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2013X'masシリーズ『変化していく関係』その③

自覚と戸惑い ~ジュビアの想い人~

クリスマスに向けての3話目。
ナツの自覚編。に続き、ジュビアの想い人に続きます。2部構成みたいになっちゃった。。。時系列が同じだったので、一緒にしちゃいました。。。

長くなりますがどうぞよろしくお付き合いくださいm(__)mよろしければ、誤字脱字に注意してお進みください(/ω\)どぞ 。^^) _☆~~

 

 

ルーシィの家の出入り禁止をジュビアに言い渡されてから、数日。

その日は、朝からジュビアがギルドに顔をだし指名の入った依頼に出かけて行った。

 

今日はルーシィがギルドに顔を出すかもしれない。

そう思って、一日中ギルドの中で、期待しながら、退屈しながら ルーシィを待っていた。

 

そして 夕方。

やっとルーシィとレビィが連れだって、ギルドに現れた。

何だか胸が熱くなる。自然と口角が上がる。

でも、彼女の楽しそうな顔を見てため息も漏れる。

ちょっとした苛立ちさえ感じだ。

 

はぁ。。。何日籠ってんだよ!!あいつら。。。

こっちだってルーシィと遊びてぇんだ。

 

「ルーーーーシィィィィィィ!!!!!」

さっきまで此処にいたばずの、相棒がすでにルーシィの胸に飛び込んでいる。

( あいつ。はぇぇな。。。)

オレもと思って、ルーシィの元に行こうと席を立とうとすると、ルーシィはすでに他のメンツに囲まれて足を進めていた。

 

ルーシィは、オレには気付かない様に、通り過ぎ カウンターから近くのテーブルに着いた。

軽い食事を囲んで、あーたこーだ話してやがる。

やっぱり、ルーシィは人気者だな!

久しぶりにギルドに顔出すと、いろんな奴に囲まれてやがる。

嬉しく思う反面・・・面白くねぇ。

・・・っで!!なんでこっち来ねぇんだよ!!

こっちは、この数日、ルーシィが来たら何しようかと楽しみにしていたというのに。。。

さっさと、違う席について楽しそうに話しているルーシィを恨めしく思いながら、

 

ジィーッとルーシィの動きに合わせて揺れる金糸を眺めていると、不意に彼女が顔を上げた。

 

視線がぶつかった。目と目が合った。

 

ルーシィは片手を上げて、「久しぶりー!!」なんて笑顔で呼びかけてきた。

言い様のない、もわもわと湧き上がる感情。

一瞬で気持ちが軽くなって、、、そして突き落とされた。

ルーシィの声に気付いて、周りにいた奴らも一瞬こっちを向いたのに、ルーシィに話しかけて、彼女の視線を持って行ってしまった。

 

・・・なんだよ。

っていうか、なんでオレあそこに入っていけないんだ??

いつも、ルーシィがああやって囲まれていたって、隣でそのコロコロ変わる横顔を、よく動く唇を、眺めていたはずなのに。。。

ちゃんと、相棒はその輪に入っていって、ちゃっかりルーシィの膝の上に収まっている。。

 

「チッ!面白くねぇな。」

頭の上から、低い声が振ってきた。

そのまま、ドカッとオレからワザワザすぐ隣の席を1つあけて、ガジルが座った。

 

「テメェの顔にも、おもしろくねぇって描いてあるぞ!!火竜。」

ナツは、つい自分の頬を擦った。

「・・・おい。本当に描いてあるわけあるか!!物の例えだろう馬鹿か?」

呆れたように、ガジルはナツを見て、今までナツが見ていた方を見つめた。

 

「つまんねぇのは、お前だろ!!鉄くず野郎!!」

そう言われ、ガジルは「ああ?」とナツの方を見るがフンと息を吐いた。

 

「ああ。実に面白くねぇ。ここ数日レビィは、バニーにベッタリたからな!!」

これで満足か?と言ってるような顔で、ナツを鼻で笑った。

「・・・・お前、そんなこと言って恥ずかしくねぇのか??」

ナツは、サラッとそんな事を言ってのけた同族をめずらしそうに見た。

「フンッ。こんなんで照れてたら、肝心な時にアイツに逃げられかねねぇからな。」

ナツにしか聞こえない声で、ガジルはつぶやいた。

「言えねぇと、レビィが逃げるのか?」

ナツは、ルーシィを睨み付けたままガジルにしか聞こえない様に呟く。

「フン。」

ガジルは、ルーシィとレビィのいるテーブル席を頬杖をついて眺めている。

 

思い立ったように、ナツが立ち上がり

「ちょっと待ってろ。」

とガジルにいい残し、カウンターへむかった。

戻ってきたナツの手には、ジョッキが2つ。

その1つには、鉄が入っている。

 

