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2016.11.~#フォロワーさんの絵から小説を書かせていただく 星桜さんのナツルちゃんから妄想させていただきましたっ♪

 

ホンジツハ、晴天ナリ

 

 

「ちょっとぉ~ はじまる前から、ヨレヨレにしないでよ~! せっかく綺麗に結んであげたのにっ」

 

普段であれば先頭に立ち自らの火を纏った拳で戦い、いつだって依頼中は傷だらけなナツの筋肉質な腕はブラックスーツの包まれている。

スーツからのびた筋ばった太い指が、糊の効いたシャツの襟元と掴むとグイッとそれを弛めたのはついさっきだ。

 

「弛めただけだっての…大体ルーシィが、キツく締めっからだろっ」

 

ナツの言葉を受け、鏡を覗き込んでいたルーシィは呆れた声をあげる。

 

「あたしのせいにしないでよっ…タイひとつ結べないのはナツでしょうっ」

 

呆れた声を上げ早々に自分の支度を終えると、ルーシィはしぶしぶといった体を作ってナツの身支度を手伝うのだ。

 

 

本日は、晴天なり。そして、最強チームでの依頼日和だ。

 

 

今回の依頼は、某宝石商からのものだ。

『誤って上客に渡してしまった展示用のイミテーションの指輪を本物とすり替えろっ!!』

 

急な依頼であったが、作戦や主な役割はすぐに決まった。

 

本日、誤ってイミテーションの指輪を渡されてしまったターゲットが、購入した指輪を身に着け出席を予定しているパーティーが開催される。

このすり替え作戦は、パーティー会場で決行される。スムーズに、スマートに、行動しなくてはいけない。

もし指輪がイミテーションだとバレてしまえば、依頼主の宝石商としての信用は地に落ちしてしまう。

その為の、このすり替え作戦なのだ。

 

メインは、エルザだ。

まずエルザは、宝石商の主人と共に行動しターゲットを確認。その後宝石商と共にターゲットに接触を謀る。その際、隙をみて指輪をすり替えるのだ。

 

グレイは、パーティー会場のバーテンとなり潜入。ターゲットを監視しつつ、隙を見てエルザのサポートにまわり獲物を回収する。今回ハッピーは、グレイと共に行動することとなっている。

 

ナツとルーシィは、パーティーに参加し目立ってターゲットの目を引き、欺く。エルザの行動をしやすくするためだ。

ターゲットは変わった趣向のある人物として有名だった。――大の人間観察好きで、特に若い男女のソレが大好物な御婦人なのだ。

 

それを知っていたギルドの看板娘ミラジェーンの『若い男女の…といえば、ナツとルーシィよねぇ』とのつぶやきによりナツとルーシィが、ターゲットの視線を奪う囮やくとなったのだ。

 

膝上の丈のふわりと揺れるドレスに、品のいいTストラップのピンヒール。アップにされた金色の髪はキレイに巻かれかわいらしい花飾りが色を盛っている。ルーシィは普段しない格好、そして傍らにいるナツにご機嫌の様子だ。

 

 ――さて、いよいよねっ

 

 

そして、パーティーが始まった。

会場内には、ナツやルーシィと同じ年代、もしくは少し歳上の年代の男女が招かれているようだ。これならナツとルーシィが、悪目立ちする事は無さそうだ。
ブラックスーツに包まれたたくましい腕に白魚の様な手を遠慮がちに絡ませると、緊張した面持ちでパーティー会場にもぐりこむナツとルーシィ。

 

 ――潜入に成功

 ――えっと、グレイとハッピーの位置は…

 ――うん確認っ

 ――エルザは、まだみたいね…

 ――さて、どうやって目立ったらいいのかなぁ…

 

パーティーの招待客に溶け込むことには難なく成功した。

後はエルザの合図を待ち、さりげなくターゲッの視線を奪わなければならない。

 

 ――視線を集めるのかぁ…

 

ナツと腕を組んだまま、ルーシィは声を密めた。他には聞こえない音量でナツと話し合わなければ、いつエルザから合図がくるかわからないのだ。注目を集める作戦については、本人たちに一任されていた。というか、そこまで詳細を設定する時間はなかったのだ。

 

