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201505 Twitterタグ企画 『#フォロワーサンの絵から小説を書かせていただく 』で、

akiraさんから いただいたイラストを元に作文しましたぁ~!!       

 

男になりましたっ

 

↓そしてくakiraさんから、イラスト強奪させていただきました!!↓

 

 

「……シィ!! …ル…シィ!!」

「……ん…ん……」

「おいっ!! 起きろってばっ! ルーシィ!!」

「ん。んー」

「おいっ!! ルーシィってばっ!!」

 

「……う……うる……さ……い…」

「うるさいじゃねぇっ! 30分経ったら起こせってルーシィが言ったんだろっ」

 

ルーシィのまどろむ意識の中、頭に響いてくる言葉はナツそのもの。だが、――その声はやけに高く感じられる。

 

「んー。そうだっけ? ごめんね……ナ・ツ…」

 

まだ重たい瞼をこすりながら、ルーシィは体を起こした。どうやらカウンターのテーブルに頭を預けて眠っていたようだ。

 

 ――あれ?

 

少しの違和感。ルーシィは何か引っかかるものを感じ、自分の手を目に映した。目は驚きに見開き、唖然としたままその手で自身の身体をなぞった。そして、――ルーシィの動きは、止まった――

 

 ――え?

 ――まさか……こんな事って…

 ――うそよねぇ……う……誰か嘘だと……

 

 ――あれ?

 ――まてよ……また何かの悪戯!?

 

「ナツでしょっ!! またあたしに悪戯してぇ!! 男になっちゃったじゃな……い…って……なんで?」

 

 すぐ隣にあった見知った高い体温の人物を目がけてルーシィは、うるんだ眼を向け手を伸ばした。――だが、ルーシィが掴んだのは、細く柔らかい女の子の腕。

 

「うぉっ!? どうしたっ? ルーシィ!? ……寝ぼけてんのか?」

 

 ――細くて柔らかい……

 ――少し高い声

 ――桜色の……髪に、つり目

 ――胸に……2つのふくらみ……

 

ルーシィは目の前の人物を無言で観察したのち、再び自分の身体を確認した。

 

 ――筋肉質な腕、筋張った指

 ――少し顔にかかる金髪

 ――太い首に、喉のふくらみ

 ――そして、聞きなれない低い声

 ――それに胸が……

 

「おっおい。ルーシィ何やってんだ?」

 

 ジーと頭から足までじろじろ見られた後、今度は自分の身体をジーっと見つめ、ぺたりぺたりと触っているのだ。そして、しまいに自分の胸に手を当てて「……固い」とルーシィが呟いたのだ。ナツは訝しげな目で、ルーシィを見つめている。

 

「ルーシィ……?」

 

ナツの声につられて、ルーシィは振り返った。そしてその視界には、桜頭の脳天が見える。ナツに上目づかいで見上げられ、ルーシィは力なくクシャりと微笑んだ。

 

「……ナツなのよね?」

 

「……どう見たって、そうだろっ」

「うそだぁ……ナツは、男の子だもんっ」

 

「いあ……そんなこと言われても、ほれっ」

 

 ナツはルーシィの手を取って、自分の胸にあてた。そして「本物だろっ」と歯を見せて笑ってくる。するとルーシィは、モニュっとナツの胸を掴み、もう片方の手で自分の胸を撫でた。

 

「……固い……柔らかい……固い……なんでよぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

「……シィ!! …ル…シィ!!」

「……ん…ん……」

「おいっ!! 起きろってばっ! ルーシィ!!」

「ん。んー」

「おいっ!! ルーシィってばっ!!」

「……う……うる……さ……い…」

「うるさいじゃねぇだろっ! 家賃やばいんだろ仕事行こうぜっ」

 

ルーシィのまどろむ意識の中、頭に響いてくる言葉はナツそのもの――。だが、その声はなぜだか他人のようだった。

 

「んー。そんなこと言ったけ? おはよ―ナツ……」

 

まだ重たい瞼をこすりながら、ルーシィは体を起こした。どうやらカウンターのテーブルに頭を預けて眠っていたようだ。

 

 ――んん?

