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2013X'masシリーズ『変化していく関係』その6

あふれる思いとルーシィの告白

とうとう……クリスマス……ですねっ

 

 

冬の澄んだ空気に、星空がいつも以上に輝いて見える。

ナツは1人、家の屋根に登って星空を見上げていた。

 

夜になると、やけにルーシィに会いたくなって、声が聞きたくなって、花のような香りに包まれたくって。

やっぱり、ルーシィが好きなんだと実感する。

なんで、ルーシィなんだ??

・・・・ルーシィだからとしか言いようがない。

ルーシィがそこにいるだけで、胸が暖かくて 苦しくて 他の誰かなんていらない。

ましてや、ルーシィに他の奴なんて 考えられない。

大切にするから。

失くさない様に、大切にするから、ルーシィ。オレのものになってくれ。

これが愛しいって言うんだろうな。

ルーシィ。お前が愛おしいよ。

その笑顔も、泣き顔も、照れた顔も、怒った顔も きっとすべてだ。

気付かされたこの思いは、甘酸っぱいだけじゃなかった。切なくて、少し苦い。

 

夜空を睨み付け、ルーシィが以前 教えてくれた ルーシィのママを探した。

 

なぁ、ルーシィの母ちゃん。

オレはルーシィに受け入れてもらえるかな??

ルーシィと一緒に居たいんだ。

それがオレの我ママでもしょうがねぇよな。

オレの中にはルーシィしかいねぇんだから、逃がすつもりもねぇ。

今までだって一緒にいたんだ。・・・嫌いなわけねぇだろうし!

もし、嫌だって言っても、ルーシィは押しに弱いからな。

ずーっとくっ付いていてやる。

そしたら、他の奴も寄って来れねぇだろうし、ルーシィも気が変わるかもしんねぇしな!!

逃がさねぇよ??ルーシィ!!

なぁ、ルーシィの母ちゃん。

ちょっと、強引でもいいだろ??

オレほど、ルーシィの事好きな奴はいねぇって言われたんだぞ!!

ちゃんと幸せにするから!!

 

掌に握りしめる桜色のリボン ルーシィに初めて贈る小さなプレゼント。

 

勝負は、、、明日だ!!

 

 

やさしい日の光が、窓から差し込んでくる。

今日はクリスマスイブ。

 

真っ赤なポンチョを羽織り、真っ白なマフラーと、耳当てを身につける。

ナツへのプレゼントを鞄の下の方に押し込み、ルーシィは部屋を出た。

玄関にカギをかけ、最後に白い手袋を着けた。

 

昨日の夜降った雪がマグノリアを覆い、目の前には白銀の世界が広がっている。

「うわ~寒い!!息も真っ白!素敵!!ホワイトクリスマスだぁ。」

白い息を吐き、頬を赤く染め ルーシィは 空を見上げた。

ルーシィの見上げた先には、綺麗な青空が広がっている。

 

『よし!!』

 

ルーシィは、1人気合を入れて視線の先に思い浮かべた大好きな人の面影に気合を入れた。

 

ギルドに着くと、扉の上に大きなキッシングボール、酒場の中心には 大きなクリスマスツリー。

 

そして、何やら騒がしい!!

「あら~!!ルーシィいいところに来てくれたわね!!!」

魔人がにっこり、微笑んだ。

今日ルーシィは、ギルドのパーティに来てくれる地元の人にクリスマスプレゼントを配る係りになっていた。

ギルドの出入り口で、パーティが始まるまで 待機していればいい様な簡単な仕事のはずだ。

いや。はずだった。。。

 

緊急の依頼で、グレイとジュビアが抜け ルーシィは、外に出て街の子供たちにプレゼントを届ける係に駆り出されることになった。

「急で悪いけど、お願いね!!ルーシィ!!」

承諾していないのに、、、サンタの帽子を被らされる。

・・・まぁ、魔人に頼まれて、断れるわけがない。。。

 

ルーシィは、子供たちに配るプレゼントを用意して街に繰り出した。

街頭には、クリスマスカラーのリボンが付いたベルや星のシンプル、キッシングボールなどが飾られている。

 

