったままだ。
目的地のロッジが見えてくると、ルーシィは楽しそうな笑顔を咲かせる。
「夕ご飯、何にしよっか~。……食材ってどれくらいあるのかしらねっ?」
にこにこと笑いながら、楽しそうな視線をナツに向けてきた。その明るい表情につられるようにナツの表情にも、笑みが戻ってきた。
――ちきしょう。やっとこっち向いたなルーシィめっ。
――もっと俺の事を、見てればいいんだっ!!
だが、わかっている。というかルーシィと一緒に行動する様になってわかってきたことがある。女ってのは、着替えと買いものがものすごく長くって、小さくてかわいいものにすぐ夢中になっちまうんだ。そして、それにちょっとでも文句を言うと、食って掛かってくるんだ。からかいたい時はちょうどいいが、今回ばかりはそんなことをしては、ルーシィの目はあいつらに行きっぱなしになりかねないんだ。
ナツはちょっと上を向いて思案してから、ズイッとルーシィの顔を覗き込んだ。その近い距離に突然やってきたナツの顔に、ルーシィは一瞬で真っ赤になって目を見開いた。
「オレ肉なっ!! 野菜は……ちょっとでいいぞ!!」
そう言って、顔を少し離してナツがニッと笑ってやると、ちょっと先に行っていたハッピーが「オイラはお魚~!!」と叫んでいる。
「もうっ! そんなこと言ったって、どんな材料があるかわからないわよ? フフッ」
林檎のように顔を真っ赤に染めたままのルーシィがしょうがないわねっとほほ笑んだ。その様子にナツの口元は緩んだまま、前を見ながらゆっくりとルーシィの歩幅で歩いていく。
「なんでもいいけどオレ、ピリッとしたのがいいなっ」
「ん~?そおね~。スパイスも沢山あったらいいわね!!」
ルーシィもまた、ビスカに耳打ちされていた。この依頼で泊るロッジには、素敵なキッチンが付いていてとても使いやすいのだと。「食材も豊富だから、料理の腕が鳴るわよ? いつもより手を凝らしたものを作って楽しく過ごしてきてね。……あそこはね、アルザックと初めてキスした思い出の場所なんだ」と照れた様に頬を染めこっそり教えてくれたのだ。乙女ルーシィとしてはそんな素敵な場所に、好きな人と赴くのだと胸を高鳴らせていた。
そんなこと思っているうちに、視線の先に赤い屋根のロッジに近づいていく。おそらくそこが依頼主の言っていた家なのだろう。赤い屋根にそこだけ煉瓦で出来ている煙突が突き出ていて、童話にでも出てきそうな雰囲気の可愛いらしいロッジだ。
ルーシィはその外観だけで、「カワイー!!」と声を上げた。その様子に、少々胸を張ったナツが頬を染めている。
++++++++++++++++++++++++++++
グダグダすみません!!好き勝手やってますわ(*ノωノ)
*
*
部屋に入ってルーシィはすぐに夕食の準備を始めることにした。すでに日は沈んでいる。
冷蔵庫を開けると固まり肉や尾頭付の魚、ハム・ウインナーなどと、たっぷりの野菜とハーブやスパイスまで揃っている。
他の者が荷解きをしている中ルーシィは、スティングやローグの食べられないものを聞いた。そして――時間はかかるが煮込み料理に決めた。結局のところ、幼い見た目のスティングとローグでは咀嚼する力も落ちているとふんだのだ。
「ねぇ――!! ナツ――!!」
ルーシィの声に、ソファに座ったばかりのナツが「なんだよ?」とわざわざダルそうな態度でやってきた。
「疲れちゃったの? ナツ。まさか、まだ気持ち悪いのとれない?」
ルーシィの言うナツの気持ち悪いは、移動の際の乗り物酔いの事を言っているのだろう。そんなものは依頼主の家に行って、ここまでくる間にとっくによくなっているが、ここはルーシィに甘えるチャンスである。ナツはうんとも違うとも言わずに、ルーシィの背後からその華奢な肩にポスンと頭を預けた。
「きゃっ!! もう驚くじゃない! そんなに体調悪いんなら、休んでていいわよっ」
ルーシィがナツの桜頭に手を置き、そっと押し戻そうとしたが、想像よりも柔らかい桜色の髪に、白い手が触れるとナツがのそりと口を開いた。
