2014年09月20日
魔法研究所シリーズ~竜座~
~ドラコと所長さん~
ドラコとの楽しい生活。・・・・・・だが、ルーシィはいつも不安に胸を痛めていた。
ドラコを呼び出して、数日がたった。初めて呼び出したときの事や、経過観察は研究所に送り届けてある。だが、ドラコを直接見せるのは初めてだ。今日初めて魔法研究所にドラコを連れていくのだ。・・・・・・あの所長さんは、ドラコをみてどんな反応を示すのだろうか?
風が優しくそよぐ秋の晴天。朝早くルーシィとドラコは並んで歩いていた。風にふかれてなびく金色の髪に、ドラコは目をキラキラと輝かせ、その髪に飛び付くように手をのばしている。
「ちょっとドラコ。髪ひっぱらないでよっ」
「おうっ」
返事はいいが、特に注意されたことをやめようとはしていない。ルーシィの許容範囲を心得ているというのだろうか・・・・・・これは、ドラコの父ちゃんことナツの影響なのだろう。ルーシィが本当にダメというときはちゃんと言うことを効くのだ。
たった数日だが、ドラコの存在はすんなりとルーシィの心の中に溶け込んでいた。本当の星霊とは少し違う。でも、何か近しいものも感じる。命令に忠実で、もちろん主のルーシィの本当に嫌がることはしない。ただ、嫌がっているかどうかを判定するのはナツや周りの反応もあるらしいし、もはや肌で感じ取っているような気さえしてくる。
ナツのように騒がしくて、人を笑わせるために心血を注いでいる節はあるが・・・・・・やはりナツとすっかり同じという訳ではなく、慎重な一面や、しっかりと言いつけを守る一面などは、何とも星霊らしいのだ
研究所につくと、いつもの応接室に通された。その部屋から見える中庭には噴水が設置されていて、客が来ると水が噴き出すしくみになっている。その噴射された水が、太陽の光を浴びてキラキラと幻想的に見える。中庭に面したガラス窓にドラコは張り付くように佇み、その目を輝かせている。そんなドラコを視界の端に入れながら、ルーシィは少々くたびれた革張りのソファに腰を下ろした。
「ドラコ。そんなにガラスにへばりついて、壊さないでねっ」
「は~い。るーしぃ。すっごくキラキラきれいだね~」
素直な返事を返してきたドラコは、1歩ガラス窓から離れルーシィの座るソファの裏にたった。すると、ちょうどその時に部屋のドアがカタリと開いた。開いたドアの先にはアフロヘアとアロハシャツ。だぶだぶのハーフパンツにビーチサンダル。もう秋に近いというのにいつものそのスタイルで、白衣を羽織ったこの研究所の所長が顔を見せた。
*
所長は、部屋に入ってきた瞬間から挨拶も早々にドラコに喰いつく勢いで、メモ代わりに自分の音声を小さな魔水晶に録音しながら、ドラコの羽や尻尾、爪や目や肌を観察した。外見の特徴を観察し終わると、間髪いれずに手を伸ばし、動くように要求している。
だが、ドラコは動かない。 ドラコは大きなつり目に涙を浮かべ、口元をひきつらせ、 「・・・・・・るーしぃ」 と小さくつぶやいた。 意外にも、 所長の観察を嫌がらないなぁと思っていたルーシィは、そこであることに思い当たった。そういえば、ここに入る前に・・・・・・
『いい? ドラコ。ここでは暴れちゃだめよ。ここには大事なモノや危険なモノが沢山あるの。そんなところで、もし物を壊したら・・・・・・とんでもないお金がかかるわっ! お話が終わるまでじっとしてようねっ』
その時、ドラコは満面の笑みで 「は~い!」 といい返事が返してきていたのだ。 きっと彼は必死にその約束を守って、凄まじい観察眼を向けられてもその場にじっと耐えて立っていたのだろう。が、無遠慮に伸ばされた手に恐怖を感じ、とうとうルーシィに助けを求めたのだ。
「ドラコ、おいでっ」
「うわぁ~!! るーしぃ、このおっさん怖い!! 俺、喰われちまうのかぁ!?」