『どうする? ナツ』

『……ルーシィが、脱げはいいんじゃなぇか!?』

 

ナツの言葉に、ルーシィは近い位置からその悪戯なつり目を睨み付けた。

 

『はぁ!? ばっ』

『…裸になって踊れば、みんな見んだろ?』

『どっどうしてみんなの前で裸になって、しかも踊って見せなきゃいけないのよっ』

『……』

『ばっばっかじゃないのっ……って何黙ってるのよっ』

『……おう……まぁそうだなっ 見せられても……なぁ』

『ちょっ!! ナ……ッ』

 

ついつい声が大きくなってしまいそうになり、ルーシィは慌てて口を押えた。

 

 ――っと危ない…

 ――もうっ何考えついたのよっ!!

 ――バカナツっ

 

ジト目でナツを見上げると、その視線 すでにルーシィから離れ、パーティー会場の一角を捉えている。その視線を追って、ルーシィの頭ズンと重くなった。

 

『……ちょっと……まさか…ナツ?』

『まっ…とりあえず、食うかっ』

 

立食形式のパーティー為、各所に並べられている食事たち。もうナツの中で、作戦を考える事など後に回されてしまったか、忘れ去られてしまっているのだろう。

 

「行こうぜっ」

「はぁ…もうっ、しょうがないなぁっ」

 

ナツの屈託のない笑顔に釣られ、ついついルーシィもそれを許してしまう。

まだエルザ達からの合図は無い。

 

実際のところルーシィが、ダメだと止めてもナツが食べたいと言ったら、食べるまで駄々をこねられてしまうかもしれない。下手したらひと騒動だ。だったら、作戦決行の前に、お腹を満たしておくのもいいかもしれない。

 

チラリと会場内を見渡せば、会場の片隅で宝石商の腹の出たおやじにエスコートされエルザが会場入りしたところだ。

ターゲットの位置は、バーテン姿がはまっているグレイが、把握してそこに誘導することになっている。

 

 ――ナツの小腹が満たされるくらいの時間は、あるわね…

 ――とりあえず、グレイが服を脱がない事を祈るわ…

 ――頼むわよ……ハッピー…

 

「ルーシィ! これうめぇぞっ」

 

見事に絶妙なバランスを保ちながら皿の上で積み上げられている肉たち。それを崩すことなく、ナツはパクパクと口の中に運んでいく。その見事な食べっぷりに、周囲の視線は既に集まっている。

 

 ――もう…確かに、おいしそうね…

 ――……あたしも、何か少しくらい食べようかしら……?

 

テーブルに用意された料理に視線を移すと、あらかたの料理がナツによって完食されていた。

慌てて、追加の料理を用意するため係りの者がせわしなく動いている。

 

其処へ、本来であればもっと後に登場する予定だったであろう大きなケーキが入場した。

テーブルに食べるものが何もない事を避けたかったのだろう。予定よりも早く登場したタワーの様なケーキと、その周りにカットされたケーキやスイーツが並ぶ。どうやら今話題を集めている有名パティシエのスイーツらしい。会場内のそこかしこから黄色い声があがった。

 

瞬く間にケーキが無くなっていく。ルーシィが何とかとったケーキをひとくち口に運べば、自然と顔がほころび、とろけそうになる。

 

 ――はぁ…しあわせっ

 ――って、いけないっ!!

 

危うく本来の目的を忘れそうになり、ルーシィは慌てて体制を整えた。

目の前で切り分けられていくタワーのケーキに視線を向けると、その向こうにプルプルと震えるエルザの姿ら目に入った。

 

「ああぁぁぁっ……っ!!」

“ピキピキッ パリーーン!!”

 

悲痛な叫びに加え、大きな音が響く。

音の出どころはルーシィが視線を向けた先からだ。見事な緋色の髪が震えているのが見える。

 

エルザの握っていたグラスが――唸り声と共に、突如割れたのだ――

 

手の中で割れてしまったグラスを駆け寄ってきたバーテンのトレイに乗せると、ふらりと緋色の髪が揺れる。

ケーキに群がる少女達を視界にとらえ、彼女らが群がるスイーツの残量を確認すると、その足はコツコツコツコツとヒールを鳴らしている。

 

唖然とする宝石商をよそに、とうとうテーブルまでガタガタと音を立て始めた。

近くにあった料理が乗るテーブルもわずかに揺れている。

 

 ――エルザ!!

