2016.10.~#フォロワーさんの絵から小説を書かせていただく ぷっちょさんのナツルちゃんから妄想させていただきましたっ♪
その笑顔がみたかったんだ
ギルド再結成の夜。
再会に湧き上がる仲間達。まだ何もない広場になっている妖精の尻尾があった場所に、ギルドマークの入った旗だけが、揺らめいている。
再会に喜び、各々の1年間を語り合い、1年間の長さに、短さに話は尽きなかった。
酒がまわり、ポツリポツリと騒いでいた者も減り、その場で眠りこける者がちらほらでてきた頃、ルーシィは1人仲間達の輪から抜け出した。
1年前はギルドの裏口を出て少し歩いた処にあった、天井が抜けた洞窟のような場所を訪れていた。月の光が湖面に乱反射して洞窟の中が光り輝くルーシィのお気に入りの場所。
ふと見上げた夜空に大きな月が輝いているのを目に映すと、居ても立っても居られず、1人で来てしまったのだ。
「やっぱり…」
どこまでも深く碧く、そして月の光を浴びて湖面が輝く様は、言葉の表現では足りないほど、きれいだ。
――綺麗すぎて……今は少し怖いな……
己の肩を抱きながらルーシィはそこに座り込んだ。
再会を果たした仲間達は何処までも暖かくて、やはりかけがえのない存在だ。それは変わることのない事実。
すべての事柄が片付いたわけではないが、今はただ再会を喜び合った。
――みんな楽しそうだったなっ
――それに、みんな元気だった
見上げた空は、何処までも碧い。ルーシィは、胸に大きく息を吸い込んだ。
月の輝く星空を眺めた視界に、入り込んでくる見慣れた桜色。
「……ここ、いいか?」
「んっ」
影になってナツの表情はあまり見えなかった。ナツは、ルーシィと背合わせで座り込んだ。ピタリとくっついた背中が暖かくて、優しい。
「…ナツ…また家族が一緒になってうれしいねっ」
「当たり前だろっ」
ルーシィの背中で、体温がもぞもぞと動く。フゥッと吐き出された暖かい息が夜空に吸い込まれていく。
ナツの右腕に巻かれたボロボロの包帯。再会してからルーシィはずっと気になっていた。
「調子悪いの……?」
「んあ? いぁ全然? なんでもねえよっ」
「そっか……ナツだもんね…」
「なんだ? ルーシィこそ…なんかあったんじゃねぇの?」
ナツの声が、静かな夜空に響く。ナツの背でルーシィはふるふると頭を横に振った。
「そっそんなこと……うん…なんだろ…? 恐いんだよね。ギルド復活!! って嬉しいばずなのに……胸の奥がざわざわして……落ち着かないのっ」
「オレだってテンション上がってんぞ?」
言いよどむルーシィに対して、ナツの声はポンポンと返ってくる。
「ううん。そうじゃない…そうじゃないんだよ…ナツ…」
「ん?」
いつになく優しいナツの声が返ってきた。
「ねぇ……もう、どこにもいかないよね? やっもちろん依頼とかはしょうがないとして…」
「んだ? 当たり前じゃねえかっ」
背後から暖かい手がルーシィの手に添えられた。ひんやりとしたルーシィの手が火竜の熱に暖められていく。
「そんな簡単に言わないでよっ」
「なんでだ? 簡単な話だろっ 邪魔する奴らがいたら、全部ぶっ飛ばせばいいんだっ」
「そうだけど……そうなんだけど、何か胸騒ぎがしてならないの……ナツ、本当に体大丈夫なのよね?」
ナツと再会してから、ルーシィの胸の奥にはずっと不安があった。強くなりすぎているナツ。その笑顔は変わらないようだけれど、既に自分との間に大きな差ができている事は明らかだった。
その強さをもって、ナツはどこへ行くというのだろう? またナツに置いていかれるかもしれないという恐怖が拭いきれない。
ナツは右腕に巻かれた包帯に触れた。
「なんともねぇよっ強い味方がいんだっ」
寄りかかり合った背中に、すこし体重をかけるナツ。ルーシィの背を押しながら、夜空を見上げカッカッカッカと笑いだした。
「今日のルーシィ、なんか心配性だなっ」
