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2014年5月10日  7P

竜の血 Ⅰ

シリアスです。ナツ→←ルーシィのナツルーです。まだルーシィは出てきません。。。そのうち出てきます。
オリキャラでます。オリジナル設定もありますが、それが平気な心のお優しい方は、誤字脱字に注意してお進みくださいm(__)m

 

 

『身元の確認に来てほしい。』そうギルドに連絡が入ったのは、昨夜遅く。ルーシィが消えてから3日目の夜だ。

 

行方が分からなくなったのは、今日から4日前。

 

それは最強チームでの依頼の遂行中だった。群れを成しているというモンスターの討伐。その最中、ナツとルーシィ2人で動いている時だった。

ハッピーは、連絡係で別行動していたエルザとグレイの元に向かった。そしてその直後、発見したモンスターをナツが追いかけはじめた時は、確かに後ろをついてきていた。

そして、モンスターに攻撃を仕掛けた。が、攻撃したばずなのにそこに手応えを感じなかった。

 

次の瞬間、後ろを追ってきているはずの、ルーシィの気配が消えた。

ナツは妙な胸騒ぎを感じていた。大声でルーシィの名を叫び辺りを捜索した。

ルーシィのいた場所には、落とし穴もなければ引きずられたような跡も、、、残り香すら、、、消えていた。

 

 

 

金髪の少女を保護した村の者の話しを伝え聞くには、ルーシィと思われる金髪の少女は、3日前に村の入り口に倒れていたのだという。

その村は、ルーシィが消えた森から山を越えた小さな村だった。依頼があった村とは山を挟んで反対側に位置する。

その小さい村は、老人ばかりで人が少なく少女の右手の甲にあるピンク色の紋章の意味を知る者がいなかったらしい。その為今まで連絡が来なかったのだという。

 

その金髪の少女はケガをしている訳でも、病気で苦しんでいる訳でもないのに、意識を失っているままなのだという。何処の誰かも分からない少女を どうしたものかと気を揉んだ村の者が、定期的にくる行商に金髪の少女を引き合わせた。とは言っても、寝ている少女を見舞ってもらったのだが。

そしてその行商が、彼女の右の手の甲の紋章に気が付いて連絡をくれたのだ。

 

 

今、ルーシィを欠いた最強チームが、その村に向かっている。

 

 

「うぷぅ。。。。うぅぅ。。うぇっ・・・ルー・・シィ。。。うっぷぅ。。。」

「・・・ルーシィ。。。」

 

何時もの乗り物酔いで真っ青な顔をしながらも、ルーシィを呼ぶ桜頭の男。

その隣で、悲しそうに寂しそうに耳を垂れる青猫。

 

「ったく。。だらしねぇ。。。」

「全くだ。ルーシィがみたら悲しむな。。。」

「・・・・・・。」「・・・・あい。」

 

そんな1人と1匹を呆れた顔で、グレイが見ていた。

その隣に座る、エルザは硬い表情を崩していない。

 

「まずは、ルーシィの様子を確認しなくては。。。」

 

エルザの発言に、ナツとグレイ、そしてハッピーは表情を引き締めた。

 

 

ルーシィが突如消えた後の最強チームは、明け方までルーシィを探していた。

だがルーシィの痕跡どころか、群棲を成していると言われていたモンスターすら見つからなかった。

そして朝を迎えた。日が昇ってから、依頼主の元へ一度行ってみるという事になり、その場から離れようとしないナツとハッピーをムリやり引きずって山を下りた。

 

「ルーシィィィ。」

 

ハッピーが、俯いたまま元気なく何度も呟いていた。

 

「・・・大丈夫だ。ルーシィには星霊がついている。」

「そうだ。強い仲間だ。大丈夫だ!!」

「・・・・くっそぉ!!!!」

 

グレイとエルザの言葉に頷くものの、この状況に納得できるバズもなくナツは強く握りしめた拳で己の腿をたたいた。

 

依頼人は麓の村の村長だっだ。

村に入り真っ直ぐそこに向かうと、信じられない事実が伝えられた。

依頼は、、、、そんな依頼は出されていなかったのだ。

それどころか、前日の昼間挨拶を交わした初老の男とは、似ても似つかない人物がこの村の村長だと言う。。。。

 

ナツは、このまま付近の捜索を続けると言ったが、依頼自体が偽物だとすると、完全に嵌められたのだ。

一晩森を捜索している中、自分達は襲われなかったことを考えれば、これはルーシィを誘拐する為の依頼だったのだろう。ただルーシィをさらった目的が何か分からない今、下手な事は出来ない。何よりもギルドに動きがあるかもしれない。

 

「一度ギルドに戻るのが賢明だろう!!」

 

エルザの発言に、納得はできない様子を見せていたナツも、最後はグレイの氷の牢獄に入れられ、ギルドまで連れて帰られた。

 

そのまま、ギルドの中に氷の牢獄が置かれている。

 

「ナツ?落ち着いた??」

 

氷の牢獄の前で、青い塊がうずくまっている。

ナツは手を伸ばして俯く相棒のその頭を撫でた。

 

「ハッピー。大丈夫だ。ルーシィは大丈夫だ!!」

「あい。」

 

ギルドのマルターのマカロフは評議院に呼び出しをくっらっていて、今は不在だ。

だが、仲間の反応は早かった。

依頼を出してきた人物の特定。

ルーシィを攫った目的。

それを、手分けして探っている。

だが、、、特に何という情報も得られなかった。

 

