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2014年6月10日~

秘密結社『妖精の尻尾』シリーズ  

処女宮の星霊『バルゴ②』

 

 

「言ってみれば、随分簡単な仕事よね!!」

「・・・・うっぷぅ。うぇぇ。。」

「・・・・。」

「フフフッ。まぁなんでもいいや!!頑張らなきゃねっ」

「あい。」

 

シロツメの街に向かう電車の中、運よくボックス席に陣取れたルーシィとハッピーは、窓から吹き込む風に目を細めていた。

その向かいの席でナツは、ぐったりと背凭れに体を預けている。

 

「ってか、ナツって乗り物弱いのね。。。可愛そうなくらい。」

「あい!!ナツと書いて、乗り物酔いと読みます。。。。あっ!ルーシィ!!ナツは置いといて、伝えておかなきゃいけない事があったんだ!!」

「ん?なぁに??」

「うん。。。」

 

ハッピーはルーシィの肩に乗り耳元でコソコソと話をしていた。

マスターから直々に依頼を請けた件についてだ。どうせ説明したところで、ナツは暴れるだけだ。ナツのやる事は変わらない。が、ルーシィだけにはキチンと伝えておいた方が賢明だ。そうすれば、協力も期待できる。

 

ルーシィにはエバルーが悪い奴で、その証拠をついでに集めてくるように言われていると伝えた。屋敷に潜入できたら別行動になるけど、心配しない様にとも。

 

「あとねっルーシィ!!ルーシィは大丈夫だと思うけど、魔法をけっして見られないでね?・・・ナツをよろしくね!!」

 

電車を降りたら真っ直ぐ依頼主の元へ、と思っていたがとりあえずナツのお腹の虫の音を抑えるために食事の出来るところへ向かった。

 

その店は制服がなんとのタイムリーで可愛い服だった。ナツとハッピーは、ルーシィに見られない様にニヤリと口角を上げていた。ルーシィはそんなことはお構いなしにと、可愛い制服ね~とにこやかに眺めていた。

 

食事を終え、会計をすまし店を出たところでルーシィは突然!!背後から口を押えられ、暗がりに連れ込まれた!!あんまりにびっくりして抵抗を忘れていたルーシィだが、どうやら服を脱がされそうになっていることに気付き、慌ててその人物を殴り飛ばした。

 

「わわっ!!ふぎゃぁ!!・・・・酷いやルーシィ!!」

 

「・・・・・・・・・へっ??」

 

そこには、メイドのコスチュームを手に持って構えるナツと、ルーシィの上着を脱がせようとしていたハッピーがいた。

 

「怒りしか浮かばないんだけど・・・なに?」

 

ルーシィの冷たい眼差しがナツとハッピーと貫いた。途端、シュンっと小さくなるナツとハッピー。刺さってくるルーイィの視線から、目を泳がせている。

 

「ぁぃ。。。」

「ぃぁ。。。」

 

ルーシィの怒った様子に慌てて、視線を泳がせたナツとハッピーだが、その後静かになったルーシィを再び見ると、そこには黒い笑みを浮かべた金髪の少女がいた。

 

少女の手には、どこから取り出したのかメイド服と何かの本が。。。

 

「あたしもね?ここの制服いいなぁって思ったのよねぇ~!!」

「へっへぇ。。。」「あっあい。。。」

 

ルーシィの気迫に、ナツはたじろぐとズルズルと後ろに下がった。

 

「ハッピーも協力してくれるよね?」

 

ルーシィが、可愛く笑ってハッピーと見た。ハッピーは理解した。ここは逆らうべきではないと。。。ナツは「裏切り者~」とハッピーを睨み付けたが、ハッピーは今はそれが見えない事にした。

今にも逃げ出そうとしていたナツは、あえ無くハッピーに捕まえられてしまった。

 

「おいルーシィ!!!募集してるメイドは、金髪だぞ!!」

「フフフっ!大丈夫よ~。ヘアアレンジ用のカラーズがあるから!」

「クッソ。。。なんで俺が。。。」

 

だが、ルーシィがにっこり笑ってメイド服を持って詰め寄ってくる。

その微笑みに、ナツの訴えは届きそうにないと肩を落とした。

 

 

「フフフッ。よく似合うわよ?ナツ子ちゃん♡」

「プフフフフッ。ナツってば、金髪も似合うね!!」

 

裏路地で無理やり着替えさせられ、そこから同じくメイド服に着替えたルーシィに引きずられながらナツは、依頼主の家に連れていかれた。

依頼主はナツとルーシィの格好に、面食らっていたがそれが作戦だと気付くと一応・・・笑ってくれた。妙に肩幅があり筋肉質でなぜか首にマフラーを巻いたメイドと、その肩に青い猫。そして、やたらスタイルの良いメイドがエバルー邸に向けて足を進めた。