「なぁ。ガジル聞いていいか?」

鉄の入ったジョッキを受け取り、ガジルがチラッとナツを視界に入れた。

「・・・内容によるな。」

2人の竜は、ルーシィとレビィのいるテーブルを目でとらえながら、独り言ちるように お互いにしか聞こえない様に呟きあう。

「オレは何で、ルーシィの近くに行けねぇんだ?」

「・・・はぁ?」

 

ガジルは、口に向けて持ち上げたジョッキを持つ手を止めて、ナツの方を一度見た。

「お前は何を言ってんだ?行きたきゃ行けよ!!」

「・・・なんでかいけねぇんだよ。この間まで普通に近づけたのに、今日は足が動かねぇ。なんでだ??」

ガジルは、ジョッキをコトリとテーブルに置いた。

「・・・意識してんだろ?バニーの事を。」

「意識ってなんだ?」

 

ガジルは溜め息をつく。

「ったく、めんどくせぇなぁ。。・・・だから、バニーの事を意識しすぎて、緊張しちまうんだろ?自分が今までどうやって接してきたかも 解んなくなる位テンパっちまってんだろうよ。」

ナツは、前を向いたままう~んと呻っている。

「はぁ。。。お前まさか自分の気持ち気付いてねぇのか?」

「はぁ?」

 

「・・・今のお前の状況は、つまり、バニーに好かれたくって、テンパって どおして良いか解んなくなっちまったんだよ。」

ナツは頬杖ついてルーシィを見ていた顔を、可笑しなものでも見たように目を見開いて ガジルの方に向けた。

「普段近くにいすぎたせいで、離れてみたら距離の縮め方が解んねぇんだろ?」

「・・・・お前ってすげぇな。」

「・・・・・・お前は、思ったよりもヒデェ脳みそだ。。」

ナツの目が一瞬鋭く光った。が、すぐシュンと小さくなった。

「・・・オレ、ルーシィに気に入られたかったのか??嫌われてはねぇと思うんだけど。」

ガジルは再びため息をつく。

「火竜。お前、バニーの事どう思ってんだよ?」

「ルーシィか?・・・・・・好きだぞ。アイツ面白れぇんだぞ。最近じゃ、のりツッコミをマスターしてな?後、やさしいし、つえぇし頼りになるぞ。。。あっ意外と料理もうめぇぞ!!」

ナツが、ニカっと笑う。

「・・・好きなんだな?」

 

ガジルは、目を細め、フンと鼻で笑い、自分の感情を認めたような事を言った同族の顔をちらっと覗き見た。

ナツは、先ほどニカっと笑った顔のままルーシィを目に止め固まり、見る見るうちに赤面していく。

「・・・・おい?」

声をかけられ、まるで錆びた鉄の様に、ギギギと音をならし ガジルの方をナツが見た。。

「・・・あぁ?」

「自分で言ったんじゃねぇか!!」

ガジルはつい声を大きくしてしまった。

「うお!!・・いぁ////」

何やらもごもごと、しりすぼまりに消えていく声。。。

「まさか・・・今、自覚したのか・・・?」

落ち着いて、また小さい声でガジルが声をかけた。

「おあ。おぉぉ。まぁ。。/////」

ナツの目は宙を泳いでいる。

 

クックックックックック。

ウブだウブだとは思っていたが、自覚もしていなかったのか。。。。

つーか、話してて気づくって、どんだけだよ。。。。

馬鹿なのか?やっぱりこいつは馬鹿なのか??

クックックックックックックッ。

 

ガジルの、笑いが止まらない。。。

ナツは、段々いたたまれなくなり「うるせぇ~!!!」と、捨て台詞を吐いて カウンターへ逃げた。

 

「あらナツ。顔真っ赤っかよ?強いお酒でも飲んじゃたの?」

カウンターの中から、ミラジェーンがジョッキに水を入れて出してくれた。

カウンター席を陣取りジョッキを手に取ると、一気に喉に流し込んだ。

 

カウンターを肘掛けにして、体をテーブル席の方に向けると、ルーシィの横顔が視界に入った。

(・・・オレ、ルーシィ好きだったんだ。。。だからこんなに執着しちまうのか。。。そっか。なんか納得。)

自分で自分に納得した。

自分がルーシィに執着しているのは、気付いていたし、人にそれをからかわれようが、楽しいから一緒に居たいのは別に変なことはないと思ってた。

マカオやワカバは、恋は好きって気持ちが 仲間に対しての好きから違う好きに段々気持ちが変わっていくって言ってたんけどな、、、変わってみればわかるって。

オレはルーシィと出会った時からすっと同じ気持ちでルーシィと一緒にいたいんだ。

だから、オレの好きは、仲間の好きだと思ってた。

・・・でも違ってたんだな。

 

さっき、ルーシィと目が合った時感じた湧き上がってくる感情。目が合った後、、、動けなくなったんだ。

ガジルと話して、癪だが気付いた。

ガジルの言うとおりだ。

自分の口から出てきた気持ちだ。

・・・ってことは、オレはじめっからルーシィ好きだったんか!!!