今、ルーシィの隣を一緒の歩いているのは、ロキだ。

人手が足りなくなってしまったので、急遽オーナーであるルーシィが呼び出したのだが、、、

妙にやる気だったらしく ふさふさの鬣のようなオレンジの髪にトナカイの角を付けている。

 

「ルーシィ!!クリスマスイブに、予期せず一緒に街を歩くなんて、運命を感じないかい??」

目を細め、ロキはルーシィの肩に腕を回す。

と、ルーシィが体勢を崩して頬を膨らました。

「もう!危ないじゃない!!・・・・・・・しっかし、その角よく似合ってるわね?トナカイさん!!」

「ルーシィも、可愛いサンタさんだね!!」

ルーシィは着てきたポンチョに、帽子をかぶっただけだが、自前の赤いポンチョのお蔭で すっかりサンタクロースになっていた。

 

いつでも、ルーシィ中心にものを考えてくれる この星霊は、ルーシィのよき理解者の一人だ。

星霊であるロキの生死にかかわることに首を突っ込み、それを一緒に乗り越えた末の主と星霊。

絶対的な存在だとカギを預けてくれたロキ。

少々女の子にだらしないのが玉にキズだが、ルーシィと心を強く通わせることのできる相手だ。

彼は ルーシィを甘やかしているという印象を持たれるが、意外と甘えを許さない男で、頼りになる星霊である。

 

「ルーシィ。キミはいつも可愛いけど、今日はいつもに増して可愛いよ!!さすが僕のルーシィだね!!」

ロキが、口角を上げウインクをキメて やさしい眼差しでルーシィを見つめる。

「もうっ!!ロキたらっ!!」

満更でもないような表情で、少し頬を染めてルーシィが笑った。

「今日はパーティーの他にも、頑張らなきゃいけない事があるからかな??」

ロキは眼鏡の奥で目を細め微笑して、ルーシィを見据えた。

鋭く射抜かれるような視線に、ルーシィは一瞬たじろぎ視線を落とした。

 

「っ!?そんなの、、、どうせアンタは解ってるんでしょ??」

ルーシィがロキに視線を戻した。

「うん。ルーシィのことだから、知ってるけどね?」

ロキは、笑いながら、下がった眼鏡の位置を人差し指で押しもどす。

眼鏡の奥の普段優しい眼差しが、厳しいものへと変わっっていた。

 

「ルーシィ。。。やっと自分の気持ちを認められたと思ったのに、、、勝手に自己完結??プレゼントを渡して、その気持ちを捨てられるのかい?」

ロキが怒ったような眼差しを、眼鏡の奥に隠し、ルーシィを見下ろす。

「だっだって、、、しょうがないじゃない。。。ナツは、、、」

ルーシィは恨めしそうな目でロキを見た。

「・・・リサーナが好き??本当に??」

ルーシィは、眉間にしわを寄せこくんと頷いた。

ロキは黙ってルーシィの肩を引き寄せた。

「ナツが、幸せになってくれれば、、、いいの。。。アタシの気持ちも、正面からぶつけっちゃったら、、、ナツは戸惑うわ。

 迷惑かけちゃうもの。。。もう笑いかけてくれなくなるかもしれない。。。。怖いの。。

 ・・・でも もう、胸の中だけに気持ちを抱えきれそうにないの。」

ルーシィの頬に、雫が流れ落ちる。

「だから、、、せめて、、、伝えられない気持ちをプレゼントにのせて、、、受け取ってもらおうと思ったのよ。。。それだけで、、、いいから。。。

 プレゼントを渡したら この気持ちに終止符をつけようって。。。忘れられるわけないけど。。。みんなに心配かけない様に。ちゃんと考えたの!」

 

