2014年10月19日
ナポリタン
「よっ……と」
フライパンから、オレンジ色がフワッと浮いて、空中でくるっとまわる。そして空気を含んで、またフライパンの中に戻ってきた。
「よしっ。ハッピー!お皿~」
「あいさ~!!」
キッチンからの楽しげな声に呼ばれ、青猫のハッピーは食器棚から出されていた皿を1枚ルーシィの手に渡した。そこに一掬いされた、オレンジ色のパスタが皿に盛られる。
「あい!」
たった今、パスタが盛られたその皿を脇に置いて、ルーシィは、また手渡された皿に次の一掬いを盛った。
「はい。ハッピーとあたしの分ねっ」
「あいさ~」
綺麗に盛られたオレンジ色のパスタからは、食欲をそそられるいい香りがしてくる。その2つの皿を受け取って、ハッピーは桜頭の少年の待つテーブルに運んだ。
「ナ~ツ! これはオイラと、ルーシィのだから食べちゃダメだよ!!」
「わかってんよ……くぅぅ」
ハッピーがすかさずナツにくぎを刺すと、言われた方のナツは目を見開いて、お腹をきゅるきゅるとならすと息を大きく吐き出した。そして、背を丸めて自分の腹らを擦る。
「はぁ……腹減った。ルーシィ!! まだかよ~!! 腹の皮と背中の皮がくっついちまうっ」
腹が減っては何とやら――、既に力が出ない程ナツは、腹が減ってしまっているのだろう。声にすら力が入っていない。
「もう! すぐれきるからっ!!」
キッチンからよくとおる声が返ってくる。そのきれいなソプラノの持ち主は、フライパンを最後の一振りしていた。先程より少し赤く染まったオレンジが、宙を回ってひっくり返る。だんだんと、少しスパイシーは香りもしてくる。
「ハッピー! ナツのお皿とって~!!」
「あいさ~!!」
そのきれいなソプラノに再び呼ばれ、青猫は先程より一回り大きな皿を持って飛んでいった。その皿にこんもりと、赤みがかかったオレンジ色のパスタが盛り付けられた。
「ねぇルーシィ……何でナツのだけ違う色なのぉ?」
ハッピーの問いかけに、ルーシィはニッコリと笑う。
「だって、ナツは辛いのが好きでしょ? それに……」
ルーシィはさも当たり前の様に、ナツと呼ばれた桜頭の少年の好みを言ってのけた。
ハッピーが無事ナツの皿をテーブルに運んでくると、遅れてルーシィがフォークを3つ手に持ちテーブルに着いた。それぞれの皿の前にフォークを置くと、ルーシィはにっこりとほほ笑んだ。ナツは、既に口の中に溜まった唾液で、ゴクンと喉を鳴らした。
「フフッ。今日のナポリタンはねっ。お野菜たっぷりよ~!!」
「うげぇ」
「あいっ」
「……2人とも、ピーマン残しちゃダメだかんね!?」
眉間に皺をよせながら、ナツはフォークを握った。そして、グリーンの野菜を一突きして口につっこんだ。
それを見て、ルーシィは嬉しそうに微笑んだ。
『好きな味付けなら、いやなものでも我慢して食べられるでしょ?』
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ルーシィの作ってくれるもんなら、残さず食べるナツくんであった。ってかピーマンくらい食べられるってww