おぉ~すげぇ!!

オレずっと、恋してたんじゃねぇか!!

 

また、こっち向かねぇかな。。。ルーシィ。

おーい。こっち向け!!

ルーシィは、レビィとさっきまで俺が座っていたテーブル席を指さして笑いあっている。

隣にいるレビィの顔が真赤に染まり、ルーシィが背中を押した。

レビィは、嬉しそうに笑ってガジルの元に走って行った。

それを、嬉しそうに 愛おしそうに目を細めてみているルーシィの横顔に目が離せなくなる。

そのままこっち向けよ!!ルーシィ!!

 

オレを見て、いつもみたいに笑ってくれ。

そしたら、そのまま時間が止まってもいいのに。

 

「おーい。ナツ!!何1人で百面相してんのよ??」

リサーナの声だ。

ナツは振り向かないで、ルーシィを目に映したままマフラーを引き上げて口元を隠して返事をした。

「///なんにもしてねぇ。」

ただそれだけ言っただけなのに、顔に熱が集まるのを感じる。

絶対、リサーナに ばれると思った。

リサーナが、こっちを見て、目を細めニヤニヤしている。

「ルーシィばっか見ちゃって♡」

いいおもちゃを見つけたとばかりに、隣の席に腰を下ろす。

「ルーシィに見とれちゃってたの??あ~あの日以来だもんね??元気そうね?フフフッ」

「ああ。」

「そんなにジーッと見つめてたら、ルーシィに穴が開いちゃいそう。。。」

リサーナが楽しそうに笑っている。こっちはそれどころじゃなく顔に熱が集まる。

マフラーを握りしめた。

「ナツもとうとう、大人に向かう階段に足をかけたかぁ~!!好きな人ができたんだもんね~~??」

マフラーに顔を埋めた。顔があげられない。。。ここぞとばかりに、からかいやがって!ちきしょう!!

「・・・数日放置されて、やっと自覚したの??まったく、今まであれだけルーシィを振り回しておいて、無自覚とか!?こっちがヤキモキしてたわよ。」

「・・・スマネェ。。」

・・・なぜか謝罪している。なんでだよ!!オレ、、テンパり過ぎだよな。。

とうとう、リサーナが噴き出した。

隣で、腹を抱えてケタケタと爆笑してやがる。

「ナツ可愛い!!!アハハハハハハッ」

つーかそんなに、大声で笑ったら、みんなこっち見んだろ!!顔の熱が引いてねぇのに!!

 

案の定、一気に視線が集まっている。

恐る恐る顔を上げると、ルーシィがこっちを見ていた。

視線がぶつかると、ルーシィの目がうるんでいる気がした。一瞬視線を外されて、また目が合う。

ルーシィの綺麗な顔が笑顔になった。・・・今までにないくらいきれいな顔。・・・・でもどこか寂しい笑顔。

いまにも消えてしまいそうな不安を覚えた。

足がすくむ。でもっ「行かなきゃ!!」と衝動が体を動かそうとする。

 

ナツがカウンター席から立ち上がった。

「ナツ?」

隣に座って、今まで笑っていたリサーナが、いきなり無言で立ち上がった幼馴染を不思議そうに見る。

ナツの視線を追うと、ルーシィが視界に入り、ニヤニヤしてしまう。

「やっぱり、ルーシィの近くに行きたいんでしょ?早く行っておいでよ!!」

ナツが、リサーナにそう言われ、また頬を染めた。

「うるせぇ!!今・・・」

「あっ!?」

リサーナが、向こうを見ながらポツリと言った。

そちらを振り返ると、ルーシィが席を立っていた。

入口に向かっている。

振り向きもしない。

その後姿を、ボー然と見つめていた。

「行っちゃったね。。。ナツがモタモタしてるから~!!ばっかねぇ~!!」

隣に視線を落とすと、心底呆れた顔をしたリサーナがいた。

 