 

門前に付くと、インターホンを押して2人は仲良くそこで待っていた。

・・・・。

暫くすると、門が開いた。どうやら、中に入るように促されているようだった。

その場になるとルーシィは急に緊張が増し、そこにあったナツの腕に自分の腕を絡めた。

 

「ねぇ。。。ナツ子。。。なんか緊張しちゃうね!!」

「ん?んぅぁ??あ?あぁ///」

「ニャーニャニャニャー(プフフッ。ナツってば。。。プフフフッ。)」

 

急に腕を組まれ、その腕にルーシィの柔らかいものが押し当てられてしまった。

ナツは意識がそこに集中しないように、目線を泳がせ、建物を眺めながら前へ進んでいたった。ハッピーもその肩に乗っている。

 

建物の前に何処からか突然ゴリラのようなメイドが現れ、ナツとルーシィを睨み付けた。

ルーシィが慌てて、口を動かした。

 

「あっあのっ!!メイド募集の・・・」

 

するとメイドゴリラの肩から、へんてこな体系・へんてこな髪形の男が現れ、ルーシィとナツを足先から頭へ、頭から足先へと舐めまわす様に視線をめぐらせた。

ルーシィもナツも、いや~な汗を額から流し全身鳥肌に覆われながら、それに耐えた。非常に気持ち悪いのだ。。。乗り物に乗っていないのに、ナツは酔ってしまったように感じていた。

 

「不採用!!ブスはいらん!!」

 

非常に気持ち悪い、不細工な男にブスと言い切られ、放心状態のままのルーシィは、ナツと共に屋敷の外に投げ捨てられた。

 

「・・・ぶ・・す?ねぇ・・・・」

 

ルーシィは、半分放心したまま、ナツの服の袖を引っ張った。

 

「あたし・・・・って・・・ブス・・・??」

「はぁ!?そっそんなん。人それぞれなんじゃねえの??」

「ねぇ!!ナツは?ナツもあたし・・・ブスだと思う??」

「はぁ??いあっ!!・・・そっそんな訳は。。。。ねえと思うぞ///」

 

ルーシィの懇願するような目に涙を溜め上目づかいで詰め寄ってくる姿に、ナツはからかうのを忘れてツイぽロっと言ってしまった。

そう言った直後自分で口を押えたが、ナツが焦るほどルーシィはその発言に反応を示さなかった。人に聞いておいて、何やらブツブツと何か呟き、自分で自分を納得させている。

 

「・・・・そうよそうよ!!あいつがおかしいのよ!!大体何!?美女しか雇わないとか言って、美女ぞろいのメイドとか言って、美女なんて一人もいなかったじゃない!!あいつの美的感覚がいかれてるんだわ!!そうよ!!そうよ!!そうに決まってるんだから!!ねっ!!ハッピー!!って・・・ハッピーは??」

 

ようやく周りに目を向けたルーシィは、青猫の姿が見えない事に気が着いた。

ナツはルーシィの一人劇をチラチラと見ながら、さっさと着替えようと、とりあえずメイド服を脱ぎ捨てていた。そして、カラーズの書に手を置き、ポンと煙に包まれ金髪になっていた髪が桜色に見事に戻した。

 

「ハッピー?先いったろ。とっくに!!」

「うぇ??って!!ナツ何脱いでんの??って、腹筋すごっ!!」

「あ///?べっべつに普通だろ・・・?」

「えぇ!!これが普通なの??男の人って!!」

「え?あっ。いあ。オレは鍛えてんけども。。。」

「そうよねぇ。だってきれいに割れてるもんねぇ。」

 

自然と白く細い指が伸びてきて、ナツの腹筋に触れた。

 

「おわっ///」

「へっ??あっ!!ごめん///」

 

妙な空気を造りだし、ルーシィは恥ずかしそうに笑い、ナツもこの空気をどうしたものかと、頬を搔いていた。

 

「うっし!!じゃぁ、作戦Tに変更だな!!」

「T??ってあたしも着替える!!」

 

ルーシィは、近くの建物の陰に隠れ、瞬く間に着替えた。

とは言っても、メイド服を脱いだだけで普段着のキャミとミニスカート姿なのだが。

 

「・・・できたかぁ?」

「うん!!」

「よし!!突撃だぁ!!!」

「って、静かにしなさい!!Tって突撃のTなのね。。。ハハッ」

 