 

違和感。ルーシィは胸の苦しさを感じ、そして重みを感じた。何だ? と、ルーシィは自分の胸を目に映した。そして唖然としたままその手で自身の身体をなぞった。しばらくそうして――、ルーシィは、自分の胸を両手で持ち上げたまま動きを止まった。

 

 ――え?

 ――まさか……こんな事って…

 ――うそだ……う……誰か嘘だと……

 ――あれ?

 ――まてよ……何か注意されたよな!?

 

すると、見る見るうちにルーシィの顔が青ざめていく。

 

「うわっ……ちょっと待てオレ……やっちゃったんじゃないのか?」

「は? 何言ってんだルーシィ」

 

 ルーシィは勢いよく顔を持ち上げると、見知った体温の人物を目に映した。その桜頭の人物は怪しげにルーシィの顔を覗き込んでいる。そして、大きくため息をついた。

 

「ナツ……だよね? 驚かそうとしてるとかじゃ、ないんだよね……?」

「はぁ?」

 

目に映したままになっていた、桜頭の男にルーシィは手招きをした。そしておもむろにその筋肉質な腕を、見事に割れた腹筋を、そして分厚い胸板を白い手でなぞった。

 

「うん。いい筋肉っ……さすがナツだなってぇ!! って、そんなことしてる場合じゃねんだった!!」

「おっおい。ルーシィ何やってんだ?」

「おかしくなっちゃったの? ……ルーシィ。だから拾い食いはダメだよって、オイラいつも言ってるでしょ?」

 

 ルーシィの視界に映り込んでくる、男の姿のナツとハッピー。ルーシィはハッピーに手を伸ばして抱き上げた。その頭を撫でながら「ハッピーはハッピーのままだな」と小さく囁き、ナツに向かってにっこりと微笑んだ。

 

 いきなり上半身を撫でられたナツであるが、それをたいした気にも留ていない様子で、ぼそぼそと聞き取れない声で呟いている少女の顔を唖然そして見つめている。

 

「ルーシィ? ……じゃ、ねぇのか?」

 

ナツの窺うような声。自分の胸を確かめるようにもんでいたルーシィは、慌てて顔を持ち上げた。

 

 ――わわっ違うんだナツ……だって自分だし……

 ――でも、すごいな女の子の胸って、……すごい弾力……

 ――ってか、ナツに言い訳する必要もないような……?
 

 

もにゅもにゅと、動くルーシィの手が止まらない。その不思議な様子にギルドの中からは視線が集まっていった。

 

 ――柔らかい…

 ――女の子って、柔らかいなぁ……

 

「おい? 大丈夫か?」

「……いや。非常に、大丈夫じゃないよっ」

 

 ルーシィは、眉間にしわを深く入れ眉を下げた。そして、――力なく笑った。

 

「えっと。オレは……君たちが知っているルーシィじゃないんだ」

「さっきから、何の冗談だよっ。……新手の悪戯とかか? ……だって、ルーシィの匂いちゃんとするぞっ!!」

「あぁ。だって体は君たちの知っているルーシィのモノだし、因みにオレもルーシィだよっ……違う世界のっだけどね」

 

何の事もないように、ルーシィはすっぱりと言い放った。そこに視線を向け、耳を澄ませていたメンバーは口をあんぐりとあけてしまっている。

 

 ――しかし女のオレって、スタイル抜群だなぁ…

 

ルーシィはカウンターの脇にあった姿見に全身を映して何やらポーズをとっている。突然のルーシィの奇行に周囲のメンバーたちは口を開けたままだ。ルーシィ(中身は男)は満足したのか力なく笑ったまま、背後にいるナツと鏡の中で目を合わせた。ナツは、目を見開きルーシィを見つめている。

 

「えっと、まずはごめんね。それと念のため、オレは敵じゃないからね。……自分の世界に戻るために……多分オレの世界に飛ばされちゃった女の子の方のルーシィをここに戻すために、協力してもらえないかな?」

「……」

 

静まり返るギルドの酒場。その視線は金髪の少女に集まっている。その少女の前で、身動きを忘れてしまった桜頭は、呆然と立ちつくしている。そこへ、歩み寄る影があった。ルーシィの頬先に、光るものが付きつけられている。