ナツは、力が抜けたように、カウンターの席にボスンと崩れこむように腰を降ろした。

ルーシィが吸い込まれていったギルドの扉をまだ眺めている。

その視界に、青猫が入った。

「ナツ?」

「あ??」

「ルーシィ帰っちゃったよ?」

「・・・あぁ。・・・・帰っちまった。」

ナツは、力なく答えた。

「ナツね?久しぶりに、ルーシィ見て、柄にもなく緊張しちゃって動けなくなっちゃったんだって!!」

ナツの隣に座っていたリサーナが、代わりに答えた。

「・・・・馬鹿よね?せっかく会えたのに~。もったいな~い!!」

「・・・。」

ナツは黙っている。

「・・・ナツね~??ルーシィ見ただけで、真っ赤になっちゃって!かっわいかったんだよ!!」

リサーナはくすくす笑っている。それを聞いて、ハッピーは目を見開いた。

 

(ナツ。やっと気が付いたんだ!!ずっとルーシィの事が大好きで、少しも離れられない位くっ付いていたのに、てんで無自覚なんだもん。

無自覚のくせに、ルーシィを天然で口説きまくって、振り回してたんだから、オイラ、ルーシィがかわいそうだったよ。

でもでも!!これで、やっと 2人はくっつくのかな??例の作戦は、ナツひとりに任せちゃおうかな~??)

青猫は、プヨプヨと宙で浮きながら、口元に手をあててニヤニヤとしながら 今後の2人を思い浮かべている。

 

その内、レビィとガジルがギルドを後にした。

遅れてジュビアがギルドに戻ってきたが、キョロキョロして 報告を済ませ また扉から出て行った。

 

しばらくして、ボーっとギルドの扉を眺めたままだったナツの 性能のいい耳にカナの声がチラッと入ってきた。

「・・・ルーシィ・・よろしくな!!・・・グレイ!!」

(・・・・ルーシィ??グレイだと~??)

グレイは、何かを持って外に出ようとしていた。

ナツはカウンターを後にし、グレイの方に近づく。

 

「おい 氷野郎!!!」

「んあぁ??なんだよ?クソ炎?」

ナツに呼び止められ、グレイが不機嫌そうに振り向いた。

「つーかよぉ、変態パンツ、どこ行きやがる!!」

「あぁ??でめぇには関係ねぇだろ!!!・・・姫さん家に届け物だ!!」

「・・・ルーシィん家は、今、男は出入り禁止だぞ!!」

ナツが、ツリ目をもっとつり上げてグレイの襟首をつかみ上げた。

「・・・はぁ??」

グレイは、目を丸くして、口をポカンとあけた。

そこに、説明するようにリサーナが口を挟んだ。

「ルーシィとレビィとジュビア3人で、ルーシィの家で合宿してるみたいでね?ナツに邪魔されない様に男子禁制なんだって!!」

リサーナがおかしそうに笑っている。それを聞いて、グレイがカナを見た。

カナはカードを一枚ひき、

「・・・グレイなら大丈夫だろうよ!!逆に歓迎されるかもな!」

「んなっ!?なんでだよ!!!」

ナツが、カナに喰ってかかろうとするが、カナは「カードが言ってるんだよ!!」と答えて、酒樽を抱えた。

 

 

「はぁ。」

グレイは1人、包みとカゴを持ってルーシィの家へとむかっている。

カナに渡された包みには、なんだか丸く整えられた、小枝に真っ赤なリボンが飾られている。

先程のナツとの争いで、壊れてしまってないか心配になった。

 

(・・・これを、窓辺に飾れって言えばいいんだよな。。。。)

 

しかし、カナに丸め込まれちまったな。

まぁ。姫さんもあの様子じゃ、すっかりふさぎ込んでいそうだしな。。。。

・・・ちっと慰めてやんなきゃな。

 

運河沿いのアパートの階段を上り、お目当ての部屋をノックした。

中から出てきたのは、レビィだった。

「あれ??グ?!」

嫌な予感がして、慌ててレビィの口を塞いだ。

「わりぃ!!ジュビアが気付くと面倒だから、ちょっとルーシィだけ呼んでくれ!!」

レビィは、眉をしかめていたが渋々と言った面持ちで頷いた。

「ジュビアは今お風呂だから。ちょと待ってて!!」

 

すぐに、ぴょこんとルーシィが顔を出した。

「どおしたの??」

人懐っこい笑顔で、こちらに寄ってきた。

「よう!これ。ミラちゃんから差し入れ。」

持ってきた、カゴをまず渡した。

後ろから覗いていた、レビィが飛びついてきて「サンキュー!!」と笑顔で持って行った。

「もう!レビィちゃんッたら!!」

ルーシィは楽しそうい笑っている。

 

「後これは、カナから。」

ルーシィにその包みを渡すと、彼女は、何だろー??と嬉しそうに包みを覗いた。

「あっ。キッシングボール?」

大きな目をこちらに向ける。

「??よくわからん。持ってけって言われただけだしな。あぁ、窓辺に飾っとけって言ってたぞ!!」

「へぇ~~~。フフッ。グレイこの意味知ってる??」

ルーシィが、やさしくそのオーナメントを手に取りこちらを見た。

 