「・・・・こんな時、、ルーちゃんなら。。。。」

 

レビィがポツリとつぶやいた。

そうだ、、、普段ならこういう謎解きの様なものは、、、ルーシィの担当だ。

オレ達が、頭を抱えている間に、何か閃くのは何時もルーシィなんだ。

ルーシィの閃きに、レビィの分析。。。

 

ルーシィが来る前まではいったいどうしていたんだ?こんな時。。。。

 

「おい。もう一回依頼の内容を確認しよう。」

 

口を開いたのはグレイだった。そして、ナツの自由を奪っていた氷が解かれた。

氷の魔導士のくせにすぐ熱つくなる性格だが、そう言えばこういう時は割と冷静な頭も持ち合わせていた事を思い出した。

 

「ミラちゃん。依頼書あるか?」

「ええ。。。。はい。」

 

その場にいたメンバーで、ミラが出してきた1枚の紙を覗きこむ。

 

・・・・何か引っかかる気がする。

 

「なぁ。ナツ兄。よくこんな以来受けたね。」

「あ?何でだ??」

 

俺らのチームからしたら、いつもこんな依頼を探している。存分に暴れられて、みんなで分けても十分な報酬が貰える。いつもであればルーシィは嫌がる依頼だが、そういや今回は報酬の本がどうとか言って簡単に引き受けてたな。。。

 

「・・・そうだな。。。ロメオ!!この依頼って、俺らが受けることが前提の依頼なんじゃねぇか??」

 

ナツの発言に、エルザが口を挟む。

 

「うむ。。。だが、、、それにしては確実性は無いな。。。」

「そうだよナツ!!ナツ達が行った後、ガジルに教えたら行きたそうにしていたもん。」

 

レビイが口を挟むと、グレイもそれに続く。

 

「・・・・ナツとガジルかぁ。暴れられりゃ何でもいい奴らだな。。。。。ラクサスんとこのチームでもこういう依頼は請けそうだな?」

「!?グレイ!!そうか!!!ナツ・ガジル・ラクサス。共通点は?」

「「「ドラゴンスレイヤー!!!」」」

 

それぞれがまた顔を合わせた。

 

「でもそれじゃぁ、なんでルーシィが攫われたのさ。」

 

 

 

 

ルーシィを欠いた最強チームは、金髪の少女が保護されているという村へと近づいている。

列車での移動に加え、乗り合いの馬車に揺られ、ナツは既に虫の息だった。だが、何とか踏ん張って自らの足で、目的地まで歩みを進めている。

 

「ナツー!!早く~!!」

 

ハッピーに叫ばれるが、フラフラと進む方向が定まらないナツは、悔しさに自分の膝を叩いた。

 

「くっそぉ!!しっかりしやがれ!!オレ!!!」

 

ハッピーが運んでやろうとしても、エルザが肩を貸そうとしても、ナツは自分の足で歩いていた。いや。自分の身体で、這っていた。。。ルーシィが攫われる直前まで一緒にいた自分を、攻めているのかもしれない。

 

「おい!!クッソ炎!!村が見えてきたぞ!!」

「・・・・おう。」

 

グレイが振り返ると、ナツは止まって森の方と見つめている。

 

「?おい!!どうした?」

「・・・・いあ。」

「ナツ!!グレイ!!早く来い!!置いて行くぞ!!!」

 

森に視線を送っていたナツがエルザの言葉に、顔を上げ走り出した。

 

「ったく。何かあったのか?」

「んあ?なんかあの霧の中から誰か見てなかったか??」

「はぁ?クマかイノシシでもいたんじゃねぇか??」

 

何か腑に落ちない様に、首をかしげるナツ。その様子に、グレイは森に視線を送った。

 

「無駄話をしていないで、しっかり歩け!!!置いて行くぞ!!」

 

またエルザにどなられ、ナツは肩を揺らした。同時にグレイも。。。

エルザもまた、突如 消えてしまった可愛い妹のような存在のルーシィが心配で仕方ないのだ。表面では平静を保っているが、発見された金髪の少女の意識がないという事も内心気が気でないのだろう。

 

「着いた―!!」

 

木製の柵の囲いの中に、10軒ほどの民家と耕された畑が見える。

門から村に入ると、ちょうど拓けた場所に大きな井戸と古びた木製のテーブルセット・ベンチなどがある。

誰か村の者が、要らなくなった物を持ち寄って、ここでお喋りでも楽しんでいるのだろう。

不揃いのテーブルセットがどこかやさしい気持ちにさせる。

商店1軒無い・・・のどかな村といった印象だ。

 

グレイはキョロキョロと周りを見渡し、ナツは鼻をひくつかせている。

ナツが一方向を見つめて歩き出すと、エルザ達が後ろをついて行く。

そして、ナツの頭にのっかった青猫が、大きな声で叫んだ。

 

「すみませ~ん!!」

 

ハッピーの可愛らしい声が響くと、ナツの向かっていく方向にある民家から数人の老人が出てきた。

 

「すまない。妖精の尻尾の者だ。ここに金髪の少女が保護されていると。。。」

「っ!!」

 

扉が開いたことで、ルーシィの匂いが強くなったのだろう。ナツが既に走り出していた。

 

「おい!待て単細胞!!」

 