ルーシィの大粒の涙がボタボタと地面に濡れた痕をつける。ロキは、ルーシィの肩を抱いたまま、頭を撫でた。

「ナツは、本当にリサーナが好きなのかな??」

ロキを見ないでルーシィは頷く。

「本当に?ナツがそう言ったの??」

「・・・ナツは、まだ気付いてないのよ。。。」

涙はあふれ出て、止まらない。

「・・・でも、態度を見ていれば解るもの!!」

「どんな風だって言うんだい?」

「・・・よく一緒にいるわ。」

「うん。ルーシィともいつも一緒にいるよね?」

「でも、いつも楽しそうに、話してるわ。」

「うん。ルーシィとも楽しそうにしてるよね??」

「リサーナと話してると、、、赤面して照れたりするのよ!!」

「ルーシィと話しているナツは、すっごく幸せそうに見えるけど??それに、ルーシィはナツ以外の人と話していて、赤面したりしないかい?照れたりしないかい??」

弾かれた様に、ルーシィが顔を上げた。

ニッコリとほほ笑むロキがルーシィを真っ直ぐ見つめている。

涙はいつの間にか止まっていた。

 

「いいかい?ルーシィ。人の気持ちは、その人にしかわからないんだ。決めつけてはいけないよ?」

ロキは、ルーシィの涙の痕をそっとハンカチで抑えた。

「目がはれなきゃいいけど。。ねぇルーシィ!!恋する女の子は幸せそうに大好きな人を想って、その恋が実ることを夢見ていいんだよ。」

ロキは両腕をひろげて、大げさにジェスチャーする。

「フフッ。ロキらしいわね!!」

ルーシィの顔に笑顔が戻ってきた。

「・・・ルーシィが、らしくない事ばっかり言うから、僕焦っちゃったよ!!諦め試合なんて僕が、ルーシィにはさせないよ!!それに君はもっと自分自身の幸せを考えていいんだ。」

ルーシィが、楽しそうに足元に残る雪を踏みしめ、クルンと体を翻した。

「ありがと!!ロキ!」

 

街を回り、リストにある子供たちの家にプレゼントを届けて回った。

最後の一軒を後にすると、もうすっかりパーティの開始時間は過ぎていた。

「随分冷えちゃったね?ルーシィ大丈夫かい??」

「いつもより厚着してきたんだけど、、、流石に冷えたわね!!早くもどろっ!!」

ロキの先に立ち、足早にギルドを目指すルーシィ。

 

しばらく進むと、ルーシィが振り返ってロキに笑顔を向ける。

「ロキ!!アタシは、あんた達の幸せも!願っているわよ!!」

ふんわり、やさしい主のその微笑みにロキは見惚れた。

照れたように、頬を染めた主は また身を翻しギルドへと急ぐ。

 

少し先を歩くルーシィの背中に向けて、ロキは小さく1人ごちた。

「・・・・ルーシィ。。僕は、キミの幸せを 誰よりも願っているよ。。。頑張れ!!」

 

 

 

 

一方ナツは、相棒と連れだってギルドの扉をくぐり、がっかりした。

先に来ていると思っていた、ルーシィの匂いが無い。。。ルーシィがいない。。。

ガクンと肩を落とし頭を垂れた。

ポケットに手を突っ込み、その中にあるリボンを握りしめる。

 

ナツは、ルーシィと一緒にパーティに来た町の人にプレゼントを渡す係だった。

準備の為ルーシィが早くギルドに顔を出すと思って、自分も予定より早めに家を出たのだ。

ルーシィのアパートの前を通って、部屋を見上げると人の気配はもうなかった。

街に残る彼女の匂いをたどるように、ギルドまで来たんだ。

 

さっき匂いが別れたところがあった。

ルーシィは買い物でも頼まれたのかもしれない。。。。

すぐに帰ってくるだろうが。

、、、気に食わないのは、ロキの匂いも一緒に有ったといことだが。

・・・まぁ、1人でフラフラしてるよりよっぽど良い。

番犬ならぬ、番ライオンが付いているのだから。

 

そんな事を考えているうちに 相棒はさっさと、愛しの白猫の元へ飛んでいってしまった。

ナツは ギルドを見渡し、カウンターに出て来たミラの元に向かう。

「よっ!ミラ!!!」

軽く手を上げ挨拶をかわした。

「おはよう。ナツ。ルーシィなら、しばらく戻らないわよ!!ごめんなさいね?」

ミラはにっこり笑って、ナツの前にドリンクを置く。

「何でだよ?今日は、、、」

「う~ん。。ごめんねぇ?急な依頼があって人手が足りなくなっちゃったのよ!」

ミラは、ウインクしてペロッと舌を出した。

「街の子供達にプレゼントを届けに行ってもらってるの!酒場での仕事は、アタシとリサーナが手伝うから!!」

それだけ言って、あ~忙しい~忙しい!!とわざとらしく口に出して厨房に引っ込もうとして 足を止め振り返った。

 