 

「それは依頼か? ……お前の言っていることが、真実かどうかもわからないのにそんな依頼は受けられんな……」

「おいっ!! ルーシィだぞっ!!」

 

ルーシィにむけて剣を突きつけたエルザの腕を、ナツが掴んだ。

剣を突きつけられたルーシィは、疑われても仕方ないよな……と、小さくため息をつき、眉を下げ鋭い視線をはなつ者へと振り返った。そこには緋色の長い髪が揺れている。

 

「うっ……まさか……エルザ? ……エルザも女のなのか~!!」

「……ぬっ!! ……という事は、お前の知っている私は……男なのか!?」

「あぁ、そうだよ! う~ん、髪の長さは同じくらいかな。中性的な雰囲気を漂わせてて、マグノリアにはファンがいっぱいなんだよ。でもね、エルザは心に決めた人がいるからって……」

「…ほぉ…」

 

にっこりと微笑む可愛い少女は、先ほどから男らしい口調で話しを進めている。だが、その内容に悪意は感じられはしなかった。そして何よりも、そう言う悪意に敏感なナツが、ルーシィ相手に喰って掛かることはなかった――。

 

 

 

 

 

 

「と、まぁ……男のルーシィは、口と人をおだてるのがうまいから、事を荒立てずに 敵をも仲間に引き入れて目的を果たすこが得意なんだぞっ。……まぁ、それでなくてもいつの間にか人に囲まれてるような奴だけどなっ」

「へぇ……男のあたしって、そんなんだぁ」

「そーだぞ。それにツッコミの才能もピカイチだしな。一日一回はルーシィにツッコミ入れてもらわねぇと調子でねえもん。オレ。 悪戯すればいい反応するしなっ」

 

ルーシィはにこり微笑みながら、ナツの発言にコメカミから汗を垂らした。

 

 ――はははっ

 ――ナツ、まんまナツみたいだなぁ……

 

 先程居眠りから起こしてくれた女の子のナツ。自分におこった事をうまく飲み込めなくて、ルーシィは酒場のカウンターで叫んだのだ。その傍らで、目を丸くしていたナツ。その姿を目にルーシィは力なく笑い、スツールに腰を下ろしたのだった。

 

「つまりなんだ、お前はさっきまで女で、オレが男だったと」

「うん」

「へぇ。ルーシィが女の子だったら、きっと可愛いんだろうなぁ」

 

ルーシィの前に、暖かい紅茶が置かれた。紅茶を用意してくれた銀髪の女性は、ルーシィに上目遣いで視線を向けながら微笑んでいる。

 

「ミラさんっ!! そりゃぁ……ミラさんには、負けますちゃいますけど……それなりにはっ。へへっ」

「でた~っ! なんか変でも、ルーシィの自意識過剰発言!」

「ううっ……」

「こぉ~らっ。ナツは、茶化さないのっ」

「ミラさ~ん!! ミラさんは、あたしの世界でも女性で、優しくって、そのまんまです~!!」

 

 うるうるっと大きな琥珀色の目に涙を滲ませ、大の男がミラに向かって抱き着くように腕を伸ばした。「あら私はそっちでも、女性なのね」と、にこにこと微笑むミラ。するとミラに手が届く前に、ルーシィの首が締まった。

 

 今、ルーシィを中心にして、再びギルド内の視線が集まっている。

 

「何、抱き付こうとしてんだよっ」

「え? ……あぁ。あたし今、男なんだっけ……すみません。ミラさん」

「あらあら。ルーシィはいい男だし、私はべつにいいんだけど?」

 

 素直にルーシィはミラに向かって頭を下げた。その様子にナツは襟首を掴んでいた腕から力を抜いた。

 

 ――ここは、あたしの知っている世界じゃないんだもんね…気をつけなきゃ… 

 ――エドラスとも違うし……でも、エドラスみたいに違う世界が、他にも存在していてもおかしくないのよね……?