きっとハッピーは、マスターに頼まれた仕事をしているのだろ。

そうであれば、こちらが目立って注意を引く必要もあるのだが、、、魔法を一般人に目撃されるわけにはいかないのだ。どうするかとルーシィが思案しているうちに、ナツは徐にルーシィを肩に担ぎ、高い塀をジャンプで乗り越えた。

 

突然の事に、ルーシィはギュッとナツにしがみついた。そのまま屋敷の裏手に回り込み、物置らしい部屋の窓ガラスをナツの熱で溶かして鍵を開け侵入した。

セキュリティーが作動するかとルーシィは内心ヒヤヒッヤしていたが、何のアクションも起きなかった。使用人やメイドが沢山いる屋敷では、昼間っからそうそうセキュリティーなどかけていられないのかもしれない。

 

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

ナツのメイド服姿。。。そして金髪。・・・結構いけそうじゃない?

段々キャラ固定してきたかも!!天然鈍感ルーちゃんと、結構照れるナツ。ムフフ自分得ww

 

忍び込んだ部屋は、どうやら物置のようだった。変な趣味のものがそこかしこに置かれている。ナツが面白そうに手に取るものは不気味なものばかりで、ルーシィは引きつった笑みを見せていた。

 

「い~い?ナツ。」

「あ?」

「まだ、目立っちゃダメよ?本を見つけるのが先決よ!!」

「はぁ?ルーシィが仕切んのかよ!?」

「声大きい!!しー!しー!!」

 

思いのほかナツの声が大きく響き、ルーシィは慌ててナツの口を手で塞いだ。その上顔を近づけて、ナツの耳元で「しー!!」と連呼してくる。

ルーシィの吐き出す息が耳に掛かり、ナツは胸が熱くなりそこが 何だかくすぐったい感じがしていた。

その上近距離なので、いつもよりも強く彼女の匂いが鼻をかすめ、なんだか胸がドキドキもしてくる。

 

(・・・オレ。。。。ルーシィの匂い好きなんだな~。なんかワクワクするのに安心するんだよな。)

 

ナツがそれ以上喋っていないのに気が付くと、ルーシィはナツの口にあてていた手を放した。

 

「もう。しっかりしてよね!!先輩!!」

「ぬっ!?先輩??」

「先輩でしょ?本を見つけたら多少騒いでもいいけど、絶対顔とか見られないようにしなきゃね!!」

「あ?・・・何でだ??」

「はぁ?ナツって。。。」

「あん?」

「・・・なんでもない。カメラとかで証拠撮られてたら困るでしょ?これ一応依頼だけど、、、不法侵入と窃盗よ?犯罪なんだから!!ねっ!!」

 

そう言ったルーシィは何かを思いついたようで、ナツのマフラーを頭にまきつけた。

 

「ほらっこれでいいじゃない!!忍者みたいよ?」クスクス

「忍者かぁ!?ちょっと楽しくなってきたぞ!!つーか、ルーシィどうすんだ?ニンニン!!」

「えっ!!(ギクッ。。。)あっあたしはほらっ!!」

 

実は、ルーシィはカメラに顔が映らない様になっているのだ。街中の監視カメラなどに映らないために、映像などに対して個人を認識させない魔法がかかっているピアスをしているのだ。映ってしまえば連れ戻される可能性があるから。。。そのピアスのおかげで、家出していてもまだ連れ戻されないでいるのだ。

ジーと純粋な視線を向けてくるナツにむかって、誤魔化すことが出来ないと、ルーシィは眉を下げた。

 

「詳しくは後で言うけど、、、このピアスね?映像とか写真に個人を認識させない効果があるの。(家を出る時、どうしても必要で手に入れた貴重なものなんだよ。。。)ハハハッ」

 

これ以上は突っ込まれたくはなかった。

自分は家出少女だ。詳しい事情も聞かず妖精の尻尾に置いてもらってはいるが、自分がここに居るのだとバレてしまったら、、、、見つかってしまったらと思うと、心臓が握られた様に心がズキンと苦しくなった。

 

「へぇ。便利だな!!じゃっ行くか!!」

 

ナツは何も気にすることなく、ルーシィに歯を見せて笑うと物置部屋の扉を内側から開けた。

 

(フフッ!!ナツのその笑顔に、いつも心を掬われるきがする。

眩しくってまるで太陽ね!!本当に闇を払ってくれるみたい。不思議な子だなっ。ナツって!)