グレイがすかさずナツの首根っこを引っ張るが、ナツの走る勢いは衰えない。

結局ナツの首根っこを掴んだままグレイはナツに引きずられて、民家に入った。

ナツのその様子と行動に唖然とする老人たちにエルザが「すまない!」と会釈をして、それに続いた。

 

「「「ルーシィ!!」」」「姫さん!!」

 

ナツの視界には、ベットに横たわる金髪の少女が映った。顔の色は真っ白で生気がみられない。思わず駆け寄り、眠っている金髪の少女の手をナツが握りしめた。

 

「っ。。。おい!!ルーシィ!!!」

 

握った少女の手を己の額に当てる。金髪の少女は、、、まだ目覚めない。

 

 

 

 

目を覚まさない金髪の少女を連れ、一行は帰路に着いていた。

少女が目を覚まさないままの移動の為、行きとは違い終始馬車を用意していた。

ガタゴトと揺れる馬車の中で、真っ青な顔のまま胸の前で腕を組んで今にも倒れ込みそうになりながらもナツは、長椅子の上に横になっている金髪の少女を食い入るように見つめていた。

 

「ナツ~。そんなに見たら、ルーシィに穴開いちゃうよぉ?」

「おいトリ頭。たった数日姫さんに会わなかっただけで、顔も忘れちまったのか?」

 

ハッピーとグレイの発言にギロリと視線を送るが、ナツはまた黙って金髪の少女の寝顔を見つめ、深く眉間に皺をよせた。

 

金髪の少女は、現在ただ眠っているだけのような状態だ。

体や頭に傷などはなかった。エルザが身ぐるみはがして確認したので間違いない。

その他、特別な事は見受けられなかった。それに、クスリを使われたような形跡もない。

という事は、、痕跡の残らない薬か、何かの魔法により眠っているのだろうか??

 

ナツの優れた嗅覚からも、この金髪の少女がルーシィであろうことは間違いなかった。

ただまだ目覚めぬルーシィを心配しているのか、ナツは押し黙ったままだ。

 

マグノリアが近づいてくると、ハッピーが先行してポーリュシカを呼びに飛び立った。

 

「おいナツ。」

「あ?」

 

馬車をひく馬の休憩の為、揺れが収まった馬車の中でエルザがナツを真っ直ぐ見つめる。

 

「どう思う??」

「・・・・どうもこうもねぇ。納得いく訳がねえ。。。コイツが起きねぇと。。」

「・・・そうだな。犯人とその目的探しは、その後だな。」

「・・・・・ああ。」

 

馬車の長椅子に寝転んだままの金髪の少女。

桜頭の少年は、まるで息の仕方も忘れ、酸素が足りていない様な、苦しそうな視線をその少女に向けている。

そんな少年を、緋髪の少女は落ち着かせるように、諭す様に唇を動かした。

 

「・・・大丈夫だ。ルーシィは、、、強い奴だ。。。大丈夫だ!!」

「っ。。あぁ。。分かってるっつーの!!」

 

窓からの風邪をうけて緋色の髪が揺れる。エルザもまた、つらそうに表情をゆがめていた。自分の手の震えをもう片方の手で抑え込み、自分の中の不安な感情と戦っているのだろう。自分にも言い聞かせるように、そう言っているのだ。

桜頭は馬車の窓から天を仰ぎ、目を閉じた。

 

大丈夫だ。大丈夫!!

そう自分に言い聞かせるように。

 

 

暫くして馬車が動き出すと、桜頭は窓に預けたままの頭を外にだし、風を真っ青な顔に浴びている。

背中には見知った気配。

馬車の中から窓を通って空へと、仲間の匂いが消えていく。

少年の大好きな甘く優しい香りも、自慢の鼻をかすめて空に消えていった。

 

ギルドに到着したのは、陽が沈んだ頃だった。

陽の沈んだマグノリアの街を、街路灯がやさしく照らしている。

石造りの道をゴトゴトと進み馬車は『妖精の尻尾』の裏手についた。

酒場は既に賑わいをみせている。

 

最強チームは、ギルドの裏手からまだ眠り続ける少女を医務室に運び込んだ。

緋色の髪の少女が、所作お姫様抱っこで眠り姫をベッドに寝かしつけた。

 

既に医務室に到着していた、薬師が文句を言いながらもその金髪の少女の診察を始める。

その傍らには、留守番していた青色の髪の少女とその相棒の白猫、そして先に馬車を後にした青猫がいる。

 

「・・・大丈夫だ。体に異常はないよ。」

 

ポーリュシカからの言葉に、治癒の魔法を使う青色の髪の少女も頷いた。

 

「ルーシィさん。酷く体力を消耗しているようです。何か体に強い負担がかかったのかも。」

「負担?」

「それだけの負担がかかって、体に異変がないのも不思議な現象だな。」

 

「・・・体力をそぐような魔法を受けたのかもしれないし、、、、突然消えたと言っていたろう?ワープの魔法は、移動する者の体力を奪うと聞くよ。時には2~3日目を覚まさない程にね。」

 

青髪の少女の発言に、青猫と緋色の髪の少女がそう言うと、ポーリュシカが可能性を口にした。

桜頭の少年は、立ったまま腕組みしベッドに横たわる少女を苦しそうに見つめている。

 

