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秘密結社『妖精の尻尾』~出会い①~

 

魔法はすたれ、電子機器が発達した世界。

皆、一般の人は魔法と言うものが実在することを知らない。

魔法と言う存在を見たことがないからだ。

本の中の、物語上の空想の存在。

子供は大人になるにつれ、現実には ありえない事だと知っていく。

 

そんな世界に世間からは隠れて、魔導士の集まる場所が数ヶ所存在する。

ここは、その内の1つ。

その名も『妖精の尻尾』だ。

表向きは何でも屋。その裏の顔は この世を陰から支える、秘密結社の様な存在である。

 

そこに所属している者は、魔導士であり 世間からは認められない存在だ。

普段は、何食わぬ顔で普通に就職し仕事をしている者、魔法を使わないものと結婚をし生活をしている者。

一般人に混じって学業に勤しむ者。

それぞれに、社会の顔を持って生活しているのだ。

 

だが中には、社会の生活にはなじむ事の出来ない者もいる。

魔力の調節が難しく、危険がある者だ。

そういった者は、妖精の尻尾の表の顔、、、探偵事務所と名乗っている何でも屋の職員として生計を立てているのだ。

そして、依頼が入った時のみ必要なものが徴収され、人知れず事件を解決していくのだ。

決して人に知られてはいけない存在。

警察の上層部や政治家など、、、一部の者にしか魔法が存在すること自体、、、、隠されている。

 

 

 

 今回は『妖精の尻尾』のお騒がせメンバーの桜頭の少年と金髪の少女の出会いを紹介しよう。

 

 

ある日のある港町。

「あっ。この鍵!おじさん!この鍵おいくらぁ?」

港町の小さな骨董店に金髪の可愛い少女がいた。

店のショーウィンドーに食い入るように見入って、1つの鍵を指さした。

 

「お嬢ちゃん、その鍵のキーフォルダーは珍しいものなんだよ~」

 

店主の一言には、頷けるものがある。

このショーウィンドーの中の鍵は、、、、星霊の鍵なのだから。

魔法を使う事の出来ない者には、この鍵は何の変哲もないただの飾りに見えているのだろう。

この世界の人間は、それぞれ多かれ少なかれ体の内に魔力を持っている。

 

だが、ただ持っているだけ。

魔力を使う事の出来る人間は、その中の一握りなのだ。

 

「ねぇん。本当は、、、お・い・く・ら??」

 

豊満な胸をギュッと中央によせ、谷間を深くして店主の視線を奪った。

 

「まいどあり~!!」

 

購入した鍵を手に、金髪の少女は骨董店のドアを出た。

 

「もう!!あたしの色気は、こんなもんか??」

 

頬を膨らませながら、金髪の少女がズンズント歩いていく。

でもまぁ、カギを手に入れたのだ。

これは、探していた鍵だ。新しい友達が増えるのだ。

金髪の少女は、そっとその鍵を胸に抱き心の中で語りかけた。

 

(フフフッ。今日からよろしくね!!仲良くしましょうねっ!!)

 

そのまま気分よく 街中を歩いていると、道の先の方に人だかりができているのが見えた。

若い女性ばかりが集まり、キャーキャーと黄色い声を上げ誰かを囲んでいるようだった。

ルーシィは、その先に何があるのか?興味を惹かれその集団の方へと足を進めた。

 

金髪の少女は 誰かを囲んでいる女の子達をかき分け、その人物を視界に映した。

『ドキンッ!!』

途端高鳴る心臓。

心なしか顔に熱が集まっていく。

これは、、、、もしかして////一目ぼれ!?