 

フフフッとなぜかご機嫌な様子になったルーシィを目の端にとらえ、ナツは次々に屋敷の扉を開け室内を確認していく。そして、ホールに差し掛かったところで、突然ゴリラメイドが現れた。

 

「「「「侵入者発見!!」」」」

 

メイドゴリラが、飛び出して来たまま突進してくる。そしてなぜか、その目が光っている。メイドゴリラ以外の不思議な感じのメイド達もほうきを持って向かってくる。

 

「おおおおぉりゃぁぁあぁ!!!」

 

ナツが咄嗟に炎を纏った蹴りでメイドゴリラを薙ぎ払った。ふっとばされたメイドゴリラに潰されるように、他のメイド達も動きを失くした。

 

ルーシィはナツの炎に一瞬焦ったが、メイドは皆その場に倒れている。

 

(炎が着いたのは一瞬だ。倒れる寸前に見たんだ。。。多分平気だろう。。。

というか、、、、あのメイドの動きも、、、なにかおかしいような。

そう言えはエバルーは魔導士だとも言っていし、自分の近くに魔導士を置いていてもおかしくはないかも。

もっと慎重に動いた方がいいのかもしれないな。)

 

ルーシィは気を引き締めなおした。

その脇でナツは、額に掻いた汗を拭いながら、まだ忍者の真似事をしなら、壁にくっついている。その様子に、密かに笑みを浮かべ、ルーシィはナツの腕を握った。

 

「まだ見つかる訳には、いかんでござる!!ニンニン。」

「ナツ!!すぐ人が集まってくるわ!!こっち!!!」

 

バタバタと、数人の走る足音がする。

ルーシィが開けた扉に、ナツはルーシィの手を引っ張って飛び込んだ。その勢いで扉がパタンと閉まった。真っ暗な視界。狭い空間だ。四方壁に挟まれているようだ。

 

「やだっ。ここ部屋じゃないわね。」

「あぁ。用具入れか何かだな。。。」

 

ナツは探るように暗がりに手を伸ばした。

ヒンヤリとした壁の感触が手に伝わってくる。そのまま手を這わせると柔らかいものに触れた。ふわっとした感触には覚えがある・・・ような??

 

「やっ!!ちょっと。。。どこ触って・・・やんっ」

「ふへっ!?!?(/////!?!?)」

 

ナツは素早く手をひっこめた。が、まだルーシィの身じろぎを感じる。

 

「んっ。くすぐったいってば!!やめっ!!」

「!?!?!?」

 

「にゃ~ん」

 

ナツが焦って扉を開けると、ルーシィの胸に青猫の姿が。。。

目を三日月型に歪め、可笑しそうに笑っている。どうやら、ナツはハッピーの腹辺りをさわっていたようだ。。。

 

「もう!!ハッピー。悪戯しないの!!」

 

くすぐったさに真っ赤になった顔で、ルーシィがハッピーの髭を引っ張っている。

・・・・どうやら、ルーシィはハッピーの存在に気付いていたようだ。

 

「にゃ~にゃ~にゃ~(ナツってば、1人で焦っちゃってどうしたのお?)」

「・・・・うるせぇ。」

 

滅竜魔導士がなさけねえ。。。屋敷の奴らに気付かれない様にと、魔力を押さえているからって、こんなに五感が鈍るほど抑えてしまっていたとは、、、自分に呆れてくる。ナツは小さく息をはき出し、気合を入れなおした。

 

「ハッピー。そっちの守備は?どうだった??」

「あい。こっちもあとは書庫だけだよ!!」

 

ルーシィはハッピーの顔を覗きこんだ。

一仕事終えたハッピーは、胸を張って自分の背負っている風呂敷をルーシィに見せた。

どうやらその中に、証拠とやらを押さえてきたのだろう。ルーシィはよくやったと、ハッピーの頭を撫でてやった。

 

「んで?書庫の場所は分かってんのか?」

「あい。この隣・・・・なんだけど・・・なんか急に手薄だね?」

「・・・確かに、・・・でもここはとりあえず目的のモノ探しちゃいましょ!!」

「うしっ!!」

 

先程近づいていた足音は、こちらに来る前に止まってしまった。そして、散り散りにばらけていた。何かあるのかもしれないが、今がチャンスでもあるのだ。

ナツ、ルーシィ、そしてハッピーは、揃って書庫に入っていった。

 

その書庫は、ルーシィが想像していたよりもずっと立派なもので、本好きのルーシィからしても、こんなに読みきれ無いだろうと面食らってしまうほどの本が並べられていた。

それぞれが別れて、並んでいる本の背表紙に目を通していく。その作業はどれだけの時間がかかるのだろうかと、ルーシィが肩を落とした時だった。

 

「おっ。金色の本、発っけ~ん!!!!」

「あい!!超派手だね!!ナツっ」

「・・・もうあんた達少しは仕事を….。って!!!!それじゃない!!『日の出』」

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

やっと本発見。遊びすぎ!?!?moが・・・(笑)