「じゃぁ、ポーリュシカさん。ルーシィはいつ起きるの??」

「体力が回復すれば、そのうち起きるだろうよ。薬は必要ないみたいだしね。あたしゃ帰るよ!!」

「えっあっ。。。グランディーネ!」

「・・・見送りはいらないよ。ウエンディ。その子の体力を回復しておやり。」

「はいっ!!ありがとう!!グランデーネ!!」

「フンッ。その名で呼ぶんじゃないよ。。。まったく、ほらあんたボーっとしてんなら荷物を運んでおくれ!!」

 

ポーリュシカは、そこにいたナツに手持ちの荷物を押し付けて部屋を出ていった。

ナツはベッドに横たわる少女を見つめてから静かに、ポーリュシカの後を追った。

 

「ナツ??」

 

普段であれば、こんな状態の少女を置いて席を外すことのない相棒に首を傾げながらも、青猫は相棒の後姿を見送った。

 

「じゃぁ、回復しますね。」

 

そう言ってウエンディは、金髪の少女の身体に手をあてた。そして、魔力を練る。

ウエンディの呼吸に合わせちいさな手の先が淡い光を放ち、それが少女の身体に吸い込まれた。

 

一呼吸おいて、眠っていた少女の身体がピクリと動く。

そして、ゆっくりと瞼が持ち上がり琥珀色の瞳が医務室の天井を捕らえた。

 

「ルーシィィィィ!!!」

 

青猫が勢いよく少女の胸に飛び込んだ。少女はそれを抱え込んで、目をパチクリと瞬かせた。

 

「ルーシィ!!」「ルーシィさん!!」「姫さん!!」

 

その場にいたものは、それぞれの呼び方でその少女の名を口にし、少女のまわりを取り囲んだ。少女は戸惑いながらも、ベッドの上に上体を起こした。そして、その人物たちにきょとんとした視線を送る。端から順番に視線を移し観察しているようだ。

 

「・・・あれ?」

「ん?ルーシィどうしたの??」

 

少女の小さな呟きに、その腕の中にいた青猫が首を傾げた。

 

「えっと。。。。あたしが、、、ルーシィ??なの・・かな??」

 

少女は頭をコテンと横に傾かせ瞬きを繰り返した。

 

「ルッルーシィ!?」

「ルーシィさん!?」

 

青猫が少女の顔を覗きこむと、その表情は困ったように、泣きそうにゆがんだ。

 

「・・・ルーシィ。お前はルーシィだ。それと、私はエルザだ。今解る事を教えてくれないか?」

「えっ。。はい。・・・えっと、多分日常の事は解るけど。。。それ以外は。。。」

「オイラの事は?」

「・・えっとぉ。。」

「馬鹿ねハッピー。自分の名まえも分からないのに、ハッピーがわかるわけないじゃない!!」

「・・・・。」

 

俯いて大きな目に涙を浮かべてしまった青猫の頭を、少女がヨシヨシと撫でた。

 

「ハッピー?あなたは、、、ハッピーね!!よろしくね!!」

 

ふんわりと、やさしく目を細めて少女が笑って見せた。

記憶がないという事は、誰よりきっと不安なのは少女であろうに。。。

青猫がたまらず少女の胸に顔を擦りつけた。

青髪の少女ウエンディと相棒の白猫シャルルも眉を顰め唇を噛みしめながらも、笑顔を作った。

 

「心配してくれるの?ハッピー?あなたはあたしの家族なのかな?ここは?」

「あい!!オイラはいつだってルーシィの傍にいるよ。仲良しなんだ!!家族って言われると、オイラ達ギルドはみんな家族だよ!!オイラは1週間の半分以上はルーシィの家にお泊りしているんだ!!ここがギルドの医務室だよ!」

「へっへぇ???」

「ちょっとハッピーそんな説明じゃ余計混乱しちゃうわよ!!もう。しょうがないわね・・・あたしはシャルル。そこのウエンディの連れよ。」

「ルーシィさん!!何でも聞いてください!!あたしはウエンディ。天空の滅竜魔導士です。」

「・・・・そうだな。一先ず自己紹介か!!オレはグレイ。グレイ・フルバスター氷の造形魔導士だ。姫さん、、、ルーシィとは、チームメイトだ。よろしくな!!」

 

ハッピーやウエンディに遅れて、部屋の隅にいたグレイが声をかけながら手を差し出した。

その手に恐る恐る、少女は手を伸ばす。

 

「えっとぉ。。ルッルーシィです?」

 

グレイの手にのせた少女の手にハッピー・シャルル・ウエンディの手が重なる。

そして、皆やさしい笑顔を少女に向けた。

 

「へへっ。皆優しいんだね。。へへっ。」

 

少女の顔から笑顔がこぼれると、その視線に入り込む様に緋色の髪が揺れた。

 

「ルーシィ。私もチームメイトだ。困ったことがあったら言ってくれ。ハッピー!!とりあえずルーシィの事は任せる。今日はもう遅いからアパートまで連れて行ってやれ!!明朝ポーシェリカさんにもう一度診てもらおう。」

「あい!!」

 

ハッピーが元気よく答えると、エルザは部屋を出て行ってしまった。

その真剣な面持ちは、少女を心配しての事なのだ。この後エルザは、彼女なりに情報を集めに行くのだろう。グレイも少女の前にしゃがみ込んでいた体を起こして、その後に続こうと立ち上がった。