「もう気持ち悪りぃのは治ってる。腹減っただけだ。……美味そうなもんあったか?」
ナツはルーシィの肩に顎を乗せなおして、ルーシィの肩の上からキッチンの様子をうかがってみた。
「えっとね~、今日はスペアリブにしようかなぁって。……量が足りないかもだから、オーブンで鳥も焼くけど、どおかな?」
ルーシィが楽しそうにそう言うと、ナツも嬉しそうに「オレ、ルーシィのスペアリブの味付け好きだなっ」などと、肩に顎を乗せたまま会話している。
「そお? へへっ嬉しいな。それでね? ナツおちびさん達、お風呂入れてあげてよ。あれじゃ、自分達じゃ入れなそうでしょ?」
ルーシィの言葉に、うっ。と声を詰まらせながらも、ナツはしょうがねえかと唇を尖らせて呟いた。
「じゃっ。そういう事で。ハッピーはお料理手伝ってね!!」
「あいっ!!」
「フローも―!!」
青猫と一緒に、ピンクのカエルちゃんがやってくる。以前フロッシュは、ハッピーとルーシィと一緒に、カップケーキを作ったことがあるのだ。その時の楽しかった様子を覚えているのだろう。フロッシュは、満面の笑みでルーシィに飛びついた。それを笑顔で迎えてルーシィは、それぞれに仕事を与えることにした。
その様子を見て、目に涙を浮かべたまま動かないローグを、ナツが小脇に抱え、滅竜魔導士たちが風呂場へ消えていくと、ルーシィは料理の下ごしらえを終え肉を焼き始めた。先に鶏肉に焼き色を付け、それを温めておいたオーブンに入れた。
「焦げすぎない様ここから見ていてくれる? フロッシュ」
そう言って、その場をフロッシュに任せて、体の向きを変える。次に、骨付きのスペアリブを一度焼き付けて酸味のあるジャムと一緒に濃いめの味付けで鍋に入れふたを閉じると、その鍋は焦げないようにハッピーに任せた。
そして、付け合わせ用に野菜を軽く湯がいてから、水気を拭き取って油で揚げていく。
ちょっと時間が余りそうなので、ジャガイモをスライスしてから千切りに同じ細さに切ったベーコンといっしょにフライパンで炒めた。
出来上がったものからテーブルに運び、人数分の食器を並べていると「ルーシィ~!!」と呼ぶ声が聞こえる。
「なに~??」
と、その場で返事をするとまたナツの声が帰ってくる。
「こいつらの、着替えは~?」
「あっ!!」
ナツの声に慌てて、ルーシィはバルゴを呼びだしサイズの合う服を風呂場に届けてもらうことにした。
「お子さまですか。……ナツ様が、お子様とお風呂……将来子供をもうけた時の、予行練習ですか。……そうですか。旦那様に子供のお風呂を入れてもらう派ですねっ。姫。」
真顔で、そうバルゴが言ってのけると、その主人のルーシィは顔を真っ赤に染めワタワタと慌てふためき、真っ赤になった頬を両手で隠した。
「ばっ馬鹿なこと言わないでよっ!! もう。そっそんなわけないでしょ~」
「何をそんなに、慌てているのですか?姫の産んだ子供でもあるまいし……」
「///もうっ!! あのねっ。あの子たち、いつ戻るかわからないから、伸びる服がいいわっ」
「……はい。かしこまりました。ところで、姫は何を想像したのですか?」
「バルゴ!!」
「調子に乗ってすみませんでした。……お仕置きですか?」
してやられたルーシィは、真っ赤な顔のままバルゴの背を風呂場に向かって押した。押されたバルゴは、無表情の様で、でも足取りも軽く風呂場へと向かっていく。そして今度は、風呂場から声が上がった。
「うおっ!!なんか言ってから開けろよ!」というナツの声と、「なんだ誰だ!」「この人全然照れたりしないんすね」という声が聞こえてくる。それに対して、至極冷静なバルゴの声が響いてきた。
「はい。姫の説明が分りずらかったので、しっかりサイズの確認をした方がよいと判断いたしました。ジ――」
「おわっ。どこ見てんっすか! ホントこの人誰?」
「くっくせ者だ……」
「お~い。……何でもいいから、ついでに服着せてやってくれよっ」
暫くして、戻ってきたバルゴをねぎらい閉門すると、丁度3人が風呂場から出てきた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++