「ちょ~!!ルーちゃん!ジュビアもうすぐお風呂あがりそうだよ!!」

「あっそか!!グレイ。ジュビアに会っていけば??」

「・・・おまえ、ここに俺が来たら、姫さん危ないんじゃないか??」

グレイが不敵に笑った。

「ああ~恋敵~!!ね?ん~。でも、ちょっと外で話さない?少し風にあたりたいんだ。」

「・・・はいはい。お姫様。エスコートさせていただきますよ!!」

そう言って、グレイはついっと、右ひじを突き出した。

ルーシィはそれにフフッと笑って左手を添えると、

「レビィちゃん!!ちょっとでてくるね!」そう言って部屋を出た。

 

 

ギルドからの帰り道、自然と運河沿いを歩いてしまう。

いつもの2階建てのアパート、この間までは簡単に超えられた壁が、今は高くそびえ立っているようだ。

 

結局一言も話せないどころか、近づけもしなかった。。。。はぁ。。。

 

っと、そこに大好きなにおいが鼻をかすめた。

その匂いは、商店街に続く脇道からしてくる。

そこを見ると、ルーシィとグレイが腕を組んで仲睦まじく歩いてくる。

「・・・ルーシィ。」

「えっ??ナツ??」

ルーシィは、びっくりした顔のまま動きを止めた。

「・・・なんだぁ?・・・ナツさんよぉ。姫さんに用事か??」

グレイが、上着を脱ぎ捨てた。

「いあ。・・・家に・・・帰るところだ。。」

グレイはナツに一瞬近づき、耳元で呟いた。

「ふん。随分遠回りだな?」

ナツは、無言でグレイを睨み付けていた。

 

「ナツどおしたの??」

ルーシィが、グレイの服を拾って、パンパンと汚れを払った。

・・・・・グレイの為に。

 

「・・・・グレイは、、、いいのかよ。。。」

 

誰にも聞こえない音量でごちた。

ルーシィは拾った服をグレイに「見てるこっちが寒いのよ!!」と言いながら笑って手渡した。

グレイは、「うおおっ」とか言いながら服を受け取っていた。

 

いつの間にか俯いてしまった視界に、ルーシィのブーツが映った。

「ナツ?」

顔を上げれば、目前に 彼女の顔が自分を覗きこんでいる。

「!?!?なんでもねぇ!」

琥珀色の瞳に、自分が映っている。カーッと顔に熱が集まってくるのがわかる。

慌てて、マフラーで口元を隠して深呼吸して、ルーシィをまっすく見つめた。

 

落ち着いてみると、彼女の手には、さっきグレイが持っていた包みが握られている。

「それなんだ??」

それと指をさしながら、彼女の手に少しふれた。

「・・・これ?キッシングボールよ。」

彼女がそれを取り出して、自分の目の前まで持ち上げた。

「キッシングボール??」

それを手に取るふりをして、彼女の冷たくなっている手ごと包み込んだ。彼女の顔が一瞬で桜色になって俯いた。

 

「おい。お前この意味知ってんのか??」

祈る思いでルーシィを見つめた。

 

「そう言えばカナも、なんか言ってたな。」

服を着終わったグレイも会話に参加してきた。

一回り小さい手はさり気無く逃げようとするが、知らん顔して逃がさなかった。

 

「これ、クリスマスの飾りよ?ヤドリギを飾り易くしたようなものね。窓辺や扉の上に飾るとね?幸せと集めてくれるって言われているのよ!! まあほかにも意味はあるんだけどね?」

ルーシィは、照れる様に頬を染めて、目を泳がせた。

 

ギルドを出るとき、カナがロメオに教えていた。

「キッシングボールを男が女に贈るってのは、キスしてもいいか?って意味で、それを受け取るのはOKって意味もあるんだぞ!!」

ルーシィは知っているんだろうか??

知っていて、グレイからこれを受け取ったのか!?