主の許しを得て、ドラコがルーシィの膝の上に飛び乗って抱き着いた。
「あらっ。ドラコは、甘えん坊さんねぇ」
ドラコはルーシィの胸から顔を上げた。
「だって、るーしぃ! アイツ、変。変人だ!!」
「・・・・・・変人って・・・・・・」
ドラコに変人扱いされて、所長はガクッと肩を落としながら 「確かに変人ですけど・・・・・・」 と呟き、ルーシィの向かいのソファに腰を掛けた。
「スミマセン。怖がらせてしまいましたね。ずいぶん人間っぽい反応を返してきますね~」
「えっ? ええ・・・・・・」
人間っぽいと言われルーシィは、頭を殴られたような感覚になった。確かに人間ではないが、 自分で考え行動する生のある者だ。 星霊と同じように・・・・・・。 怒りもだが、同時に大きな不安が押し寄せてきた。
人工的に作られた存在のドラコは・・・・・・いつまで・・・・・・脳裏によぎるのは、妹のミッシェル。
「ドラコがここまでとは・・・・・・」
ポツリと魔法研究所の所長がそういうと、白衣のポケットからベルを取り出した。
*
“チリ~ン チリーン♪”
軽い鈴の音がなり、廊下をパタパタと走ってくる足音が響いてきた。
「失礼します」
そう言って部屋に入ってきたのは、白衣を着たぼさぼさ頭の・・・・・・声から察するに女性の研究員。所長が何やら耳打ちし、その研究員は鍵を受け取った。
「・・・・・・ドラコさんは?」
「!!ドラコはここっ」
「では、中庭で私と遊びませんか?」
「!?」
伺いを立てるようにドラコがルーシィに振り向いた。すでに目は輝いている。ドラコに続くように女性の研究員がルーシィを見た。
「中庭の噴水で遊ばせてもよろしいですか?」
「え? えぇ。・・・・・・ドラコ。はしゃぎ過ぎて噴水壊さないでね」
女性の研究員が所長から受け取った鍵で、中庭に抜ける扉を開いた。ドラコはワクワクと跳び跳ねながら、研究員とともに中庭へと向かうと。
部屋の扉は閉じられた。ガラス窓の向こうで再び噴水を作動させてもらったドラコは、目を輝かせ楽しそうに噴射される水滴を掴もうと手を伸ばしている。それを目に、優しく微笑むとルーシィは研究所の所長と目線を合わせた。
改まったように所長がコホンと咳払いをすると、互いに真剣な表情に変わった。
「まさかここまでと驚きもしますが・・・・・・ルーシィさんとナツさんなら、もしかしたらと思っておりました」
その表情は、優しく微笑んでいる。ルーシィの胸の内に、明るい光が差したように感じた。が、ドラコをどうにかできると、まだはっきりとした訳ではない。気持ちを引き締めてルーシィは、この研究所の所長の目を真っ直ぐと見つめ返した。
「確認ですがルーシィさん。星霊は、どこで魔力を回復するのでしょう?」
「えっと? 星霊界ですかね。普通にこっちで食事をする者もいますが・・・・・・多分それは一時しのぎかと。・・・・・・魔力は人と同じようですが、ケガは星霊界に戻ると回復できます」
「先程の話にもどりますが、ドラコの星霊界に変わる場所は・・・・・・」
「ええ。あたしの部屋に感じました」
「では、そこで魔力を回復するようにしましょう!」
「へ?」
「彼は、何を食べますか?」
「えっと・・・・・・」
ルーシィはここ数日のドラコの様子を思い出してみた。終始ルーシィにくっついているわけではなかった。さすがというか、親が親だけにというか・・・・・・落ち着きは皆無。ギルドの中を駆け回り、それを眺めている人物めがけていたずらを繰り返していた。お腹がすけばルーシィの近くに来て食事をねだった。
当初は、ルーシィが食べているものを欲しがり同じものを食べていたドラコだが、ナツが火を食べるのを見て『ドラコもっ!』と真似して食べていた。そして、ナツと同じように・・・・・・元気になっているように見えた?