安定のバルゴw
*
ナツとスティング・ローグが、頭から水を滴らせながら風呂場から出てくると、ルーシィがキィッとナツを睨んできた。あんだぁ?っと見返すナツに、タオルを投げると、ルーシィも別のタオルを掴みローグの前に膝をついた。
「ほら! 頭かしてっ」
ローグは言われるがまま、きょとんとした表情で頭を傾けた。そこへふわりとタオルがのせられ、その上から細い指が頭を撫でる。
「ちゃんと拭かないとっ。ほらナツ、スティング君も拭いてあげてっ」
「はぁぁ!? んなんほっといても乾くっつーか……」
「もうっ。スティング君もおいでっ! ナツじゃないんだから風邪ひいちゃうじゃないっ」
プンプンと怒りながら頬を膨らませるルーシィに、スティングとローグは、あっけに囚われながらされるがままだった。その様子にナツはブスッと唇を尖らせたまま、憮然とルーシィからタオルを奪い、手に熱を込めグワシグワシと2人の頭を乾かしてやった。
「……すっすまないな」
「ナツさん! やっぱ火竜って、便利ですねっ」
何とかナツの機嫌を取ろうと、双竜は慌ててごまかすが、ナツの眉間にはしわが入ったままだ。だがそんなナツの表情をよそに、ルーシィは満足そうに微笑んでいる。
「ルーシィー。フロー盛り付けできたー!!」
「ルーシィ。オイラお腹すいたよ~」
2匹のネコちゃんの発言により、その場の空気の均衡が崩れた。ルーシィは、弾かれたようにそちらに振り返ると、パタパタとスリッパを鳴らして去って行った。そして、出来上がった料理が、テーブルに次々と並んでいった。
テーブルには、豪華にスペアリブと、チキンのグリル。生魚・焼き魚にパスタにサラダが並んでいる。ご丁寧にサラダは1人分づつ小鉢に盛られていた。
その少しいびつな盛り付けが、ピンクのカエルちゃんの仕業なのだろう。いそいそと、ローグの前に他よりも少し大きいサイズの鉢に盛られたサラダを、フロッシュが運んできて、胸を張った。ローグに至っては、既に前が見えないだろうというほどのしずくで目を潤ませている。
「さあたべよっ」
それぞれがテーブルに着き、手を合わせた。
「「「いただきま~す」」」
「「「召し上がれ~!!」」」
笑顔のこぼれる晩餐だ。
「フロッシュ頑張ってたわよっ」
「うおぉぉぉぉぉ!!! フロッシュー!! なんていい子なんだぁ!!」
「フローもそーもー!」
仲良く隣同士に座るローグとフロッシュに、ルーシィは優しく微笑みかけた。今はフロッシュと大して大きさに差はないのだが、まるで父親――馬鹿が付く父親のように、涙を流しながらフロッシュをほめたたえるローグ。
その隣で、自分の相棒はその場にいないスティングは、ナツに微笑みかけ、ナツの動向を気にしながら、ばくばくと料理を口に詰め込んでいる。
「どぉ? ナツ。スペアリブいい味でしょ? スティング君も口に合うかな?」
「んおおっ! うめえぞ!!」
ソースや食べかすをとばしながら、ナツがそう言うとルーシィはほんのり頬を染めた。スティングは、フォークに刺した肉を口に突っ込みながら、コクコクと首を縦に振っている。
まさかここにきて、ナツが自分の料理の味付けが好きだと知らされるとは思っていなかった。もちろんナツはいつだって、何を作ったて美味しそうに口いっぱいに詰め込んで、ばくばくと食べてくれる。その姿は、決して自分の料理を否定するものではなかったが、特別肯定しているようにも見えなくって、正直なところ、ナツにとって自分の料理は――どうなんだろう? と気になってはいたのだ。
「ばっ! バブざん!!」
「んあ? 早いもん勝ちだぞっ!!」
「あぁ~ナツ~!! お魚はオイラのだよ~!!」
「カッカッカッカ~!! もう腹ん中に入っちまった。残念だったなハッピー! スティング!!」
「わ~んルーシィィィ!! ナツってばひどいよね~!! 意地汚いよねぇ!!」
「あ~もう、ほらっ。ハッピーこっちのあげるからっ。」
とてもじゃないが、褒められた食事風景ではない。が、とても温かい空気が漂ってくるように感じられる。時折あっけに囚われながらも、スティングは何とかナツの視界に入ろうと、前のめりになりながら一生懸命口を動かしている。