0613

 

 

「それ!!!日の出(デイ・ブレイク)!!」

「こんな簡単に見つかるなんてなっ!!」

「見つかったー!!」

 

ルーシィは目を輝かせて、飛び跳ねた。 その動きに合わせて、フワッと金髪と短いスカートが揺れた。ナツとハッピーも簡単だったと、嬉しそうにしている。

すると、本に視線を向けたルーシィの笑顔が固まった。1点を見つめたまま。

 

「これっ!!ケム・ザレオンじゃない!!」

「ケム・・・クジャラ??」

「ちっ違うわよ!!あたしこの人の書く本の大ファンなの!!冒険小説がたまんないのよ~!!って、これ未発表作!?!?わぁぁぁ!!これ、、、あたし欲しい!!」

「ルーシィ。。。破棄するのが依頼だよぉ?」

「そーだぞ!!ルーシィ!!」

 

ナツとハッピーのジトーっと見つめてくる眼差しに、ルーシィは言葉を詰まらせるが、、、やはり諦めきれ無い。

 

「破棄したことにして、あたしに頂戴!!!」

「ルーシィ駄目だよ!」

「わ~ん!!・・・・わかってるわよ!!ならっ!!せめて読ませて!!」

「はぁ!?!?おまつ!!ここどこだと。。。ってもう読でんし」

 

欲しい欲しいと喚いていい訳が無いのは、ルーシィにも分かっているが、諦めきれない

ルーシィはその場に正座して、本を開いていた。 ナツがため息をついたその瞬間、部屋が揺れ、床から黒い塊が飛びだしてきた。

 

「ボヨヨヨヨ。貴様等の狙いは、そんなくだらん本だったとはなぁ!!そんなもん、何が目的だ!?」

 

屋敷の主、エバルー自ら出てきたのだ。

 

「何がって言われて。簡単に答える訳ないじゃない!!」

「あ?その本燃やすんだよ!!依頼はこの本の破棄だからな!!」

「ってさっそ、くばらすなぁぁぁ!!」

「ぷくっくくくくっ」

 

ビシィっと、ルーシィのつっこみが炸裂した。

ハッピーの目が輝き、ナツはピクリと眉を動かした。ほのかに、広角がもちあがっている。

 

「いいからルーシィ、それ寄こせ!!燃やす!!」

「ちょっ!!ダメだってば!!ジー。。」

 

言い争いに参加しながらも、ナツに背を向け本を庇いながらも、ルーシィの目は本から離れてはいない。 随分器用な読み方だ。。。

 

「ルーシィ!!!仕事だぞ!!」

「うぐっ。。。だってぇ!!!」

 

気が付くといつの間にやらエルバーの後ろには、いかにも用心棒とみられる男の2人組が立っている。ルーシィは思い切って叫んでみた。その視線は、まだ文字を追っている。

 

「!!くだらないなら要らないでしょ?譲ってよ!!」

「・・・フン!!吾輩のモノは誰にもやらん!!!」

「!?!?・・・なんてケチな。。。」

 

ルーシィが本から顔を上げて、白い目をエバルーに向けた。

その後ろの男達は、すぐにでも暴れたいのだとでも言うように、今か今かと体を揺らしている。

ルーシィを背に庇うように立ったナツが、エバルーを含めたそいつら3人を睨み付けている。

 

「ルーシィ。。。早く燃やせ!!」

「!?無理!!」

「おい!!!!」

「!!違うの!!なんか、、、この本なんかおかしいの。。」

「??」

「ニャー?」

 

「何か絶対秘密があるわ!!」

 

ルーシィの発言に、すかさずエバルーか食いついてきた。

 

「なっなにぃ!?!?アイツめ!!宝の地図でも。。。」

「とにかく時間を頂戴!!どっかで読んでくる!!」

「は?ルーシィ!!ちょっ!?おい!!どこ行くんだよ!?」

 

ルーシィは奥の扉に向かって、本を持ったまま走り出した。と思ったらもういない。

いつもでは考えられないほど瞬足を、ルーシィが見せた。

 

「作戦変更じゃ!!おまえらコイツをどうにかしておけ。吾輩はあの娘を追う!!」

 

エバルーが2人組に叫ぶと、その2人組はかったるそうにナツに視線を寄こした。

 

「ハッピー!!ルーシィを。。。。って!もういねえし!!!!」

「・・・・猫なら、娘と一緒に出ていったぞ。」

 

敵につっこまれた。

 

「ぐぅ・・・・まあお前らなんか、はじめっから一人で大丈夫だ」

 