 

頭から血の気が引いていく。焦るルーシィ。

ルーシィと同じように、バーテンに扮しているハッピーもあぶら汗をたらし、目を見開いてエルザを見つめてしまっている。

ナツにいたっては、目の前の食事に夢中で気が付いていないが――。

 

『あのバカっ』

 

どこかから耳に届く仲間の声。唯一、グレイだけが素早く動き始めた。

ケーキに群がっていた者はジッとエルザを見つめ、フロアでダンスをしていたカップルたちも、足を止めてしまっている。

 

慌ててトレイだけもって、バーテンなグレイが駆け付けフォローに回るっている。エルザを落ち着かせて、一旦仕切り直すのかもしれない。

グレイからの目配せにルーシィは、うなずいた。

 

そこで食べ物に夢中になっているナツに、緊急事態を――と、そっとナツに耳打ちし、その場を離れルーシィは切り分けられたケーキを1つ手に取り、バーデンのハッピーにこっそりと渡し、すぐ脇のテラスに出た。

ナツにもテラスに来るように伝えたが、ナツはなかなかその場を離れようとしない。まだ、その手には追加で運ばれてきた料理がのっているようだ。

 

 ――バカバカッ

 ――まだ食べるつもりなのっ!?

 ――もう、どうするのよぉ……

 ――エルザもナツもっ……もうっ!!

 

テラスからどうしたものかとパーティー会場を見渡せば、ケーキを手に宝石商の傍らにエルザはご機嫌に座っている。割れたグラスもきれいに片されていて、グレイも所定の位置に戻っているようだ。

 

ご満悦のエルザは、ケーキの最後の一口を口にはこび飲み込んだ後、既に対面しているターゲットに何事もなかったように話し始めた。

 

そして、エルザの目がルーシィをとらえ合図を送ってきた。

 

 ――ふぅ……いよいよ本番っ

 

そろそろ騒ぎを起こしてでも、ターゲットの視線を奪わなければならないようだ。ルーシィはナツに合図を送ろうと視線を廻らせる。

 

 ――ナツは……

 ――はぁ…まだ食べているし…

 ――全然こっちに気が付かないじゃないっ

 

これは呼びに行かねばならないかと、身をのり出した時ルーシィの視界に青筋を立てたバーテンが目に入った。青筋をたてたグレイが料理を抱えたままのナツに、ズカズカと近づいていく。

 

 ――ちょっと、ちょっとぉぉ

 ――騒ぎっていったって、乱闘騒ぎは困るのよっ

 

慌ててルーシーがパーティー会場に戻ろうとしたその時、今度は視界が大きな何かによって遮られた。

頭の上から複数の、低い声が降ってくる。

 

「マドモアゼル、一曲いかがですか?」

「いやいやお嬢さん私と…」

「いやいや、僕とだっ」

 

気が付けばダンスの曲の変わり際、数人のブラックスーツに囲まれてしまった。

どうやらパートナーたちが、切り分けられたスイーツの方に行ってしまっているようだ。

 

「え……いやっあのっ」

「さぁ、マドモアゼルっ」

「どうか私と……っ」

「いやいや僕とだっ」

 

目の前に差し出される大きな手達。これではナツの元にたどり着けないと、焦るルーシィ。

 

「ごめんなさい 通してっ」

 

男たちは、ルーシィの声は聴かずに競り合っている。

勝手にルーシィの腰に手をまわし、強引にダンスに連れて行こうとするものや、グイグイと差し出される手達に若干の怖さを覚えた時――

差し出された手を遮る様に、見慣れた背中がルーシィを庇った。

 

「おい、ルーシィに気安く触んじゃねぇ」

「ナツッ!」

「ったく…何やってんだルーシィ……エルザに殺されるぞっ」

「んなっ! あんたが食べてばっかりでっ」

 

ルーシィをエスコートしようとのばされていた手達は、パートナーの登場によりそのほとんどが引き下がった。

 

だが、ホッとしたのも束の間。ちらりとパーティー会場に視線を巡らせれば、ターゲットがまじまじとこちらを見ている。

 

 ――ええぃ……ままよっ!