目の前が霧がかかったように、霞む。

 

「他の意味ってなんだよ??」

グレイが、確認するようにルーシィを見据えて聞いた。

オレも黙って、ルーシィの言葉を待った。

 

ルーシィは、頬を染めて目線を星空に向けたまま よくとおる声で言葉を紡いだ。

「えっとね?ヤドリギやキッシングボールの下にいる女の子には、キスをしてもいいの。あっ。クリスマス限定ね?だからキッシングボールて言うんだけどね。

 キスした2人は幸せになれるっていう伝説。ただね?女の子は、誰にキスされても断っちゃいけないの。断ると来年の幸せが逃げちゃうんだって。お嫁に行けなくなるとかも言うね。

 まあ、いろんな説があるのよ!!実際は、知らない女の子に無理やりキスする人もいないだろけど?!」

ルーシィが、その飾りを握り占めながら、説明してくれるた。

 

「そんなの、イチャイチャしたい奴が勝手に言ってる作り話じゃねぇのか??」

グレイが不思議そうに尋ねる。

 

「そうかもね?でもクリスマスは、迂闊にこういうのが飾ってあるところを女の子1人で歩いちゃいけないのよ!!」

どこか焦ったように、彼女が言葉を紡いだ。オレは、黙って彼女の手を暖めていた。

「へぇ。」

やっぱ、姫さんはものをよく知ってんな!!なんてグレイは頷いている。

ルーシィは、顔を上げ一度こっちを見据え、次にグレイを見た。

彼女が、体ごとその場から離れると、掌が空っぽになった。

 

「フフフッ。男の子にしたらチャンスだし!!乙女としては、1度でいいから大好きな人と試してみたいわよね?ロマンチックじゃない?」

ルーシィが頬をピンクに染めて、星空を見ながら囁いた。

 

ルーシィの耳通りのいい声が、白い息になって、星空に消えていくのを眺めていた。

 

星空に向かって、強いまなざしを向け、ルーシィがこちらを振り返って、また消えそうに笑った。

「ナツは、アタシになんか構ってないで、ちゃんとしな!!・・・・・頑張ってね?」

それだけ言うと、「あー寒い寒い!!」と彼女はクルンと背を向けアパートの扉に消えていった。

 

 

その華奢な背中を、扉が閉まるまで見つめていた。

「おい!!クソ炎。お前俺がいるの忘れてただろ!!馬鹿か?馬鹿だな!!つーか!あんな顔させてんじゃねぇ!!!」

「なっ!?」

グレイは、ナツの胸ぐらを捻り上げる。

「・・・いつまでも、泣かしてんじゃねぇよ!!・・・・お前には任せておけねぇ。。。。。じゃぁな!!」

グレイはそれだけ言うとさっさと、闇に消えていった。

 

・・・・なんだよ。

・・・・なんなんだよ!!

なんで、、、ルーシィはあんなこと言ったんだ?

ルーシィは、自分だけ話すだけ話してさっさと戻って行っちまうし、グレイの捨て台詞も気になる。

何より気になるのは、カナの言っていたことだ。

あれを受け取ったてことは、グレイにキスされてもいいのか??

 

掌が、ぽっかり空いたぬくもりを探したが、空を切るだけだった。

もやもやした気持ちを抱え、帰路に着いた。

 

久しぶりに間近で感じることができた彼女の残り香と 自覚した自分の気持ち そして初めて感じる不安を抱いて眠りについた。

 

 

 

 

カナに言われた指令はこうだ

「ちょっと、ナツを刺激してやってくれよ!!」

カナが、一枚のカードを2本の指で挟みヒレヒラと揺らしている。

「はぁ?なんで俺なんだよ!!」

オレが動いたら、今回ルーシィにジュビアがくっ付いてるから、めんどくせえことになるんじゃねぇか!!

カナは、呆れた顔で、グレイを見た。

「アンタが適任でしょ?ナツは元々アンタと張り合ってるんだし。何よりルーシィが、アンタに懐いてる。」

カナは、またカードを並べはじめた。

「可愛いルーシィの為に、どうにかしてやりたいんだろ??」

「だな。」

「他の奴に頼んでも、ルーシィはさぁ普通にかわしちまうか、さっさと丁重にお断りしちまうよ。」

「オレは?」

「アンタならさ、ルーシィは安心してるから、大丈夫なんだよ。」

「大丈夫ってなんだよ?」

「アンタはそういう目で、もうルーシィを見てないだろ?それに、ちょっと届け物をしてくれればいいんだ!!」

「!?!?」

コイツ。。。何を知ってやがる!!!

 

見透かされた気がした。

びっくりというよりも、恐ろしさを感じた。

(・・・氷の魔導士なのに肝を冷やしちまったぜ!)

 

カナに言われたことには、思い当たる節がある。

実際、姫さんの事は初めっから気に入っていた。

容姿は好みのタイプだし、話もあう。

性格も明るく、思いやりもあり、仲間思いで 何よりこの妖精の尻尾にいて、常識人である。

気になるには十分な存在であった。

ただ、自分はどういう訳か、彼女を自分のものにしたいという衝動が起こらなかった。

 

人懐っこくて、遠慮もない。だから、こちらも遠慮しないで過ごせて すんなり、懐に入られてしまった。

戦闘中など 庇ってやると、プライドを傷つけるかと心配したが、余計懐かれた。お礼まで行いってくる始末だ。

それは、オレの庇護欲を満足させてくれる。

素直な彼女は、オレにとって都合のいい存在でもあった。

 

そして、守ってやりたい対象になったのだが、、、、やはり、自分のものにしたい訳ではない。

お嬢様の世界から、妖精の尻尾に来て、初めての経験も多かったのか、このギルドが変わり過ぎているのか?