視界の先までピンク色に染まろうかを言う時、桜色が目の前で揺れた。

 

「イグニール!!」

 

その桜頭が大声で叫んだ。続いて、綺麗な青色の猫が桜頭の少年に向かって 駆け寄って行く。

目からハートが落ちた。

ハッと我に返った。

 

桜頭の少年は、囲まれていた人物を他の人物と間違えていたらしい。

目的に人物ではないと、1人?がっくりしながら来た道を戻ろうとしている。

そこへ 少年が失礼な態度をとったと、周りを囲んでいた女の子達から暴行を受け、少年は道すがらに放置された。

少し離れたところから、囲まれていた男を睨み付けていた少女。

 

うち捨てられた少年たちの後ろから、その少し怒った様子の少女が声をかけた。

 

「いけ好かない奴ね!!」

「あ??」

「さっきはありがとう!」

「は?」「??」

 

 

所変わって、近くのレストラン。

目の前で笑う金髪の少女を、青猫は首を傾げながら見ていた。

もちろん。目の前に出された魚を、口にするのは忘れていない。

大急ぎで、目の前にある食事を吸い込むように平らげていく桜頭の少年。

 

ルーシィは内心、財布の心配をしながら目の前の少年と青猫に微笑みかけた。

 

「お前いい奴だな!!」

 

少年が食べながら口を開くと。食べかすが飛び散る。

そして、その脇で青猫が「にゃあ」と相槌をうつように鳴いた。

少年のあまりにもな食べっプリに若干引きながら、金髪の少女が口を開いた。

 

「もうちょっと、落ち着いて食べたら?」

 

少年は、手も口もせわしなく動かしたまま、視線を金髪の少女に投げた。

少女は伏し目がちにポツリとつぶやいた。

 

「・・・まぁ、あんた達のお蔭で助かったしね。。。」

「??」

「ん?あっ。意味わかんないよね?・・・・まぁ、あたしが個人的に助かったってだけの事よ!さっきの奴、、、ホントいけ好かないわ!!」

 

表情豊かに、ドリンクを片手にしゃべりだした少女の口は止まらない。

その様子を青猫が目を細めてみていた。

そっと腕を伸ばし少女は青猫に触れる。

 

「よしよし。ほんとお行儀がいい猫ちゃんね?」

 

少女が青猫の頭を優しく撫でると、青猫が目を細めて、ゴロゴロと喉を鳴らす。

 

「あたしは、ルーシィよ。貴方は?」

 

青猫に話しかけると、青猫はそっと口を開いた。

 

「にゃぁ(ハッピー)」

 

魔法を使えない人には、猫の鳴き声に聞こえるはずだった。

だが、少女の耳には、ちゃんと言葉として伝わってしまったのだ。

 

「!?・・・ハッピー?猫ちゃん、ハッピーって言うの?」

「にゃぁ!!(あい!!)」

 

ハッピーは嬉しそうに少女の頬に顔を擦りつけた。

慌てたのは桜頭の少年の方だった。

食事を中断して、少女に視線を投げかけた。

少女は、キョトンとした表情で見返してくる。

 

「あれ?違ったかな??スカーフに書いてあったから・・・。」

 

(しまった!!)

 

内心少女も焦っていた。青猫の愛らしさに、飼い主の事を忘れていたのだ。

 

使い魔の資質のある動物は、特に猫はたまに魔導士相手に話しかけてくることがある。

それは、飼い主から見ても、特別不思議な事ではない。魔導士ではない人間には、自分の愛猫がよくなついている。

程度の事なのだが。。。

今回は、話しかけて思いがけず会話を成立させてしまったのだ。

この猫の名前を急にあてられれば、飼い主も訝しげにこちらを伺ってくる。ましてやここは、賑わっているレストランだ。

咄嗟に目に入った青猫の首に巻いているスカーフに、薄っすらと名前が書いてあることに気付けたのは幸いなことだった。

 

目の前の桜頭の少年は、コクンと頷いて笑顔で口を開いた。

 

「おう!!そいつはハッピー。おれの相棒だ!!んで、オレはナツ!ナツ・ドラグニルだ!!」

 

そう言って、武骨な手が差し出された。

その手に答える様に、少女が手を添えた。

 

「あたしは、ルーシィ。。。ただのルーシィよ。」

 

そう言ってから、「さてとっ」と金髪の少女、ルーシィは腰を上げた。

先程の集団催眠の要な状況が気になっていたのだ。

 

「あたしもう行くね!!お金は置いて行くから!!ゆっくりして行って!!」

 

ニッコリ笑いかけ、金をテーブルに置きルーシィは、レストランを後にした。

それを見送る桜頭の少年ナツと青猫のハッピーは、床に手をつき見事に頭を下げていた。。。

それを見てルーシィは、逃げるようにレストランを出た。

 

はぁ。。。大げさな子達ね。。。あたしは、ちょっと目立つわけにはいかないのよ!!