エルザの背を見送り、、、少女の顔が不安にゆがんでいる。

 

「えっと。。。??」

「どうしたの?ルーシィ??」

「あっ!?やっ。。。何か・・・足りない?・・・・よう・・な。。。」

 

少女の発言に、猫2匹とウエンディは顔を見合わせた。

 

「クソ炎なら、すぐ帰ってくるから心配すんな。姫さん。」

 

グレイは、少女の金髪をクシャリと撫で、エルザに続いて扉を開けた。

 

「く・・そ・・?炎・・??」

「ああ。いつでも姫さんと一緒にいたんだ。隣に居ないと不安なんだろうよ。じゃっウエンディ・ハッピー後任した!!」

 

グレイはジャケットを脱ぎながら、扉をくぐって出て行ってしまった。

 

「えっとぉ??」

 

少女は困ったように青猫を見た。

 

「うん。もうすぐ帰ってくるよ!!すっごくルーシィの事心配していたから、きっともうすぐ」

「ねぇルーシィ。魔法の事とかは覚えているの?」

「えっ??」

「シャルル!!」

「確認しておかなきゃいけないでしょ!!」

「魔法。。。」

 

シャルルのいう事はもっともな事だった。

エルザやグレイは、それを確認しないで出て行ってしまった。

少女の記憶がないことに、よっぽど混乱しているのかもしれない。

 

少女は、倒れているのを発見された時、鍵の束を握りしめていたのだという。

お蔭で、鍵は無事だ。・・・・・獅子宮の鍵以外は。。。

だが、いつもなら呼んでもいないのに出てくる星霊達が、、、今は誰一人出てきていないのだ。何か特別な理由があるのかもしれないし、もしかしたら記憶がないことと関係しているのかもしれないのだ。

 

「えっとぉ??」

「その鍵。その鍵をつかって、ルーシィは友達を呼びだすんだ。」

「・・・・。」

 

ハッピーが指差した先に、ルーシィの鍵の束が置かれている。

少女は、その鍵の束をジーっと見つめたまま黙ってしまった。

その様子を見て、ウエンディが心配そうにその顔を覗きこんだ。

 

「ルーシィさん?大丈夫ですよ。今は魔力もあまり感じられないし、、、時間がたてば。。。」

「そうだよルーシィ。今日眠ったら明日には思い出してるかもだし!!」

「まぁ、しばらくは落ち着いて好きな事でもして、、、」

「ルーシィ。自分が好きな事とかモノとかは覚えてるの??」

「あのっ。。。本が好きです。・・・いつもどこかで本を読んで、、、えっと、、あれ?、、そこに、、、」

 

『バンッ!!』

 

結構な音を立てて、桜頭の少年が部屋に入ってきた。

 

「よう。」

「ナツー!!」「ナツさん!!」

「ほら来たわよ!!いつもあなたが本を読むのを邪魔する人が!!」

 

その姿を目にし、少女の口が勝手に動いた。

 

「・・・・ナツ。。。ナツ・ドラグニル。。。」

 

少女の目からひとすじの涙が静かに流れた。

 

「あれ??」

 

自然と伝い落ちる涙を確かめる様に少女は頬に手をあてた。彼女自身意図せず涙が流れ落ちているようだ。既に少女の視界が歪むほどの涙が、沸いては流れ落ちている。

 

「・・・大丈夫だ。ぜってぇルーシィを助けてやる!!!」

 

ナツは少女のベットに腰を掛け、白くしなやかな手を熱い武骨な手で包み込んだ。

 

「・・・・ナツ。。。」

 

そう言って、緊張の糸が切れたように少女はベットに倒れ込んで眠ってしまった。

 

「エルザとグレイは、また現地に戻って情報を集めに行った。大丈夫だから。」

 

 

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

感動の再会!?!?!

 

 

 

その日は結局ギルドで夜を明かし、朝を迎えた。

ハッピーが目を覚ますと、ベッドの中に金髪が見える。スースーと寝息も聞こえてくる。

 

昨晩一度目を覚ましたが、記憶を失くしたと言って再び眠りに落ちた少女。

ハッピーの心は不安でいっぱいだった。

普段は元気いっぱいピンと張った耳を力なく垂らし、部屋の中を見回した。

 

「あっ。。。ナツ」

 

部屋の扉を背で塞ぐように、桜頭の少年が医務室の扉に寄りかかっている。ジッと動かないさまは、眠っているのかと思ったらどうやら違うようだ。ハッピーの声にすぐに返事が来た。

 

「はよ。ハッピー。」

 

ナツの声は、すいぶん落ち着いていた。

 

「ねえナツ。どうなっちゃうんだろう??」

 

ハッピーは不安そうに大きな目を揺らしている。

 

「ハッピー。・・・大丈夫だ!!!ぜってぇルーシィは取り戻す!!」

 

ナツの力強い言葉に、ハッピーの瞳にも力が入っていく。

 

「あい!!なんかルーシィがルーシィじゃないと変な気分だけど、、、オイラ達でルーシィに思い出させてあげようね!!」

「・・・・・あぁ。」

 

ハッピーが力強く拳を作り気合を入れてみせている。

だが、それを応援するナツの表情には、どこか陰りが見える。

ハッピーに気付かれない様に、ひっそりとナツもまた、拳に力を入れた。

拳に巻かれている包帯に血が滲んでいる。

 