「火!」
「火ですね。では、ルーシィさんの部屋にいつでも火を燃しておきましょう!」
「っ! そうですねっ! じゃあ・・・・・・って、火事になるわ!! 部屋が燃えるわっ!!」
ルーシィのノリツッコミに、研究所の所長が楽しそうに笑い転げると、ルーシィの目の奥が光った。それを目に留め、所長はアロハシャツの襟をただし「すみませんすみません」とポケットを探った。そして、取り出したものをテーブルに乗せた。
「火の魔水晶です」
燃えるような真っ赤な石。
・・・・・・まるで本物の、炎のような。
*
*
ルーシィは差し出されたそれを、恐る恐る手に持ってみた。
深い深い燃えるような赤い色の、火のような、雫のような、少し歪な形。
火の魔水晶は、炎の泪ともいうものらしぃ。
ほんのり暖かい魔水晶。揺らめく赤い色は、ドラコを・・・・・・救ってくれるのだろうか。
「・・・・・・これは、それなりに珍しいものです。昔は簡単に採取できたんですが、最近では乱獲のせいで高騰してまして、ちょっとお高いくなってしまいましたが、ひとまずはこれで回復してもらいましょう」
笑顔で所長がそう言った。が、その瞳の奥はかいまみえない。ルーシィは緊張で手を握りしめていた。そして・・・・・・所長はルーシィの心配を見透かすように、これで、一時は大丈夫でしょうと、続けたのだ。・・・・・・これだけでは、根本的にどうにかできる訳ではなさそうだ。
どうにかなるかもしれないと、差した光はすぐに陰ってしまった。
・・・・・・はじめから警報はなっていたんだ。
そんな・・・・・・生を造るようなこと、形を成したとして・・・・・・続くものではないんだ。
「ドラコは・・・・・・どうなるの?」
ポツリと所長には届かない小さな声でルーシィは呟くと、下唇を噛み締めた。そこにじりっと血が滲む。ルーシィのその様子に、魔法研究所の所長は眉を下げた。そして目を細めた。
“バン!!”
ルーシィと所長が話している部屋の扉が、大きな音をたてた。
「ルーシィ! ドラコっ! お待たせーー!!」
ハッピーの明るい声が、部屋に響く。そういえば、先に部屋を出てギルドに顔をだしてくると言っていたナツとハッピーとは、ここで落ち合う事になっていたのだ。
中庭に出ていたドラコもハッピーの声に気付き、にぱっと笑顔になると弾む勢いで部屋に戻ってきた。
「ハッピー!! 噴水がねっドバーって!! ブワァァァァってなってねっ!! ドーンドカーンって!!!!」
「あはははっ。ドラコなにいってるかわからないよっ!」
ドラコの興奮した様子に、ハッピーは大きな口を開けて応えている。ふわりとハッピーがドラコの肩にのると、女性の研究員が笑顔で手招きをしている。
「ドラコ君! もう一回やってあげるよっ」
研究員のその声に、ドラコはハッピーをつれて再度、中庭に出ていった。
それにタイミングよく、噴水のスイッチが押され、また光をはじく水が噴射された。噴水の脇で、ドラコとハッピーの歓声が響いている。
所長は静かに部屋の扉の前に行き、その影にいる人物に声をかけた。
「ナツさんも、部屋で話しませんか?」
扉の影から出てきたナツは、静かにルーシィのとなりに腰を下ろした。震える小さな手を筋ばった暖かい手が、安心させるように優しく包み込むと、ナツは鋭い視線を所長に向けた。
「どうしたらいい?」
ナツの問いに、研究所の所長は静かに首を横に振った。ナツは身を乗り出し、所長の胸ぐらをつかむ。その表情は、怒りと 悲しみ・・・・・・憤りがにじみ出ている。所長の胸ぐらをつかんでいるナツの手は、わずかに震えている。咄嗟に立ち上がったルーシィは、その熱い手に己の手を重ねた。
「ナツ・・・・・・やめてっ!」
「まあまあ、落ち着きましょう。確かにとは言えませんが、可能性としてなら案がありますから」
ナツが手を離すと所長は、白衣の襟をただし何でもない表情でソファに座りなおした。そのようすに、ナツもルーシィの隣に腰を下ろした。自分の前に出されていたマグカップで水分を補給すると、コホンと咳払いをして所長がどこかの地図を広げた。
「ローズ山脈を、ご存じですか?」
ローズ山脈、そこは山頂が白く下に向かって濃い赤に染まっていて、遠くから見てもグラデーションがきれいな山脈だ。