 ――それに、性別が入れかわっているのは……全員じゃないみたいね

 ――……まぁ、ラクサスの女バージョンとか……うん。…見なくてもいいわ

 

 ――でも……どうしよう

 ――う~ん……

 

 現実に戻ってきて、がっくりと首を垂れるルーシィ。ナツの頬はまだ、膨れたままだ。

 

「だめだろっ!!」

「あらあら。ナツってばヤキモチ?」

「なっ/// ちげぇもんっ。ルッルーシィが普段から異性に抱き着いちゃだめだって言ってっから……」

「……へ?」

「あらあら。それでも普段ナツは、異性のルーシィに抱き着いてるのにね?」

「ぐ……うっせぇ///」

 

完全にミラに遊ばれている様子のナツを見て、ルーシィは目を細めた。

 

 ――ふ~ん

 ――こっちでも、ミラさんに遊ばれてるのね

 ――それに、ナツとあたしは……仲いいのかな?

 

 ――エドラスでもだけど……ミラさんは、いつもどおり……

 

 

 ルーシィはギルドの中を見渡した。すると、すぐ脇のテーブル席から自分にいぶかしげな視線がむけられていることに、気が付いた。

 

 振り向けば、そこにいるのは……黒髪の綺麗な女性と、その隣にはくねくねと体を揺らす水色の髪の細身の男性。向かいの席には、緋色の長い髪の……男? 女? 

 

 ――あれは、グレイとジュビア?

 ――それに……エルザだよね……性別わかんないな…

 ――胸はないみたいだけど……あっ……えっと…

 

見当たらない小さな青猫を探そうと、ルーシィはきょろきょろと辺りを見渡した。だが、目的の青猫を視界に納めることは出来なかった。

 

「ねぇ、ハッピーは?」

「あ? さっき魚食ってたから、食後の昼寝じゃねぇの?」

「そう。……ねぇ、ナツ」

「ん~?」

「さっきから思ってたんだけど……その言葉使いどうにかならないの? 女の子なんだからっ」

「ぐっ…」

 

ルーシィの口から出た低い声に、傍らからトーンの高い笑い声が返ってきた。

 

「クックックッ。さすがルーシィ!」

「フッ。言う事は変わらないな」

「そうですねぇ~。グレイ様」

「いや。お前は、少し男らしくしゃべった方がいいぞっ」

「そっその方が、グレイ様のお好みですか?」

「……」

 

 テーブル席から、声がかかる。性別は変わってもグレイとジュビアの関係性はどうやら変わらないようだ。それに、エルザの声は低く落ち着いている。という事は――、

 

「グレイにジュビア。あと……エルザは、男なのかな?」

「……あぁ。という事は、私はそちらでは女という事か」

「そうなのっ! エルザは、きれいで強くてかっこいいのよっ! それで、可愛いものが大好きでっ…」

「ふっ……随分、自慢げに話してくれるんだな」

 

 ルーシィが目を輝かせて、ポンッと顔の前で筋張った手を合わせた。キラキラと輝く琥珀色の目は、まるで少女のようだった。

 

 ちょうどそこへ、酒場の扉を潜る老人の姿があった。鼻をひくつかせたナツが、すかさず振り向いてその老人の元へと駆け寄っていき、その手を引いて戻ってきた。

 

「ばっちゃん! ルーシィが大変なんだっ」

「なんじゃ、なんじゃ? 落ち着かんかっ」

「……マスター?」

「そうよ。このギルドのマスター。……因みに、女性よ」

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「……ふむ。そういう事か。まぁ、そう慌てるでない。時空空間魔法の類じゃよ」

 

白髪頭で小柄な老婆が、優しく目を細めた。そして、カウンターの端に置いてある分厚い本を指さした。

 

「空間……魔法? ……これ?」

「うむ。一時的に自分で作り出した空間に、身を潜めたり、敵を閉じ込めたりできる魔法じゃよ。エルザの換装魔法や、星霊魔法とも近しいものがあるのう。星霊魔法は空間を門(ゲート)で繋ぐじゃろ? そう言ったたぐいじゃ……もう、ずっとずぅっと昔からある魔法なんだがの……ちとそれが人を巻き込むことがあるのじゃよ」