男達の顔色が変わった。

鋭い視線をナツに向けてくる。が、ナツは全く臆する様子を見せない。

 

「お前魔導士だろ?我々バニッシュブラザーズは、対魔導士専用の用心棒だ。」

「しかも、火の魔導士の相手を得意としている。カモン!!火の魔導士!!」

 

どうやら、ナツとルーシィの行動はどこかから監視されていたようだ。侵入時に魔法を使ったのがみられていたらしい。しかもこいつらは、火の魔導士は得意な相手だとまで言ってくれた。

 

「まぁ、見られたならしょうがねぇ。。。口は塞いどかなきゃな。。。」

 

肩を回し、首を廻し、手の指を鳴らした後ナツが、ぐっと膝に力をを入れた。

炎を足からだし、ブーストを付けて男達の懐に突っ込んでいった。  

 

 

「まさか・・・こんな事って。。。」

 

“日の出”を読み終えて・・・信じられない気持ちが、ルーシィの心に沸々と沸き上がってくる。

そして怒りが、ルーシィの胸中に渦巻いた。

 

屋敷の地下水路に降りてきたルーシィは、ポケットから魔法アイテムの“風読みのめがね”を取り出して、“日の出”をものすごい速さで読んだ。

その真剣な横顔を、ハッピーは見つめていた。難しい顔をしていたらと思ったら、今はその表情に、悲しみと怒りが見えている。

ハッピーは静かにルーシィの行動を待っていた。

そこで、ハッピーの耳が物音をひろった。

 

「ルーシィ。。。。何か来る!!」

 

ハッピーがそういったとほぼ同時に、ルーシィの腕が壁から出てきた腕に拘束された。

ルーシィは慌てながらも、咄嗟にハッピーへその本を投げた。

 

「それ、、、絶対持って帰らなきゃだめだから!!」

「あい!!わかった!!」

 

腕の次に、にゅっと奇妙な頭が壁から出てきた。

エバルー本人だ。

魔導士とは聞いていたらが、どうやら壁をすり抜ける魔法を使うようだ。

 

ルーシィはその顔に向かって鋭い視線を突き刺した!!

 

「アンタなんかサイテーよ!!!文学の敵だわ!!」

「吾輩のような、偉~~~~~くて教養のある人間に対して!なんて失礼な小娘だ!!」

 

「・・・教養ねぇ。。。アンタは、ただの変な趣味の変態じゃない!!」

「あい。」  

 

エバルーの眉間にシワが入った。そしてルーシィを掴む腕に力を入れた。

ルーシィをの腕に、エバルーの爪が食い込む。

 

「くぅ。。」

「何がわかった?宝の地図か?財産の隠し場所か??どんな秘密があった!?言え!!!」

 

ハッピーは本を抱え込んだまま、壁から伸びてルーシィの腕を掴んでいるエバルーの腕に飛び蹴りを喰らわせた。

その腕が、『ボキッ』っと音を立てて、変な方向に曲がった。

 

「ぎゃあぁぁぁあぁぁぁ!!!」

 

壁から、苦悶の表情を浮かべたエバルーが転がり出てきた。

ルーシィもその隙に体勢を整えなおす。  

 

「ナイス!!ハッピー!!!かっこいい♡」

「あい!!」 

 

ルーシィは腰から金色の鍵を1本取り出した。 エバルーに向かってその鍵を向ける。  

 

「・・・・許せないけど、この本をくれるって言うなら痛い目みせないであげるけど?」

「ほう。。星霊魔導士か!ボヨヨヨ。」

 

エバルーは、壁や床に“ダイブ”の魔法を駆使しながら、ルーシィ達との距離をつめてくる。どうやら降参する気はないようだ。

 

「この本に書いてあったわ!内容は、エバルーが主人公のひっどい冒険小説、、、、でも!!」

「吾輩が、主人公!!素晴らしい筈なのに、ケム・ザレオンのくせに駄作を書きおった。」  

「!!無理やり書かせたんじゃない!!脅迫して!!」

 

怒りを含んだルーシィの声が、地下の水路に響く。ルーシィの発言に、ハッピーは目を見開いた。

 

「脅迫!?」

「そうよ。」

 

ルーシィはエバルーから一定の距離を保ちながら、少しずつ後ろに下がっていく。

 

「アイツが、一度断ってきやがったから、言ってやったのだ!家族に罪を着せて逮捕してやるとな!!」

「!!そんな権限までつかって!!こいつ思ってたよりもすっと、、、腐った奴だね!!ルーシィ。」

 

「ホントにね。。。ケム・ザレオンは、独房に3年も監禁され、家族の安否も心配だし、、、でもあんたみたいなクズを主人公にだなんて!!作家として、プライドとの戦いだった!!」

「貴様、なぜそんなに詳しく知っておる?・・・吾輩のストーカーか?」

 

「そんな訳有るか!!!すべてこの本に書いてある。ケム・ザレオンは、、、魔導士だったのよ。・・・彼は最後の力を振り絞って、、、この本に魔法をかけた!!」

 

ルーシィは、ハッピーから本を受け取り胸に抱いた。そして、目に涙を浮かべ、力の限りエバルーを睨み付けた!!