以前エルザに連れられ、武器の開発に必要な宝石を探しに行ったことがあった。赤いバルカン(薔薇バルカン)が大量に生息していた気がする。その時、グレイが季節には、一面に薔薇が咲き観光地になっているとも言っていた。そして・・・・・・火山活動の活発な山だ。
「ローズ山脈ですか。以前行ったことがあります・・・・・・」
「あ? んなとこ行ったか?」
「行ったじゃない。エルザに強制連行されて・・・・・・ナツなんてずいぶん赤いバルカンに気に入られていたみたいだけど?」
「げぇ・・・・・・あれか」
途端顔を青く染めたナツは、いやそうに顔をゆがめた。赤いバルカンは何故か雌ばかりで、赤い紅を口に塗っていて、男としか戦闘しないのだと宣言し、ナツとグレイをしつこく狙っていた。何とも絡みつくような視線と、いやらしい手つきに・・・・・・思い出しても寒気がする。
「ご存知ですかっ。でしたら話は早いですね。その山脈で、鉱石が採取できます。火をためておける魔水晶です。」
「え?さっきの炎の泪とは違うんですか?」
「はい。正確にいえば同じ物質で、形成されています。が、密度が違うのです」
「・・・・・・密度ですか」
「ええ。その密度が濃く細かくなれば魔水晶の強度が高くなります。そのローズ山脈の奥深くに、その『火竜の泪』がまれに採れることがあります」
「・・・・・・」
ナツは眉間にしわを寄せたまま、黙って所長の話を聞いている。
「火竜の・・・・・・?」
「ナツさん。ドラコはナツさんの炎を食べますか?」
「あ? ・・・・・・いあ。やったことねえな。喰いたがらねえし・・・・・・そういや食わねえかも」
「まずは、今後の為にナツさんの魔力とドラコの魔力を切り離しましょう。」
所長は晴れやかな表情で、そう言い切った。
今の状況では、ナツの魔力が枯渇した際、同じ魔力であるドラコから魔力が流れてしまう可能性があるという。もしそうなれば・・・・・・ドラコの存在は簡単に消えてしまうだろう。
それに加え、自分の火が食べられないナツと同じように、ナツと同じ魔力のドラコはナツの火を食べられない。ドラコの魔力が独立したものになれば・・・・・・ドラコは、ナツの火を食べられるように成るかもしれないのだ。そ唸れば、ドラコの魔力を回復することが可能となる。・・・・・・ドラコの消滅を、防ぐことに繋がるのだ。
魔力で練られた思念体の様な存在のドラコは、魔力が切れてしまえば・・・・・・そこには開くことのできない鍵だけが残るだろう。・・・・・・この方法はただの可能性だ。成功するかもしれないし・・・・・・逆に事態を深刻にする可能性もある。
火竜の泪とは炎の塊であり、長い年月をかけ大地の魔力を吸い、火山の炎を吸った魔力の塊だ。それをドラコに埋め込むのだという。その魔水晶がうまくドラコの中で馴染めば・・・・・・成功する可能性は・・・・・・無いに等しいほど薄い。が、試してみなければ、ならないのだ。・・・・・・ドラコを生かすために。
所長の仮説を永遠と聞かされ、今日の報告は終わった。
万策尽きるまで、今はもがくしかない!!
*
「るーしぃぃぃぃ!! はやく~!!」
ナツと同じ顔だが、ナツよりも少し高い声が草原に響く。ドラコとハッピーは翼をひろげ、青空を旋回している。そのウキウキと楽しそうな笑い声に、ルーシィとナツの表情も自然と緩んでいた。
ルーシィとナツとハッピーとドラコは研究所を後にし、以前約束したピクニックに来ていた。大きな木の下に、ルーシィはシートをひろげた。そこに、ルーシィが早起きして作ったサンドイッチ入りのバスケットと、紅茶の入ったボトルを、ボスっとナツが下ろした。普段粗暴であるが、流石食べ物の扱いは気持ち少しだけ、丁寧な気がする。
空を旋回するドラコの、輝くような笑顔がまぶしい。その笑顔を目に、心の中でルーシィは強く決心していた。自然と手が拳を作って、腰につけているキーケースを握りしめていた。よほど険しい顔をしていたのか、ふと暖かい手がルーシィの手を引いた。
振り返ると空を見上げたままのナツの横顔。 所長の話を聞いた後、無言だったナツ。ナツは、何を考えているんだろう? その横顔は、ナツには珍しく真剣そのもので、必死に何かを考えているようだった。きっと考えていることは、あたしと一緒。
「・・・・・・ナツ」
「・・・・・・ああ。大丈夫だからなっ」
「!!うんっ」