ローグの方は、フロッシュと椅子をくっつけ、フロッシュが口元に付けたソースや、とばした食べかすなどをその傍から、ふきんで拭い 小さい身体ながらも世話を焼いている。フロッシュにいたっては、――多分いつも通りなのだろうが、リラックスした表情を浮かべ、ローグの世話を焼こうとしてみたり、ルーシィに話しかけたりとその時間を楽しんでいるようだ。
ガヤガヤとせわしなく食事をすませ、食器を片付けながらルーシィがお茶を入れてきた。腹がふくれたと、その腹を擦る小さくなった2人の滅竜魔導士と、2匹の可愛い猫たちの前に、蜂蜜の入ったミルク。ナツとルーシィの席の前にはミルクの入った紅茶が置かれた。
「はい。食後のお茶代わりよ」
「ありがとうございます」「すまない」
ルーシィが席に着くと、皆カップに手を付けた。
「ねぇ、ルーシィの料理どうだった? 結構おいしいでしょ~」
ハっピーが身内自慢に胸を張りながら、口火を切った。ナツも「うまいだろっ」と自慢げである。
「ルーシィ―、あんがい料理できるー!」
「こらっ。フロッシュ。失礼だぞっ」
「あ~でも、ルーシィさんって、お菓子とかは作りそうだけど、飯の方もちゃんとつくれるんっすね~。尊敬しますよ~」
「へへっ。ありがと? まぁ、一人暮らしだからねっ」
「……普段一人分なのに、この人数の量を作るのは大変だったんじゃないか?」
「あぁ~大丈夫よっ。フロッシュが手伝ってくれたもんね~」
「フローもそーもー」
ルーシィとフロッシュが、目を合わせそろって首をかしげて笑っい、フロッシュが頑張ったと胸を張れば、ローグはこらえきれず、うれし涙を滝のように流した……。
「オイラも手伝ったよ~。それに、ルーシィは独り暮らしでも、いっつもオイラ達のおさんどんさんしてるもんねっ!」
「そーだなー。じゃぁ、俺らのおかげだなっ!!」
「ちょっ! なんでそうなるのよっ!!」
プクっと頬を空気で膨らまして、ルーシィが眉を寄せると、嬉しそうにナツがルーシィのおでこをコついた。コツつかれて、うっすら赤くなったおでこを、涙目で摩っているルーシィと楽しそうに目じりを下げるナツに、にこにことほほ笑みながら小さいスティングが笑いかけた。
「あははははっ。ルーシィさんって、コロコロ表情変わって可愛いっすねっ」
「フローもそーもー!!」
「やぁだぁっも~///」
「もうほんっと、ルーシィさんいいお嫁さんになれますねっ!!」
「おいっスティング!!」
可愛いと言われて、照れて頬を染めるルーシィ。に、畳みかけるようにスティングは賛辞の言葉を並べている。スティングからすれば、ルーシィを自慢しているナツに対して、ルーシィを褒める事によって自分の株が少し上がるかもしれないと、目論見があったのかもしれない……。
が……。スティングの発言に、相棒のフロッシュがにこにこと賛同して手を上げている中、ローグはそのフロッシュを抱えて素早く身をひそめた。
ローグの前の席に座る桜頭の男の顔に、笑顔が張り付いたまま動かなくなっている。……嫌な予感満載だ。
そんな中、その空気は関係ないとでもいう様に、フロッシュが大きく欠伸をして目をこすった。少々眠くなってきてしまっているようだ。その様子に、ルーシィが席を立った。
「フロッシュ~。眠っちゃう前に、お風呂はいろっか~?」
その声に空気の張りつめていた滅竜魔導士3人は、一斉にルーシィを見た。フロッシュの目の前で、目線を合わせるように床に膝をついている。
「よしっ。フロッシュ!! お風呂はいろっ。ハッピーも一緒に入るでしょ?」
「あい!!」
「わ~い。ルーシィとおフロー!!」
「ナツー。カップとかキッチンに片しておいてくれる?」
「……おう」
フフフとほほ笑んで、すっかり懐いているフロッシュを胸に抱え上げ、ハッピーに声を掛けて、ご機嫌なルーシィは風呂場へと消えていった。
そこに残されたローグは向かい側の席から視線をばずし、ハッピーはやれやれと身をすくめた後、ルーシィの後を追った。それらの背を見送り、ナツの目が鋭く細められた。額には、血管が浮き出いる。