「ナツ!右のポケット。落とさないようにね??」

クスリと笑って、今度こそ厨房へ消えていった。。。

 

「・・・・魔人め・・恐ろしい。。。」

 

 

 

+ + + + +

 

 

 

ルーシィ達の帰りを待たず、ギルドのクリスマスパーティが始まった。

ナツは、ギルドの中を見渡した。

「・・・・グレイの野郎もいねぇのか。。。喧嘩も出来ねぇじゃねぇか。」

 

しばらくすると、ギルドの中心で真っ白のスーツに身を包み ガジルがギターを構えた。

「シュッビドゥッバ~♪」

そして、歌いだした。

 

「ガジル!!いいぞやれー!!」

「うるせー!!!」

「ガジル引っ込め~!!」

「ミラちゃんを出しやがれ~!!」

いろんな ヤジが飛び交う。

つーか、シュビドゥバーってなんか意味あんのかぁ??

 

ナツは仕方なく、開いていた席に腰を下ろした。

そこへ、一人でいるナツを見つけてカナがやって来る。

「おいナツ!!」

既に、出来上がっているようだ。。。

(・・・めんどくせぇ・・・。)

カナは、ナツの座るテーブルに腰を掛け、豪快に酒樽をあおる。

「おい。ナツ!!しっかりやれよ!!」

突然そんなことを言われ、ナツは面食らったように黙った。

 (・・・こいつまで!!何を知ってやがる!?!?)

「おねぇさんは、何でも知ってるんだぞー!!」

そう言ってカナは、ナツのズボンの右のポケットを一瞥した。

ナツの胸の奥がギクリと音を立てた。

 

ここで、ナツが告白することがまわりにばれれば、、、大騒ぎだ!!

それこそ告白どころではなくなりかねない。

 

「何をだよ!!」

ナツはそう言うと、ガタンと音をたてて大袈裟に立ち上がり、テーブルをひっくり返した。

避難するのが遅れたテーブルに、のっていた様々な物が、宙を舞った。

ある者は、頭から酒をかぶり、ある者は食べようとしていた料理が台無しになり、ある者はよろけて別のテーブルにぶつかる。

その連鎖は続き、いつもの大乱闘が始まった。

 

ナツは、ひとしきり暴れた後、カウンターの席にドカリと座った。

やっぱルーシィいねえとつまんねぇ。

カウンターの席から、ギルドの出入り口に目を向けた。

ルーシィがこの間 貰っていた、キッシンなんとかとかいう飾りが、扉の上に飾られていた。

 

ギルドの扉が少し開いて、微かに大好きなにおいが鼻をかすめた。

だがなかなか、扉は開ききらない。

何しだ??待ちきれず扉へと、ナツは人をかき分け近づいていく。

 

ロキはギルドの扉をくぐる時、ルーシィを呼び止めた。

振り返ったルーシィの腕をとり、自分に引き寄せる。

「キャッ!?」

華奢なルーシィは、難なくロキの腕に抱き留められた。

ルーシィの耳元で、「僕からの、プレゼントだよ。」とロキが囁いた。

体勢を戻すと、ルーシィの手首にチャリッと揺れる ひんやりとした感覚。

線の柔らかい星がちりばめられたようなデザインのブレスレットがはめられている。

 

「やっぱり!!ルーシィに、よく似合う!!」

ロキが、やさしく笑った。

「えっ!?アタシ何も用意してないのに!!」

ルーシィが、焦ってワタワタしていると、ロキは さっと、身をかがめルーシィの額にキスを落とした。

ルーシィは一瞬で、真っ赤に染まった。

ロキが顔を戻すと、ルーシィの後ろの開かれた扉の先にナツが突っ立ていた。

ルーシィは、ただ真っ赤な顔で口をパクパクと動かしている。

「ルーシィ。自身を持って!」

ロキはルーシィの耳元でやさしく囁いてから歩き出す。

ナツはギロリとロキを、睨みつけた。

ナツの隣をすり抜ける時、ロキは

「早くルーシィを、キッシングボールの下から連れ出してあげてよ。ナツ!」

誰かにキスされちゃうかもよ~!!と耳打ちして 眼鏡で目元を隠し ギルドの中心で騒いでいる塊に笑顔で混じっていった。

 

ナツは無言でルーシィの腕をつかみカウンターまで引っ張っていった。

(あんなところで止まってんなよ!!!誰だ??あそこにあんな飾りした奴は!!)