「そりゃ……だって…」
シュンと縮こまるルーシィの背中。そこに、ナツはお構いなしに体重を預けた。背中から、ナツの熱がルーシィを温めていく。
「何があったって、オレが全部ぶっ飛ばしてやるっ!! 約束してやるから安心していいぞっ」
「オレが全部って……この先何があるかわからないのに、そんなキセキみたいな話……約束なんかしないでよっ」
「あぁそうだな。わかんねぇことばっかりだよな……けど、オレ1人じゃ無理だとしても、オレ達は1人じゃねぇ……そうだろ?」
今まで何を言われても、頭を掠める否定的な考えしかでてこなかった。今はナツの声が、頭にすんなりと響いて飲み込まれていく。
「……うんっ」
「なっ大丈夫だろっ! オレ達が集まればキセキつーのか? そんなん簡単だっ」
フワリと背中が軽くなった。顔を上げると、まっすぐと見つめてくるつり目が猫のように弧を描いた。ふわりと首にナツのマフラーが、ナツの手によって巻かれた。
――暖かい…
「ルーシィちゃんと笑えっ お前ずっと寂しそうに笑ってんだろっ……だから、腹ん中からしっかり笑えっ!!」
感情が高まって、目頭が熱くなってくるルーシィ。覗き込んでくるナツに向かって、視線を持ち上げた。その瞬間、涙が流れ落ちる。
「おわっ……んだルーシィ……笑いながら泣くなんて、器用な奴だなっ」
涙とは裏腹に、その顔は希望に満ちている。ルーシィの優しい、愛おしい笑顔。
――そうだ……あたし達は一人じゃない
――そんな事も忘れてたなんて……
――あたしには……皆が……、ナツがいるっ
傍らに座り込んだナツの背にもう一度背中を預けなおすと、ポロポロと流れ落ちてくるあったかい涙。
「まだ……泣いてんのかっ」
振り向きもしないで、ナツはスンと鼻を鳴らした。ルーシィの湿った匂いが鼻を掠めている。
「…泣いてないもん」
「肩震えてっけど?」
グイッとナツが体重をかけてルーシィの背を押す。
「ムッ武者震いよっ」
「カッカッカッカッ……そうかよっ」
迷いも、意気地のなかった自分への後悔も、大切な人へ抱いてしまった不安も、すべてナツが移してくれる熱に溶けて流れ出していく。
「そうだもん……ねぇナツ」
「あん?」
1年前にぽっかりと空いてしまった胸の大きな穴が、ナツの熱を帯びて修復されていく。
「約束しよっ」
「ん?」
合わさった背が、ナツの熱がルーシィを温めてくれる。
「何があっても、ここに帰ってこようね」
「んなの、当たり前だろっ」
桜色のギルドマークの入ったルーシィの右手が、ナツの目の前に現れた。
「ねっ約束っ」
小指を伸ばすその細い手。伸ばされた小指に、ナツは自分の小指を絡ませた。
「…あぁ約束だなっ」
絡まった小指にルーシィが力を入れると、その手は小指ごと絡み取られてナツにしっかりと握り返されてしまった。
「もうっ……星霊魔導士との約束は、絶対破っちゃダメなんだからねっ」
今度はルーシィがグイッと地面を蹴ってナツの背中を押す。
「あぁ…わかってるってのっ」
瞬間、押したはずのナツの背は消え、ルーシィの身体はひっくり返る前にナツの腕に包まれた。
「あわわわっ」
ぷくりと赤く染まったルーシィの頬がふくれた。
2人の目と目が合うと、そろって笑いだした。
――腹の底から笑った顔――
それは、――ナツが見たいと願った、ルーシィの笑顔――
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ナツが右腕に包帯巻いてる期間中の出来事~って考えて、ギルド再結成が浮かびました。
きれいなイラストに持ってかれて、ちょっとシリアスになっちゃったかも( ̄▽ ̄;)
お楽しみいただけたら幸いですっ!!
ぷっちょさんありがとう~!!!!
ぷっちょさんのイメージの沿うか……ゴメンナサイですが、楽しんで書かせていただきましたっ!!
自分得です!!ありがとうございまっすっ!!