「げーと? ゲートってなんだ?」

「え~っと簡単にいうと、別の次元とここの空間を繋げるんだけど、その通り道の扉みたいなものよっ」

「へぇ……じゃぁ、それで繋がったのか~。お前の世界と」

「そうなのかな……でもどうして?」

「ふむ。お主じゃよ。ルーシィ」

「え?」

 

ルーシィは傍らにあった、先ほどマスターが指差した分厚い本を抱え込んだ。

 

「お主の扱う星霊魔法と、空間魔法が近しいと言うたな? 空間魔法は、それが記された書物を用いて、魔法を発動させる事ができるのじゃ。空間魔法自体を使えぬ魔導士でも、罪人を連行する際に使えるようにと、評議院が大昔に書物にしたのだがの……」

「だがって、なんなんだよっ! ばっちゃん!!」

 

マスターは静かに腕を組み直した。

 

「それがの……書物というものは劣化するんじゃ。劣化が進むとの、誤作動が起きてしまうらしいのじゃ。……空間魔法が記された書物が劣化をし、その魔法が使われようとしたため、近くにいたお主の魔力を絡め取ってしまったのじゃろう」

「えぇ!? ギルドでそんなあやしい本、読んでた人いたかなぁ……」

 

ルーシィは斜め上を向いて、少し前の様子を思い出そうとしている。だが、今日はそんな本を読んでいそうな人物は、ギルドに来ていなかったはずだ。すると、すぐ隣で女の子の声がルーシィの思考に割り込んできた。

 

「…いたぞっ」

「え?」

「お前がいたとこは知んねぇけど、ここにはいたぞっ!! なっレビィ」

 

「……アハハハハッ。ルーちゃんごめんっ」

 

薄いブルーのふわりとした髪を揺らし、小柄な少年がルーシィに向かって頭を下げた。

 

「……もしかして…」

「う~。ごめんルーちゃん!! 可能性はあったんだけど……まさかここで発動しちゃうとは……ちゃんとこっちのルーちゃんには解決方法教えてあるからっ」

「……レビィちゃんなの!?」

「……そこ? クスッ。 そうだよ。オレはレビィ。こっちのルーちゃんの親友だよ」

「…おっ男の子なんだ……」

「って事は、オレはそっちじゃ女なんだなっ…すげぇ不思議っ!」

 

「……あたし……戻れるの?」

「あぁっそれは大丈夫! この書物によると、魔力と結びつきの強い魂が入れ替わっちゃったけど、ある魔法薬で魂を体から抜け出させて無事に帰ってきたってある。こっちのルーシィには伝えてあるから、迎えに来てくれるはずだよ」

「じゃぁっ」

 

男ルーシィは、女の子の様な可愛らしい笑顔を咲かせた。楽しく話をしていても、戻れるのかどうか内心不安だったのだ。

 

「ルーシィ!!」

 

明るい声に呼ばれ振り返ると、そこにはナツの満面の笑顔があった。

 

「戻れるんだっ!よかったなっ」

 

実際空間を飛んできてしまった自分よりも、何倍もナツの方が嬉しそうだ。

 

「ふふっ。……そんなにうれしいの?」

「ん……おうっ」

「そっかぁ~。そんなに……男のあたしにあいたいんだねっ」

「うっ……うるせぇ」

 

ナツは唇を突き出して――頬を染めた。そして、はにかむように笑った。

 

 ――な~んか、女の子のナツって甘ったれてるし……かわいいなっ

 ――きっとこっちのあたしも、ナツの事可愛くて仕方ないんだろうなっ

 

 

 

 ところ変わって、ナツ・ルーシィ男同士の話が続いていた。何とかギルドのメンバーから信頼を得たルーシィは、ナツと向かい合って座っていた。

 

「おいっ!! ルーシィはっ……いつものルーシィは、いう通りにすれば助けられるんだなっ!! 急ぐぞっ」

「……うん。心配してくれるんだね。ナツ、女の子にルーシィの事」

「っ!! あったり前だっ。ここは、ルーシィの…」

「うん。それでねっ、ナツの協力が必要なんだけど……頼めるかな? 危険も伴うかもしれないんだけど…多分君にしか頼めない…」

「そんなもん、当たり前だっ!! どんなことしたってっ」

 