頬を染めながらルーシィは、よろよろとカウンターに突っ伏した。。

ナツは、荒々しくジョッキを傾け、熱いものを喉に流し込む。

 

「もう!!やられたわ。。。。」

ルーシィが、突っ伏したままポツリと洩らした。

その手には、きらりと輝く見慣れないブレスレット。

「あらあら、ルーシィ キッシングボールの下で、祝福を受けちゃったのね?はい。それから、サンタさんご苦労様!!」

カウンターの中から、ご機嫌なミラがドリンクを出しながら話しかけてきた。

ルーシィは、額に手をあて 頷いた。

「フフッ。祝福。。。かぁ。。頑張れって意味かな??」

まだ赤味の退かない顔で、ルーシィはふんわりと笑った。

 

ジョッキをあおりながら、ナツはその笑顔に目を奪われた。

(・・・・・・・クッソォォォォ!!!!!!)

そのまま、ルーシィの横顔を睨み付けていると、ルーシィがナツに振り向いて笑った。

 

「ナツ!!おはよー!!遅くなっちゃってごめんね??プレゼント配り大丈夫だった??

 あっ。あとあの下から連れ出してくれてありがと。。。あのままボーっとしてたら 他の人にまでキスされちゃうところだったわ!! ほらっアタシってかわいいから!!」

ルーシィが、さぁ突っ込めとばかりの発言をしたが、ナツの心の中ではそう簡単な話ではない。

「おぉ。ボーっとあんなのの下にに突っ立ってんじゃねえ!!!!!馬鹿ルーシィ!!」

ナツはのんでいたジョッキを、カウンターに叩きつけるように置いた。

ナツが、押し黙って思い耽っている。

その間にルーシィは、ミラと話し出していた。

「やっぱり、この席にルーシィが座って、その隣にナツがいるのがしっくりくるわね~。」

「そっそうですかぁ///??」

「そうよ~。ナツもルーシィが隣にいないと、落ち着かないんじゃない??」

照れたように、頬を赤らめるルーシィ。

ねっ?といってミラが問いかけてくる。

「おぅ。」ナツが、頷きながらそう言った。

「ルーシィがいねぇと、つまんねぇ。。。」

そう言われ、ルーシィの瞳が揺れた気がした。

「つまらないって、アタシはアンタのオモチャや何かじゃないのよ!!」

頬を膨らませて、ルーシィがナツを軽く睨み付けた。

それを見てナツの腕が自然と伸びていき、ルーシィの頬をつついた。

クシャッと笑って、「柔けぇな??」と言って、そのまま頬をそっと撫でた。

ナツはそのまま、やさしい眼差しでルーシィを見つめている。

ルーシィは、見る見るうちに首まで真っ赤に茹で上がった。

 

「あらあら、私邪魔かしら??」

ミラは、そう言って、ジョッキをカタしにカウンターの奥に消えていった。

 

ナツは、まだルーシィの頬をプニプニと触っている。

恥ずかしさが増していき堪らずルーシィは、俯いた。

「・・・ルーシィ。。。下、向くなよ。」

あまり聞きなれない、優しい声でナツが囁いた。

ルーシィの心臓が早鐘を打つ。

素直に顔を持ち上げると、ナツがとろけそうな眼差しで、ルーシィを見つめていた。

「ナツ??」

「・・・・つまんねぇって、そういう意味じゃねえっての!」

ナツがニカッと笑って、ルーシィの頬を横に引っ張った。

「じっじゃぁ、どういう意味なのよ!?」

ナツは、言葉に詰まり上を向いて考える様にして、ゆっくりとまたルーシィを見つめた。

「落ち着かねぇつうか、、、ものたりねぇつうか、、、調子でねぇし???・・・お前いねぇと、、、寂しいんだよ。。。」

最後の方は、ナツらしくもなく消えそうな声だったが、隣にいるルーシィにはしっかりと届いていた。

(・・・どういう意味なの?ナツ??)