 

「っ!! ナツっ」

 

  ――要は、イチャつけばいいんでしょっ!!

 

ルーシィの腰に触れてきていた男の手を捻り上げているナツの首元を狙って、ルーシィは飛び付いた。

 

 ――このまま突っ走るしかないじゃないっ

 

こっそりとナツの耳に囁きかけ、演技に入るルーシィ。

 

「遅いよ、ナツっ」

 

ピッタリと体を寄せナツに寄りかかるように立つと、ナツが片手に持っていたグラスを掴んで、グイッと飲み干した。

 

 ――チャンスができれば、すぐにでも終わる仕事のはずっ

 

口の中に甘い匂い。甘酸っぱいお酒の味。普段あまり使う事のない猫なで声で、ルーシィはわざとらしくナツに甘えてみせた。

 

ツィーっと、人差し指で普段マフラーに隠れているナツの首もとを撫でると、猫のように暖かい体温にすり寄る。

 

「ナツゥ……なんかここ、暑くなぁい?」

「……熱いのは、ルーシィだろ……」

 

思いのほか、アルコールが強かったのか、ルーシィの身体の熱があがってしまっている。

 

「……ナツ…だっこして?」

「んなっ!? ……しっ……しょうがねえな…」

 

作戦とはいえ、らしくないルーシィにドギマギとしながら従おうとした時、まだ諦めきれないらしい男の手がルーシィの腕をつかんだ。

 

「おいっ そちらのレディに声をかけたのは私が先だぞっ」

「いや僕だっ」

 

尚もナツの隣から、ルーシィを奪おうとするあきらめの悪い男たちに向かって、ルーシィはニッコリと微笑んでヒラヒラと手を振る。早々の退散を願う。

 

近い距離のせいで、傍らにいるナツの体温が上がって行くのが手に取るようにわかっているのだ。

 

 ――ちょっとぉ…やだぁっ!!

 ――服燃やして本当に裸にするつもりじゃないでしょうねっ

 ――って、この格好で火なんか出したら……

 ――ナツだっていつもの黒衣じゃないんだから燃えるわよね!?

 ――って、とにかくっ!!

 

服を燃やされる訳にもいかないし、変に挑発して乱闘になる訳にもいかない。

そうなる前になんとか、この男共を散らさねばならない。

 

 ――とりあえず、ゴメンナサイって断ればいいわよね?

 

焦るルーシィが、内面を隠す様に余裕の表情を作り、口を開いた時だった。

 

 

ナツの耳に合図が届いた。

 

作戦成功、撤退の合図だ。

 

瞬間、ルーシィの体が宙に浮く。男どもの手を振り払いテラスから身をのり出すと、ナツはルーシィを抱えたまま飛び降りてしまった。

 

ルーシィの叫び声だけをそこに残しながら、あっけない退場だ。

 

「……簡単に腕…捕まれてんなよ…」

「きゃぁぁぁぁぁぁ…え? なに? なに? きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

叫んでいる際になにか言われた気がするが、そのナツのささやきはルーシィには届かなかったようだ。

ルーシィを抱えたまま、難なくストンと地に足をつきナツは、腕に抱えたルーシィに笑いかけた。

 

「……ここの飯美味かったなぁ」

「……はぁ、良かったわね……何かあたし……疲れたわ…」

 

どっと押し寄せてくる疲労感に、ルーシィは苦笑いを浮かべる。

そんな様子をお構いなしに、ルーシィに降ろしてと言われないのをいい事に、ナツはルーシィを抱えたまま帰路についた。

遅れて青猫が追い付いてきた頃には、ナツの腕の中でルーシィはすやすやと寝息を上げていた。

 

 

FIN

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せわしない感じになっちゃたな…(ノ;_ _)ノ =3

あいも変わらず、まとめる能力が低くて申し訳ない。

ワチャワチャした感じになってればいいなぁと思います……(;´Д`A ```

潜入系のカッコいい依頼にしたかったはずなのに、なぜか笑いを取りに行ってしまった(T▽T)アハハ!

だって書いてて楽しかったんだよっ

星桜ちゃんのステキイラストに、(^人^)感謝♪

ありがとうございましたっ!!!!

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