ルーシィは、時空間魔法の事を説明した。親友のレビィが壊れてしまった部分を修復すると言って、持っていた古い本に納められていたのを知っていたし、こういう事が起きるかもしれないことは、レビィから聞いていたのだ。

 

「………と、いう訳なんだっ。……判ったかな?」

 

 ルーシィの説明にナツとハッピーは、ポカーンと口を開けて、ルーシィの話を聞いていた。話しの内容がどうとかではない。目の前にいるのは、いつものルーシィなのだが、確かに中身はいつもとは――違う。大体男なのだ。しっかりと……。エドラスの様な世界があるのだから、また他の世界があっても確かにおかしくはないのだろうが――。

 

 ルーシィの説明を受けて、ナツ達はギルドのメンバーに手伝ってもらって、2つの魔法薬を作り上げた。一つの魔法薬を2つのグラスに分けると、ルーシィはその一つをナツの前に差し出した。

 

「これを飲んでオレの世界に、こっちのルーシィを迎えに行こう」

「よしっ!! 早くいこうぜっ!!」

「ちょっとまって、ナツ。もう一つの薬の匂いを忘れないでくれよな。その匂いをたどって君は、もうこっちのルーシィを連れて帰ってこないといけないんだから…」

 

帰り道オレないっしょに行けないから……そうやさしくルーシィが囁いた。その声は普段のルーシィそのものだが、その口調は男のもの――

 

1つの魔法薬は、竜の鼻には強烈なにおいをはなつ道しるべ。

そして、今コップにそそがれた魔法薬は、精神を肉体から引き離す魔法薬だ。つまり、幽体離脱をして、体に戻ろうとする男ルーシィにくっ付いて行って、その男の身体に入っているルーシィを迎えに行くという事だ。帰ってくるときはナツとルーシィの2人旅だ。

 

 ナツとルーシィは、魔法薬の入っているグラスを持ち上げた。そのドロッとした液体は、2人の喉を以外にすんなりと流れていく。液体が喉を通りすぎると、ナツの意識は体を抜け出した。力なく倒れ込んだナツとルーシィの身体はギルドの医務室に寝かされている。その傍らで、黙ってジーーッと見守っている仲間達。

 

「……ナツ……ルーシィ…」

 

シュンと耳を下げる青猫の頭を、青い髪の少女が優しく撫でた。

 

「ハッピー……大丈夫だよ。ナツさんとルーシィさんだもん」

「あい……オイラ…オイラ」

 

青猫の身体は震えていた。小刻みに揺れる小さな青い背中を、元気を出してと愛しの白猫がさすってくれている。

 

「……ナツ酷いや……オイラも男ルーシィの世界、見てみたかったのに…」

「「……」」

 

 

 

 

  精神だけが体から抜け出すと、ナツの目の前には琥珀色の瞳を持つ金髪の青年がいた。よくギルドの女性陣が雑誌の写真を指さしてイケメンがどうとか言っている男のような容姿だ。

 

『ルーシィじゃねぇ!!』

『いや。ルーシィだからっ……ほら行くよっ』

 

男ルーシィは、ナツの腕を掴んだ。ナツよりも一回り大きい手だが、その指はナツよりも細いようだ。

 

 ――ルーシィが男になると……イケメンってやつで……こんななんか……

 

 

『ねぇナツ』

『あ?』

『女のオレ……ルーシィってどんな?』

『あー。いい奴だぞっ。お前もいい奴っぽいしなっ』

『……ハハっ…ありがとう…ふ~ん、いい奴…かっ……』

『……なんだ、不満か?』

『んー。そうだね不満かな。……もっと特別なのかと思ったからさっ』

『?』

『さっきの取り乱し方みてさっ……』

『……特別じゃねぇとは、言ってねぇぞっ!!』

『うんうん。そうだね……えっ……ええっ///』

 

男ルーシィが振り返ると、ナツはマフラーで口元を隠した。よく見れば、見事に耳まで真っ赤に染まっているナツがいるのだ。

 

『早く……迎えに行かなきゃね』

『……おう』

 

 ――帰りは、……ルーシィ連れてくんだよな

 ――ルーシィ待ってっかな?