ふわっとルーシィの顔に花が咲いた。ナツのたった一言に、沈んでいた心がフワフワと浮かんできた。ただ、ナツが大丈夫と言っただけで、何でも出来そうな気さえする。ルーシィは意思を視線にのせて、ナツを見つめる。その視線に、
「いつ行く?」
「・・・・・・明日。ウエンディが帰ってきてからなっ」
「・・・・・・へっ」
「!!・・・・・・長い事、馬車だか魔導4輪だか、乗んなきゃなんねえだろっ!!」
グエッと舌をだし、ナツの顔が・・・・・・想像で既に酔ってきている。・・・・・・まさかっ。
「まさか、ずっとそれ考えてたの!?」
「うっ・・・・・・あっあったりまえだろっ! あの辛さが分んねぇなんて・・・・・・」
「・・・・・・はぁぁ」
「ルーシィは相変わらず、残忍な奴だなっ!」
「はぁぁ!?」
「ルーシィの鬼!!」
「ちょっ!」
「おっ。変な顔っ!」
「なっ!!」
「・・・・・・そういやルーシィ! 昨日ルーシィのお気に入りのカップ割っちまった。ワリィ」
「もー!! 何なのよぉ!!」
「・・・・・・」
ルーシィがぷくっと頬に空気をため、空いている方の手で握った拳を振り上げると、ふとナツが目を細めた。そして、ルーシィと繋がる手に力を込めた。その手がわずかに震えている。
「どうにかなる。オレ達なら・・・・・・ぜってぇ何と出来るっ!!」
「・・・・・・うんっ!! まずはぁ明日、最強チームに依頼だしちゃう?」
「っ! おうっ! それいいなっ。みんな巻き込んじまおうぜ」
ルーシィもナツの手を強く握り返した。ナツとルーシィは目線を絡め、互いに優しく微笑んだ。そこに背後から、空を旋回していた2つの影がかかる。
「うおっ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!」
2人の体が宙に浮いている・・・・・・。
「きゃははははははっ」
「ルーシィ!! 変な顔~!!」
「ぶはっ!!」
「ちょっ!! ハッピー!? ナツ―!! きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!」
ドラコがルーシィを抱えたまま空を回転する。よく見るとひねりも入っているようだ。
「きゃぁぁぁぁ!! おろ~してぇ~!!」
「!! は~いっ」
脇の下を通って腹に回されていたドラコの手が、いい返事と一緒にパッと離された。・・・・・・ルーシィの体は急降下していく。
「い~~~やぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃははははははっ!!」
*
その日の夜に、エルザとウエンディ、シャルルは依頼先から無事帰還していた。明くる日の朝、ギルドの酒場で諸事情を説明すると、深く眉間にしわを寄せたエルザは、ナツを睨み付けピシャリと言い放った。
「自業自得だ馬鹿者! 命をなんだと思っている!!」
ナツを床に沈めると、エルザはそのままルーシィに振り返った。その鋭い視線に、たじろぎながらもルーシィは、震える声を絞り出した。
「ごめんなさい!! でもっ! 大事な友達なの。家族なの。仲間なの。……お願い。力を貸して!!」
エルザの目が見開いた。その大きな瞳に頭を下げる金髪が映る。するとその肩に、冷気を放つ手が置かれた。
「エルザの負けだなっ。仲間の仲間。そんなん俺たちの……家族ってことだ」
グレイにかけられた声に、エルザが小さく息を吐き、頷いた。そこで、床に沈んでいたナツが呻くように呟いた。
「・・・・・・ただ、会いたかったんだ」
魔法研究所から依頼があった時……ルーシィは渋っていた。でも竜だった。竜座と言えど、竜だったのだ。幻想かもしれないし、ただの思念体なのかもしれないってわかっていても、竜に会えるかもしれない。そう頭をかすめた時には、気持ちは走り出していた。思い浮かべたのはイグニール。
だた、呼び出されて出てきたのは……小さな自分だった。後からその形は、ルーシィのイメージなんだと聞かされ、それはそれでちょっとうれしかった。ルーシィの中で『竜=オレ』なんだと、そう思ってくれてるんだってわかったから。オレの中の竜は、確かにイグニールがいた証、誇りだから。
Fin
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とりあえず、ここで今回はfin。続きは、また別のお話で……←w