暫くして、少女が目を覚ました。

そして昨晩と同じ様に、記憶が無いと言っている。

ずっと心配していたギルドのメンバーに顔を見せ、ギルドで食事を済ませた。

その後、ポーシェリカの処へ連れて行ったが、やはり記憶を戻すようなクスリなど無いし、原因も思い当たらないと追い返された。

 

一先ずギルドに戻ると、仲間達がかわるがわる少女に話しかけた。

少女は愛想笑いを浮かべながらも、その一人一人にきちんと対応していた。

中でも、ルーシィの親友と呼べる小柄な少女とはやはり気が合うようで、本を片手に盛り上がっていた。

そして日が暮れると、体調がすぐれないと言って早目にルーシィの部屋に帰宅した。

 

今、ハッピーが部屋のドアを開け一番先に中に入った。

 

「ただいま~。」

 

ハッピーの声が静まり返っている部屋に響いている。

ハッピーを追うように部屋に入った少女も同じように口を開いた。

 

「ただいま~?」

 

いつもの場所にいつものルーシィの匂いがする。ナツは目を閉じ胸に手をあて、その匂いを吸い込んだ。

 

部屋の中心に立って、少女が笑いながら振り返った。

 

「素敵な部屋!」

「・・・ルーシィの部屋だよ?」

 

少女の発言にハッピーが弱々しくそう告げる。

 

「・・・そうよね。。私の部屋。。。」

 

少女は部屋の中を見渡し、胸を押さえてベッドに腰を掛けた。右の腰に無造作にぶら下げられた鍵の束が、カチャリと音を立てた。その光景をナツは黙ってみていた。

 

「ルーシィ疲れちゃった??オイラお風呂入れてくるね!!」

「そんなことないけど。でもお願いしちゃおっかな?!」

 

今日1日ギルドで過ごし、記憶は無いものの少女は、周りの環境にすぐに馴染んでいた。

ハッピーは少女の記憶がないのだと解っていながらも、いつもとは違う少女の反応を目にし、その度に耳を下げていた。寂しそうに、誰にも聞こえない様に「ルーシィ。」と何度も呟いていた。

 

少女は座ったまま腰にある鍵束を外し、ポンッとテーブルに置いた。カチャリと金属の音が響く。

 

ハッピーが風呂の支度をしに風呂場へと消えていくと、ナツは静かに少女の前まで歩み寄った。

ナツを視界に入れ、少女が視線を向けてきた。

 

「えっと。。ナツ?」

「・・・・お前誰だ?」

「えっ??」

「・・・お前誰だよ!?ルーシィをどうした。何処にやったんだよ!!」

 

ナツにはもう耐えられなかった、相棒の悲しむ顔も、友達を簡単に扱う少女の態度にも。

 

「ルーシィは何処だ!!ルーシィを返せよ!!!」

 

混乱する少女の華奢な肩を両手でつかみ、少女の体を強く揺すった。

少女は、言葉を失い顔を真っ青に染めている。

 

「ナツ!!やめてよ!!いつも通りじゃなくっても、ルーシィは、ルーシィみたいに優しい感じがするんだ!!」

「っ!!すまん。」

 

風呂場から戻ったハッピーは慌てて、ナツを止める。その大きな目には涙が滲んでいる。

 

たしかに、この少女はルーシィのようにやさしいし、明るい。コロコロと表情豊かな様子はまるで、ルーシィのようだ。一見すれば、記憶がないのだからこんな感じなのかと思ってしまうかもしれない。だが、、、ナツにはそうしても納得できなかった。だが、今は我慢しなくてはいけない。

 

だが、、、優しい奴だとぉ!!

それがどうしたというんだ!!現に今、ここにルーシィに成り変わっている奴がか!?

だが目の前で、その姿ですすり泣く姿にナツはこれ以上何も言えなくなってしまった。

ひとしきり泣き、落ち着くと少女が口を開いた。

 

「私、、、、お風呂入ってきます。」

 

少女は静かにその場を後にした。

 

 

 

 

少し戻って、金髪の少女がギルドの医務室で眠っている頃。

 

 

 

エルザが医務室を出ると、桜頭が目に入った。

カウンターの隅でポーリュシカと難しい顔を突き合わせている。

 

「ナツ!!何をやっているんだ!!」

「・・・エルザ。」

 

ナツは眉を寄せて静かにエルザの目を見た。

 

「・・・・お前もか?」

「言っておやりよ。この子もそう言うんなら頷いてやるよ。」

 

ポーリュシカの言葉に、ナツは重たい口を開いた。

 

「ルーシィじゃねえ。あいつは、、、ルーシィの形で同じ匂いでも、ルーシィじゃねえ。」

「・・・・。」

 

エルザは黙ってナツの話を聞いている。

 

「だって、おかしいだろぉ!?あいつが!ルーシィがロキを置いてくるなんて。。。」

「・・・そうだな。だが、ロキが自らこっちに来ているのかもしれん。」

「それこそロキが、意識のないルーシィを放って置く訳がねえ!!」

「確かにな。何かよっぽどの事がない限りは。。。」

「記憶を失くした上に、あの子の魔力が少なくなっているからじゃないのかい?」

 

ポーリュシカの言葉に、ナツもエルザも首を横に振った。

そして、エルザが静かに口を開いた。

 