ルーシィは、ポケットからハンカチを取り出し、いつの間にかかいていた額の汗を拭った。

 

あ~あ。猫ちゃん可愛かったなぁ~。一緒に旅したかったなぁ。。。

でも、相棒とか言って可愛がってる人の元にいるんだもんね。

きっと大切にされているんだ。。。

幸せな子を、無理やり奪っていくわけにはいかないもんなぁ。。。

 

「相棒かぁ。。。」

 

ポツリと少女がそう呟いた時だった。

少女の足元に影がかかる。

 

「やぁ。お嬢さん!!」

 

少女が顔を持ち上げると、そこには先程道の真ん中で女の子達に囲まれていた男がいた。

 

「・・・何か?」

 

どうしても隠せない憎悪を視線に載せ、その男をミラみつけた。

 

「やはり。お嬢さんにはまやかしは通用しないんですね?ちょっとした遊びですよ!若い女性にチヤホヤされたいってだけの可愛いものでしょう?」

 

男は軽薄に微笑んだ。少女の背中に冷たい汗が、つたい落ちた。

 

「何をしたの?集団催眠??・・・モテたいからって、卑怯な手段よね?卑劣だわ!!」

「・・・集団催眠。・・・まぁ似たようなものですよ?魔導士さん!!」

「なっ!?」

 

少女は男から距離を取り、身構えた。

 

「何を言っているの??頭おかしいんじゃない??」

 

何とか誤魔化そうとするも、男なそれをあざ笑った。

 

「隠さないでいいんですよ。美しいお嬢さん。私も仲間だ!!」

 

そういうと、男は懐から1枚の名刺を差し出した。『妖精の尻尾』そうたしかに書かれている。

 

「お嬢さんは、まだどこにも所属していないのでは??」

 

不敵に笑う男。

だが、その男の言うとおりだった。金髪の少女こと、ルーシィは1年前に家を飛び出してきた家出少女。

父親は魔法を使えないが、少女は、死んだ母からその力を引き継いでいた。

 

幼少時代、母に先立たれ少女は屋敷の中に隔離されて育ってきた。

自分の周りに合ったものは、、、、本だけ。本だけで知る、社会にあこがれを抱きとうとう 屋敷を飛び出したのだ。

 

まだ、自分の身を置く場所は無い。

 

男から差し出された名刺を見て、、、少女の動きが止まった。 身を置く場所は決まらないが、ひとまず向かう場所は決まっていた。

うろ覚えの記憶だが、、、会いたい人がいた。

・・・少女は幼少の頃、誘拐された記憶がある。

その時 助けに来てくれた者がいた。その人物を探していたのだ。

その者には体に綺麗なしるしが付いていた。

 

妖精の印。

 

顔も忘れてしまったその人の、唯一の手がかりがそのマークだった。

それが、今、目の前の名刺に印刷されている。

 

「このマーク。。。」

「そう。ご存知でしょう?魔導士の中では有名な存在。秘密結社『妖精の尻尾』。私は、そこの魔導士なのですよ!」

 

目の前の男は、あっさりとそう告げた。

秘密結社って、秘密だからそう言うのに。。。この男馬鹿なのね。。。心の中でそう思いながらも、少女は表面上笑顔を作った。

 

「お嬢さんも、妖精の尻尾に来ませんか?今晩お近づきの印に船上パーティにご招待いたしますよ!!」

 

満面の笑みだが、どこか気持ちの悪い笑みに、悪寒を感じながらも金髪の少女は首を縦に振った。

コイツの悪巧みも気になるわ。。。少し様子を探て見るのも一つね。。。

何より、、、『妖精の尻尾』。あのマークの意味を知ったのだ。

箱入りだった自分にはなじみのない存在。秘密結社。だが、その存在は知識として知っている。大切な友達が教えてくれたから。

あたしの他にも魔導士がいるって。そこに行けばたくさんいるんだって。

嫌な予感がしながらも、胸の奥にわくわくする気持ちを隠せない。

男は、船上パーティーの招待状をルーシィに渡し、マントを翻して「では後で」と、去って行った。 

 

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