ルーシィの胸が期待に高鳴る。

「・・・ルーシィは、オレ達と一緒にいるのがもう当たり前なんだよ!!」

(・・・オレ達・・かっ。。。)

ルーシィは諦めたように微笑んだ。

(・・・ごめん。ロキ。ダメだって、分かってるのに、、、頑張る事なんて。。。出来ないよ。。。)

「・・・そうね。」

手首にはめられたブレスレットを、もう片方の掌で覆い隠した。

ナツは、ルーシィのその言葉だけを聞き、マフラーに隠した口元を緩めた。

 

「あっ!そう言えば、ハッピーは??」

ルーシィは、キョロキョロと辺りを見渡した。

「ハッピーがどおしたんだぁ??」

心なしかナツが、不貞腐れた様に眉をしかめた。

「あっあそこか!!」

ルーシィは、鞄化リボンのついた袋を取り出した。

「なんだぁ??それ??」

ナツが、ルーシィの手元を覗きこんだ。

「ほらっ!この間ハッピーと約束したのよ!」

ん??そんな事言ってたっけかぁ??

「あっ!!ハッピーーー!!!!」

ルーシィの声が、ギルドに響いた。

向こうの方で、ハッピーがその声に気付きこっちに顔を向けた。

それに気付きルーシィは、ハッピーに向って、リボンのついた包みを見せた。

 

「ナツはさぁ、誰かにプレゼント贈らないの??」

ルーシィが、ナツの顔を見ないでその言葉を落とした。

 

ルーシィに呼ばれたハッピーが目を輝かせて、こちらに飛んで来ようとしている。

「なになに~??ルーシィィィィィ!!」

 

ルーシィからの突然の質問に驚きながら、ナツは右のポケットに手を突っ込み頬を染めた。

その様子をルーシィは、視界の端で捉えていた。

ナツは、ルーシィの視線に気付き 恥ずかしれくなり焦って視線を泳がした。

ルーシィのハッピーを呼んだ声で、ギルドの中の何人かがこちらを見ている。

たまたま、視界に入ったリサーナが、頑張れ!!とでも言うようにガッツポーズを送ってきた。

気恥ずかしさと、緊張が走り、ナツの顔に熱が集まっていた。

 

(あっ。。。。リサーナ。。。この後約束でも、、、してる、の、かな?)

ルーシィの視界は、ナツを捉えたまま涙で滲み始める。

その視界にハッピーが映った。

 

「ルーシィ??」

フワッとハッピーがルーシィの腕に、舞い降りた。

キョトンとした顔で、ルーシィを見上げてくる。

フッと、目を細めルーシィは笑顔を作った。

「はい。ハッピー!どうぞ!!」

「わー!!ルーシィありがとー!!」

プレゼントを受け取り、ハッピーはすぐに中身を出してみた。

ルーシィのマフラーとお揃いの、白いマフラー付きの猫耳帽子。

ハッピーが小躍りしながら、天井スレスレまで飛び上がった。

「愛」って何かよく分からなかった。

でも、今 心が震えた。

 

先ほど、微睡んでいる中、彼女が囁いた気がした。

「手を引いてくれたありがとうナツ。でも、その手を返すね!リサーナの所に戻っていいんだよ!!」

何を言っているのかわからなかったけど、この手紙に残る濡れたあと。

涙のにおいがする。

彼女の最近のあの消えそうな笑顔。

 

 

何か噛み合わないような違和感は、、、、胸が締め付けられる。

ルーシィは??何処だよルーシィ!!

 

微かに残る彼女の香りを頼りに、ギルドの扉を押し開けた。

ルーシィ!!好きだ!!

直ぐにオレの気持ちを伝えたい。

安心させてやりたい。

不安になることなんてないんだ!!オレにはルーシィしかいないんだから!!

 

ポケットの中にあるリボンを。。。握りしめて走った。

 

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