 

「本当の持ち主の元に戻ればこの本は。。。。!!!アンタには、、、渡さない!!絶対に!!!」

 

ルーシィは再び鍵をかまえた。そして大きく口を開けて、吸い込めるだけの空気を吸い込んだ。

 

「開け!!巨蟹宮の扉!キャンサー!!!!!」

 

“チャキ~ン!!”

 

蟹の足を背負い、手には美容師が使うような鋭いハサミを持った、背の高い派手な格好の星霊が現れた。

そして星霊は、ルーシィを一瞥した。

 

「ルーシィ・・・・」

「今日は戦闘よ!!キャンサー!!」

「OKエビ!!」

「っ!!エビィィィィ!!?」

 

キャンサーが何か言おうとしたところを、遮るとルーシィはキャンサーと共に戦闘態勢をとった。その後ろで、ハッピーがその場に似つかわしくない声を上げていた。

その表情は、本気でびっくりしている。

 

「カニなのにエビ?」

 

とまだ小さく独り言ちている。

キャンサーを目前にし、エバルーが気持ち悪く笑った。

そして、ルーシィに向かって金色の鍵をむける。

 

「開け!処女宮の扉!!バルゴ!!」

 

“ズゴゴゴゴゴゴ!!!”

地響きとともに、、、、あのメイドが現れた。

 

「アイツ!!星霊だったの・・・・・!?!?!?」

「あっ!!ナツー!!!」

「お?」

 

メイドゴリラと共に、なぜかナツまでゲートを潜ってきてしまった。その手がしっかりと、バルゴの服を握っている。

目が点になって、呆然とその様子を眺めているルーシィに、ナツの声が降ってきた!!  

 

「ルーシィ!!!オレどうすればいい??」

「バルゴ!!!邪魔者を一掃しろ!!」

 

ナツの声に、ルーシィが素早く反応した。

 

「!!!ソイツ。退かして!!!!」

「おう!!」

 

ナツが空中で、ニッと口角を上げた。その手には炎を纏っている。

 

「どぉりゃぁあああ!!!!!」

 

主の言葉に反応したのも束の間、敵の星霊『バルゴ』地面に崩れ落ちた。そしてそのまま、ナツに押さえつけられた。

 

その間をぬって、ルーシィの鞭がしなる!!

地面にもぐろうとするエバルーを素早く拘束して、キャンサーに向かって全力で投げた。

そこに飛び込んでいくキャンサー!!!

光の速さで、エバルーは意識を手放した。

倒れ込んだそのへんてこな髪形は、見事な光をはなった。

 

 *

 

 *    

0615

これが、バルゴとの初めての出会いだった。結局その時はそれでお別れしたんだけど、、、後日バルゴは姿を変え、あたしの処まで来てくれたんだ。

自ら、あたしを主に選んでくれた。とっても大切な存在だよ。

 

結局本の処分の依頼は、完遂出来なかった。

だって、燃やさなかったんだもの。。。

 

依頼主の元に本を破棄せずもって帰ると、思った通り依頼人は苦々しい表情を浮かべていた。だが、ルーシィは構わず依頼人の手にその本を握らせた。

すると本が光りだした。

本から文字が溢れだしてくる。まるで噴水の水の様に。そして、噴き出した文字が宙に浮き上がったまま踊り出した。

 

光輝く文字のダンスに、ナツとハッピーは目を輝かせた。

キラキラとした目で、宙に舞っている文字を軽く突いたりしていた。

ルーシィも、同じように目を輝かせた。そして『ほぅ』っと、小さな息をもらした。

 

依頼主もその奥さんも突然の事に、その光景を呆然として眺めている。その2人に、ルーシィが説明した。この魔法の原理は、解らないがこの本は、依頼人のカービィさんに宛てた、父親からの素敵な贈り物なのだと。

燃やさないで、しっかり読んで欲しいと。

父親、そして作家ケム・ザレオンの真実と、息子のあなたに宛てた物語を。

 

 

「今回の依頼は楽勝だったな!!」

「・・・・依頼はね。。。」

「ダァハハハハハハッ!!!そんな落ち込むなよっ!!ルーシィ!!」

 