「ロキは、自らの魔力でゲートをくぐれる星霊です。オーナーの意識が無くても。ルーシィの魔力がまだ少ない時から、そうでしたから。」

「それにっ。他の鍵だって輝いてんだ!!あそこで寝ている奴の魔力の量じゃあんなに輝かねえ。星霊の鍵はオーナーの魔力と呼吸すんだって前にルーシィが言ってた。ルーシィの魔力じゃなきゃ、あんなにきれいに輝く筈ねぇんだ。」

 

ナツは、近くの壁に拳を立てた。

納める事の出来なくなってきた苛立ちを、どうにかしようとしている様に。

 

「・・・・しかし、、、彼女はたしかにルーシィなんだぞ?」

「ああ。姿形も、魔力の質も、いつものあの子に間違いないね。」

 

ポーリュシカの言葉に、ナツは悔しそうに握った拳に力を入れた。

たしかに、、、彼女を迎えに行ったときに本人であるかの検査が行われた。それは魔力の鑑定だ。

指紋と同じで、魔導士の魔力には個人の者の証がある方法を用いると見て取れるのだ。

 

おかしな形で行方不明になっていたルーシィ。

妖精の尻尾に潜入する為に、何者かが入れ替わっているかもしれないという事も、視野に入れていた。念の為その検査の簡易キットをエルザが持って行っていたのだ。

 

「・・・私はお前の、特にルーシィに対する感は信用に値すると思っている。」

「ああ。」

 

エルザの鋭い視線にも、ナツは一歩も退く様子を見せない。そこに、医務室の方から漆黒の髪の男がのそのそと歩いてきた。

 

「まぁ、ナツの線にしても、それが薬や魔法のせいかも知んねぇだろ?まだどっちの可能性も潰すのは早すぎだろ?確かにナツのいう事にも一理あんだし。そのうちロキがひょっこり帰ってくるかもしんねえし。」

 

エルザに遅れて医務室から出てきたグレイが話に加わった。たしかにグレイのいう事も一理ある。姿形・魔力の質・匂いが一致するとすれば、外身はルーシィである可能性も捨てきれ無い。握りしめられているナツの拳から、血が滲んでいる。

 

「・・・わかったよ。ナツ。アンタにこれを預けておく。」

 

ポーリュシカは、ナツに白い包みを渡した。

 

 

 

「しかし・・・狙いは滅竜魔導士では無くて、、、星霊・・・ロキだったのか??」

 

 

 

 

 

少女が風呂から上がっても、空気は気まずいままだ。ハッピーは耳を垂れ下げたまま、しゅんと小さくなっている。その気まずい空気の中、2人と1匹は食事を済ませ床に着いた。

 

そして、、、深夜。

ナツはソファの背凭れに背を預け座ったままの姿勢で目閉じていた。いや瞼を閉じて寝たふりをしていた。

目の前のベッドの上には、大好きなルーシィが寝ているのではと錯覚を起こすほど、彼女によく似た金髪の少女が目をつぶっている。ハッピーは少女の枕元で丸まって死んだようによく眠っている。

先程まで、声を殺して泣いていたのだろうが、、、薬が効いてきたのだろう。

 

ミラが持たしてくれた夕飯を、少女が皿に取り分けてくれた。食事を口に運ぶ時、強いアルコールのような睡眠薬のような匂いが鼻をかすめた。今晩、この少女は何か行動を起こすつもりなのかもしれない。

 

ナツはポーリュシカに白い包みと共に、きつけ薬を貰っていた。

エルザが、『狙いが滅竜魔導士だという事も捨てきれ無い現状で、少女の近くにいるナツが狙われるのは必至。力のない者がナツを狙うのであれば、毒を盛られる可能性もある。そこに付け込もう。盛られた振りをして、何が目的かを掴むのだ!!』と。

食事の後、ナツは気付かれない様にその薬を口にしていた。

 

少女が静かに起き上がり、ナツの元までやってきた。

ナツの目の前で、足を止め、体を強張らせているかと思うと、気合を入れる様にギュッと服の裾を握りしめるような動きを見せた。緊張しているようだった。

そしてそっと、ナツにむかって手を伸ばしてくる。

 

ナツは危険が及ばないうちはされるがままになる事になっている。

多少傷つけられようが攫ってくれるのなら、それがルーシィへの一番の近道だとさえ思っていた。

 

桜色の髪に少女の手がやさしく振れた。少女はそのまま桜頭を撫で、頭を抱え込む様に胸に引き寄せた。優しく抱きしめているのだ。ナツの顔面は、ルーシィの姿の少女の豊満な胸に埋まっている。

 

「うっうわっ!!!」

 

ナツは思わず身を引いてしまった。その様子に少女は首を傾げた。

 

「ナツ?体が疼かない??」

 

妖しく少女が笑みを作る。

そのまま、ナツの上にまたがる様に抱きついた。

 

「ねぇ。ナツ。ナツの好きにしていいんだよ?」

 

予想していなかった現状に、驚いて思考がストップしてしまっているナツに、強引に唇が重ねられた。

 

「っ!?!?!?!なっ!!」

 

ナツは、真っ赤になりソファから転がり落ちた。

この少女自体、先程とは様子が違う。触れられた唇を庇いながら、ナツは何とか体制を整えようとする。

 

「あたし、ナツの事好きだよ?ねぇ、あたしを。。。」

 

そう言って、少女はナツに覆いかぶさってきた。その姿は大好きな少女のもので、大好きな少女の匂いがする。。。胸にあてられた2つの弾力と甘い匂いに、ナツの頭はくらくらしてくる。

 

ナツは、溢れてきそうな衝動を抑えようとギュと閉じた瞼を閉じた。瞼の裏で、いつものルーシィの笑顔が咲いた。

 

・・・・これがルーシィか??・・・そんな訳ねえ!!!