 ――……今、何やってんだろうな…

 

 

 

そこに女の笑い声と、男ルーシィの低い声がしてきた。何か楽しそうに話し合っているようだ。

 

 

『……もう着くよっ』

『ルーシィ!!』

 

 

 

「へぇ……男のあたしって、そんなんなんだっ」

「そうだぞ。ツッコミもピカイチでなっ、いちいちいい反応返してくれるから、からかいがいもあるしなっ」

 

 ニカッと、太陽のように桜頭の少女が微笑んだ。

 

 ――う……

 ――ナツに言われてるみたいで///

 ――あたしじゃないのに、照れるじゃないっ///

 

「なぁ、そっちのオレの話しもきかせてくれよ」

 

女の子のナツが、目をキラキラと輝かせてルーシィの顔を覗き込んだ。キラキラと輝くその目を見れば、ナツの胸の鼓動がワクワクする心が、ルーシィに伝わってくる様だった。

 

「なぁ。そっちも、オ…あたしとルーシィは仲良しなのか?」

「う~ん。まあ仲は良いかな?」

 

 ――だって……悪くはないもんね…

 ――そう言えば、こっちのあたしがあっちに行ってるんだよな……

 ――だっ大丈夫かなぁ…

 ――エルザに、剣ぬかれたりしてないかな…

 ――ちょっとぉ……嫁入り前の顔に、傷なんて…

 ――まさかねぇ…

 

 ――……ナツ…

 

「……ルーシィ?」

「うっわぁっ」

 

 

急に現れたナツのドアップに、ルーシィは驚きの声をあげた。いつものように悲鳴を上げたいところだったが、男のルーシィの身体からは高い声は出なかった。思いのほか自分の低い声の驚きの声に、ルーシィはへへへと笑った。

 

「……まぁ。チームメイトだしねっ。仲は良いと思うよ」

「ふ~ん。それだけ? ……オレって、あっいあ、そっちのナツって、どんな奴なんだ?」

 

 ――フフフッ

 ――その表情もそっくりなんだけどなっ

 ――落ち着いて観察してみると……性別以外は……ホントよく似てるのよね……

 

ルーシィはナツの目をまっすぐと見つめて、優しく微笑んだ。

 

「ナツはね……、優しいかな? 楽しいことが大好きで、あたしの事脅かしたりおちょくったり……いっつも困らせられてる…」

「うっ……そっそうか、こまってんのか……」

「うんっ。頭きちゃうのっ! ……でもねっ! あたしを、妖精の尻尾に連れてきてくれた。あたしにあたしでいられる居場所……家族をくれたの。普段は自分の事ばっかりで、そんなナツに振り回されてばっかりだけど……本当はいつだって、守ってくれてる。仲間思いで、優しくって……でもちょっと、寂しがりやかな? フフフッ。こっちのナツも、ずいぶんな寂しがり屋さんみたいね?」

 

ルーシィの目をまっすぐと見つめ、話に聞き入っていた女の子のナツ。そのつり目を見開いたままナツは、徐々に頬を染めていった。そして、大きな口を開け唾を飛ばしながらルーシィに食って掛かった。

 

「オッ……あたしは、そんな寂しがりやじゃ……」

 

「いや。ナツは人一倍寂しがり屋だぞ」

「エルザッ!」

「まぁ、それに負けない位……皆、ルーシィも含めて寂しがりやだがな……」

「ふふふっ確かにっ。そう言われると、そうなのかもなっ。何だかんだ言ってみんな、仕事が無くったってギルドきちゃうしねっ」

 

ルーシィは楽しそうに目を細くして、にこにこと微笑んだ。その柔らかい表情は、やはり男の仕草ではない。いつの間にか、グレイやエルザとも打ち解けていた。皆、ルーシィの世界の話に興味津々なのだろう。

 

流石、ルーシィだ!と、思いながらナツはルーシィの世界の話に聞き入っていた。ルーシィの口は止まらなかった。自分の世界で起こったことを、おもしろおかしく話して聞かせてくれた。

 

「大体ナツってばさぁ………ねぇ聞いてるのっナツ!!」

「う~ん。そのさっ……男のオレって……ルーシィにかまってほしくて、そんな悪戯ばっかりやってるんだろ?」

「……へ?」

「絶対そうだぞっ! だってオレだろっ!! オレの考えてることなんて…」

 

女の子のナツは、どうだっと胸を張った。その誇らしそうな表情そ見ながらルーシィの胸の内は騒ぎだしている。

 

 ――えっ///

 ――ええっ///

 ――いや……ダメよルーシィ!! 落ち着いて!!