豪快に笑いながらナツがルーシィの背を叩いている。

ルーシィは、怪訝そうな視線をナツに返した。その目には涙が滲んでいる。

 

「落ち込むなよ~ですってぇ!!!それを、あ・ん・た が言うな!!!」

「ブククククッ。あい。ナツが悪いです!」

「だって、あいつらがよぅ。。。」

 

ブツブツと口の中で、文句を言っているナツ。

その声はルーシィに伝えてたい訳では無いが、何やら納得がいかない。

 

結局枯れた温泉は、地下の水脈のルートが替わっていて復活することは困難だった。その為街から少し離れてところに新たに温泉を掘ることになったのだ。

 

ルーシィがバルゴを呼び出し温泉を堀当てているなか、魔法が見つからない様に見張りで待っているだけのはずのナツが一暴れしたのだ。

 

温泉施設は、半壊。。
無事温泉を堀当てたのに、その報酬はルーシィの手にわたることなく消えてしまった。

ギリリッと歯を食いしばり、ナツに鋭い視線をむけるルーシィに、ナツは口をへの字に歪めた。

 

「・・・・だってよぅ。。。くっそっ!!!」

 

ポツリとナツがそう漏らした。

 

「だってなによ!!!」

「うっ!!いぁ。。。」

 

目の前のこまっりがおのナツに、いつまでも睨みつけていられない。すでに、目に涙を溜めているルーシィ。

なんとなく、なんとなくだけど、ナツが何もなくってこんな事しない。

って本当は解っている。

あたしやハッピーには分からない何かを、多分感じたんだろうな。。。

 

・・・・だったら、言ってくれればいいのに。。。

そんなにあたしって、、、、信用無いのかな・・・??

っていうか、黙っててカッコつけたいものなのかな~??男の子って。。。

黙ってられるより、納得いく答えをくれた方が、、、、怒られないで済むとか思わないのかしら?

 

 

実は温泉を堀当てた直後、 思いのほか早く終わったので、早速入ってみようかとルーシィが言い出したのが耳に入ってきた。もちろん、自分に言ったのではなくバルゴにだ。バルゴも、では。とか返していたし。

しゅるしゅると服を脱ぐ、布の擦れる音がやたら耳に付いている時だった。

 

自分達がいる場所を見下ろせる位置にあるホテルの屋上に人影が、見えた。

しかも、その手には望遠カメラが握られていた。数人いる。少し遠くて、その会話は聞こえないが。。。もし、そのカメラに・・・・・。

 

いてもたってもいられずに、そこをめがけて咆哮を放ってしまったのだ。

実際直接そこに炎が行ったわけではないが、周りの木々は倒れ、その建物の一部を飛ばしてしまった。思惑通り、カメラを持った奴らは避難した。。。が、ホテルは・・・・見事に半壊だった。

 

そして・・・その音で飛び出してきたルーシィ達は、しっかり水着を来ていたのだ。

崩れ落ちる依頼主のホテルと目前に、ルーシィは言葉を失っていた。

その残骸の様子を見れば、誰の仕業かはルーシィにはハッキリ分かっている。言葉を失って、ナツを見つめていた。

 

運良くナツが放った魔法は目撃されていなかった。

何かの自然現象として、処理されるのだろう。そんな自然現象あるかっ!!!とツッコミを入れたくなるのを我慢したルーシィは、なんともいたたまれなくなり、報酬を遠慮したのだ。

 

・・・・もちろんカメラは、ナツがこっそり回収した。

 

 

「はぁ。。。結局こうなるのね。。。」

「うっ・・・ワリィ。」

「もう。しょうがないわねっ!!」

「あい!!それがナツです!!」

 

「さっ。かーえろっ」

 

Fin

 

 

おまけ

~エバルー邸から帰還後のギルドで~

 

「はいルーシィの初仕事の報酬!!」

「わぁ!ありがとう!!」

「おい!!なんで報酬があんだよ!!」

「プフフフッ。ナツには内緒で他の依頼も受けていたんだ!!オイラとルーシィで!!」

 

青い猫は悪戯っぽく笑って、ギルドの天井付近を旋回した。

プックリと頬を膨らませるナツにむかって、ルーシィがやさしく笑いかけた。

 

「ナ~ツ!!じゃあ、これでごちそう作ってあげる!!・・・くる??」

「っ///行く!!!」

 

ルーシィの微笑みに、ナツが即答を返してきた。

2人と1匹は仲良く酒場を後にしたのだ。

 

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なんか長くなってしまった(*´Д`)

お付き合いいただきありがとうございます!!

 

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