たしかに自分の大好きな匂いがする。・・・・・・だが、それだけじゃねえ何か。。。

ずっと引っかかっていたものが見えた気がした。

ルーシィの匂いは本物でも、思考が違う。何よりルーシィの匂いに隠れる様に違う人間の匂いが隠れていたんだ。

 

いつの間にか押し倒され、自分の上に少女がまたがっている。にっこりほほ笑んで、ナツの服を肌蹴させた。

 

「おっおい!?!?何やって!!!」

 

ナツは慌てて体を起こし、その場から後ずさった。そこに少女が悲しそうに瞳を揺らすのが目に入った。よく見れば、少女の方は小刻みに震えている。

 

「ナツ?・・・・あたしが嫌い??」

 

目を潤ませ、ルーシィの顔で上目遣いで見つめられてはナツも堪らない。

その一瞬の戸惑いの隙に、にじり寄ってきた少女がナツの腹部にのしかかった。

 

「えっ!?あっ!?!?いあっ///やめっ!!」

 

肌蹴た服の間から、鍛え上げた胸板に金髪の少女が口づける。

やばい!ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!

違うって分かってんのに、、、身体に力が入んねぇ。。。

ナツはズルズルと後ろに下がって、逃れる事しか出来ない。

腰に力が入らないのだ。

 

「おっおおい!!?ちょっ!?おお落ち着け!!」

 

とうとう背を壁に追い込まれてしまったナツは、少女の身体を引きはがそうとその華奢な肩に手をかけた。すると少女はその手を掴んで、ふくよかな胸に持っていった。ナツの手は、たわわな弾力の中に埋められている。

 

「ナツ。。。さわって?」

 

顔を赤く染め、目を潤ませてルーシィの顔がせまってくる。全身の毛穴がひらき、背筋がゾクゾクと泡立つ。少女の盛ったクスリには、催淫剤のようなモノも含まれていたのかもしれない。そして、少女もそれを口にしているのかもしれない。少女が立ち登ってくる匂いに判っているのに堪らない激情に襲われるが、ナツは何とか正気を保とうとしている。

 

少女が、目の前で瞼を下ろした。唇に、少女の息遣いを感じる。

 

「くっそぉ!!ルーシィ!!」

 

ナツは目の前の少女を抱きしめた。基、羽交い絞めにした。

 

「ふざけんな!!・・・いいかげんにしろ!!ルーシィの身体で何やってんだ!!・・・頼む。・・・・・・・・頼む!!ルーシィを返してくれ。。。」

 

勢いで叫んだ声も、最後には擦れて小さくなった。ナツの喉から出たとは思えないほどの、掠れて弱った声。

ナツの怒鳴り声に気が付いて体を起こしたハッピーは、黙ってそれを見つめている。

目には大粒の涙をたたえて。

 

緩んだナツの拘束から逃れ、少女は言葉を失いしばらくナツを見ていた。そして感情を押し込む様に瞼を閉じ、強い眼差しをナツに向けた。

 

「頼む。教えてくれ!!ルーシィは何処にいるんだ?」

「なぜ判るんです?・・・そんなにルーシィが大事ですか?」

 

ナツは頷き、その少女を見つめかえした。

 

「ルーシィさんを返してほしかったら、、、、あたしを。。。抱いてください。そして、子を成してください。」

 

そう言って少女がまたのナツに覆いかぶさってきた。ナツはとっさに自分の唇を隠したが、押付けてくる唇にナツも唇を合わせた。熱い舌を少女の口に割入れ、少女に口移しで何かを飲み込ませた。

 

「・・・ワリィな。。。おれ、、、、ルーシィじゃなきゃ無理だから。。。」

 

ナツは口を拭った。少女はその場で口を押えてうずくまっている。そこにハッピーが毛布を掴んで飛んできた。

 

「ねぇ、偽ルーシィ。ルーシィを返してよ。ルーシィはナツと違って、頭がいいから困ったことがあるなら一緒に考えて助けてくれるよ?みんなで解決策を考えようよ!!何か・・・何か事情があるんでしょ??」

「・・・そうだな。ってか服着てくれ///そんで、本当のこと言えよ。」

 

既に下着姿だった少女の肩に、ハッピーが毛布を掛けた。

少女は諦めたように息を吐き、ナツに向き直った。

 

「では、、、貴方の魔力をください。一生を霧の里で、太古の霧を守ってください!!」

 

少女はその場に泣き崩れた。よっぽど無理をしていたのかもしれない、ポロポロと目から涙を流し、震える肩を自分の腕で摩っている。そして、、ゆっくりを口を開いた。

 

 

 

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ポーリュシカに貰ったのは自白剤みたいなもの。

ポーリュシカさん特製なもので、でも嘘をついていなかったら精神を壊しかねないため、ポーリュシカもクスリを渡すのを躊躇った。という裏設定ありです。しかし口移し!!あのナツが!!キャラ崩壊も甚だしいですね( ;∀;) 

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