「ルーシィの飯は美味い。いい嫁にもなるだろうな……」
「そっそうっすよねっ」
「ああ。……でも、お前にべた褒めされる覚えはねぇんだけど……」
「あっいやっ!! そっそんなぁ」
「なんでお前が自慢げなんだよっ!!」
「いやっ……ちがっ!! ……ナッナツさ~ん!!」
静かに、怒りを帯びた低い声が滅竜魔導士の耳にだけ届いた。
ルーシィがご機嫌なのは構わない――が、どっかの奴の言葉でご機嫌になるのは、どうにも気に食わないのだ。怒りに満ちていた視線が、冷たい目に変わっていた。そのナツの様子に、だんまりを決め込んでいる片割れのすがたに、スティングはさすがに頭を垂れ下を向いたまま、頭を持ち上げられないでいる
そんな中、風呂場から、ルーシィ達はしゃぐ、明るい声が響いてきた。
「るーしぃ、ユキノといっしょ~。やわらか~い。」
「きゃっ。もう変なとこさわらないのっ!!」
「プハハハッ。ルーシィ肉団子みたいだもんねっ」
「ちょっとハッピー!!」
「るーしぃ、ユキノよりおっぱいおっきー!! やわらか~いっ! いいにお~い」
「キャハハハッくすぐったいわよぅ。アハハハっ」
「うわぁ……るーしぃなんかエローイです。あいっ。」
ローグは、スティングに倣って頭を垂れた。
――そして、夜が更けていく。
++++++++++++++++++++++++++++
ルーシィは節約料理が上手だといいな!
*
―――――――――――――――――――――――――――――――
おまけ~お風呂場での会話~
「ナツさん! ナツさん!!一回聞いてみたかったんだけどっ」
「……あんだよ」
大きめの浴槽に仲良く3人でつかりながら、嬉々としてスティングが疑問を投げかけた。
「ナツさんとルーシィさんってさ……デキてるの?」
「んなっ///」
「スティング……あれだけ堂々とベタベタしているんだ。デキているんだろう。わざわざ聞いてやるな、スティング」
「ああ? そうと決まった訳じゃねえだろ? ただ仲のいい仲間なだけかもしんねえじゃん」
「そう言っても、あれだけベタベタ触れ合っていて……付き合ってないとか言ったら、それはそれで男女という意識が欠如しすぎだろう?」
「はぁ? それでもいいじゃねえか!! 男女を超えた友情ってのかもしんねえだろ?ローグだって、お二人のきずなの強さは知ってんだろっ」
「友情なんてそんなもの……男と女なんだそ。恋人でなければ、どちらかの片思いで報われていない構図だろう」
「そっそうなんすか? ナツさん!!」
「あっ……いあ……はぁ。……付き合ってねえし」
スティングとローグの幼い目に見つめられながら、ナツは小さく息を落とした。
「……どうせ俺の報われない系の片思いなんだな。はぁ」
ぐでんと、首を垂れるナツにスティングとローグは一瞬失った言葉を、必死で探して声を掛けた。
「えっ!? いあ……ナツさん!!」
「すまない、ナツ・ドラグニル。まさかあそこまで仲良くしておいて、恋人同士でないとは思わなくてな」
「……ルーシィさんあんなにスキンシップしてて、どういうつもりなんだろ」
「……オレ、……男として意識されてないのか?…………はぁぁぁ」
「まあナツさんっ! そんな落ち込まないでよっ! 女はルーシィさんだけじゃないっすよ!!」
「うるせぇ。ルーシィじゃなきゃ……いらねぇし」
ナツのもらした呟きに、スティングとローグは目を合わせた。
「うわぁ/// ナツさんべた惚れなんだ!!」
「やはり……惚れた女を振り向かせてこそ男だろう。まぁ……相手にもよるがな」
(ってか、ナツさんにこんだけ思われてんのに、あの人なんなんだよっ……まさか、ナツさんを弄んでんじゃ……でも……ナツさんはあの人じゃなきゃって言ってるし……くそっ)
+++++++++++++++++++++++++++++++
スティング君はナツがすきすきww←憧れ的な!!だよ
一旦ここで終了です!!そのうち続き覆いついたら書きます←
なんか納得いかないんだよ……_(:3∠)_
*