彼女は、この変人だらけのギルドで、相談役には自分を選んでくれている。頼りにされていると思う。

悩んでいる彼女を見て、助言をしてやる。慰めてやる。たまにほめてやる。

何時しかそれが、オレの役目になっていた気がする。

 

芯の強い彼女だが、体力面や魔力面では、まだまだ新人だ。

なるべく目に入るとことにおいて、守っていやりたくなるのは、仕方が無いと思う。

彼女が無茶をすると、心臓がつぶれてしまうんではないかというほど心配にもなる。

確かに、他のメンバーに対する想いと違うのかもしれない。。。が、確かに恋に似ているが恋ではない。

 

何時だったか、バルゴが『姫』と呼んでるのを聞いて、、、何だか納得した。

すんなり『姫さん』がオレの中の定位置に決定。

ウルはオレの中に騎士道を叩き込んだのかもしれない。

 

これは最近気づいたのだが、この感情はどちらかというと、、、ジェリーじゃないが、、、『愛』だな。

ただ、父性愛に近い感情だ。

日々成長していく彼女を見て、嬉しくなり心がほころぶのだ。

年の違わない彼女にこんな風に思うのは違うかもしれないから、兄妹愛とでもしておくか。。。

結局のところ、エルザと同じような位置だな。

それが、年上か年下かの違いだけだ。

オレはきっと姉より、妹を可愛がるタイプだったんだな。

いや。。。この場合姉が怖すぎるのか。。。

(・・・うまいこと言ったか?オレ。。。)

 

それからは、心置きなく姫さんを 可愛がっている。

ナツとの関係を見ていても、、、ナツはどうでもいい!!勝手にやってくれ!!って感じだ。

姫さんが幸せならくっ付こうが、離れようが何でもよかった。

まぁ、姫さんを泣かしたって理由で、ブチ切れて相手もろともその国まで破壊してしまうやつだ。

アイツほど、彼女を好きな奴はいないと、思うし、あいつなら大丈夫だと 内心期待していたんだが。。。

ホントこういうところで不器用な奴だ。

溜め息が漏れる。

ナツに力なんて貸してやりたくもないが、うちの姫さんの視界にはあいつしか映ってないんだからしょうがねぇ。。。

まあ、今回はナツに貸しだな。

姫さんを振り回した分、カナの作中にはまって肝を冷やせばいいんだ!!

 

 

ジュビアは、ルーシィの家のお風呂が結構気に入っている。

石作りの浴槽は、素肌にゴツゴツとあたる石の表面がなんとも頼もしく感じ身を溶かして預けられる。

木の浴槽だと水と一緒に一部吸収されてしまいそうで、、、実際そんな事は無いのだが、心もとないのだ。

今日は、久しぶりに仕事に行ったのでゆっくり浸からせてもらっている。

先程、訪問者があったようだった。

・・・ジュビアの予感では、、、、グレイ様。

帰ってきた時の、ルーシィの様子が随分落ち込んでいたので、様子を見に来るかもなって思っていた。

今自分が出ていくと、つい取り乱してしまいそうなので、もったいないけどこのままやり過ごした方がいいかもしれない。。。

少しすると、玄関の閉まる音がした。

・・・もういいでしょうか。。。

 

はぁ。。グレイ様に会いたかった。。。勿体無いことをしたのかもしれない。。。

ルームウエアに着替え、頭にタオルを巻いてお風呂場を出ていくと、レビィさんがカゴを抱えていた。

「レビィ?それは何ですか??」

そのカゴは先程までは、なかったものだ。

レビィが、都合が悪そうに口ごもった。

「ミラさんからの差し入れですか?」

ジュビアが、微笑んで尋ねた。途端レビィが固まった。

「グレイ様が来られたんですよね??・・・大丈夫ですよ!!」

固まったままのレビィに、ジュビアはやさしく笑いかける。

「そんな気がしてたんです。ルーシィ落ち込んでたから、様子を見に来るかもなって。朝ギルドに行ったときカナさんがグレイ様を捕まえて、悪巧みしていましたし。」

「そーなんだ!!・・・・・・・ジュビアごめん!!誤魔化そうとしちゃって。。。」

レビィが両手を顔の前で合わせて、ペコリと頭を下げた。

 