 ――でも確かに…構ってあげないと……悪戯するのよね……

 ――う~ん…

 

「……ナツでも考えて、行動できるんだね…」

「おいっ……そっちに感心してんじゃねぇ!!」

 

誇らしげに目を輝かせていた女の子のナツは、眉間にしわを寄せて唇を突き出した。その可愛らしい女の子の表情に、ルーシィはクスリと笑いだす。

 

「っフフフッ。ごめんごめんっ」

 

 

 

 それは突然だった。

 

『ルーシィィィィィィィィィィィイイイイ!!!!!!!!』

 

突然、頭の中に響いてくる声。それは、よく知った聞きなれた声だ。

 

「……ナ  ツ……」

 

ルーシィはその場に立ち上がった。そして、きょろきょろと辺りを見回した。

 

「あんだ?」

「ん~ん。違う。あたしの知ってるナツの声がするの……」

 

『ルーシィ!!』

 

「っ!! ナツ!! あたしは、ここだよっ!!」

 

ルーシィは、まっすぐ上の何もない天井を見つめた。その方向から声がするのだ。そして何も見えないその天井に向かって、手を伸ばした。

 

 

 

『ナツーー!!』

『ルーシィ!!』

 

 

 

 

 そして、静かに伸ばしていた腕を降ろした。びっくりしてその姿を見つめている仲間達へと振り返ると、眼下に桜頭が映った。

 

「ナツっ」

「ルッルーシィ!! 戻ったのかっ!!」

「うん。よくわかったねっ」

「そっそりゃぁ、ルーシィのナツって呼び方が、ちょっと違うからなっ」

 

満面の笑みの女の子ナツの頭を、男のルーシィは楽しそうにグシャリと撫でた。

 

 ――ナツ……

 ――…ルーシィ……

 

「無事に帰れよ……」

 

天井を見上げて、男ルーシィは目を細めた。

 

 

 

 

 

『ナツ!!』

『ルーシィ!!!!』

 

精神の姿で、ルーシィはナツに抱きしめられていた。スリスリとルーシィの長い金糸に、ナツは頬を擦り付けている。

 

『やっぱり、迎えに来てくれたねっ』

『……おうっ』

『ありがとう。ナツ……』

『……おうっ』

 

ナツはルーシィを抱きしめたまま、動きを止めている。その腕の拘束は、暫く弛むことはなさそうだ。

 

『……ナツ?』

『…………恐かった……』

『え?』

『ルーシィが、ルーシィじゃなくなっちまって……怖かったんだっ』

 

ルーシィを抱きしめる腕に、力が入った。そして熱い腕が、ルーシィの綺麗な金糸をそっと撫でた。

 

『……帰ろう。ナツ』

『……あぁ。ハッピーも心配してるぞっきっと……』

『うん。2人で、ただいまって言おうねっ』

『……そうだなっ。行くぞっ!!』

 

ルーシィはナツに手を引かれて、何もない空間をただまっすぐと進んでいく。たまに立ち止まったナツが、スンスンと鼻をひくつかせ、また進んでいく。ゆっくりとでも、確実に自分たちの世界へ――。

 

 

 

 

fin

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わぁぁぁぁあああ!!!!!

どっちの世界も、付き合っていないナツルちゃん♪

わぁぁぁぁぁああああ!!!!!

超纏まってないし(T∇T)ノ彡バンバン!!

せっかくのステキなイラストをいただいておいて( ;∀;)ごめんねあきちゃん!!

なんかね、素直に性転換で書いてみたら……ダレだこれ……ってなっちゃってw

全然ナツにもルーシィにもならなかった←(_≧Д≦)ノ彡バンバン!!

 そして今も、キャラ崩壊!!( ;∀;)でも楽しかったのよ♪イラストありがとう!!

 

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