「・・・ジュビア怖いですもんね?!恋敵の話しになると!」

あっけらかんと、ジュビアが冷静に言ってのけた。

「ジュビア?」

「ジュビア解ってるんです。グレイ様が目の前にいると、つい暴走してしまうって。グレイ様が近くにいると思うと!!こう!!昂ぶってしまって!!」

ジュビアが身悶えながら、言葉を吐き出した。

「・・・・それに。。ルーシィはやっぱりグレイ様の特別なんです。・・・・・・あっ!誤解しないでくださいね?」

ジュビアがそこで言葉を区切ると、レビィは興味深そうに真っ直ぐ、ジュビアを見つめた。

「ルーシィが可愛いんです。グレイ様は。ルーシィをほおって置けないんですよ。 以前、グレイ様はルーシィの事を、幸せになって欲しい子だと言っていました。それって、自分が幸せにしていって事では無いようでして、、、。

 ・・・今日落ち込んでいたルーシィを見ていたら、きっとルーシィを慰めに来るんじゃないかと思いました。」

「へぇ。。ジュビアって結構冷静に、見てたんだね。」

 

「ジュビア、グレイ様の一番の理解者になりたい!!」

 

ジュビアが、掌を握り胸の前に構えて まるで何かを祈るホーズをとった。

「グレイって、何考えてるかつかみきれない時があったんだけど、ジュビアはさすがよく見てるんだね?」

「グレイ様は、人に恥じない様に生き急いでらっしゃるんです。大切な人の命の上にある命ですから、・・・使命感に駆られているのだと。。。

 ・・・自分の幸せはそっちのけで、と言うか、、、自分は幸せになってはいけないと思ってらっしゃるんじゃないかと。。。。

 ジュビアは心配です。いつか無理して、、、、倒れてしまうのではないかと。。。。。もしかしたら、、、、誰かの盾になって散ってしまうのも本望なのではないかと。。。。」

ジュビアの固く握った手に、ポタポタと雫が落ちる。

 

レビィはたまらなくなって、ジュビアに抱きついた。

「ジュビア!!ジュビア大丈夫だよ!!確かに、妖精の尻尾にいる人は、いろんなものを抱えてる。グレイもそうかもしれない。

 でも、それだけ理解してくれようとする人がグレイの近くにいてくれれば、力になるよ!!グレイだって頑張れるし、その内自分の幸せだって考えられるようになるよ!!」

 

 

玄関の扉の外で、ルーシィは息を殺してジュビアの話を聞いていた。

アタシは、なんて自分勝手なんだろう!!

こんなに、心を痛めている友達がいるのに!!・・・誤魔化して、だまそうとしていたなんて!!

いつも、みんなに甘えて、、、、グレイにだって、甘やかしてくれるからって、寄りかかり過ぎちゃいけないんだ!!

なんで、なんで、なんであたしってこうなんだろう。。。

いつもいつも、アタシのせいで皆を振り回している。

もっとしっかりしなくちゃ!!

悔しい。

自分が悔しい。

笑っている人の表面しか見れていなかったんだ。

 

ルーシィは扉に背を預けそのまま、しゃがみ込んだ。

・・・・泣く資格なんて、今のアタシにはない。

 

 

 

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結局、ナツの自覚を促したのは、ガジル君でした。

 

補足。

 

ルーシィは、リサーナと赤面しながら話すナツを見て ショックを受けました。

やっぱり、ナツはリサーナが好きなんだ!!って。。。

グレイも、ギルドでのナツとリサーナの様子を遠巻きに見ていたので、ナツに対して苛立ちが隠せません。

 

ナツからしたら、リサーナにルーシィの事をからかわれていただけなので、何のことかさっぱりです。

ナツは、グレイにやきもちを焼く。。。カナのキッシングボールの設定は、カナの作り話です。その設定はグレイにも言ってない。

ルーシィが説明したのが、一般的な伝説です。もっと、ドロドロしたかったんだけど、、、スキルがありませんでした。ごめんなさい(/ω\)

 

でも、ナツは、グレイにイライラするよりも、実際、ルーシィに会えちゃうと、グレイの存在をすっかり忘れて、

ルーシィしか見てない状況になるんじゃないかと。。。

ルーシィに会えたことの方が大きくって、でも緊張してうまく話せない。。ルーシィの動向だけ感じているような状態??

 

そして、1人になって、モヤモヤ悩む。。。

こうだと決めたら突っ走っていって、素直に尋ねるのがナツだと思うので、悩ませるのが大変。。。う~(/ω\)難しいですぅぅう。

 

ルーちゃん、思考がドツボにはまってしまった。。

そして、グレイキャラ崩壊してたらごめんなさい(/ω\)moの中では、グレイの内側はこんな感じなのではないかと。。。。(*´▽`*)!!

 

 

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